ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》   作:ブイズ使い

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今日はユナイトにグレイシアちゃん実装日ですぞ!


アローラリーグ優勝!願いと想いをのせて!

アローラリーグ決勝戦、リーリエVSヨウの二人の試合は白熱した戦いを繰り広げていた。

 

リーリエのチラチーノがスピードスターを決め、ヨウのギガイアスが怯み大きな隙が発生した。その隙を突いてチラチーノがスイープビンタで攻め立てようとした時、ギガイアスが隠していた最終兵器を起動させた。

 

その技はだいばくはつ。自身を戦闘不能にする代わり、大爆発に巻き込んだ相手に致命的なダメージを与える高火力の大技だ。ギガイアスの身を挺した最後の攻撃は、フィールド全域を包み込むほどの衝撃と爆発を発生させ、チラチーノを巻き込んだ。

 

しばらくしてようやく爆発が収まりフィールドの状況が明らかとなる。そこにはだいばくはつを使用し戦闘不能となったギガイアスと、だいばくはつに巻き込まれて同じく目を回して倒れているチラチーノの姿があった。さすがにあれ程の爆発に巻き込まれてしまえば一撃だけで一溜りもなかっただろう。

 

『ぎがぁ……』

『ちら……ちぃ……』

「ギガイアス、チラチーノ、共に戦闘不能!」

「ギガイアス、最後までありがとう。助かった。あとはゆっくり休んでくれ。」

「チラチーノさん、戻ってください。ごめんなさい、私のミスです。ですがあなた達の戦いは決して無駄にはしませんから!」

 

戦闘不能となったパートナーをモンスターボールに戻すリーリエとヨウ。今のバトルは戦況がかなり不利だったヨウにとってギガイアス1匹で2匹のポケモンを倒したため大きな結果となったが、リーリエにとっては手持ちの数を五分まで戻されてしまったので結果的に振り出しに戻ることとなった。

 

(お互いに残りポケモンさんは3体。シロンはダメージを受けていないので私の手持ちも体力はフルで残っていますが……。)

 

有利な状況は一気に覆されてしまったのはかなり痛いと、リーリエは思いがけない事態に焦りを感じる。次のポケモンは誰を選出するかを考えていると、先にヨウが動き出し手にしたモンスターボールを投げる。そこから飛び出してきたのは……。

 

『ガオォウ!』

「っ!?」

 

ヨウが繰り出したのはまさかのガオガエンであった。このタイミングで彼のエースであるガオガエンが出てくるとは思わなかったため、リーリエは予想外の選出に驚き目を見開いた。

 

「……シロン!もう一度お願いします!」

『コォン!』

 

対してリーリエが繰り出したのは先ほどサンドパンを倒したシロンであった。リーリエが優勢になっていたのも束の間、ギガイアスの活躍によって再びバトルが五分の状態へと戻された。果たして今度はどちらが有利に立ち回ることができるのか、観客たちからの注目が集まる瞬間である。

 

「シロン!こなゆきです!」

『コン!』

「DDラリアットで防御だ!」

『ガォウ!』

 

先制でシロンがこなゆきによる地面を凍らせながら攻撃する。その攻撃をガオガエンはDDラリアットで弾いて防ぎつつ、自身の纏う熱で地面を凍らせた氷を溶かしていく。さすがにヨウのガオガエンともなれば小細工は一切通用しないようだ。

 

「であれば!続けてれいとうビームです!」

『コォン!』

「ガオガエン!かえんほうしゃ!」

『ガアウ!』

 

れいとうビームとかえんほうしゃがフィールド中央でぶつかり合う。氷と炎の相反作用によって蒸発し、お互いの視界を奪ってしまう。

 

「くっ、ニトロチャージだ!」

『ガオウ!』

 

ガオガエンは燃え盛る炎を纏いながら視界を遮る蒸気を振り払いながら一直線に突っ込む。しかしそこにはすでにシロンの姿は見当たらず、ガオガエンの攻撃は空振りに終わった。

