ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》 作:ブイズ使い
2回戦第三試合、グラジオVSプルメリの注目のカードは激戦の結果、グラジオが勝利し準決勝進出を決めた。
第一、第二試合ではヨウ、ハウが軽く勝利を収め、リーリエも難なく2回戦第四試合を制した。こうして準決勝進出トレーナーが全員決定し、ヨウ、ハウ、グラジオ、リーリエの四人が優勝を争う形となった。
そして2回戦が終わった翌日。準決勝第一試合、ヨウとハウ、幼馴染である二人の戦いが始まろうとしていた。
(ハウとは何度も戦ってきたが、今日はいつもと違う。勝って決勝に進むのはどちらか一方のみ。)
(ヨウの手の内は知ってるけど、それはヨウも同じだよねー。)
(それでも……)
(だとしても……)
「勝つのは俺だ!」「勝つのはおれだー!」
互いに試合への意気込みを口にし、通路をまっすぐ歩いて両者同時にフィールドに姿を現す。ここまで圧倒的な強さを見せてきた彼らに、観客たちが期待の歓声を送る。それを聞いた二人は胸が引き締まる思いでお互いの目を見つめる。ここまで来たライバルに、最早交わす言葉など必要ないことが伝わってきた。
「うーん、やっぱりこの試合は私が担当しないとねぇ♪」
「公平なジャッジ頼むぜ?審判。」
「あははー、楽しいバトルしようねー♪」
審判を務めるミヅキの対応に一瞬幼馴染としての三人に戻る。しかし雰囲気は一変し、ミヅキの引き締まった声に二人も戦闘モードへと移行した。
「それではこれより!ヨウ選手とハウ選手のバトルを始めます!両者、同時にポケモンを!」
「行くぞ!ピカチュウ!」
「頼むよ!クワガノン!」
『ピッカァ!』
『クワッ!』
ヨウが繰り出したのはピカチュウ、対してハウが繰り出したのはクワガノン。どちらもでんきタイプであるためタイプによる優劣はない。強いて言うならばもう一つのタイプが付与されているクワガノンの方が有利だろうか。
両者のポケモンがフィールドに登場し、ミヅキは二人の姿を交互に確認する。そしてお互いにバトルの準備が整ったと判断した彼女は、ついにバトルの火蓋を切って落とした。
「それでは……バトル、はじめ!」
「ピカチュウ!でんこうせっか!」
『ピッカ!』
試合開始の合図と同時に動き出したのはヨウとピカチュウであった。ピカチュウの素早い動きを利用し、クワガノンに不意打ちの先制攻撃を仕掛けた。しかしその動きはハウも読んでいたようで……。
「クワガノン!こうそくいどうで躱せー!」
『クッワ!』
クワガノンは目にも止まらぬ速さでその場から瞬間的に移動し、ピカチュウのでんこうせっかを回避し背後へと回る。
「今だ!マッドショットー!」
『クワ!クワ!』
「アイアンテールで防御だ!」
『ピカッ!ピッカ!』
ピカチュウの背後に回ったクワガノンはマッドショットで攻撃する。その背後からの攻撃をピカチュウはアイアンテールで防御し攻撃を受け流す。
「クワガノン!10まんボルト!」
「ピカチュウ!10まんボルト!」
『クッワ!』
『ピッカァ!』
ハウとヨウはほぼ同時に10まんボルトの指示を出した。クワガノンとピカチュウも同時に10まんボルトを解き放ち、お互いの攻撃はフィールド中央で炸裂する。互いの10まんボルトが相殺されたことにより爆発が起こり、互いの姿が見えなくなってしまった。
初っ端からどちらも一歩も譲らない攻防に観客たちは息を飲み込む。経過した時間は僅かだが、それでもどちらかが先に攻撃を受けてしまっていてもおかしくはい戦いだ。しかしそんな拮抗していた戦いも、ついに動きを見せ始めるのだった。
「ピカチュウ!アイアンテール!」
『ピッカ!』
ピカチュウはアイアンテールで見えない視界を振り払い無理やりクワガノンの姿をあぶりだそうとする。しかし爆風を振り払うと、そこにはクワガノンの姿は見当たらなかった。
