ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》   作:ブイズ使い

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総力戦開幕!駆けつける仲間たち!

RR団と名乗る者たちにエーテル財団を乗っ取られてしまい混乱の渦に巻き込まれてしまったアローラ地方。そんなエーテル財団を救うべく、5人のウルトラガーディアンズがエーテルパラダイスに乗り込んでいた。

 

「シロン!こなゆきです!」

『コォン!』

「シルヴァディ!エアスラッシュ!」

『シヴァァ!』

 

リーリエのシロン、グラジオのシルヴァディがそれぞれRR団のポケモンたちを次々と倒していく。数は多いが相手は下っ端。一人一人の戦闘力は大したことはない。

 

「アシレーヌ!アクアジェット!」

『シレェ!』

「ガオガエン!ニトロチャージ!」

『ガオウッ!』

「ジュナイパ―!リーフストームー!」

『ジュパァ!』

 

ミズキ、ヨウ、ハウ、幼馴染三人も見事な連携で敵をなぎ倒していく。どれだけ数を揃えても、さすがにアローラリーグの激戦を乗り越えてきた猛者に勝つことは困難と言えるだろう。

 

「くっ!なんなんだこの子どもたちは!?」

 

RR団の下っ端は悪態をつく。まさかたった5人の子ども相手にここまで一方的にやられてしまうなどと夢にも思っていなかったのだろう。しかしポケモン勝負の世界に年齢など関係なく、実力が全ての世界。これが現実なのだと認めざるを得ないが、このままではRR団の名前に傷がついてしまう。

 

どうすればいいのかと下っ端たちが苦悩していると、彼らの背後から足音が聞こえる。彼らは足音の主を通すために道を開ける。だがその人物の顔を見たリーリエは驚きの表情を浮かべていた。

 

「……やはりお前か」

「え?お兄様?」

 

まるで知っていたかのように口を開く兄、グラジオに疑問符を浮かべるリーリエ。グラジオは主犯格の人物の名前を呟いた。

 

「ザオボー……やはりお前の仕業だったか。」

「気づいておられましたか。お久しぶりですね、グラジオ坊ちゃん。それからリーリエお嬢様も。」

 

その人物とはエーテル財団の幹部にして支部長であるザオボーであった。RR団を従えた状態でリーリエたちの前に姿を現す。それは彼がエーテル財団の人間ではなく、RR団の一員であるということの証明であった。

 

「ザオボーさん……どういうことですか?」

「おや?お嬢様はまだ理解されていなかったのですか?いいでしょう。でしたら教えて差し上げましょう!このRR団は、私が別の世界から呼び出したのですよ!」

 

ザオボーの口から告げられたのは衝撃的な答えであった。これだけの団員たちをザオボー自身が異世界から呼び出したのだと言う。この驚愕な真実にはさすがのグラジオも驚きのあまり目を見開いた。

 

「ど、どういうこと!?」

 

ミヅキがそう問いかける。ザオボーは彼らの驚く顔に愉悦感を抱いたのか、ニヤリと口角を上げ気味の悪い笑みを浮かべながら話し始めた。

 

「あなた方が島巡りをしている間、私は各地よりあるものの回収に励んでいました。そのあるものとはそう、以前このアローラにやってきたUBたちの残した僅かなウルトラオーラの痕跡です。」

 

「ウルトラオーラの痕跡?」

 

誰かがそう呟いた。ザオボーはそんな呟きを気にすることなく話を続ける。

 

「あなた方も知っているでしょう?UBたちは自分たちの世界とこの世界を自由に行き来できます。私はその力に目をつけました。その力さえあれば、別の世界から強力な力を持ったトレーナーを呼び出せるのではないか、と。」

「それがRR団、と言う訳か?」

 

ザオボーはグラジオの問いに対して邪悪な笑みで笑い飛ばしていた。

 

「どうしてこのようなことを!」

「簡単なことです。私の思想のためですよ。」

「ザオボーさんの……思想?」

 