 

「っ!上か!」

「シロン!ムーンフォースです!」

『コォン!』

『ガウッ!?』

 

ガオガエンの攻撃を読んでシロンはジャンプして躱し、空中からムーンフォースを叩きこむ。ガオガエンは急所に当たらないよう腕をクロスさせて防御するも、シロンの大技による一撃にノックバックス、大きなダメージは免れなかった。

 

「続けてこおりのつぶてです!」

『コン!コォン!』

 

着地したシロンはこおりのつぶてで連続攻撃を仕掛け畳みかける。隙のできたガオガエンは回避行動に移ることができなかったため、シロンのこおりのつぶてを受け止めようと判断する。

 

「ビルドアップ!」

『ガオウッ!』

 

ガオガエンはビルドアップで筋力を増大させ、こおりのつぶてをその身で受け止める。ビルドアップは攻撃、防御を上げる技であるため、こおりのつぶてによるダメージを軽減させると同時に自身の攻撃能力を高めたのである。

 

「今度はこっちの番だ!ガオガエン!ニトロチャージ!」

『ガウゥ!』

 

ビルドアップによってこおりのつぶてを防御したガオガエンは、再び体に炎を纏ってシロン目掛けて突進する。先ほどのニトロチャージは使用するほど素早さが上がる技であるため、先ほどよりも更に素早さが上がっており、みるみるとシロンとの距離を縮めていく。

 

シロンはガオガエンの攻撃を回避するが、途中でガオガエンがブレーキを掛け振り向き、再度ニトロチャージで畳みかけてくる。更に素早さが上昇したニトロチャージは比べ物にならないスピードでシロンに迫り、シロンは連続で避けることができずにニトロチャージによって打ち上げられてしまう

 

『コォン!?』

「っ!?シロン!」

「まだまだ!DDラリアット!」

 

ガオガエンは続けてDDラリアットの構えに入る。ガオガエンのDDラリアットがシロンの落下地点を捉え、シロンは続けざまにガオガエンの攻撃で追加ダメージを受けてしまう。ビルドアップによる攻撃力上昇も加え、シロンが受けたダメージはかなりのものとなっている。そろそろ限界も近いだろう。

 

「シロン!ムーンフォース!」

『コォン!』

『ガォ!?』

 

限界が近いはず。それなのに立ち上がってムーンフォースによる反撃をしてきたことに対して驚くガオガエン。回避することができずその攻撃が直撃してしまいダメージを負う。

 

「っ、かえんほうしゃ!」

『ガオウ!』

『コォン!?』

 

ムーンフォースを受けても怯むことなく、ガオガエンはかえんほうしゃによって更なる反撃を加える。シロンもさすがに避ける体力は残っておらず、かえんほうしゃの炎に飲み込まれてしまった。

 

こおりタイプのシロンに対してほのおタイプのかえんほうしゃは効果が抜群である。限界まで削られ耐えていたシロンであったが、とうとう限界が訪れ力尽きてしまい目を回していた。

 

『こぉ……』

「キュウコン!戦闘不能!」

「シロン、お疲れさまでした。ゆっくり休んでください。」

 

相性の悪い相手にも最後まで頑張って戦ってくれたシロンを労いモンスターボールへと戻す。優勢だったがヨウの健闘で戦況が覆り、残るポケモンは2体と立場が逆転してしまったリーリエ。次はどのポケモンで行くかと考えていると、1つのモンスターボールが揺れて勝手に開きポケモンが飛び出してきた。

 

『ピィ♪』

「ぴ、ピッピさん!もう、また勝手に出てきて……」

 

いつも通り勝手に出てきてしまったピッピ。状況を理解しているのかしていないのか、ピッピは笑顔で振り向きその小さな体をポンッと叩く。

 

「え?私に任せろ……ですか?」

『ピッピ♪』

 

ピッピはどうやら自分にまかせてほしいと言っているようだ。いつもは遊び感覚で出てくるピッピだが、その時は必ず大きな活躍をして戻ってくる。ならば今回もピッピに任せ、自分は彼女のことを信じようと決める。