『ピカ!?』
「なに!?」
「よーし!ピカチュウを捕まえろー!」
『クワ!』
クワガノンは再びピカチュウの背後に回り、今度はその鋭い鋏のような大顎で捉え壁に突き刺す。ピカチュウは必死にもがくが、クワガノンの強靭な顎からは逃れることができずビクともしない。
「これなら避けることも防ぐこともできないでしょー?」
「っ!?しまった!」
「クワガノン!マッドショットー!」
『クワァ!』
『ピカ!?』
例えどれだけ素早いピカチュウが相手であっても、動きを止めてしまえば怖いものなど何もない。クワガノンは超至近距離からのマッドショットによりピカチュウを攻撃する。当然ピカチュウにはその攻撃を逃れる術はなく、遂には直撃を受けてしまう。
至近距離での攻撃による衝撃でクワガノンはピカチュウから距離が離れる。攻撃は間違いなくピカチュウを捉え手応えも感じたが彼の姿は爆風によって見えなくなってしまっている。動きを確認しようと様子を見ていると、一筋の閃光が突然クワガノンを貫いたのだ。
『クワッ!?』
「っ!?クワガノン!」
その閃光はピカチュウの10まんボルトであった。10まんボルトが命中したクワガノンは空中から落ちてきて、それをチャンスと捉えたヨウはピカチュウに追撃の指示を出す。
「ピカチュウ!でんこうせっか!」
『ピッカァ!』
ピカチュウは傷を負いながらも爆風から勢いよく飛び出し姿を現す。スピードは一切衰えておらず、素早い動きから繰り出されるパワフルな一撃がクワガノンを捉える。
「クワガノン!?」
『ッ!?クワッ!』
クワガノンは態勢を整えピカチュウの姿を見据える。自分の大顎をカチカチと鳴らして自らを鼓舞すると同時にピカチュウを威嚇する。
「やっぱりヨウは強い。でも!おれたちも負けないよー!」
「俺たちだって負けない!ピカチュウ!でんこうせっか!」
『ピッカァ!』
「クワガノン!こうそくいどう!」
『クワッ!』
ピカチュウはでんこうせっか、クワガノンはこうそくいどうにより互いの距離を一瞬で詰める。そのスピードから互いに額をぶつけあい、火花がバチバチとはじけ飛んでいた。ぶつかった反動により、お互いの距離が少し開く。
『10まんボルト!』
そして再び同時に10まんボルトを放って爆風が巻き起こる。先ほどと同じ状況が出来上がり、またもやお互いの姿が爆風で見えなくなった。
「……ピカチュウ!アイアンテール!」
『ピカッチュ!』
ピカチュウはまたもや尻尾を硬化させた状態で突っ込んでいく。しかしその状況は先ほど見た光景と全く同じもので、クワガノンの姿はそこには既におらずアイアンテールは空を切った。
「また同じ手に引っ掛かるなんてらしくないよー?シザークロス!」
『クッワ!』
クワガノンは大顎をクロスさせ、シザークロスによる反撃でピカチュウにとどめを刺そうと突っ込んでくる。逃げ場はない上にピカチュウはアイアンテールによって態勢を崩してしまっている。これでは先ほどの二の舞だと全員が思ったその時、ヨウは笑みを浮かべてピカチュウに指示を出した。
「そのまま地面を叩きつけろ!」
『ピカッ!ピッカァ!』
「えっー!?」
『クッワ!?』
ピカチュウは空を切ったアイアンテールを逆に利用し、地面に叩きつけることで空中に高き跳びクワガノンの攻撃を回避した。それだけでなく、その行動によってクワガノンは態勢を崩し、彼の真上を取ることに成功したのだった。
「今だ!もう一発アイアンテール!」
『ピッカ!ピカピッカァチュ!』
ピカチュウは空中からの勢いを利用し、落下のエネルギーによって溜まったパワーをアイアンテールに込めてクワガノンに叩きこむ。態勢を崩し上空からの攻撃に対しての対抗手段がないクワガノンはアイアンテールによる直撃を受けてしまい、地面に叩きつけられたのだった。