ザオボーの笑みから恐怖を感じたリーリエは緊張から手汗を握り締めてザオボーに問いかける。するとザオボーの口からはまたしても驚きの回答が返ってきた。

 

「この世界のポケモンたちは苦しんでいる。トレーナーに捨てられ、道具にされ、傷付いている。私は多くのポケモンを救いたい。だがそのためにエーテル財団の代表になる必要があります。だからこそ私はルザミーネ代表を失脚させ、エーテル財団を私のものにする!そして!私の手で!ポケモンたちを救うのです!」

 

リーリエたちは開いた口が塞がらない。エーテル財団は元よりポケモンたちの保護を主に行っている団体である。ポケモンたちを救う、と言う目的はエーテル財団と同じである。

 

つまり彼が言っているのはポケモンを救いたい、と言う建前を理由に、ただただ出世欲に溺れているだけの哀れな男なのである。彼の思想にリーリエたちは心から理解できるはず等微塵もない。

 

「あなたたちに理解して欲しいなどと思っていませんよ。あなたたちは邪魔な存在でしかありません。よって私自らの手で!あなたたちを排除させていただきます!」

 

「っ!?来るぞ!」

 

グラジオの一声にリーリエたちも身構える。この一連の騒動の主犯であるザオボー自ら彼らと相手をするためにモンスターボールを手に取った。

 

「フーディン!出番ですよ!」

『フーディ』

 

ザオボーが繰り出したのはねんりきポケモンのフーディンである。フーディンは知能指数が5000を超えるとも言われているポケモンで、全ポケモンの中でもトップクラスに賢いポケモンである。そんなフーディンがザオボーに従っているという事は、相当な手練れであると言うことは言うまでもないだろう。

 

「このまま相手をするのもいいですが、折角です。あなた方に面白いものを見せてあげましょう。」

 

次の瞬間、彼がつけているサングラスがキラリと光を放った。一体なんだと思い見て見ると、その光と同時にフーディンも光り輝き、両者の光が結ばれて強力な光を解き放った。

 

光りが収まると、そこには姿を変えたフーディンがリーリエたちの前に浮かんでいた。そのポケモンは白く立派な髭に5本のスプーンを宙に浮かばせ、まるで仙人を想像させる容姿をしていた。その現象は、リーリエにとってとても見覚えのある現象に酷似していた。

 

「メガ……シンカ!?」

「ほう……メガシンカをご存じとは。流石は旅を続けてきただけはある、と言ったところでしょうか。」

 

これは紛れもなくメガシンカと呼ばれる現象である。ポケモンの姿形だけでなく、能力も大きく上昇した強力で特殊な進化方法だ。研究者の間では進化を超えた進化、とも評されている。

 

メガシンカをしたフーディンは間違いなく強敵だ。彼を倒さなければこの先に進むことなどできそうにない。しかし主犯はザオボーだとしても、黒幕も別にいることはテレビの生放送を通して知っている。ここで戦力を消耗してしまえばルザミーネを救うことはおろか、実力が未知数な黒幕と戦うことも難しい。

 

一体どうすればいいかと悩むリーリエたち。そんな時、エーテルパラダイスに一人の少年の声が響き渡った。

 

「リザードン!かえんほうしゃ!」

「っ!?フーディン!」

 

空からかえんほうしゃによる奇襲がやってくるものの、ザオボーのフーディンはその攻撃をなんなくエスパー技で相殺する。この場にいる誰もが状況を理解できずにいると、リーリエの目の前に二人の少年少女を乗せたリザードンがゆっくりと降り立った。

 

「よ!久しぶり!リーリエ!」

「久しぶりリーリエ!シンジさんと一緒に元気だった?」

「コウタさん!?コウミさん!?」

 

彼らの正体はカントー地方を旅していた時のライバルである双子、コウタとコウミであった。二人はリザードンの背中から降りると、久しぶりにあったリーリエと挨拶を交わし再会を分かち合う。

