ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》 作:ブイズ使い
予選が終わった翌日。本戦に参加することとなった16人のトレーナーが集まっており、多くの人たちが試合を見守っていた。
参加するトレーナーの内リーリエ、グラジオ、ヒナ、ヨウ、ハウ、プルメリの6人が特に注目を浴びる選手であることは間違いないだろう。
1回戦目の試合はヨウ、3回戦目がハウ、5回戦目でグラジオが戦い6回戦目でプルメリがバトルを行い、既にバトルは終了していた。
結果は全員とも勝利に終わり、ヨウはガオガエン、ハウはジュナイパーにより他を寄せ付けないストレート勝ちをしていた。グラジオはルカリオを使用し、波動と絆の力を見せ余裕の勝利を収めていた。プルメリも相棒であるエンニュートのトリッキーなバトルで客を驚かせ、敵を翻弄しての勝利は流石と言うべき内容であった。
そして注目すべき第8回戦。遂に訪れたリーリエとヒナ、ライバル同士による戦いの日がやってきたのであった。
「遂に来ましたね……この時が……」
バトルフィールドへと続く通路で待機していたが、待ちわびていた戦いを前に緊張を隠せないでいた。
旅に出たその日、初めて会ったリーリエに同行して憧れ、彼女を目標にしてここまでやってきた。決して楽な道のりではなかったが、それでもリーリエと戦う日を夢見てここまで勝ち上がりバトルの日を迎えた。
目標の舞台を前にしてヒナは深呼吸を繰り返す。まだ緊張はしているが、動悸は先ほどに比べ落ち着いてきたように感じる。
「……よし!」
ヒナは覚悟を決め、歩みを進める。それと同時に会場に響く司会の声が聞こえてきた。自分の名前が呼ばれるのと同時に、ヒナはバトルフィールドに姿を現したのだった。
「リーリエさん」
「ヒナさん」
ヒナはリーリエと向かい合う。対するリーリエも向かいに立ち、ライバルとして彼女の目を真っ直ぐと見つめる。その姿を目にして、遂にこの時が来たのだとヒナも更に実感するのだった。
「リーリエさん。今日は全力で戦います。成長した私の姿……見せます!」
「私もあの時より成長しています。負けませんよ!ヒナさん!」
今朝まで同じ部屋で友人として顔を合わせていた二人。しかし今はライバルとして向かい合い、お互いトレーナーとしての威圧感が放たれている。今までのバトルとは毛色が違うと、観客の皆も息を飲み込んだ。
アローラリーグは準決勝までは3対3のバトルで進んでいき、決勝戦では6対6のフルバトルで優勝を争うルールとなっている。リーリエとヒナが使用できるのはお互いに3匹までである。
「それではこれよりアローラリーグ1回戦、8試合目を開始する!両者!同時にポケモンを出すのじゃ!」
審判はポニ島のしまクイーンハプウが務める。ハプウの声に、二人はモンスターボールを手にして同時にフィールドに投げた。
「お願いします!フシギバナさん!」
「行きますよ!アマージョちゃん!」
『バァナァ!』
『アマッ!』
リーリエが繰り出したのは最近進化しパワーが飛躍的に上昇したフシギバナ。対してヒナが繰り出したのは同じくくさタイプのアマージョであった。
『アマージョ、フルーツポケモン。くさタイプ。美脚の持ち主でキックの名手。攻撃的な気質で、敵を容赦なく踏みにじる様はまさに女王として恐れられている。』
「リーリエ選手対ヒナ選手!バトル始め!」
お互いの準備が完了したと判断した審判のハプウが合図し、その合図と共に動き始めたのは意外にもヒナであった。
「アマージョちゃん!走って下さい!」
『アッジョ!』
ヒナの指示通りアマージョは走り始める。蹴り技の得意なアマージョにとって適正距離は間違いなく近距離戦。近づかせるわけには行かないと、リーリエもフシギバナに指示を出す。
「フシギバナさん!はっぱカッターです!」
『バナァ!』
フシギバナは無数の鋭い葉を飛ばして反撃する。しかしアマージョの動きは非常に素早く、はっぱカッターの合間を潜って接近を許してしまう。