 

「分かりました……。ピッピさん!お願いします!」

『ピィ!』

 

ヨウにとってはピッピの力は未知数だ。小さいからと言って一切油断のできる相手ではない。ヨウはガオガエンと共に最後まで気を引き締める。

 

「ガオガエン!ニトロチャージ!」

『ガォウ!』

 

ガオガエンは素早い動きでピッピに襲い掛かる。しかし小柄でシロンよりも小回りの利くピッピは、ガオガエンの攻撃を軽々と避けていく。身のこなしの良さにヨウは感嘆の声をあげた。

 

「くっ、ならDDラリアット!」

『ガオウッ!』

 

今度はDDラリアットに変更し攻撃するガオガエン。回転しながら近接攻撃を仕掛けるDDラリアットであればニトロチャージよりも避ける隙が少ない。これならば、とヨウは確信を得ていた。しかし……。

 

『ピィ♪』

『ガゥ!?』

 

しかしピッピはガオガエンのDDラリアットを回避し、その上唯一の攻撃範囲外とも言える箇所、頭部にめざましビンタを命中させた。DDラリアットの勢いも作用し、通常よりもダメージが大きくなってガオガエンに襲い掛かる。

 

「なっ!?ガオガエン!かえんほうしゃ!」

『ガオッ!』

「ピッピさん!ムーンフォースです!」

『ピッピ!』

 

ガオガエンは痛みに耐えながらかえんほうしゃを繰り出した。ピッピはその攻撃を回避し、ムーンフォースで反撃する。かえんほうしゃが空振りに終わり隙が生じたガオガエンに、ピッピのムーンフォースが命中。ピッピのムーンフォースによってガオガエンは吹き飛び、場外で目を回し倒れるのだった。

 

「ガオガエン!?」

『がお……』

「ガオガエン!戦闘不能!」

 

ガオガエンが戦闘不能となり、ピッピは無傷のままお互い2体となる。リーリエが優勢と思ったらヨウが逆転し、さらにリーリエが再び追いついた。予想不可能な熱い展開に観客たちはさらにヒートアップして興奮の歓声をあげる。

 

ヨウはガオガエンがこうもあっさりいなされるとは思っていなかったのか、悔しそうな表情をする。しかし一方、他には類を見ない強敵であるピッピに、感情が昂っていくのが感じられる。

 

「ピッピさん、よく頑張りましたね。」

『ピィ♪』

 

自分の足元まで歩み寄ってきたピッピの頭をリーリエは撫でる。リーリエの手の温もりに安心感を抱いたピッピは、嬉しさからいつもの愛らしい笑顔を浮かべていた。まるで今熱いバトルをしたポケモンとは思えない光景だ。

 

思いのほか身のこなし力の高いピッピに対して次のポケモンを選択する。そしてヨウはそのポケモンに思いを託し、フィールドに投げるのだった。

 

「頼むぞ!ウォーグル!」

『ウォー!』

 

ヨウが選出したのは彼の持つひこうタイプのポケモンであるウォーグルであった。空からの奇襲性、機動力でピッピに対抗しようという算段なのだろう。

 

「ピッピさん、またお願いできますか?」

『ピッピ♪』

 

リーリエの言葉にピッピは笑顔で頷いた。本当はあまり戦わせたくないのが彼女の本音だが、一体を残して勝てるほど甘い相手ではないのはよくわかっている。だからこそ彼女はピッピに改めて続投のお願いをしたのである。

 

「ピッピさん!ムーンフォースです!」

『ピィ!』

「ウォーグル!」

『ウォオ!』

 

開幕から放たれるピッピのムーンフォースを、ウォーグルは空高く飛び上がることで回避する。ピッピはムーンフォースで狙いをつけるも、中々狙いが定まらずピッピのムーンフォースは空振りする。

 

「ウォーグル!ぼうふう!」

『ウォー!』

『ピィ……』

 

