ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》 作:ブイズ使い
でもゲームはいっぱいやっていた
後悔も反省もしていない
「ピカチュウ!でんこうせっか!」
『ピッカ!』
『チルッ!?』
2回戦第一試合。ヨウの対戦相手であるチルタリスはピカチュウの素早い一撃を回避することができず腹部に直撃し、痛みから怯んで動きを止めてしまった。
「続けて10まんボルト!」
『ピッカヂュウ!』
追撃の10まんボルトが身動きの取れないチルタリスを捉え身体全体を痺れさせる。その一撃でチルタリスは地上に落ちて戦闘不能となった。
『チルタリス!戦闘不能!よってこの試合、ヨウ選手の勝利!』
「よし!やったな!ピカチュウ!」
『ピッカァ!』
審判であるミヅキの合図でヨウが勝者となり準決勝進出を決める。ヨウとピカチュウは感極まってお互いにハイタッチをして喜びを分かち合う。
そして続く2回戦第二試合。今度はハウの戦いが行われていて、試合内容もハウの圧倒的優勢で進み試合も終盤を迎えていた。
「くっ、アブソル!かげぶんしん!」
『アブソッ!』
劣勢の状態から危険だと判断した対戦相手のアブソルがかげぶんしんにより自分の分身を複数体生成し、ハウのポケモンであるオンバーンを撹乱する。しかしオンバーンとハウに対してそのような小細工は一切通用しなかった。
「オンバーン!ばくおんぱー!」
『オッーン!!』
オンバーンとその進化前のオンバットは基本洞窟内に生息しており、視覚以上に聴覚が非常に優れている。故に音技にも長けていて、超音波により暗闇でも生物や物体の位置が正確に判別できる。
オンバーンはばくおんぱで会場全域に振動が起きる程の音波を放つ。その音波攻撃によりアブソルは苦しみ、一瞬の隙が生まれた。
オンバーンはばくおんぱによる振動と音波の反射を検知し、アブソルの分身を見破って本物をあぶりだした。
「とどめのドラゴンクロー!」
『バッオン!』
『アッソッ!?』
オンバーンは本物のアブソル一点だけを狙い撃ちし、空中から急降下してドラゴンクローで切り裂いた。ばくおんぱによるダメージもありアブソルは避けることができず、ドラゴンクローの一撃が直撃して吹き飛ばされダウンする。
「アブソル、戦闘不能。オンバーンの勝ち。よって勝者、ハウ。」
「やったー!オンバーン!お疲れ様ー!」
『バオン♪』
審判であるクチナシによって戦闘不能と判断され。ハウもヨウと同じく準決勝進出となった。これで準決勝第一試合のカードが決定し、ヨウとハウが争うこととなったのである。お互いよく知った間柄でこうなることは予想していたため、どちらも明日のバトルが待ち遠しいと言った様子である。
そして今日の目玉カード、2回戦第三試合が始まろうとしていた。フィールドに姿を現したのは、リーリエの兄であるグラジオ、元スカル団の幹部であるプリメリだ。グラジオは元スカル団の用心棒としても雇われていたため、知らない間柄ではない。
「まさか、あんたとこんな舞台で戦うことになるとは夢にも思っちゃいなかったよ。グラジオの坊や。」
「ふっ、それはこっちも同じだ、プルメリ。だが今の俺は昔の俺とは違う。舐めてかかると後悔するぞ?」
「それはこっちだって同じさ。やるからには勝つ。あたいたちの全力、あんたに見せてやるさね。」
以前グラジオはスカル団の正式なメンバーではなかったため、二人の間には険悪な雰囲気がありほとんど言葉を交わすことがなかった。しかし今はスカル団ではなく、一人のポケモントレーナーとして対峙している。ポケモントレーナーが目と目を合わせたら、やることはもう決まっている。
