ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》   作:ブイズ使い

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サンブレイクはいいぞぉ!


アローラリーグ決勝開幕!リーリエVSヨウ!

数多の腕が立つトレーナーが参加しているアローラポケモンリーグ。その決勝戦に勝ち上がったのはリーリエ、そしてヨウの二人であった。

 

幼馴染であるヨウとハウ、兄妹でありグラジオとリーリエの激闘は記憶に新しい。そして今、決勝に残った二人がフィールドに立ちお互いに向かい合う。二人の真剣な眼差しを見たヒナは緊張のあまり喉をゴクリと鳴らした。それと同時にこれからどのような激戦が繰り広げられるのだろうかと言う期待も胸の中に湧き上がっていた。強者同士の戦いを楽しみにするのはトレーナーとして当然の感情である。

 

ヨウはリーリエの瞳を真っ直ぐと見つめる。また、彼女の瞳もヨウの瞳を真っ直ぐと見つめていた。その瞳からはお互いに言葉は不要、バトルを通じて語れと言っているようにも思えた。ならば彼女に語り掛ける言葉はないだろうと、ヨウは一度深呼吸をして気持ちを落ち着かせた。対するリーリエも、自分の信じるポケモンが入ったモンスターボールを握り締め、これからの戦いに気持ちを集中させる。

 

今か今かとバトルを待つ二人の間に、審判を務めるククイが立っていた。

 

「決勝の審判はボクが務める。使用ポケモンは両者6体ずつのフルバトル。手持ちのポケモンが全て戦闘不能になったらバトル終了。また、このバトルに勝った者のみが、チャンピオンへの挑戦権を獲得できる。二人とも、正々堂々、悔いのないバトルをしてくれ!」

『はい!』

 

ククイの激励を受け取った二人は大きな声で返事をする。その返答をバトルの準備が整った合図だと判断したククイは二人の顔を交互に見ると、ポケモンを繰り出すように合図をする。

 

「それでは両者!ポケモンを!」

「ピカチュウ!頼むぞ!」

『ピッカァ!』

「お願いします!フシギバナさん!」

『バァナ!』

 

ヨウが最初に繰り出したのは素早さに定評のあるピカチュウ。対してリーリエの最初のポケモンは耐久力とパワーが自慢のフシギバナである。スピードとパワー、どちらが上回るのか観客たちの注目が集まる試合となりそうだ。

 

「では、決勝戦……はじめ!」

 

ククイが試合開始の合図を宣言し、遂にアローラリーグの決勝戦が始まる。最初に動いたのはヨウとピカチュウであった。

 

「ピカチュウ!でんこうせっか!」

『ピカッチュ!』

 

ヨウの指示と同時にピカチュウは自慢のスピードで駆け出した。目にも止まらないそのスピードはフシギバナを翻弄し、みるみるとその距離を縮めて行った。

 

「フシギバナさん!はっぱカッターです!」

『バナァ!』

 

接近してくるピカチュウに対してフシギバナははっぱカッターで対抗する。ピカチュウはでんこうせっかのスピードを活かして無数のはっぱカッターを左右に躱していく。

 

はっぱカッターを避けきったピカチュウのでんこうせっかがフシギバナの頭部に衝突し、フシギバナにダメージを与える。フシギバナは高い耐久力でその攻撃の衝撃を耐えていた。

 

「続けてアイアンテール!」

『ピッカァ!』

 

ピカチュウはでんこうせっかから続けてアイアンテールによる連続攻撃を仕掛ける。ピカチュウの連続攻撃は完成度が非常に高く、隙も少なくフシギバナの額に追撃がヒットした。アイアンテールに苦しむフシギバナに、更にアイアンテールの追撃を連続で仕掛けていた。

 

「っ!ですがこれだけ接近していればっ!」

『っ!?バァナ!』

『ピカッ!?』

 