ウォーグルはピッピの攻撃を躱すと、激しい風を起こしてピッピへと襲い掛かる。ピッピはウォーグルの攻撃を耐えるも、強力なぼうふうに耐えるのが精いっぱいのようだ。

 

しかし攻撃を耐えたところでピッピの攻撃は宙を自由に舞うウォーグルを捉えることができない。このままではやられてしまうのも時間の問題である。ならばここは賭けるしかない、とリーリエはピッピのあの技に賭けることにした。

 

「ピッピさん!ゆびをふるです!」

『ピィ!』

 

ピッピの得意技、ゆびをふる。全ての技からランダムで選ばれ、その技をピッピが使用する特殊な技である。ピッピは規則正しい振り子でゆびをふるを使用する。ヨウはこのままではマズい気がする、とゆびをふるが決まる前に動いた。

 

「っ、ウォーグル!ブレイブバード!」

『ウォッグ!』

 

ウォーグルは低空飛行で接近し、翼を広げてブレイブバードの態勢に入った。ひこうタイプの技の中でもトップクラスの威力を持つブレイブバードは、みるみるとピッピとの距離を縮めていく。これで勝負あったか、と誰もが思った次の瞬間、ピッピの体が光りウォーグルの視界を奪った。するとウォーグルの目の前にはピッピの姿が無かった。

 

「なっ!?一体どこに……。」

 

周囲を見渡してもピッピの姿が見えない。焦ってピッピを探すヨウだが、観客たちの驚いた声に反応してヨウはその視線の先、空を見上げた。するとそこには驚きの光景があった。

 

「なっ!?と、とんでる!?」

『ピッピ♪』

 

ピッピのゆびをふるで発動した技はそらをとぶ。本来であればこの技を覚えるのはひこうタイプのポケモンばかりだが、ゆびをふるであればランダム性があるとは言え発動自体は可能である。今回はピンポイントで引き当てたところを見ると、やはりピッピは何かを持っているのであろう。

 

「……っ、ピッピさん!そのままウォーグルさんを追いかけてください!」

『ピィ!』

 

空を飛び距離を離そうとするウォーグルを追いかける。ピッピは空を飛ぶことを楽しんでいる様子だが、対するウォーグルは焦って距離を離そうと更にスピードを上げる。

 

「ピッピさん!ムーンフォースです!」

『ピィ♪ピッピ!』

 

ピッピはムーンフォースでウォーグルを攻撃する。同じく空を飛び先ほどまでとは違って距離も縮まったため、ウォーグルは避けきることができず背中にムーンフォースが直撃する。

 

「くっ、まさか空中戦でウォーグルが苦戦するなんて……。ブレイククロー!」

『ウォグ!』

「ピッピさん!めざましビンタです!」

『ピィ!』

 

ブレイククローで自分の得意な接近戦に持ち込もうとするウォーグル。ピッピはめざましビンタで対抗するも、やはり力ではウォーグルの方が勝っているため、めざましビンタを弾いてブレイククローがピッピに命中する。

 

その衝撃でそらをとぶの効果が切れ、ピッピは空から落ちていく。ヨウは今がチャンスだ、と一気に畳みかけてフィニッシュを決めにかかった。

 

「ウォーグル!ぼうふうだ!」

『ピィ!?』

 

ウォーグルのぼうふうがヒットし、ピッピはそのまま真っ逆さまに地上まで叩き落とされた。

 

「ピッピさん!?」

 

真っ逆さまに落ちるピッピを心配し、リーリエは急いで落下地点に向かいピッピを受け止めた。

 

「ピッピさん、大丈夫でしたか?」

『ピィ……♪』

 

今の戦いで傷付いてしまったピッピだが、ピッピはどこか満足した様子で笑顔を浮かべていた。ガオガエンを倒し、その上ウォーグルと接戦を繰り広げたのだから戦果としては充分すぎるほどである。

 

「ピッピ、戦闘不能!」

 

