ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》   作:ブイズ使い

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アローラ!明るい未来へ!

シンジとリーリエの激闘を終え、無事にアローラリーグの閉会式を迎えることができた。そして現在、閉会式を終えた一同は盛り上がりを見せている閉会式後の打ち上げパーティに参加していた。

 

参加メンバーはアローラリーグに出場登録していたトレーナーの面々に加え、四天王やしまキング、しまクイーンの人たち、更にスタッフとしてエーテル財団も参加している。リーリエたちもまた、アローラリーグの感想を語り合いながらパーティを楽しんでいた。

 

「それにしても、シンジとリーリエの戦いはすごかったな。」

「はい!私すごく感動しました!チャンピオンをあそこまで追い詰めるなんてリーリエさんすごいです!」

「うー///そ、そんなに言われるとさすがに恥ずかしいんですけど///」

 

ヨウとヒナが率直に感想を口にすると、リーリエは顔を赤くしてあからさまに照れた表情を見せている。バトルの際は真剣に戦っており、自分たちも二人の世界に入り込むほど楽しんでいたのだからほとんど気にならなかったのだろうが、改めて公の前で戦っていると考えるとまた違った感覚になるのだろう。

 

「見て見てー!ここの料理、どれもすっごくおいしーよー!」

「いや、お前は相変わらずぶれないな……」

 

マラサダがないことに少し残念だと言っていたハウだが、それでも食欲旺盛なのは変わらないようで今でも会場に置かれている様々な料理に手を付けている。どんな時でも変わらない幼馴染の姿にヨウは呆れにも似た溜息をついていた。

 

「あれ?そう言えばチャンピオンは?」

「ああ、シンジならあそこだ。」

 

ヒナの疑問にグラジオが指を指して答える。その先には多くの取材班が押しかけて今回のアローラリーグについての感想などを取材していた。これだけ大盛り上がりのアローラリーグであれば話題性も十二分すぎるであろう。シンジもその取材の対応で忙しいようだ。

 

「残念だが、シンジに声をかけることは無理だな。」

「そう……ですね……」

「…………」

 

グラジオに言葉にリーリエは残念そうに表情を曇らせる。本人自体チャンピオンと言う関係上分かってはいたことだが、少しだけでも彼と話がしたかったと内心では思ってしまう。そんな妹の顔をグラジオは何か考える素振りをしながら見つめていた。

 

「……少し、試してみるか。」

「お兄様?なにかおっしゃいましたか?」

「いや、何でもない。」

「そう、ですか?」

 

リーリエの問いかけにグラジオは首を横に振って答える。その後、少し用事ができたとグラジオはその場から立ち去った。どうしたのかと気になるリーリエだが、あまり踏み込むと兄の機嫌を悪くしてしまうと思いこのままパーティを楽しむことにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パーティが始まってからかなりの時間が経過し、お開きの時間が近付いてきた。パーティを切り上げ自分の部屋に戻る者もちらほら見受けられ、会場内の人口も少しずつ減少してきていた。

 

そんな時、ある人物がリーリエに歩み寄り彼女に声をかける。

 

「リーリエ。」

「お母様?」

「どう?パーティは楽しかった?」

 

その人物はエーテル財団の代表であり彼女の母親でもあるルザミーネであった。

 

ルザミーネはパーティの感想をリーリエに尋ねる。リーリエは「楽しかった」と答えてはいるものの、どこか煮え切らない様子であった。母親であるルザミーネにはその原因は当然分かり切っていた。

 

「リーリエ、アローラリーグ優勝者にはもう一つ報酬があるって知ってるかしら?」

「もう一つ、ですか?」

 

優勝トロフィーに加え、シンジとの対戦まで叶ったのにも関わらずそれ以上に何かを貰えるのが不思議だと感じるリーリエ。そんな彼女に、ルザミーネは一つのメモを渡した。そのメモに書いてある内容を見て、リーリエは目を見開いて驚いた表情を見せた。

 

「お、お母様……これって……」

「行ってきなさい。今の貴女にとって必要なものがそこで待ってるから。」

「は、はい!ありがとうございます!」

 