アイアンテールに耐えていたフシギバナが目をカッと見開き、つるのムチでピカチュウの胴体に巻き付け動きを封じた。いくら俊敏に動くピカチュウであっても、攻撃の最中であれば隙を生み出すことができる。フシギバナの耐久力があればこそできる戦術である。

 

「っ!?しまった!」

「フシギバナさん!はっぱカッターです!」

『バァナァ!』

 

フシギバナはピカチュウを投げ飛ばし、空中に放り出されたピカチュウをはっぱカッターで狙い撃ち切り裂いた。そのダメージにピカチュウは溜まらず地面に叩き落とされるのだった。

 

「くっ!?ピカチュウ!大丈夫か!」

『ぴ……ピッカァ!』

 

ピカチュウは立ち上がるが、今の攻撃がクリーンヒットしたことでダメージがかなり限界に近くなってしまっているようだ。ピカチュウは素早さを活かした攻撃性能は非常に高いが、その分耐久力に関してはあまり高いとは言い難い。故に今の一瞬の攻防だけでも彼にとってはかなり痛い結果となった。速攻型のピカチュウにとっては、耐久力の高いフシギバナは不利と言えるだろう。

 

「フシギバナさん!こうごうせいで回復です!」

『バナァ』

 

フシギバナはこの隙を突き、こうごうせいによって削られた体力を回復する。相手の攻撃を耐えて反撃し、隙を見て回復する永久機関の戦術。非常に理にかなっていて完成された戦術である。

 

このまま回復されるわけにはいかないと、ヨウは慌ててピカチュウに攻撃の指示をだした。

 

「ピカチュウ!10まんボルトだ!」

『ピッ……ピカッチュウ!』

 

ピカチュウはダメージが思いの外大きいのか少し足元をぐらつかせる。しかし自身のダメージに耐えながら10まんボルトをフシギバナ目掛けて解き放った。

 

しかしその時には既にフシギバナの体力は回復しており、フシギバナは反撃の準備に入っていた。

 

「つるのムチで防いでください!」

『バナァ』

 

フシギバナは2本のつるのムチでピカチュウの10まんボルトを防御して四散させた。その光景には観客たちも驚くが、今のダメージが蓄積したピカチュウでは火力不足か、とヨウは理解していた。

 

その後、10まんボルトによる力を使ったピカチュウはダメージから膝をつく。その姿が最大のチャンスだという事をリーリエに伝える結果となった。

 

「ソーラービーム!スタンバイです!」

『バァナァバナ』

 

フシギバナは背中の花に光を集めて集中する。大技であるソーラービームによりとどめを刺すつもりだ。今のピカチュウでは避ける事すら厳しい、と判断したヨウは、最後の力を振り絞るようにピカチュウに伝えた。

 

「ピカチュウ!」

『ピ……ピカァ!』

 

ヨウの意図を理解したピカチュウは彼の言葉に頷いた。ならば自分も最大限の力を使おうとフシギバナを見つめる。

 

「ピカチュウ!ボルテッカー!」

『ピッカァ!』

 

ピカチュウとその進化系列が持つ最大の大技、ボルテッカーだ。ボルテッカーは威力が高い分、その反動で自身もダメージを受けてしまう諸刃の剣である。故にヨウは試合であまり使用することはなかった。しかしリーリエが自分の大技を隠してまで勝てるような甘い相手でないことも理解しているため、出し惜しみなしで全力を出すしかないと判断したのだ。

 

ピカチュウの身体全体を強力な電気が纏いでんこうせっかを超えるスピードでフシギバナに直進してくる。大技に対して防御したいところではあるが、ソーラービームに集中しているため途中で中断することは出来ない。フシギバナはピカチュウの攻撃に備え、歯を食いしばり耐える態勢をとる。

 

ピカチュウの全力のボルテッカーがフシギバナに命中する。ピカチュウのボルテッカーはギリギリの体力とは思えないほどの威力がでており、フシギバナの巨体を大きく押し出していた。その反動でピカチュウも大きくダメージを受けてしまったが、フシギバナにも間違いなくダメージが確認できる。しかし、フシギバナのソーラービームはすでに準備完了していた。