リーリエが受け止めたことでピッピは戦闘不能の扱いとなってしまう。これ以上戦わせるのは忍びないので、リーリエとしては問題はなかった。しかし、遂にリーリエの手持ちは一体となり先に追い詰められる形となった。

 

観客たちは訪れたクライマックスにさらなる歓声をあげる。リーリエの残るポケモンはあのポケモンのみ。ここから巻き返して逆転優勝を狙うことができるのか。それともヨウがこの調子で勝利を掴むのか。これからの熱い試合展開に観客だけでなく、四天王たちからも期待の眼差しが向けられていた。

 

「……最後はあなたに託します。カイリューさん!お願いします!」

『バオォウ!』

 

カイリューの大きな咆哮が会場全体を揺らす。その途方もない威圧感に、ヨウとウォーグルに緊張感が走る。間違いなく彼女のパーティの中で最強クラスのポケモンであると感じたためである。

 

「……行くぞ!ウォーグル!」

『ウォー!』

 

ウォーグルは再び羽ばたき空を飛ぶ。対してカイリューはウォーグルを視界に入れたまま、視線によるプレッシャーを与えていく。

 

先ほどまで騒がしかった会場も一瞬の静けさが訪れる。カイリューから放たれるプレッシャーと、二人の間に広がる緊張感が観客たちにも感じられるためだ。誰かの喉がゴクリと鳴る。

 

「っ!?ウォーグル!ブレイブバード!」

『ウォー!』

 

ウォーグルはブレイブバードで速攻を仕掛ける。接近してくるウォーグルに、カイリューは身構えて正面から受け止める構えを取る。

 

ウォーグルのブレイブバードがカイリューの直撃する。……と思いきや、ウォーグルの翼をカイリューが抑えつけ受け止めたのである。これにはヨウも驚き目を見開いた。

 

「カイリューさん!アクアテールです!」

『バォウ!』

『ウォッグ!?』

 

カイリューは受け止めたウォーグルをアクアテールで吹き飛ばす。想定外のダメージに驚くも、ウォーグルは反撃の攻勢にでた。

 

「くっ、ブレイククロー!」

『ウォオ!』

「カイリューさん!しんそくです!」

『バウゥ!』

『ウォッ!?』

 

ウォーグルはブレイククローで反撃に出ようと態勢を整える。しかし攻勢に出る前に、ウォーグルの目の前にカイリューが文字通り神速で現れた。一瞬の隙を突いたカイリューの攻撃がウォーグルの体を地面に叩きつける。

 

『うぉ……』

「……ウォーグル、戦闘不能!」

 

ウォーグルはこれ以上羽ばたくことができず、地面に這いつくばってしまう。ククイの判断で戦闘不能となり、一瞬の出来事に観客たちは驚愕のあまり声がでないでいた。

 

「……ウォーグル、戻ってくれ。よく頑張ったな。最後は任せてくれ。」

 

ウォーグルが力尽き、ヨウも残るポケモンは最後の一体。ガオガエンを失った今、ヨウの手持ちをリーリエは知らない。ヨウは最後のポケモンに願いを込め、このバトルの結末を託す。

 

「……これが俺の秘密兵器だ。行け!ジャラランガ!」

『ジャラァ!』

 

現れたのはドラゴン、かくとうタイプと言う珍しいタイプのポケモン、ジャラランガである。ジャラランガの咆哮はカイリューのように会場を包み込んで震えが伝わってくる。間違いなく強敵であることがリーリエたちにも伝わってきた。

 

ジャラランガとカイリューはお互いに視線を合わせる。どちらも強敵であることを認識し、睨みつけて両者プレッシャーを与える。

 

ラストバトルが始まったと同時に、動き出したのはヨウとジャラランガだった。しかしその最初の行動は誰もが見ても驚くべきものであった。

 

ヨウは両手をクロスさせ、右腕から流れ出るオーラが彼とジャラランガを包み込む。紛れもなくその行動はZ技であった。

 