「ローキック!」
『ッジョ!』
アマージョは充分な距離に接近すると、スライディングでフシギバナの懐に潜り込む。アマージョのスライディングはフシギバナの前足に直撃し、フシギバナの強靭な足を崩したのだった。
『バナッ!?』
「今です!ふみつけ!」
『アッジョ!』
アマージョは飛び上がり、フシギバナの頭部に連続でふみつけをする。ふみつけのダメージに苦しむフシギバナだが、その攻撃を耐えて目を見開いた。
「フシギバナさん!つるのムチです!」
『バァナァ!』
『ジョジョ!?』
フシギバナの大きな咆哮にアマージョは怯んでしまい、一瞬の隙を突いてフシギバナはつるのムチでアマージョの足を絡めとる。自慢の足を防いでしまえば、アマージョは何もすることができない。
「そのまま叩きつけてください!」
『バナ!』
フシギバナはつるのムチで捕まえたアマージョを地面に叩きつける。フシギバナの強力な一撃はアマージョの体力を大きく奪った。
「続けてはっぱカッターです!」
『バナァ!』
『アッジョォ!?』
「アマージョちゃん!」
隙を見逃さずリーリエははっぱカッターで追撃を仕掛ける。ダメージを受けたばかりのアマージョは回避行動に移ることができず、追撃で大きく吹き飛ばされた。くさタイプであるアマージョに対して効果はいまひとつだが、それでも怒涛の連続攻撃を食らえば流石にダメージとしては大きいものとなっている。
「こうごうせいで回復です!」
『バァナァ』
フシギバナはこうごうせいにより太陽の恵みを受けて体力の回復を行う。冷静な対応に、ヒナは流石だと言う尊敬と同時に顔をしかめた。
(こうごうせいがあるとすると生半可な攻撃は無意味です。なにかいい手は……)
ヒナは考える。すると一つだけ、ヒナはあることに気付くのだった。
(フシギバナちゃんの足……あそこは……)
フシギバナの前足の怪我が完治しておらず、そこにはまだ傷跡が残っているのが確認できた。その場所は先ほどアマージョがローキックによる初撃を加えた場所であった。
(それなら……!)
「アマージョちゃん!トロピカルキック!」
『アッジョ!』
アマージョは再び走り出す。フシギバナも対抗しようとするが、体が大きくなったことでフシギソウの時よりも機動力が低下してしまい、アマージョのスピードに反応できなかった。
対するアマージョはダメージによるスピードの低下を感じさせない動きで、瞬時にフシギバナの目前まで迫ってきたのだった。これはヒナがアマージョのことを非常によく育てている証拠であった。
アマージョはトロピカルキックを繰り出した。そのトロピカルキックはフシギバナの急所ではなく、フシギバナの前足を狙ったものだった。フシギバナは怪我を負っていた前足に追撃のダメージを受けてしまい、苦しさから前足が崩れ倒れ込んだ。
「ふ、フシギバナさん!」
「追撃です!アマージョちゃん!リーフストーム!」
今度は強力なくさタイプの技、リーフストームの構えに入る。動けないフシギバナであれば簡単に命中させることができる、との判断による攻撃だろう。このままではマズい状況だが、リーリエは全く諦めていなかった。
「フシギバナさん!はっぱカッターです!」
『バナァ!』
倒れた状態のままフシギバナははっぱカッターでアマージョのリーフストームに対抗する。すると驚くべきことに、アマージョのリーフストームをフシギバナははっぱカッターで打ち消していたのだった。
倒れた状態から、しかも踏ん張りが利かないにも関わらず、はっぱカッターでリーフストームに対抗したことに驚くヒナ。その時、リーリエは一か八かの攻撃に出る。
「フシギバナさん!ソーラービームスタンバイです!」
『バァナ』
ここでリーリエがとった選択はソーラービームであった。ソーラービームは威力が強力な分、チャージに時間が掛かってしまう大技だ。タイミングを見誤れば発動する前にやられてしまう。
「発動する前に攻め切ってしまいます!アマージョちゃん!トロピカルキック!」