 

「っ!?フシギバナさん!ソーラービーム発射です!」

『バァナァ!』

 

フシギバナのソーラービームが背中の大きな花から最大出力で発射される。そのソーラービームによりピカチュウの身体が包まれ大きな衝撃を引き起こした。

 

衝撃が落ち着くと、そこには目を回して倒れていたピカチュウの姿があった。反動、さらにソーラービームの直撃で体力は底を尽きてしまったのだろう。むしろここまでよく耐えたのが不思議なくらいである。

 

「ピカチュウ!戦闘不能!」

『ぴ……かぁ……』

「ピカチュウ……お疲れ様、よく頑張ったな。絶対に無駄にしないからな。」

 

ここまで頑張ってくれたピカチュウをモンスターボールに戻したヨウ。今の戦闘から改めてフシギバナの耐久力は驚異的だと感じた。それと同時に、やはり彼女は紛れもなく強敵なのだと再度認識する。

 

(だが……だからこそ燃えてくるんだ!)

 

ヨウは今のバトルで気落ちするどころか、より一層闘志が燃え上がっていた。自分と同等以上の相手と戦うと熱くなるのは、ポケモントレーナとして当然の反応であり、その感情こそが彼が一流のポケモントレーナーであることを証明していた。

 

「頼むぞ!サンドパン!」

『サッド!』

 

続いてヨウが繰り出したのはアローラの姿をしたサンドパンだ。通常のサンドパンはじめんタイプのみだが、アローラの姿ではこおりタイプに加えはがねタイプとの混合と、現在確認されている中では唯一のタイプである。

 

「相性としては不利……でしたら!フシギバナさん!こうごうせいです!」

『バナ!』

 

フシギバナは開幕からこうごうせいで先ほどの消耗した体力を取り戻そうとする。しかし、ヨウはそう来ると考えすでに対策を施していた。

 

「サンドパン!あられだ!」

『サンドッ』

 

サンドパンは天候を変更する技、あられを使用する。あられは天候を“あられ状態”にし、こおりタイプ以外のポケモンの体力をじわじわと削っていく。しかし今回はそれだけではなく、もう一つ別の狙いがあった。

 

『バナッ!?』

「っ!?フシギバナさんの光が!?」

 

こうごうせいで集めていた光がみるみると弱くなっている。こうごうせいは太陽の光を集約して自身の体力を回復させる業であるため、悪天候であるあられ状態では体力の回復量が大きく減少してしまう。

 

故にフシギバナの体力は一応多少の回復はしたものの、ボルテッカーによるダメージを回復することができなかったのはやはり痛いか。

 

「メタルクロー!」

『サッド!』

 

続けてサンドパンはメタルクローによる近接攻撃を仕掛けてくる。攻めてくるサンドパンに対して臨戦態勢を取り身構えるフシギバナだが、想定外の光景に驚きを隠せない様子でいた。

 

『バナァ!?』

「は、はやい!?」

 

サンドパンはピカチュウに負けない、いや、それ以上のスピードでフシギバナの目の前まで既に接近してきており、硬化したツメ、メタルクローによる鋭い一撃を加えてきた。

 

『バナァ……』

「フシギバナさん!反撃です!はっぱカッター!」

『バァナ!』

 

フシギバナはのけ反りながらもサンドパンの攻撃を耐えきり、はっぱカッターによる反撃を開始した。無数のはっぱカッターがサンドパンを襲い掛かり、硬い腕で急所に当たらないように防御するも彼の身体を鋭い葉が刃となって切り裂いていく。

 

しかしはっぱカッターを放ちながらもフシギバナの体力をあられが蝕んでいく。

 

「っ!負けるな!つららばり!」

『サッド』

 

サンドパンは背中の氷を針のように鋭く尖らせ連続でフシギバナ目掛けて発射する。

 