ルザミーネの言葉に満面の笑みを浮かべてその場を走り去っていくリーリエ。そんな彼女を見て状況が把握できないでいるヒナたちだが、彼女たちに近付く影が背後から見えていた。

 

「はぁ……全く、貴方も大概不器用ね、グラジオ。」

「俺には少し荷が重いからな。それにこれに関しては俺よりも母さんの方が適任だ。」

 

その人物とはルザミーネに息子でありリーリエの兄でもあるグラジオであった。どうやら一連の策を考えたのはグラジオのようである。相変わらず普段の言動に反して控えめなグラジオに、ルザミーネは我が息子ながらと苦笑しながらため息をついた。

 

「まぁ、いいわ。それにあの子にとってはいい機会かもしれないからね。」

「ああ、いつまでも奥手なあいつにとってはいい薬だ。」

「そうね、あの子たちはどちらも奥手だからね。でもそれを貴方が言うの?」

「……?」

 

グラジオの言葉に賛同しながら、理解してない反応を示す彼に対して二度目の溜息をつく。「手間のかかる子どもたちね」と、ルザミーネを今はいない父親の姿を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リーリエは財団が用意したヘリコプターで目的の場所へと向かった。操縦士にありがとうと頭を下げながら、目的地へと足を踏み入れた。その先には、とある人物が空を見上げている姿が目に映った。

 

「……今日の月、綺麗な満月だね。」

 

リーリエが来たと分かった時、その人物は空に浮かぶ満月に笑顔で感想を呟いた。リーリエはその人物の言葉を聞き、彼の名前を口にするのだった。

 

「そうですね……シンジさん。」

「アローラ、リーリエ。来てくれたんだね。」

 

リーリエを待っていた人物はシンジであった。彼女の呼びかけにシンジが挨拶すると、リーリエも「アローラ」と返答する。

 

「あのメモ、やっぱりシンジさんのだったんですね。」

「ああ、気付いてくれてたんだ。」

「もちろんですよ!だって、この場所は……」

 

その手紙に書かれていた内容とは、「ナッシーアイランドに来てほしい」と言うものであった。その一言だけでシンジが誘ってくれたのだという事が分かった。何故ならここは二人にとって始まりの約束をした場所でもあるのだから。

 

最もキッカケを作ってくれたのはグラジオなので、シンジはチャンスを作ってくれた彼に心の中で感謝する。

 

「リーリエ、君は僕との約束を守ってアローラリーグの頂点まで来てくれた。改めて感謝するよ。君とのバトルは今までの中でも最高だったから。」

「いえ!私の方こそシンジさんの事を目標にここまで来ることができました。それに、あなたが居なければ私はトレーナーになることはおろか、ポケモンバトルを楽しむこともできませんでした。こちらこそありがとうございます。」

 

シンジとリーリエは互いに謙遜し合いながらも感謝していることになんだかおかしくなり笑い声が零れていた。それと同時に、今まで彼らは自分たちが共に経験したことを鮮明に思い返していた。

 

初めて二人が出会ったアローラ地方。不思議な能力を持ったほしぐもちゃん。グラジオやミヅキ、多くのアローラ地方の人々との出会い。ルザミーネとの戦い。そしてカントー地方へと旅立つための別れも経験した。

 

それから2年が経過し、シンジとリーリエはカントー地方で再会し、リーリエはポケモントレーナーとしての一歩を歩み出した。アローラ地方にはないポケモンジム巡りを開始し、敗北することもありながらも諦めることなくシンジと共に歩み続けた。彼のような強いトレーナーになりたくて、彼の背中に追いつきたくて、背中を任せてもらえるような人間になりたくて。

 

ジム巡りを達成しカントーリーグへと出場。そこで強力なライバルたちと激しいバトルを繰り広げ、惜しくも優勝を逃してしまったが様々な経験を味わうことができて彼女はトレーナーとしても大きく成長することができた。その後アローラ地方へと帰還し、再び出現したUBとの戦闘の中で彼女は過去を乗り越えた。

 

島巡りが始まり、彼女は全ての島の試練、大試練に挑戦し突破してアローラリーグに出場。シンジと交わした約束を果たすため、目標へと近付くためにアローラリーグ優勝を達成した。そして先ほどその約束のバトルを果たし、二人は今この場に立っている。

 