「ったく、なんで俺様がこんなバトルの審判なんか……。」
「そういいなさんな。以前はあたいたちもあんたの部下だったんだ。このバトルくらい見届けてほしいね。」
「……俺は部下だったつもりはないがな。」
審判を務めるのは元スカル団ボスであり現アーカラ島しまキングのグズマ。プルメリの軽口を聞いたグズマは小さく舌打ちをし、グラジオは少し不機嫌そうにそっぽを向く。彼にとってスカル団時代のことは思い出したくない過去なのだろう。
「ちっ、プルメリVSグラジオ。バトル始め」
グズマは気だるそうに合図を出す。その合図とともに、プルメリとグラジオは同時にポケモンを繰り出した。
「行きな!ベトベトン!」
『ベトォ!』
「マニューラ!頼むぞ!」
『マニュ!』
プルメリはどく・あくタイプのアローラの姿をしたベトベトン。対してグラジオが繰り出したのはこおり・あくタイプのマニューラであった。どちらも同じくあくタイプであるため、相性としては五分と五分だ。
「さあ、どっからでもかかってきな。」
「余裕だな……マニューラ!メタルクロー!」
プルメリはいつでもかかってこいとグラジオを挑発する。グラジオは上等だ、とその挑発を敢えてのり先制で攻撃を仕掛けた。
「ベトベトン!はたきおとす!」
『ベェト!』
「っ!?かわせ!」
『ニュッ!』
ベトベトンは正面から攻めてくるマニューラに対してはたきおとすで対抗する。硬化させた鋭いツメで切り裂こうとしたが、ベトベトンの攻撃を回避するために中断して回避する。
「逃がさないよ!ベトベトン!ダストシュート!」
『ベトォ』
ベトベトンは悪臭のするゴミをマニューラに投げつける。マニューラはベトベトンの怒涛の攻撃を回避し続けるが、フィールドを漂う悪臭に戸惑い怯んでいた。
「今だよ!かげうち!」
『マニュ!?』
ゴミによる悪臭で隙を見せてしまったマニューラの背後から、ベトベトンの影が襲い掛かりマニューラに的確なダメージを与える。その不意打ちによりマニューラは前かがみに倒れ膝をついた。
「これだとどめさ!だいもんじ!」
『ベトォ!』
怒涛の攻撃から更に追撃として大技のだいもんじを放つベトベトン。ベトベトンのだいもんじはフィールドに散らばったゴミごと、マニューラを焼き払おうと迫りくる。マニューラはこおりタイプ故にほのお技のだいもんじは効果が抜群。誰もが絶体絶命だと思ったその時、グラジオはニヤリと微笑んだ。
「マニューラ!あなをほる!」
『マニュ!』
マニューラはその鋭いツメで穴をあけて地中へと姿を消した。だいもんじは明らかにマニューラを捉えていたが、あなをほるで地中に姿を消したマニューラに当たることはなかった。
「っ!?しまった!」
『ニュラァ!』
『ベトッ!?』
マニューラはあなをほるでベトベトンの足元から姿を現し攻撃を仕掛ける。どくタイプであるベトベトンに対してじめん技のあなをほるは効果が抜群だ。今の一撃をベトベトンの体力を大きく削った。
「つららおとし!」
『ニュッラ!』
マニューラは氷柱をベトベトンの周囲に降り注ぎ、ベトベトンの逃げ道を完全に塞いだ。ベトベトンは身動きが取れず、気付けば形勢は一気に逆転していたのだった。
「とどめのメタルクロー!」
『ニュラ!』
マニューラは再びツメを硬化させ、自分が生成した氷柱ごとベトベトンを切り裂いた。切り裂いた氷柱がベトベトンに降り注ぎ、あなをほる、メタルクローの連続攻撃のダメージも相まって氷の下敷きとなり戦闘不能となった。
『べぇと……』