「つるのムチで防いでください!」

『バナ!バナ!』

 

フシギバナはつるのムチでつららばりを叩き落としていく。はっぱカッターの攻撃が止んだ今がチャンスだと、再びツメを硬化させて接近していった。

 

「サンドパン!メタルクロー!」

「フシギバナさん!もう一度つるのムチです!」

 

サンドパンのメタルクローに対してフシギバナはつるのムチで対抗する。フシギバナはつるのムチで叩き落とそうとするが、サンドパンはつるのムチを弾いて懐に潜り込む。つるのムチを弾かれてしまったフシギバナには隙が生じ、態勢を崩したところをサンドパンのメタルクローが切り裂く。

 

さしものフシギバナも回復が封じられて連続で攻撃を受けてしまえば耐えるのは難しく、メタルクローの一撃で限界が訪れその場で倒れてしまった。

 

『ば……なぁ……』

「フシギバナ!戦闘不能!」

 

フシギバナは目を回し、審判のククイによって戦闘不能と判断される。ピカチュウを倒しサンドパンともいい戦いを繰り広げたのだが、ここまでのようだ。

 

「フシギバナさん、戻ってください。ありがとうございました。あとはゆっくり休んでいてください。」

 

フシギバナをモンスターボールへと戻し労いの言葉をかけるリーリエ。戦果としては充分すぎるため、それを無駄にしないように気を引き締め、次のモンスターボールを手に取った。

 

「お願いします!シロン!」

『コォン!』

「っ!?ここでシロンを出してきたか……。」

 

リーリエが次に繰り出してきたのはシロンであった。こおりとフェアリータイプを併せ持つシロンにとって、はがねタイプを持つサンドパンは非常に相性が悪い。しかし、彼女のことだから何か考えがあるのだとヨウは警戒を忘れてはいない。

 

「サンドパン!つららおとし!」

『サンドッ!』

 

まずは牽制をして相手の手を伺おうと、つららばりによって遠距離攻撃を仕掛けるヨウ。つららばりがシロンに命中するかと思ったその時、シロンは心綺楼のようにその場から姿を消したのだった。

 

「っ!?なるほど、ゆきがくれの特性か……。」

 

特性ゆきがくれは、あられ状態の時に自身の回避率を上げる特性だ。この特性によってあられの中に身を隠し、サンドパンの攻撃を回避したというわけだ。相手の技を利用し咄嗟にこの作戦を思いつく辺り、さすがはリーリエだとヨウは感心する。

 

しかし感心してばかりはいられない。少なくともメタルクローで接近戦を仕掛けていたら反撃を喰らって間違いなくピンチを招いていたことだろう。自分の危機察知能力に安堵しながら、シロンの気配を感じ取ることに集中する。

 

「シロン!こおりのつぶてです!」

 

あられの中からシロンのこおりのつぶてがサンドパンに対して襲い掛かる。鋭く的確なその一撃を、サンドパンはギリギリのところでジャンプして回避するが、シロンの連続攻撃の的となってしまう。

 

「れいとうビームです!」

『サッド!?』

 

シロンのれいとうビームが回避したサンドパンの顔に直撃する。サンドパンは地面にツメを突き立ててダウンを拒否するが、れいとうビームによるダメージはしっかりと受けている。

 

「ムーンフォース!」

「メタルクローで防御だ!」

『サド!』

 

サンドパンは迫りくるムーンフォースをメタルクローで切り裂き防御する。その後、ムーンフォースの発動場所をしっかりと確認していたヨウは、その場所に攻撃するようサンドパンに指示をだす。

 

「そこだ!サンドパン、ドリルライナー!」

『サッドォ!』

 

サンドパンはムーンフォースが放たれた場所目掛けてドリル形態に移行して勢いよく突進する。あられを貫き、シロンをも貫く、はずであったが既にそこにシロンの姿はなかった。

 

「っ!?後ろか!?」

「シロン!れいとうビームです!」

『コォン!』

『サンドッ!?』

 