ポーズはドラゴンの大きな口をイメージしたドラゴンZ。いきなり大技から来るのかとリーリエ、カイリューは身構える。しかし通常のドラゴンZとは違い、ジャラランガは尻尾から音を鳴らしてダンスを踊り始めた。

 

一体何が始まったのかと戸惑うリーリエ。するとジャラランガは空中へと飛び上がり、両腕のヒレも同時に鳴らし始めた。著感からマズイと感じたリーリエは、カイリューに急いで指示を出した。

 

「っ!?カイリューさん!空ににげてください!」

『バオウ!』

 

カイリューは空に羽ばたいて逃げる。しかしジャラランガのZ技を止めることはできず、それはすでに発動していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ブレイジングソウルビート!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジャラランガ専用のZ技、ブレイジングソウルビートだ。元の技はジャラランガのみが覚える専用技、スケイルノイズであり、Zパワーによって高められた音を鳴らして相手全体に攻撃する大技だ。カイリューはその音波を躱しきることができず、命中して怯んでしまった。

 

するとジャラランガの体を新たなオーラが包み込んだ。ブレイジングソウルビートの追加効果が発動したのだ。

 

ブレイジングソウルビートは使用すると、自身の全ての能力を上げる破格の性能を持っている。そのためヨウが初手からこのZ技を発動したのは、継続してバトルをするために能力を上昇させて有利に戦いを進める為である。

 

「っ、これは……ですが、私たちは負けません!カイリューさん!れいとうビームです!」

『バッオウ!』

「ジャラランガ!ドラゴンテール!」

『ジャラ!』

 

カイリューのれいとうビームがジャラランガを捉えるが、ジャラランガはドラゴンテールでれいとうビームを叩き割る。能力が上昇したジャラランガに対し、当然ながら生半可な攻撃は通用しない。リーリエはいよいよピンチに追い詰められてしまった。

 

「まだです!アクアテール!」

『バオウ!』

「もう一度ドラゴンテール!」

『ジャラァ!』

 

カイリューのアクアテールとジャラランガのドラゴンテールがぶつかり合う。お互いの攻撃力が高いため火花がバチバチと飛び散るが、ジャラランガがアクアテールを弾きカイリューを吹き飛ばした。

 

「っ!?カイリューさん!」

 

カイリューがパワー負けするとは思わず、驚きの声をあげるリーリエ。しかしカイリューはまだ倒れることなく、リーリエの声に答えて立ち上がった。

 

「ジャラランガ!きあいだま!」

『ジャラ……』

「カイリューさん!しんそくです!」

『バオウッ!』

 

ジャラランガはきあいだまを放つ態勢に移行し、カイリューはしんそくでジャラランガに接近する。充分な距離に近付いたとき、ジャラランガはきあいだまを解き放った。

 

しかしジャラランガの一挙手一投足を注意して確認していたカイリューは、ギリギリのところできあいだまを回避した。そしてジャラランガの腹部にしんそくが直撃し、ジャラランガは苦しみの表情を浮かべるもまだまだ倒れることも怯むこともない。

 

「くっ、ドラゴンテール!」

『ジャラァ!』

 

ジャラランガはドラゴンテールで反撃する。カイリューはその攻撃を掴みなんとか防ぐも、次第にジャラランガのパワーに押され気味になってしまう。

 

このままではまた二の前になってしまう、とリーリエは最後にカイリューのあの技を頼るしかないとカイリューに指示を出した。

 

「カイリューさん!げきりんです!」

『……バオウゥッ!』

 

カイリューの眼が赤く光り、カイリューの体を赤いオーラが包み込む。パワーが飛躍的に上昇し、そのパワーでジャラランガを投げ飛ばした。

 

投げ飛ばされたジャラランガは立ち上がり、カイリューの姿を視界に入れる。間違いなく先ほど以上に強力な力を得ていると、ここからはより一層気を引き締める必要があると改めて気合いを入れる。

 