ピカチュウがその反動で着地すると、そこには目を回し倒れているクワガノンの姿があった。それを見たミヅキは、バトルの判定を下した。
『くわぁ……』
「クワガノン!戦闘不能!ピカチュウの勝ち!」
一戦目からの激しい戦いに観客たちは盛大な歓声を上げていた。ピカチュウも激しい戦いから喜び、ヨウと一緒にハイタッチをして喜びを分かち合った。
「クワガノン、お疲れ様ー。よく頑張ったね。」
ハウはクワガノンをモンスターボールに戻した。決して油断していたわけではないが、自分の読みを上回ったヨウに心の中で称賛を贈る。しかしそれでもまだ勝負は始まったばかり。負けた訳ではないと次のモンスターボールを取り出すのだった。
「いっけぇー!オンバーン!」
『バッオォン!』
次に繰り出したのはドラゴン・ひこうタイプのオンバーンであった。ヨウは暫く考えたあと、ピカチュウに戻ってこいと指示を出してモンスターボールに戻した。
「頼むぞ!ウォーグル!」
『ウォー!』
ピカチュウに次いで繰り出したのはウォーグルであった。空を飛ぶオンバーンに対してはピカチュウで行くより、同じく空を自由に飛べるウォーグルの方が有利だと考えたのだろう。
「今度はおれから行くよー!オンバーン!ばくおんぱ!」
『バッオン!』
『ウォ!?』
オンバーンの強力なばくおんぱが命中する。しかし怯んでいるだけでなく、ウォーグルはすぐにばくおんぱの範囲外へと逃れた。
「ウォーグル!ブレイククロー!」
『ウォー!』
「ドラゴンクローで迎え撃てー!」
『バオン!』
ウォーグルはブレイククロー、オンバーンはドラゴンクローで正面から対抗する。互いの攻撃は弾き合い、両者共ダメージを負っている印象は見受けられない。どちらの攻撃も互角のようだ。
「続いてぼうふう!」
『ウォッグ!』
『バオっ!?』
今度はウォーグルの強力なぼうふうがオンバーンを捉えた。ぼうふうの威力に苦しんでいるオンバーンの様子から、長く受け続けているとマズイと感じすぐに空へと逃げるように指示をだした。
「オンバーン!空に逃げるんだ!」
『オオン!』
「ウォーグル!追いかけろ!」
『ウォー!』
オンバーンはぼうふうから逃れるために空に高く飛び、ウォーグルもオンバーンを追いかけ空高く飛び上がった。バトルフィールドは翼を持つもののみに許される場所、天空へと移ったのだった。
空高くに飛んだオンバーンとウォーグルはドラゴンクロー、ブレイククローを何度もぶつけ合い火花を散らしていた。地上の観客やトレーナーたちからも、その激しく散る火花からなんとなくバトルの様子が見えていたのだった。
「ばくおんぱ!」
「ぼうふう!」
トレーナーの指示が風に乗って聞こえたオンバーンとウォーグルは、トレーナーの指示通りばくおんぱとぼうふうを繰り出した。お互いの強力な攻撃は空中で混ざり合い大きな爆発を引き起こした。
「オンバーン!ドラゴンダイブ!」
「ウォーグル!ブレイブバード!」
『バッオン!』
『ウォッグ!』
そして二人はとっておきの大技、ドラゴンダイブとブレイブバードを繰り出した。オンバーンのドラゴンダイブが上から降り注ぎ、ウォーグルのブレイブバードが下から突き刺さる。お互い強力な技であったため再び爆発が引き起こり、両者共大きなダメージを負って天空から落ちてきた。
「っ!?ウォーグル!」
「オンバーン!」
天空から落ちてくる二匹はトレーナーの声により意識を取り戻す。空中ですぐさま態勢を整えた両者は、再び向かい合い突進した。
「ドラゴンクロー!」
「ブレイブクロー!」
お互いの鋭いツメが両者の姿を捉え同時にヒットする。しかし今度はぶつかり合うのではなく、お互いの攻撃が腹部と顔面、それぞれにヒットして確実なダメージを与えた。その強大なダメージによって、両者とも力なくフィールドに落ちてしまった。
「ウォーグル!?」
「オンバーン!?」
『うぉ……』
「ばっおん……」
「ウォーグル、オンバーン!両者共に戦闘不能!」