サンドパンの背後に回っていたシロンのれいとうビームが直撃し、サンドパンを地面へと叩きつけた。サンドパンは目を回して、それと同時にあられが止みフィールドが晴れ渡ってシロンの姿も露わとなった。

 

『さ……どぉ……』

「サンドパン!戦闘不能!」

 

れいとうビームと地面に叩きつけられた衝撃で目を回し戦闘不能となったサンドパンをモンスターボールに戻すヨウ。ゆっくり休むようにと感謝の言葉を伝え、シロンの対策を考えていた時、リーリエはシロンをモンスターボールへと戻した。

 

「シロン、戻ってください。」

 

「……なるほど、サンドパンを倒すためにシロンを選出したのか。」

「次はあなたにお願いします!マリルさん!」

『リルルゥ!』

 

シロンを戻し代わりに繰り出したのはマリルであった。みず・フェアリータイプであるマリルを見てヨウが繰り出したのは……。

 

「次はお前だ!頼むぞ!ギガイアス!」

『ギアァ!』

 

マリルに対して繰り出したのはいわタイプのギガイアスであった。その大きな体と威圧感のある雰囲気から、マリルとリーリエは圧倒される。しかしそれでも相性であればこちらが有利だと、強気で攻める意思を見せる。

 

「マリルさん!バブルこうせん!」

『リル!』

 

マリルはバブルこうせんで牽制攻撃を仕掛ける。ギガイアスは見るからに耐久力はあれど、鈍足で攻撃をかわすことは困難だろうと判断し遠距離から的確に攻めていく。

 

「ギガイアス!ロックブラスト!」

『ギガァ!』

 

ギガイアスはロックブラストでバブルこうせんに対して対抗する。ロックブラストはバブルこうせんを次々と打ち破りマリルに迫ってきた。相性の悪いみず技をいとも容易く打ち破ったことに驚きつつもリーリエはロックブラストを回避するように指示を出した。

 

「マリルさん!躱してください!」

『リル!』

 

マリルはリーリエの指示通りに回避する。ギガイアスはそんなマリルをロックブラストで連続して狙い撃ち怒涛の攻撃を見せるも、マリルはその攻撃を躱しながらギガイアスに接近していった。

 

ギガイアスは最後の一撃に更なる力を込め、ひと際大きいロックブラストで迎え撃つ。

 

「アクアテールです!」

『リィル!』

 

マリルはその一撃をアクアテールで攻撃して受け流し、その反動を利用して上空に飛び上る。観客たちもその華麗な動きに驚くが、ヨウにはあまり驚いている様子は見受けられなかった。

 

「そのままアクアテールです!」

『リルルッ!』

 

アクアテールで上空からの勢いを利用し強襲を仕掛けるマリル。しかしその攻撃を読んでいたヨウは、ある技でマリルを迎え撃つのであった。

 

「てっぺきだ!」

「っ!?てっぺき!?」

 

てっぺきは自身の防御力を大きく上げる防御技だ。元々かなり耐久力の高いギガイアスだが、てっぺきにより更に防御力を高めマリルのアクアテールを防御する。効果は抜群なはずが、てっぺきによって防御力の上がったギガイアスに弾かれてしまい、逆にマリルが吹き飛ばされてダメージを受けてしまう結果となり全員が驚きの声をあげた。

 

「もう一度ロックブラスト!」

『ギガァ!』

『リルッ!?』

 

マリルは態勢を立て直し、ロックブラストによる連続攻撃をギリギリのところで回避する。しかしギガイアスに回避先を誘導されてしまっており、気付いたときには岩に囲まれて逃げ場が無くなっていた。

 

「なっ!?マズいです!マリルさん!逃げてください!」

「ラスターカノン!」

 

リーリエの必死の呼びかけも束の間、マリルを囲んだ岩にギガイアスのラスターカノンが一直線に飛んでいく。そして岩ごとマリルの小さな体を吹き飛ばし、その一撃でマリルは地面にダウンした。

