ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》   作:ブイズ使い

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レインボーロケット団編となります。本編と違いリーリエは本格的にバトル可能なので内容も異なることになるかと思います。

今回はプロローグ回なので、本番は次回から。多分あんまり長く続けないと思いますが、お付き合いのほどよろしくお願いします。


RR団編
束の間の平和、新たな災厄の訪れ


アローラリーグが盛り上がりを見せている一方、エーテルパラダイスの地下にてある実験が執り行われていた。

 

そこにいたのは緑のソラマメに似た大きなサングラスが特徴的な一人の研究員。その研究員は目の前にあるモノを見つめ目を見開き、感動のあまり歓喜の声をあげていた。

 

「ついに……ついに完成した!これで……これで私は今よりも出世することができるはずです!」

 

研究員の男が自分の膨れ上がった野望を夢見て高笑いを地下室に響かせる。その声を聞いている者は誰もおらず、ただただ彼の野望が刻一刻と人知れず進行していくのであった。

 

この話はある一人の男による身勝手な野望がアローラ全土を混乱へと陥れてしまうもう一つの物語である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は流れ、アローラリーグで優勝し、シンジとの約束の戦いを無事果たすことができたリーリエ。数週間が経過し、暫くは旅の疲れを癒すためククイの研究所で以前使用していたロフトを再び借り住まわせてもらっていた。

 

「おはようございます……」

 

リーリエはロフトから起き、寝覚めの覚醒しきっていない状態のまま家主であるククイに挨拶する。しかし研究所はいつもよりも静かで、誰かの返事が返ってくることはなかった。

 

「あっ、そう言えば今日は空間研究所にお仕事で出かけるとおっしゃってましたね。」

 

リーリエは昨日の会話を思い出す。ククイは朝早くから空間研究所の所長であり、自身の配偶者でもあるバーネットと仕事があると言うことで出かけている。そのため朝ごはんの用意はされていなかった。

 

なら今日は自分が作る必要があると、リーリエは台所に向かった。旅の中である程度料理も覚えることができたので、日常生活でも旅の経験は生きていることに感慨深く感じている。

 

リーリエは慣れた手つきで朝ごはんを作っていく。と言っても朝から重い食事は胃袋によろしくないため、パンとサラダ程度の軽食で済ませることにする。

 

食事の準備を終えたリーリエはリビングに座りテレビをつける。何か気になる番組はないだろうか、と順番に番組を切り替えていくと、そこにはリーリエにとって身近な人物たちが映っていた。

 

真ん中には彼女の母親でありエーテル財団代表を務めているルザミーネ。向かって右側には代表秘書であるビッケが立っていた。そして向かって左側には、幹部であり支部長も務めているザオボーがいた。一見無表情なザオボーだが、彼の顔にはどことなく裏を感じさせる怪しさが見え隠れしている。

 

どうやらエーテル財団に対しての取材の生中継が行われているようだ。番組のタイトルを見る限り、エーテル財団が新しく開発する予定の商品に関する取材のようだ。カメラは代表であるルザミーネを中心に映しており、彼女はインタビューにいつも通り冷静に答えていた。

 

リーリエは以前起きた悲劇を思い出しながら、ルザミーネがこうしてインタビューに応じていることに嬉しさを感じテレビを視聴する。ずっとこんな平和な日常を望んでいた、そう心の中で感じながら。

 

しかし現実は非常であり、神は彼女の理想を裏切るかのように崩れ去ってしまった。

 

突然カメラが倒れてしまい、ルザミーネたちの足しか映らなくなってしまった。突然のトラブルに、現場は焦りの声が響き渡っていた。

 

その時黒服のズボンの裾がカメラに写り込み、マイクが男の声を拾うのだった。

 

「お前がエーテル財団代表のルザミーネだな?」

「!?な、なんですの、あなたたちは!」

「悪いが我々の目的のため、お前たちを拘束させてもらう。」

 

そこでカメラは暗転し、テレビ画面には砂嵐が発生してしまう。これはただ事ではない、とリーリエは荷物と自分のポケモンが入ったモンスターボールを手にしてククイの研究所を飛び出した。

 

エーテルパラダイスに向かう前に、彼女はある家に一度出向くことにする。そこはハウオリシティの少し外れに位置するある人物の家。そう、シンジの実家である。

 

リーリエは慌てていたためチャイムを鳴らすことも忘れてしまいシンジの家の扉を乱暴に開けてしまう。突然の出来事に家の中にいたシンジの母親は驚きのあまり目を見開いた。

 

「あらあらリーリエちゃん。そんなに慌ててどうしたの?」

 

来客の正体がリーリエだと知ったシンジの母親は冷静さを取り戻し、どういった用件かリーリエに尋ねる。リーリエは肩で息をしながら、彼女にある質問を問いかけた。

 

「はぁ……はぁ……シンジさんはいますか?」

「ごめんなさい。シンジは朝早くから出かけたわ。リーグに用事があるからって……」

「そ、そうですか……。もしシンジさんが戻ってきたらエーテルパラダイスに来て欲しいって伝えてください!」

 