 

「どうしてお二人がアローラ地方に?」

「俺たちの探し物が終わったからな。シンジさんに挨拶しようと思ったら偶然にもこの場に遭遇した、ってわけだよ。」

「事情はよく分からないけど、リーリエたちが危ないみたいだから偶然にも居合わせてよかったよ。」

 

彼らは大会が終わった時、自分たちが探し求めているものがどこにあるかと言う情報を手にしたため二人で旅に出ていた。それが見つかったと言う報告とサプライズのため、アローラ地方に訪れたのだと言う。

 

彼らがこの場に訪れたのは単なる偶然。しかしその偶然でもリーリエたちにとっては嬉しい誤算である。グラジオはリーリエの友人と見込んで頼み込む。

 

「すまない。時間がないから事情を説明することはできないが、暫くの間でいい。奴の足止めをお願いできないか?」

「そのぐらいお安い御用さ!」

「私たち双子にお任せあれー♪」

 

グラジオの頼みに二人は快く引き受けた。厄介な連中がまた増えたなと、ザオボーは想定外の事態に悪態をついた。

 

「私たちも出番だよ!バシャーモ!」

『バシャア!』

 

コウミは自分の相棒であるバシャーモを繰り出した。カントーリーグの決勝戦を争ったリザードン、バシャーモが今この場に立ち並び共通の敵を相手に闘志を燃やしている。その姿を見たリーリエは、かつてのライバルたちはこれほど頼もしい背中をしていたのかと感心する。

 

「さあ、サングラスのおっさん。あんたの相手は俺たちがするぜ!」

「おっさんではありません!ザオボーです!」

「なんでもいいよ。リーリエたちの敵は私たちの敵!全力で足止めさせてもらうよ!」

『俺(私)たちの新しい力で!』

 

コウタとコウミの腕にはZクリスタルとは異なる腕輪が装備されていた。その腕輪には変わった模様の描かれた丸い石がはめ込まれている。リーリエはその石に見覚えがあり、次の瞬間にザオボーと同じように二人の腕輪、そしてリザードンとバシャーモが光り輝く。

 

光りが解き放たれた瞬間、その場にいたのは口元から青い炎を出している漆黒のリザードン。そして両腕から紅蓮の炎をなびかせ、体が一回り大きくなったバシャーモの姿であった。間違いなくそれはフーディンと同じくメガシンカしたリザードンとバシャーモであった。

 

彼らが探していたあるもの、とはリザードンとバシャーモのメガシンカに必要なメガストーンだったのだ。さらなる高みを目指す彼らにとってパートナーのメガシンカは一つの夢であった。そんな彼らは今夢を現実にし、その強大な力を今ここで解き放ったのだ。

 

「メガシンカ……ですと!?」

 

さすがのこの状況にはザオボーも驚きを隠せない様子だ。今ならば、とグラジオはリーリエたちを先導しRR団たちを蹴散らしながら突破する。

 

「ちっ!半分は私の支援を!もう半分は彼らを追いかけなさい!」

 

予想外の状況だからこそザオボーは冷静にRR団員たちに指示を出す。その指示に従い半分の団員がザオボーの支援に回り、他の団員たちはリーリエたちを追いかける。急いで建物の中に侵入しようと扉を勢いよく開けると、その先の広間では他の団員たちが待ち構えていた。

 

「っ!?囲まれた!?」

 

後ろから追いかけてきた団員たちも含め、リーリエたちは囲まれてしまった。一人一人の戦力が低いとは言え、それでも囲まれた状態でこの数は流石に厳しい。

 

だがこの状況を突破するにはやるしかないとリーリエたちも構える。しかしその時、またもや別の声か彼女たちの耳に入り込んできた。その声は断末魔にも近いRR団員の悲鳴であった。

 