『アジョ!』
アマージョはトロピカルキックによって頭部に一発の蹴りを入れる。フシギバナもそのダメージで顔を歪ませるが、まだまだ倒れないと気合を見せる。
「ならばそのままふみつけ!」
『アッジョ!』
「フシギバナさん……耐えてください……」
アマージョはトロピカルキックの反動でフシギバナの頭上に飛び上がり、連続のふみつけでフシギバナにダメージを与えていく。怒涛の連続攻撃にフシギバナも苦しみが隠せないでいる。
しかしフシギバナはリーリエの期待に応えるため、根性でその攻撃を耐え続えけていた。そして遂に背中の大きな花に光が集中して強い光を放つ。
「今です!ソーラービーム発射!」
『バァァァナァァァ!!』
『ジョッ!?』
フシギバナの渾身のソーラービームが解き放たれ、フィールド全体を眩い光が包み込む。その攻撃はアマージョ、そしてフシギバナさえも包み込み、フィールドの様子が確認できない状況になった。
二人は息を飲み込む。自分のポケモンはどうなったのかと心配しながら見守っていると、光が晴れたそこにいたのは、倒れていたフシギバナとアマージョの姿だった。
「フシギバナさん!」
「アマージョちゃん!」
『ば……なぁ……』
『あっじょ……』
「フシギバナ、アマージョ、両者共に戦闘不能じゃ!」
ハプウの判断により両者ダブルノックダウンの判定が下される。強力な攻撃を受けたアマージョだが、フシギバナも自身の強力なソーラービームの反動を耐え切る体力がなかったのだろう。最初のバトルから熱い展開が繰り広げられ、観客たちもヒートアップしていた。
リーリエとヒナはお互いのポケモンをモンスターボールへと戻す。開幕から想定外の結果ではあるが、まだバトルは始まったばかりである。両者は最後まで頑張ったポケモンに感謝し、次のモンスターボールを手に取った。
「お願いします!マリルさん!」
『リルル!』
「次はこの子です!モクローちゃん!」
『クロー!』
次にリーリエが繰り出したのはみずタイプのマリル。ヒナが繰り出したポケモンは旅に出た時最初に選んだポケモン、モクローであった。どうやらヒナのモクローはまだ進化していない、もしくは意図的に進化させていないようだ。
「今度は私たちから行きます!マリルさん!バブルこうせんです!」
『リルゥ!』
「かわして!モクローちゃん!」
『クロォ!』
マリルは初手でバブルこうせんの牽制攻撃を放つ。しかしモクローは空に飛び上ってあっさりと回避した。進化していない分体が身軽で小回りも利くため、機動力はジュナイパーよりもモクローの方が上のようだ。
「モクローちゃん!このは!」
『クロ!』
回避した直後、モクローはこのはで即座に反撃を繰り出す。はっぱカッターにも似た弾幕が独特の風邪に乗った軌道でマリルを襲った。
『リルゥ!?』
「マリルさん!」
マリルはこのはの反撃でダメージを受けてしまう。みずタイプであるマリルに、くさタイプのこのはは効果抜群だ。この一撃はかなり大きいものだろう。
「マリルさん!もう一度バブルこうせんです!」
『リルゥ!』
マリルのバブルこうせんが空中にいるモクロー目掛けて飛んでいく。しかしモクローは特に苦労することなくその攻撃を回避する。
「今度はころがるです!」
『リル!』
マリルはころがるで勢いよく地上から接近する。距離を縮めたところでモクロー目掛けてジャンプし、ころがる攻撃で直接撃ち落とそうとする。
「モクローちゃん!かげぶんしん!」
『クロ!』『クロ!』『クロ!』『クロ!』『クロ!』
モクローはかげぶんしんで自身の分身を作り出し、マリルのころがるによる追撃を回避する。マリルは回避されたことに驚きながらも地上に着地し、モクローの方へと振り向く。するとそこには無数に増えたモクローの姿があったのだった。
「モクローちゃん!ブレイブバード!」
「ブレイブバード!?」