「……ベトベトン。戦闘不能だ。」
「っ、ベトベトン、戻りな。お疲れさん。」
ベトベトンをモンスターボールへと戻したプルメリは、嬉しそうに微笑むとグラジオの方へと顔を向けた。
「やるじゃないか。まさかこうも逆転されるとは思わなかったよ。」
「ふっ、俺も、俺のポケモンたちも日々成長している。いつまでも昔のままでいるわけがないだろう。」
「それもそうさね。だけど、成長しているのはなにもあんただけじゃないんだよ!」
嬉しそうに微笑んだプルメリは、次のポケモンが入ったモンスターボールをフィールドに投げた。
「次はあんたの番だよ!ゲンガー!」
『ゲェンガー!』
「次はゲンガーか……」
どくタイプに加えゴーストタイプを併せ持つゲンガー。あくタイプを持つマニューラに対しては不利だが、プルメリはトリッキーな戦いを得意とするトレーナーだ。間違いなく何かの作戦があることはグラジオも理解している。
「マニューラ!メタルクロー!」
『ニュッラ!』
「ゲンガーふいうち!」
『ゲェン!』
マニューラは素早い動きで翻弄しメタルクローでの先制攻撃を狙う。しかしゲンガーは動じることなく、変則的なふわふわとした動きからふいうちでカウンターを仕掛けた。
『ニュラ!?』
「続けてあやしいひかり!」
『ゲェン!』
「なっ!?しまった!」
ふいうちで怯んだ隙にあやしいひかりでマニューラを捉えたゲンガー。あやしいひかりを見たポケモンは混乱状態となってしまうため、自分を攻撃してしまう可能性がある危険な状態へとなってしまった。
「マニューラ!」
『にゅっらぁ』
マニューラの名前を呼ぶグラジオだが、マニューラには彼の声が届いておらず自分自身を訳も分からず攻撃してしまっている。そんな姿を見てゲンガーはケラケラと笑い眺めて楽しんでいる。
「ゲンガー!シャドーボール!」
『ゲンガァ!』
『ニュラッ!?』
混乱して動きが止まっているマニューラを捉えるのはゲンガーにとって造作もないことだった。マニューラは自傷ダメージとゲンガーのシャドーボールによる追撃でダメージが蓄積し、その場で倒れてしまった。
『にゅ……らぁ……』
「マニューラ、戦闘不能だ。」
「マニューラ、戻れ。よく頑張ったな。」
劣勢を優勢に変えたマニューラであったが、奮闘も虚しくゲンガーのトリッキーな動きに敢え無く敗北してしまう。これでお互いの残りポケモンは2体となり、戦況は振出しに戻った。
「これがプルメリの戦術か。厄介だが、方法ならある。出番だ!ルカリオ!」
『バウッ!』
次にグラジオが選出したのはかくとう・はがねタイプのはどうポケモン、ルカリオだ。しかしルカリオのかくとう技はゴーストタイプのゲンガーに対して効果がない。それでもルカリオを選出したのには何か意図があるのは間違いない。
「今度はこっちから行かせてもらうさ!ゲンガー、シャドーボール!」
『ゲェンガ!』
「ルカリオ!はどうだん!」
『バオウ!』
ゲンガーはシャドーボールで先制攻撃を仕掛けるが、ルカリオはその攻撃をはどうだんで迎え撃ち相殺した。
「ゲンガー!」
『ゲェン!』
プルメリの合図に合わせ、ゲンガーはフィールドから姿を消した。ゴーストタイプであるゲンガーの特徴を活かし、影の中に身を潜めたのだろう。このままでは姿の見えないゲンガーにルカリオが一方的にやられてしまう。
「ルカリオ!ゲンガーの波動を感じ取るんだ!」
『バウ……』
ルカリオは目を閉じて意識を集中させる。はどうポケモンであるルカリオは生物や物体の波動を感じ取り位置を目で捉えなくても把握することができる。その特徴を活かし、ゲンガーの位置を探ろうとしているのだ。