背後のRR団員が次々と蹴散らされて行き、一体何事かと振り向くリーリエたち。そこには如何にも悪そう笑みをした知り合いが立っていたのだった。

 

「ちっ!数だけ揃えて大したことねぇな。こんなんじゃ壊しがいがねぇ。」

「いいじゃないか。久しぶりにこうしてあんたやこいつらと暴れられてあたいは嬉しいけどねぇ。」

「なっ!?あ、あいつは!?」

 

驚きの声をあげたのはRR団員の一人であった。RR団員はアローラの注意人物として彼らのことをマークしていた。リーリエたちのピンチに姿を現したのは、元スカル団のボスにして現アーカラ島しまキングのグズマであった。

 

それに加え同じく元スカル団の幹部であるプルメリ。そしてなんと元スカル団の下っ端たちも集結している。

 

彼らのシャツの裏にはスカル団のシンボルでもあったドクロマークが描かれているが、そのドクロには大きくペンキで×印が記されている。それは彼らがスカル団を解散したと言う証であった。しかしその服を着てこの場に現れたと言うことは、今一度アローラの危機を救う為にスカル団を一時的に再結成した、と言うわけだ。

 

「ふん。勘違いするな。オレ様はアローラで好き放題暴れているこいつらが許せねぇだけだ。」

「ってこいつは言ってるけど、こいつも代表のことが心配で来たんだよ。」

「ちっ!余計な事言ってんじゃねぇよ。」

「グズマさん……」

 

昔からグズマのことを知っているハウ、ミヅキ、ヨウの三人は彼の意外な行動に今日一番の驚きを示した。しかしそれ以上に、彼らが味方になってくれることはなによりも心強いものだと心から感謝する。グラジオもまさかグズマに対して感謝する日が来るなどと思っていなかったが、なんだかおかしくなってしまい小さく笑みを浮かべていた。

 

「リーリエさん!私も来ました!」

「ヒナさん!?」

 

次に姿を現したのはアローラリーグでライバルとして争ったヒナであった。ヒナもまたアローラのピンチにスカル団と協力し、リーリエたちのピンチにはせ参じてくれた一人である。

 

「私も戦います!リーリエさんや他のみなさんと一緒にルザミーネさんを助けたいです!」

「ヒナさん……ありがとうございます!」

 

次々と駆けつけてくれる仲間たちにリーリエはいくら感謝してもし足りず、心からも感謝の言葉を伝え続ける。そんな彼女にプルメリは自分たちの手に入れた情報を伝えると口を開いた。

 

「この先に二つの通路がある。片方にはルザミーネ代表が捉えられている場所へと通じる鍵があり、もう一つの場所には職員たちが捉えられているみたいだ。ここはあたいたちスカル団で食い止める。お姫様たちは二手に分かれて先に行きな。」

 

プルメリの提案に乗っかり、リーリエたちは先に進むことにする。リーリエ、グラジオ、ヒナの三人がルザミーネ救出の為に進み、ミヅキ、ヨウ、ハウの幼馴染組が他の財団員を救出するために進むこととなった。

 

彼らが行ったことを確認したプルメリは、自分の愛する部下たちに大きな声で指示を出した。

 

「あんたたち!久しぶりのスカル団結成だ!思う存分暴れてやりな!あたいたちスカル団の荒々しい戦いを見せてやるさね!」

『おおぉ!!』

 

プルメリの鼓舞にスカル団たちは士気を上げ自分たちのポケモンを繰り出していた。そしてグズマもまた、自分の相棒であるグソクムシャを従えて前にでた。

 

「……さぁ、ぶっ壊してもぶっ壊しても手を緩めなくて嫌われるグズマ様がここにいるぜ。気に入らない奴らは全員、このオレ様が徹底的に破壊してやる!」

 

ここに誰も知らないスカル団とRR団の全面戦争が幕を開けたのであった。




原作でこんな展開になって欲しいなと思っていたことをここで実現

サンブレイク第2弾アプデはいいぞぉ

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