そう言い残してリーリエはシンジの家を後にする。彼女の尋常ならざる様子を見て、何やらただ事ではないとシンジの母親は、リーリエが最も頼りにしている人物に連絡を取ることにするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リーリエはエーテルパラダイスに辿りつく。しかしそこにはいつもいるはずの受付の財団員が不在であった。リーリエはもしかしたら、と嫌な予感から焦りを感じエーテルパラダイスの奥に進む。

 

だがリーリエが奥に進もうとすると、中央に虹色のRが描かれた黒服の人物たちが立ちふさがった。黒服、つまりカメラに少しだけ映り込んだ男の仲間なのであろう。

 

「我々はレインボーロケット団!このエーテルパラダイスは我々が占拠した!それ以上立ち入るのであれば、丁重におもてなしさせていただこう!」

 

ロケット団。リーリエはその言葉に聞き覚えがあった。以前ハナダシティの近辺で戦った彼らのことである。彼らはかつてカントー地方で悪事を働いていた悪の秘密結社、ロケット団である。

 

そして彼らの言う丁重なおもてなしとは間違いなく穏やかなものではない。彼らの言うおもてなしは言葉通りの意味ではないだろう。

 

ロケット団員はざっと100人近い人数が確認できる。リーリエたった1人では全員を相手にするのは困難であることは間違いない。しかしだからと言って、母親のピンチに目をそらすことなど彼女にできるはずもない。

 

「退く気はない、か。ならば例え子どもであろうとも容赦はしない!行け!ゴルバット!」

 

先頭に立つロケット団員はゴルバットを繰り出した。他の団員たちも通常のベトベターやドガース、デルビルやニューラなど、どく、あくタイプを中心としたまさに悪の組織らしいポケモンたちを多数従えていた。

 

これだけの人数差があれば勝てる確率はかなり低くなってしまう。だがここまで来たらやるしかない。リーリエは自分のポケモンが入ったモンスターボールを手に取り覚悟を決める。その時であった……。

 

「シルヴァディ!マルチアタック!」

『シヴァア!』

 

リーリエの横を銀色のポケモンが通り過ぎ目の前のゴルバットを一瞬で吹き飛ばした。一瞬の出来事で何が起こったのか理解できなかったリーリエだが、それだけで終わることはなかった。

 

「アシレーヌ!うたかたのアリア!」

「ガオガエン!DDラリアット!」

「ジュナイパー!かげぬいー!」

『シレーヌ!』

『ガオウ!』

『ジュパァ!』

 

リーリエが唖然としている中、次々とロケット団のポケモンたちが倒れていく。この攻撃は、とリーリエがハッとなり振り向くと、そこには彼女の見知った4人の人間が立っていた。

 

「リーリエ、一人で突っ走るな。」

「やっほーリーリエ!助けにきたよ!」

「俺たちも忘れてもらったら困るな。」

「リーリエを傷つけたら許さないよー!」

 

そこにいたのはリーリエの兄であるグラジオ、しまクイーンの一人であるミヅキ、そしてアローラリーグを共に勝ち上がったヨウ、ハウであった。彼らもまたルザミーネたちを助けるために立ち上がった戦士である。

 

これ以上心強い味方はそうはいない。リーリエは援軍として駆け付けてくれたみんなに感謝し、自分も戦わなくてはとモンスターボールを投げた。

 

「お願いします!シロン!」

『コォン!』

 

リーリエは自分の相棒であるシロンを出した。そしてリーリエ、グラジオ、ミヅキ、ヨウ、ハウの5人は横に並び、レインボーロケット団たちに正面から対峙した。

 

「みなさん、力を貸してください!お母様を……エーテル財団を救いましょう!」

『ああ!!』

 

リーリエを筆頭としたウルトラガーディアンズがレインボーロケット団と戦うため再始動する。彼女を中心とした戦いが再び幕を開けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方そのころ――

 

ラナキラマウンテン頂上、アローラリーグにて。複数の足音がアローラリーグの会場まで迫ってきているのがある少年、チャンピオンであるシンジの耳に入ってきた。

 

「……はぁ、珍しいお客さんだね。」

 

シンジにしては珍しく大きな溜息が出ていた。現れたのは数多くのロケット団員。シンジを囲むようにロケット団員たちがフォーメーションをとる。

 

「胸元にRのマーク……ロケット団?」

「お前がチャンピオンだな?悪いがお前には我々の目的のためにここで足止めさせてもらう!」

 

シンジは先ほど母親から連絡をもらい、すぐにでもエーテルパラダイスに向かおうとしていた。しかし彼らはアローラ地方で最も厄介な人物であるチャンピオンの足止めをするため動き出していた。どうやら彼らに先回りをされてしまい、先手を打ってきたようである。

 

「すぐにでもエーテル財団に向かいたいところだけど……これだけの人数を相手にするとなると難しいね。全く……こんなに大勢で押しかけるなんて、礼儀を知らない大人たちだね。」

 

 

周囲を見渡すとまるでバトルロイヤル予選でも行われるのではないかと言う大人数が集まってきている。さすがのシンジと言えど、これだけの人数を相手にするのは骨が折れる作業である。

 

だがこうなってしまった以上仕方がない、とシンジは深呼吸して気持ちを落ち着かせる。覚悟を決め、シンジは自分のモンスターボールを手に取りロケット団員たちと向かい合った。

 

「チャンピオンとして、チャレンジャーの挑戦を拒むことはしない。全員纏めて相手になるよ!」


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