「リーリエ。」

「はい、なんでしょうか?」

 

改めてリーリエに呼びかけるシンジ。シンジに問いにリーリエも昔を懐かしみながら返答する。

 

「今日、君をここに呼んだのは……大切な話があるからなんだ。驚かないで聞いて欲しい。」

「え?は、はい……」

 

改まって突然どうしたのだろうかとリーリエは疑問に思う。普段の頼もしく凛とした彼からは想像できないほど、彼が感じている緊張や不安と言った感情は自分にも伝わってくる。

 

それほど言いにくいことなのか、と思っていると、彼が突然膝をついてリーリエを見上げた。

 

リーリエは突然の出来事に驚きを隠せない。しかし普段の彼から想像できないような行動を目にしてからも、彼の眼から視線を逸らすことができなかった。いや、逸らしてはいけないような気がしていたのだ。

 

シンジはゆっくりとリーリエの手を取る。リーリエはドキッとしながらも、彼の瞳を見つめ続ける。すると彼から告げられた言葉は、彼女の想像を超える内容であった。

 

「リーリエ……僕と結婚を前提として付き合ってほしい。」

「え?え?」

 

リーリエはその言葉に思考が一瞬停止した。それはまるで以前少女漫画で見たかのような内容だったからである。

 

一人の乙女であれば男性からの告白は憧れるシチュエーションである。それも意中の相手からのプロポーズであれば尚更である。

 

リーリエも当然例外ではない。ましてや相手は彼女も慕っているシンジである。しかし彼はチャンピオン。果たして自分で釣り合いがとれるのだろうかと悩んでしまう。

 

リーリエはシンジの瞳を改めて見つめなおす。彼の瞳もまた真っ直ぐ、リーリエのことを見つめていた。それに暗くてはっきりと確認できないが、彼の頬もほんのり赤くなっているようにも思える。恐らく彼もこの言葉を告げるために相当な覚悟をしてきたのだろう。

 

だったら私も応えなければならないと、リーリエも自分の覚悟と答えをそのまま口にするのだった。

 

「……はい!私でよければ、よろしくお願いします!」

 

リーリエはハッキリとそう答えた。彼女に瞳からは嬉しさからか、それとも緊張した反動からなのか、涙が頬を伝っていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――そして時が過ぎ――

 

『それではこれより!アローラリーグ優勝者とのチャンピオンバトルを始めます!まずは挑戦者の入場です!』

 

「お母様。この勝負、どちらが勝つと思いますか?」

「どうでしょうか。チャンピオンさんは今まで私が見たトレーナーの中でもトップクラスの実力者ですが、挑戦者も相当の実力者です。それは貴女も分かっていますよね。」

「はい!じゃあ私は二人とも応援しますね!」

「ふふ、そうですね。きっと楽しいバトルになると思いますよ。あの時みたいな、楽しいバトルに。」

 

金髪のサイドテールを結んだ髪の少女と、長く綺麗な金髪を風になびかせた落ち着いた雰囲気の女性が優しい瞳と笑顔で会場を見守っている。

 

『それでは続きまして、チャンピオンの入場です!』

 

「あ!チャンピオンが出てきました!」

「そうですね。挑戦者もいい顔になってますね。」

「頑張って下さーい!お兄様ー!お父様ー!」

 

少女の応援を背に受けた二人は、この時を待っていたと言わんばかりに笑顔で向かい合い、自分の信じるポケモンが入ったモンスターボールをフィールドに投げる。

 

女性の左薬指にはめられた指輪が、アローラの暖かい太陽に照らされキラリと輝いていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは不思議な生き物、ポケットモンスターを通じて出会った少年と少女が共に歩み、共に成長し、共に同じ時を歩んでいく“もしも”の物語を綴ったお話である。









王道のハッピーエンドとなりました。

小説を投稿し始めて丁度5年が経過し、ようやく最終話に辿り着きました。これも応援してくれた皆様のおかげでございます!

しかしあくまで本編が終わっただけで他にも書きたいい話は色々あります。RR団編、アルセウス、アニポケ、未来のお話etc

ですのでこれからも末永くお付き合いいただければ幸いでございます。

あっ、因みに昨日は私の誕生日です(だからどうした)

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