「……あやしいひかり!」
「っ!コメットパンチ!」
『バウ!』
一瞬ルカリオの影が僅かに光り、ゲンガーはルカリオに不意打ちを仕掛ける。しかしルカリオはその動きを見抜き、コメットパンチでゲンガーの体を鋭く、彗星の如き素早さで貫いた。
『ゲンッ!?』
ゲンガーはコメットパンチによる一撃で大きく吹き飛ばされる。その一撃によるダメージによって、ゲンガーは無理やり影から引き釣り出されて明らかな隙が生まれた。
「今だ!ボーンラッシュ!」
『バオウ!』
「かわしてシャドーボール!」
『ゲェン!』
ルカリオは骨で出来た棍棒を二本両手に取り一気に畳みかける。ゲンガーは自慢の身のこなしですぐに態勢を整えて空中に浮かびあがりその攻撃を回避する。
そして回避したゲンガーはシャドーボールで反撃をする。ルカリオはゲンガーのシャドーボールを、咄嗟にボーンラッシュで防御して防ぎダメージを殺した。
「コメットパンチ!」
『バオウ!』
「ふいうちで迎え撃て!」
『ゲン!』
「惑わされるな!波動を感じ取るんだ!」
『バウ!』
ルカリオがコメットパンチで畳みかける。ゲンガーもその攻撃をふいうちで止めに入るが、ルカリオは目を瞑ってゲンガーの波動を感じ取る態勢に入る。
ゲンガーがルカリオの背後の影から文字通りの不意打ちを仕掛けるも、ルカリオは波動を感じ取って即座に振り向いてコメットパンチを振り切った。お互いの息の詰まる攻防に観客たちも息を飲み込んだ。
『ッ!?ゲェン……』
立て続けにダメージを受け、自慢の身のこなしも死んでしまいダメージがピークになってしまったゲンガーは。今がチャンスだと、グラジオはトドメに入った。
「ボーンラッシュ!」
『バウ!』
ルカリオは再び両手に骨で出来た棍棒を持ち、一瞬で距離を詰めて最後の攻撃に入った。しかしそれはプルメリの罠で、彼女は最終手段に取っておいた技を披露したのだった。
「ゲンガー!みちづれ!」
『ゲェン!』
「なっ!?みちづれだと!?」
ゲンガーはボーンラッシュで吹き飛ばされ壁に衝突した。じめんタイプでもあるボーンラッシュはどくタイプのゲンガーに対して効果抜群。しかもあれだけのダメージが蓄積すれば一溜りもなく戦闘不能になる。しかしそれはゲンガーだけではなかった。
『ばっ……おう……』
ゲンガーだけでなく、勝者であったはずのルカリオも倒れてしまった。それはゲンガーが最後にしようしたみちづれ、と言う技が原因である。
みちづれは相手にダメージを与えることこそないが、技を使用したあとに自分が戦闘不能となった時、相手も同時に戦闘不能とする効果がある技だ。使用者であるゲンガーが戦闘不能となったため、ゲンガーを倒したルカリオもまた道連れとなり戦闘不能となってしまったのである。
「……ゲンガー、ルカリオ、共に戦闘不能だ。」
グズマの判決でゲンガー、ルカリオが戦闘不能と判断される。戦闘不能になったポケモンを両者共モンスターボールへと戻し、とうとう最後の一体を残すのみとなった。
「……あとはあんたに任せたよ、相棒。出番さね!エンニュート!」
『エンット!』
「ここで負けるわけには行かない。行くぞ!聖獣シルヴァディ!」
『シヴァ!』
お互いに繰り出したのは両者の相棒であるポケモンたち。どく・ほのおタイプを持つエンニュート、ノーマルタイプのシルヴァディだ。しかしシルヴァディはARシステムと言う特性を持っており、頭に埋め込んだ専用ディスクによりタイプを変化させることができる。