思ってもいなかった大技にリーリエは驚きの声をあげる。無数のモクローが地上へと降下し、一斉にブレイブバードで強襲を仕掛けてきた。まだ体は小さいとはいえ、これだけの数が大技を繰り出して突撃してきたら相当なプレッシャーを感じてしまう。
「っ!アクアテールで纏めて薙ぎ払ってください!」
『リル!』
マリルは尻尾に水のエネルギーを集中させ、モクローのかげぶんしんごと迎え撃つ。数が多いとはいえ初戦は分身。本体以外には攻撃力が一切ないため分かっていれば脅威ではない。
マリルはアクアテールでかげぶんしんを全て一斉に薙ぎ払った。しかし分身は全て消したのだが、本体でモクローの姿が見当たらなかった。
「っ!?し、しまった!」
その時リーリエはモクローの特徴を思い出した。しかし気付いてた時には遅く、モクローは既にマリルの背後に回っていた。
「今です!シャドークロ―!」
『クロォ!』
『リル!?』
羽音もなく接近したモクローは背後から鋭い足の爪から放たれる一撃、シャドークロ―でマリルを吹き飛ばす。マリルはその一撃で大きく吹き飛ばされるも、すぐに態勢を変更して反撃の準備へと移っていた。
「マリルさん!ハイドロポンプです!」
『リィルゥ!』
『クロッ!?』
マリルは吹き飛ばされながらも鉄をも切り裂く勢いのハイドロポンプで反撃をする。まさかの反撃にモクローは驚き、咄嗟のことで回避できずハイドロポンプの直撃を受けてしまう。
「っ!さすがリーリエさん。そんな態勢で反撃するとは……」
本来空中で態勢を変えて反撃するのは至難の業。しかしリーリエは咄嗟にそれをやってのけてしまった。本人はあまり自覚してはいないが、彼女がポケモンを信じているからこそポケモンたちがその想いに応えて成せることである。
『リル……り、るぅ……』
「っ!マリルさん!」
力を振り絞り反撃したマリル。しかしこれまでのダメージが大きかったのかハイドロポンプを放った直後、立ち上がることができずに倒れ込んでしまった。
「マリル!戦闘不能!」
「マリルさん、お疲れ様です。ゆっくり休んでください。」
最後まで自分の想いに応えて戦ってくれたマリルに感謝するリーリエ。マリルをモンスターボールに戻すと、ヒナの方へと顔を向ける。
「ヒナさん、昔とはまるで別人に感じるぐらい成長しましたね。私、正直かなり驚いています。」
「ありがとうございます!リーリエさんに追いつくために、私はここまで頑張ってこれました!」
「その気持ち、とても嬉しいです。ですが!私は、私たちは絶対に負けません!」
そしてリーリエは最後のポケモンが入ったモンスターボールを取り出す。
「……お願いします!カイリューさん!」
『バオウゥ!』
リーリエが最後に繰り出したのはカイリューであった。ハクリューから進化し、パワーもスピードも格段に上がったカイリューは迫力も増し、とてつもない威圧感がヒナとモクローを襲う。
「すごい迫力です……ですが私たちも負けません!」
『クロッ!』
「カイリューさん!しんそくです!」
『バウ!』
『クロッ!?』
カイリューは開幕からしんそくで一瞬で距離を詰めて攻撃した。その大きな体からは想像できないスピードによる一瞬の攻撃に、モクローとヒナは対応することができなかった。
「続けてれいとうビームです!」
『バオウ!』
カイリューはれいとうビームで攻撃し、その攻撃がモクローに直撃する。くさ・ひこうタイプを持つモクローにこおり技は効果抜群だ。その攻撃によってモクローは凍りつき、地上に落ちてピクリとも動かなくなった。
「モクロー!戦闘不能!」
今度は入れ替わりでモクローが戦闘不能となった。。カイリューの思いがけないスピードに、ヒナは感嘆する他なかった。
「モクローちゃん。ありがとう、ゆっくり休んでね。」
モクローをモンスターボールへと戻すヒナ。そして遂にヒナも残り一体となり、そのポケモンに最後の戦いを託すこととなった。
「私の最後のポケモンちゃん……お願いします!ドレディアちゃん!」
『ディア♪』
ヒナの最後のポケモンは予選のバトルロイヤルでも活躍したチュリネの進化形、ドレディアであった。カイリューに対しては相性が悪いが、1回戦突破を賭けて最後の戦いが幕を開ける。