 

『りぃ……るぅ……』

「マリル、戦闘不能!」

 

ラスターカノンによる吹き飛ばしダメージに加え、破砕した岩の破片がマリルを襲い想定以上のダメージを負ってしまったマリルは無念にもここで戦闘不能となってしまった。健闘したマリルをモンスターボールに戻したリーリエは、彼女に感謝の言葉を伝えて後は任せてくれと言う。

 

「ギガイアスさん……とてつもないパワーの持ち主ですね。」

 

これだけのパワーを持つ相手であれば、あのポケモンに任せるしかないとリーリエはモンスターボールを手に取った。

 

「お願いします!チラチーノさん!」

『チラッチ!』

 

リーリエが選出したのはチラチーノであった。パワーが高く鈍重なギガイアスに対して、スピードによる撹乱作戦を決行しようというのがリーリエの考えだろう。

 

「ギガイアス!ロックブラスト!」

『ギガァ!』

 

ギガイアスは再びロックブラストで固定砲台となりチラチーノを攻撃する。しかしチラチーノは小柄で非常に素早いため遠距離からのロックブラストでは捉えることができない。

 

「スピードスターです!」

『チラッ!』

『ギガァッ』

 

チラチーノのスピードスターが四方八方からギガイアスを襲う耐久力が高いとはいえ、鈍重なギガイアスではその攻撃を避けることは非常に困難である。

 

「っ!?まだだ!もう一度ロックブラスト!」

『ギガァ!』

「躱して連続でスピードスターです!」

『チラチィ!』

 

ロックブラストで攻撃を仕掛けるギガイアスだが、相変わらずチラチーノを捉えることができず、着実にスピードスターで体力を奪っていく。

 

暫く試合は続いたが、ヨウは一向に戦術を変えずロックブラストを撃つだけである。その間にチラチーノのスピードスターがギガイアスの体力を蝕んでいく。何か考えがあるのだろうが、それを読むことができずに時間だけが過ぎていく。

 

着実なダメージが明らかになり、ギガイアスは肩で息をして苦しそうな様子を見せる。今ならチャンスだ、とリーリエは戦術を変える。

 

「チャンスです!チラチーノさん!」

『チラッ!』

 

リーリエの指示に従い、チラチーノは素早い動きでギガイアスに接近する。今なら得意な近接攻撃を仕掛けるチャンスだと踏んだのだろう。一気に勝負を仕掛けるつもりだ。

 

対するギガイアスはロックブラストでチラチーノに対抗するも、チラチーノのスピードを捉えることは当然難しく、次々と避けられてしまい距離を詰められる。

 

「今です!スイープビンタです!」

『チラァ!』

 

充分な距離に接近することのできたチラチーノは得意技であるスイープビンタで攻撃を仕掛ける。これで勝負が決まった……かに思えたその時、ギガイアスの身体が白く光り輝き、その瞬間リーリエに嫌な予感が走った。

 

「っ!?ギガイアス!だいばくはつ!」

『ギ……ガァ!』

「しまった!?チラチーノさん!逃げてください!」

 

逃げるように促すリーリエだが、時すでに遅し。ギガイアスの光が更に強くなり、その光はギガイアス自身とチラチーノ、そしてフィールド全体をも包み込んだのち大きな爆発を引き起こした。強い光と衝撃のあまり、ヨウとリーリエ、それから観客の全員が目をあけていられない程の刺激を受けるのであった。

 

強い光に包まれたギガイアスとチラチーノ。波乱と注目のアローラリーグ決勝戦、果たして勝利の女神はどちらに微笑むのか。




ギガイアスのデザインと色違いがすごく好きです

シンジが最終戦で使うブイズはニンフィア、イーブイに加え残り4匹は誰がいい?(投票数の多い順に選ばれます)

  • シャワーズ
  • サンダース
  • ブースター
  • エーフィ
  • ブラッキー
  • リーフィア
  • グレイシア

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