結果はダブルノックダウンと言う結果に終わった。息をする暇もない戦いであったが、ひこうタイプ同士の熱い空中戦、スピードの速い展開に観客たちもついて行くのが難しい状態となっている。それでも熱い戦いの前に盛り上がらずにはいられず、歓声はさらに大きく地響きが起きているのではと錯覚するほどのものとなっていった。
「ウォーグル、お疲れ。戻って休んでてくれ。」
「オンバーン、戻って。お疲れ様ー。」
引き分けだったもののお互い最後まで健闘したパートナーをモンスターボールへと戻し労いの言葉を贈る。これで現在の戦況を整理すると、ヨウの残りポケモンはダメージを残したピカチュウと後ろにもう一体。そしてハウの残りポケモンはラスト一体のみとなった。数的有利なのはヨウではあるがピカチュウも残り体力は僅か。見た目ほど対して差はないだろう。
ハウは最後のポケモンが入ったモンスターボールを手に取る。そして想いをそのポケモンに乗せ、フィールドに投げるのだった。
「……お願い!ジュナイパー!」
『ジュッパァ!』
モンスターボールから出てきたのは彼の一番のパートナーポケモンであるジュナイパーだ。対するヨウは……。
「もう一度頼む!ピカチュウ!」
『ピカッチュウ!』
意気揚々と出てきたのはピカチュウであった。しかし先ほどのクワガノンとの戦いのダメージが回復していないのか、肩で息をしている様子が見えていた。間違いなくまだ体力は戻っていない。
「おれは……おれとジュナイパーは負けないよー!ジュナイパー!かげぬい!」
『ジュッパ!』
ジュナイパーは懐から取り出した弓でピカチュウに狙いを定める。ジュナイパー専用の技、かげぬいはゴーストタイプの技であり相手の影を捉え逃げ道を塞ぐ特殊な技だ。命中したらダメージもタダではすまないのは言うまでもない。
「ピカチュウ!でんこうせっかで捉えさせるな!」
『ピカ!ピカピッカァ!』
ピカチュウはでんこせっかで相手のジュナイパーに自分の姿を捉えさせないように撹乱する。狙いをつける必要のあるかげぬいでは捕まえるのは難しいだろう。
ピカチュウは自慢のスピードで撹乱しながらジュナイパーとの距離を詰める。そして一瞬で目の前まで距離を詰めたピカチュウは一気に攻勢に出た。
「今だ!アイアンテール!」
『ピカァ!』
ピカチュウは硬化した尻尾、アイアンテールを振りかぶって速攻攻撃を仕掛ける。弓を構えているジュナイパーに対して接近戦は最適な判断。すぐに避けるのは厳しいだろう。誰もがそう思った時、ジュナイパーの姿が目の前から消え失せたのだ。
「なに!?」
『ピカ!?』
ジュナイパーのゴーストタイプの技、ゴーストダイブだ。狙いをつける必要がある以上、どうしてもその間に隙ができてしまう。その隙を補うため、二人は出来る限り可能な対策を施していたのだ。かげぬい中に接近されたらゴーストダイブで影に潜み躱すという対策を。
「ジュナイパー!狙い撃てー!」
『ピッカ!?』
ジュナイパーのかげぬいは見えないところから狙撃されピカチュウを影ごと射抜いた。その攻撃で限界が訪れたピカチュウは地面に倒れ伏せて目を回していた。
「ピカチュウ!」
『ぴっかぁ……』
「ピカチュウ戦闘不能!ジュナイパーの勝ち!」
ピカチュウは戦闘不能を宣告された。速攻作戦自体は悪くなかったが、ハウはそれを読んでさらに上を行っていた。先ほどはヨウの対応力に驚かされたハウだが、今度はパートナーとのコンビネーションによってヨウのことを驚かせた。
「だけど、パートナーとのコンビネーションならこっちも負けてないぜ?頼むぞ!ガオガエン!」
『ガオウッ!』
ヨウが一番のパートナーであるガオガエンを繰り出した。お互い残されたポケモンは一匹のみ。そしてそのポケモンは両者が最も信頼するポケモン、パートナーである。泣いても笑っても、これが決勝戦進出を決める戦いである。