公式大会のルールにおいて、シルヴァディの特性はバトル中一度のみ使用することが許されている。しかしその場合Z技を使用することができず、一試合中どちらか一方の選択となる。それはトレーナーの力量次第で戦況も変わる、彼の腕の見せ所ということだ。
「シルヴァディ!エアスラッシュ!」
『シヴァヴァヴァ!』
「かわしな!」
『エント!』
シルヴァディの先制攻撃、エアスラッシュを素早い動きで難なく回避する。
「エンニュート!はじけるほのお!」
『エット!』
「っ、ブレイククロー!」
『シヴァア!』
エンニュートのはじけるほのおをシルヴァディは鋭いツメを開いて切り裂いた。はじけるほのおは地面に当たるとその場で弾けて追加効果によるダメージを受けてしまう。そのためグラジオはブレイククローで前もって相殺することで、ダメージを防いだのだった。
「やるじゃないか。ヘドロウェーブ!」
『エットット!』
エンニュートは毒の波で逃げ場のない広範囲攻撃を繰り出した。隙間のないほどの強力な毒がフィールドに蔓延し、シルヴァディが避ける隙間はほぼないに等しい
「シルヴァディ!鋼の力を身にまとい、忌まわしい毒を浄化せよ!」
『シヴァア!』
グラジオは銀色のディスクを投げ、シルヴァディの頭部に埋め込まれた。シルヴァディのトサカと尾が銀色に染まっていく。シルヴァディの特性により、彼ははがねタイプに変化を遂げた。
はがねタイプに対してどくタイプの技は効果がない。故にヘドロウェーブを無視してエンニュートに向かい突っ込んでいった。
「そう来るかい。」
「シルヴァディ!ブレイククロー!」
『シヴァア!』
『エント!?』
毒の波を超えたシルヴァディのブレイククローがエンニュートを切り裂き、その衝撃でエンニュートは大きくノックバックをしてダメージを負った。これを機に勢いに乗ったシルヴァディとグラジオは、今が攻撃のチャンスだと畳みかけた。
「シルヴァディ!もう一度ブレイククロー!」
『シルヴァ!』
再びシルヴァディはエンニュートへと突っ込んでいく。シルヴァディの全力を込めたマルチアタックがエンニュートに迫るが、その攻撃に対してプルメリは冷静に対応した。
「みがわりだよ!」
『エンニュ!』
「っ!?」
シルヴァディの攻撃をエンニュートの身代りが代わりに引き受ける。シルヴァディの攻撃は空振りに終わり、攻撃後の隙が逆にピンチを招く結果となってしまった。
「今だよ!はじけるほのお!」
『エンニュ!』
『シルヴァ!?』
「シルヴァディ!」
エンニュートのはじけるほのおがカウンターで決まり、シルヴァディを大きくのけ反った。現在のシルヴァディははがねタイプとなっており、どくタイプの技は無効化できるがほのおタイプの技は効果が抜群で入ってしまっている形勢が逆転し、今度はエンニュートの手番となったのだった。
「連続ではじけるほのお!」
『エント!エント!エント!』
エンニュートは連続ではじけるほのおを放った。はじけるほのおが一発シルヴァディに命中し、それ以外はシルヴァディの周囲に着弾して彼の体力をじわじわと削っていく。シルヴァディも熱さによる苦しみから一瞬膝をついてしまった。
「あたいのエンニュートはどく技だけじゃないんだよ!これで終わらせるさね!」
プルメリは手を交差して最後の攻勢に出る。彼女はシルヴァディに隙のできた今、Z技でとどめを刺すために勝負に出たのだ。
「あたいがZ技を使うなんて思ってなかったけど、勝つためならあたいたちの全力を見せてやるさ!」
『エント!』
プルメリとエンニュートの気持ちが一つに重なる。Zパワーが二人の間で膨れ上がり、最大パワーのZ技が解き放たれる。
――ダイナミックフルフレイム!