しかしカイリューの使用したげきりんは効果が切れると混乱状態となってしまい、大きな隙が発生してしまう諸刃の剣だ。ヨウのジャラランガを相手にする場合、効果が切れるまでに決着をつける必要がある。紛れもなくリーリエにとってこれは最後の賭けである。

 

「一気に畳みかけます!カイリューさん!」

『バオウゥ!』

 

カイリューはすさまじい勢いで接近する。カイリューとジャラランガはフィールド中央で取っ組み合いとなり、両者自慢の力比べを開始する。

 

しかしジャラランガの能力が上昇したとはいえ、かなりのパワーを有しているカイリューの力が現在げきりんによって更に向上している。結果はカイリューが押し返す形となり、ジャラランガの頭部に頭突きを決めてジャラランガを怯ませた。

 

その隙を突いてジャラランガを突き飛ばすカイリューだが、彼の様子を見てみるとカイリューは肩で息をしているのが分かった。一方的に押しているように見えるが、今までの蓄積ダメージとげきりんによる能力上昇の反動があからさまに出てこれ以上はかなり厳しい状況となってしまっている。

 

しかしそれはジャラランガも同じであり、今の怒涛の連続攻撃により、かなりダメージが見受けられる。だったら攻めるのはこのタイミングしかないと、リーリエは最後の攻撃を開始する。

 

「ヨウさん!」

「リーリエ……」

「これが私たちの全力です!私たちの想い……この技に全て乗せます!」

「……こい!リーリエ!お前たちの全力、俺たちが受け止める!」

 

リーリエはZ技を放つ態勢に入る。使用するZ技はZ技の原点ともいえる基本的な技、ノーマルタイプのZ技である。

 

(私たちの想い……このZ技に全てのせます。)

 

リーリエの気持ちがZパワーを伝ってカイリューに伝わる。カイリューもリーリエの想いを受け取り、全身全霊のZパワーをげきりんと共に解き放った。

 

「これが……私たちの全力です!」

『バオウゥ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ウルトラダッシュアタック!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カイリューの全力であるZ技が今解き放たれた。その攻撃を、ジャラランガも正面から受けてたとうと攻撃の構えに入る。

 

「ジャラランガ!スケイルノイズ!」

 

ジャラランガのスケイルノイズが両腕から振動を引き起こし、その音と振動が実体となって解き放たれる。カイリューの全力であるウルトラダッシュアタックとぶつかり、とてつもない衝撃が会場全体を襲っている。

 

どちらが勝つのか分からないこの状況、あまりの衝撃に観客たちはまともに試合を目にすることができない。次第に会場を白い光が包み込む。もはやこの試合を見ていられるのは戦っている本人たちだけである。

 

刹那、白い光が収まるとそこにはジャラランガの背後に立っていたカイリューの姿があった。どちらもまだ倒れておらず互いに試合の結末を待っているかのようであった。

 

カイリューが先に膝をつく。勝負あったか、と思いきや、先にバタンッと音を立てて倒れたのはジャラランガであった。

 

ジャラランガは目を回して倒れている。対するカイリューは、膝こそついているものの意識はハッキリと保たれている。今のこの光景が、勝者がどちらなのかとハッキリ物語っていた。

 

「ジャラランガ、戦闘不能!カイリューの勝ち!よってアローラリーグ優勝は!リーリエ!」

 

その瞬間、激闘を制し、リーリエのアローラリーグ優勝が決定したのであった。




カイリューの逆鱗が原作とかけ離れてぶっ壊れて、ピッピのポテンシャルが底知れないのはノリと見栄え重視なので……。

そしてブイズのアンケート投票は本日ラストとなります。次回最終結果を発表するのでお楽しみに!ちなみに4匹目に同率が存在していた場合、こちらでランダムに決定させていただきます。

シンジが最終戦で使うブイズはニンフィア、イーブイに加え残り4匹は誰がいい?(投票数の多い順に選ばれます)

  • シャワーズ
  • サンダース
  • ブースター
  • エーフィ
  • ブラッキー
  • リーフィア
  • グレイシア

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