「ジュナイパー!かげぬい!」
『ジュパァ!』
ジュナイパーは再びかげぬいを発射する。今度は先ほどよりも素早く狙いをつけ、即座にガオガエン目掛けて射抜いた。
「ガオガエン!ビルドアップ!」
『ガオウ!』
ガオガエンはビルドアップで肉体を強化し攻撃力と防御力を高める。それによりガオガエンはかげぬいを弾き飛ばしてジュナイパーの攻撃を防ぐのだった。
「ニトロチャージ!」
『ガウッ!』
ガオガエンは身体を燃え上がらせ、熱い炎を纏った状態でジュナイパーに突進する。ニトロチャージは使用すれば使用するほど自身の素早さを上げる技だ。ガオガエンはビルドアップで攻撃力と防御力を高め、ニトロチャージで素早さも上げるという作戦だろう。
しかしその攻撃は簡単にジュナイパーを捉えることは出来なかった。
「ジュナイパー!ゴーストダイブー!」
『ジュパァ』
ジュナイパーはゴーストダイブにより再び姿を消す。それによりガオガエンのニトロチャージは命中することなく不発に終わってしまう。
態勢を崩してしまったガオガエンを確認したジュナイパーは影から姿を現し、背後からガオガエンを蹴り飛ばす。それにより距離が離れ、再びジュナイパーの適性距離となった。
「リーフストーム!」
『ジュッパァ!』
ジュナイパーは鋭い葉の嵐をガオガエンに叩きつける。ガオガエンは防御するも、このままではジリ貧で倒されるのも時間の問題だ。
「っ!ガオガエン!かえんほうしゃ!」
『ガオゥ!』
『ジュパ!?』
ガオガエンはベルトの中心からかえんほうしゃを放つ。くさタイプに効果抜群な炎がリーフストームを焼き尽くしジュナイパーを飲み込んだ。効果抜群の攻撃を喰らってしまい、ジュナイパーは溜まらず膝をついてダウンしてしまう。
「今だ!ニトロチャージ!」
『ガウッ!』
ガオガエンが再びニトロチャージで接近する。先ほどのダメージが余程大きかったのか、ジュナイパーは避けることができずニトロチャージの直撃を受けてしまう。ガオガエンのスピードも先ほどに比べて明らかに上昇していた。
「くっ!連続でかげぬいー!」
『ジュパッ!ジュパ、ジュパッ、ジュッパァ!』
「DDラリアットで防御だ!」
『ガウッ!』
空中で態勢を整えたジュナイパーはかげぬいで連続攻撃を仕掛ける。対してガオガエンはDDラリアットで全身を使い防御態勢に入る。
ジュナイパーの連続かげぬいを防いでいくガオガエンだが、それにも限界があり次第に勢いが弱まり防ぎきれなくなってしまった。その瞬間を狙われ、かげぬいがガオガエンの急所にクリーンヒットしたのだった。
『ガッ!?』
「ガオガエン!?」
今度はガオガエンが膝をつくが、最大のチャンスだったもののジュナイパーもダメージを抱えているため攻めきることができず目に見えて疲労を感じさせている。
ならばもうここで最後の攻勢に出るしかないと、ハウはラストチャンスと考えジュナイパーと心を一つにした。
「行くよー!ジュナイパー!」
『ジュッパ!』
ハウのZリングが光り輝く。その輝きはジュナイパーとハウの心を繋ぎ、互いのZパワーを最大まで高めていく。
「おれたちの絆、想い、このZ技にのせて届ける!ヨウ!これがおれたちの全力だよー!」
『ジュッパァ!』
ジュナイパーの周囲にかげぬいと同じ影の力が込められた矢が無数に構えられていた。これはゴーストタイプのZ技、無限暗夜への誘いではなく、ジュナイパー専用のZ技、シャドーアローズストライクだ。
――シャドーアローズストライク!
Z技発動と同時に飛び上ったジュナイパーが矢と同時に飛び上る。そしてガオガエンに向かって矢と共に突っ込んでいった。
無数のかげぬいを受けてしまえば大きなダメージを負ってしまっているガオガエンは一溜りもない。しかし予想以上にダメージがあるのかガオガエンは避ける程の体力が残っていない。
(くっ、それなら一か八か……賭けるしかない!)