エンニュートのほのお技を媒体にしたZ技、ダイナミックフルフレイムが放たれる。広範囲、高火力のその技をシルヴァディを飲み込もうとしていた。リーリエを含む観客たちも絶体絶命のその状況に息を飲み込んで見守っていた。
「……シルヴァディ!」
『シヴァ?』
「俺たちならやれる。行くぞ。」
『……シヴァア!』
シルヴァディはグラジオの言葉に応えるように大きく咆哮する。そしてツメを立てて、グラジオはシルヴァディに指示を出した。
「ブレイククロー!地面に突き立てろ!」
『シ……ヴァア!』
シルヴァディはツメで地面を抉り裂き、空中に砂を巻き上げた。何をする気なのかと全員が疑問に感じていると、次の瞬間驚きの行動に出たのだった。
「シルヴァディ!そのまま突っ込め!」
『シルヴァア!』
「なにっ!?一体何をする気だい!?」
シルヴァディはダイナミックフルフレイムに対して正面から突っ込む。はがねタイプとなっているシルヴァディにとって、ほのお技は天敵中の天敵。喰らってしまえば一溜りもない。それでもシルヴァディとグラジオは互いに信頼し合い、この戦術に賭けたのだった。
「血迷ったのかい?だが、これであんたのシルヴァディは……」
『シヴァア!』
「なんだって!?」
これで決着がついたと思ったプルメリだが、シルヴァディは燃え尽きることなくダイナミックフルフレイムの中を突き進んでいる。一体なぜ、と思ったその時、シルヴァディの鋼の体を何かが包み込んでいるのがキラリと光って見えた。
「っ!?まさか、地面の砂を体に纏ってコーティングしたとでも言うのかい!?」
『エンッ!?』
そう。シルヴァディは先ほど巻き上げた砂を体に振りかけ、ほのおの衝撃を砂に吸収させることでダメージを軽減させているのだ。信じられない光景だが、実際現実で行われている現象だ。なによりこれは彼らの厚い信頼関係があるからこそ成り立っている戦術である。
「決めろぉ!マルチアタックー!」
『シルヴァアアア!!』
シルヴァディは炎を切り裂き、エンニュートの身体を貫いた。全員が息をするのを忘れ見守っていると、暫くしたらエンニュートは力尽きてその場で倒れてしまった。そしてその場に最後まで立っていたのは、グラジオのポケモンであるシルヴァディだった。
『えんっ……とぉ……』
「……ふん、エンニュート、戦闘不能。よって、グラジオの勝利。」
グラジオの勝利が宣言され、3人目の準決勝に勝ち上がったトレーナーはグラジオに決定した。
「……ふぅ、よく頑張ったね、エンニュート。ゆっくり休みな。」
「シルヴァディ、大丈夫か?」
『シルヴァ』
プルメリはエンニュートをモンスターボールへと戻し、グラジオも最後まで自分を信用して戦ってくれたシルヴァディの頭を優しく撫でる。その様子を見たプルメリは、ゆっくりと彼の元へと歩いて近付いた。
「まったく……まさかあんな方法で突破されるなんて思わなかったね。」
「ふっ、どっかの誰かに影響されただけだ。」
「次の試合、恐らく相手はあのお姫様になるんだろ?」
「ああ、間違いないだろう。アイツは必ず勝ち上がってくる。」
「まっ、精々どっちも頑張りな。二人とも応援してやるさね。」
プルメリはグラジオに激励を贈った後、手を振りフィールドを去る。両者の健闘を称え、観客のみんなは盛大な拍手を送った。
彼女の言葉を聞き、背中を見送ったグラジオは、心の中で決意をあらわにする。
「……ああ、俺は負けない。例え相手が妹でも、あいつであっても、絶対に勝って見せる。」
グラジオ、シルヴァディはお互いに気持ちを一つにし準決勝へと挑む決意を新たにする。明日、遂にアローラリーグはクライマックスを迎える。
なんかこの作品のトレーナがみんなしてサトシスタイルになってる気がする
大体シンジ君のせいってことで
ところで前回のアニポケリーリエ回はとてもよかった。作画も気合入ってたように見えたのは気のせいじゃない?
シンジが最終戦で使うブイズはニンフィア、イーブイに加え残り4匹は誰がいい?(投票数の多い順に選ばれます)
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シャワーズ
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サンダース
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ブースター
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エーフィ
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ブラッキー
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リーフィア
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グレイシア