「ガオガエン!俺は信じてる!ビルドアップ!」
『ガオッ……ガオウッ!』
ガオガエンはビルドアップで更に肉体を高め、ジュナイパーのZ技に備える。避けることができないのならば、耐えられるように祈るしか手段がない。ヨウはガオガエンを信じ、ジュナイパーのZ技を正面から受ける覚悟をした。
ジュナイパーの無数のかげぬい、シャドーアローズストライクがガオガエンに炸裂し大きな爆発が会場を包み込んだ。凄まじい威力に周囲にもその余波が襲っていた。これほどの威力があればガオガエンも一溜りもないだろう、そう誰もが思った。
しかし結果は想像とは大きく異なり、爆風が止むとそこには驚きの光景が広がっていた。
「なっ!?そ、そんな!?」
『ジュパァ!?』
そこにはジュナイパーを正面から受け止め、ジュナイパーを前に立っているガオガエンの姿があった。お前の攻撃を耐えきったぞ、と言わんばかりにガオガエンはニヤリと口角を上げ、反撃の態勢へと移っていた。
「今度はこっちの番だ!行くぞ!ガオガエン!」
『ガオウッ!』
今度はヨウとガオガエンのZパワーが高まり二人を熱いオーラが包み込む。それと同時にガオガエンはジュナイパーを投げ飛ばし、その先にはZパワーで出来たリング場が姿を現す。
「これが俺たちの全力全開!俺たちの魂を受け取れ!ハウ!」
ヨウたちの全力全開のZ技。それはあくタイプのブラックホールイクリプスとは異なり、ガオガエン専用のZ技であるハイパーダーククラッシャーであった。
――ハイパーダーククラッシャー!
ガオガエンは走り出しリングのコーナーでポーズを取る。そして倒れているジュナイパーの頭上に飛び上り、強靭な肉体全体を使って全体重で圧し掛かる。その衝撃波凄まじく、ジュナイパーを巻き込んだ爆風が一面に広がり再び会場を包み込んだ。
またもや大技が決まり観客たちも息を飲み込む。今度はどうなったか、と確認していると、爆風が晴れたそこにはガオガエンが立っていて、ジュナイパーが目を回して倒れていた。
『……ガッウゥ!』
『じゅっ……ぱぁ……』
「ジュナイパー!戦闘不能!ガオガエンの勝ち!よって勝者!ヨウ選手!」
ガオガエンの勝利ポーズと共に、勝者の名前が宣言される。ヨウの決勝進出が確定した瞬間であった。
「よし!やったな!ガオガエン!」
『ガオウッ!』
「あっちゃー、負けちゃったかー。悔しい……けど楽しいバトルだったなー!お疲れ様、ジュナイパー。ゆっくり休んでてー!」
ヨウとガオガエンは喜びを分かち合いハイタッチを交わす。それとは対照的にハウは悔しいと口にしながらもその顔はいつも通りのにこやかな笑顔で、悔しい以上に楽しいという感情の方が強いようだ。
「ヨウ!決勝進出おめでとうー!」
「ありがとう、ハウ!」
「次の決勝はリーリエかグラジオだねー。どっちも強敵だけど、絶対優勝してよねー!おれ応援してるから!」
「ああ、もちろんだ!絶対に勝って、チャンピオンに挑戦してみせる!」
ヨウとハウは互いの健闘を称え、最高のライバルとしてハイタッチを交わした。その両者の心意気に、観客たちも彼らを称えて拍手の嵐を贈ったのだった。
決勝にはヨウが進出し、残る一枠を争うのはリーリエとグラジオ。そして当のリーリエ本人はと言うと……。
「ヨウさんが勝った。そして次は私。私の対戦相手は……お兄様」
次の対戦相手の姿を思い浮かべ、緊張から手をグッと握り締め緊張している様子であった。
「ですが、絶対に負けるわけには行きません。例え相手がお兄様でも、私の目標はその先ですから!」
兄を超え、さらにその先にある目標を目指し、彼女は歩みを進めるのだった。
アンケートはギリギリまで受け付けてますよー!
シンジが最終戦で使うブイズはニンフィア、イーブイに加え残り4匹は誰がいい?(投票数の多い順に選ばれます)
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シャワーズ
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サンダース
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ブースター
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エーフィ
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ブラッキー
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リーフィア
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グレイシア