「カイリューさん!れいとうビームです!」
『バウ!』
「かわして!」
『ディア!』
カイリューは空中に羽ばたきれいとうビームで攻撃する。しかしドレディアはその攻撃をお嬢様の様な可憐さを披露しながら回避した。
「にほんばれ!」
『ディイアァ♪』
ドレディアが空に舞いを披露すると、強い日差しが会場を包み込む。
「カイリューさん!しんそくです!」
再びカイリューは目にも止まらないスピードで接近する。このスピードならば攻撃が決まる、そう誰もが思った時意外な結果が待っていたのだった。
「はなふぶき!」
『ディア!』
ドレディアは全身を花吹雪で包み込み、身を隠すように姿を消す。しんそくのスピードに追い付き、カイリューの攻撃を回避したのだった。その時、リーリエはドレディアの特徴を思い出す。
「っ!ドレディアさんの特性はようりょくそ、ですか。」
ようりょくその特性は、日差しが強い時に自身の素早さを飛躍的に上げる特性だ。くさタイプであるにもかかわらずにほんばれで天候を変更してきたのは、カイリューの素早さを超える意図があったのである。
「今です!フラフラダンス!」
『ディィア♪』
ドレディアはフラフラダンスでカイリューを自分の世界に誘い込む。フラフラダンスによってカイリューを目を回してしまい、混乱状態となってしまった。
「カイリューさん!?」
「ドレディアちゃん!はなびらのまい!」
『ディア♪』
ドレディアははなびらのまいでカイリューに追撃する。花を舞い散らせ、荒々しく踊りカイリューにダメージを与える。混乱状態で反撃できないカイリューは、立て続けにドレディアの攻撃を受けてしまいダメージが蓄積していく。
「っ!?今は……今は耐えてください!」
『ッ!?』
チャンスは必ずやってくるとリーリエはカイリューにそう願う。リーリエの声と気持ちが届き、カイリューは反撃することなく防御の態勢に移行した。
混乱状態は攻撃しようとすると訳も分からず自分を傷つけてしまう状態異常だ。だが防御であれば自分を攻撃する心配もないため、チャンスが来るまで耐える寸法なのであろう。
ならばこのまま攻撃し続けて体力を削っていこうとドレディアははなびらのまいを継続する。防御して耐え続けるカイリューだが、次第にカイリューの体が鋭い花びらで傷付き、ダメージが蓄積しているのが分かる。やられてしまうのも時間の問題だ。
ドレディアの攻撃が続く中、次第に先ほどまでの勢いが収まってきた。明らかにパワーダウンしたその現象に、ヒナは「どうして!?」と焦るを見せる。その瞬間に原因に気付き、ヒナは空を見上げた。
空には先ほどよりも雲の量が増え、太陽の日差しが少なくなってしまっていた。にほんばれの効果が消え、ようりょくによる素早さ上昇効果を失ってしまったのだ。素早さがダウンしたことにより、パワーの低下と攻撃の隙間が目立ってしまう。
次の瞬間、カイリューは苦しそうにしていた目をカッと見開く。混乱から解放され、ついに自分を取り戻したのである。
「今ですカイリューさん!げきりん!」
『バオオォウゥ!』
『ディア!?』
カイリューは大きな咆哮を上げると同時に体が赤いオーラで包みこまれる。カイリューは逆鱗状態となり、全力の攻撃がドレディアを吹き飛ばして反撃した。
「っ!?ドレディアちゃん!」
『ディ……ア!』
大きなダメージを受けてしまったが、それでもまだまだ行けるとドレディアは態勢を整える。そこでヒナはこれで対抗するしかない、と腕のリングを構える。
「来ますよ!カイリューさん!」
『バオゥ!』
逆鱗状態のまま目に血を走らせ集中するカイリュー。ヒナは腕を構えてあの態勢へと移行した。
「私の最後の全力、リーリエさんたちに見せます!」
『ディア!』
大地から自然の力を感じ、花咲く演出をするそのポーズはくさタイプのZ技のポーズであった。
ブルームシャインエクストラ!
ヒナとドレディアの全力、ブルームシャインエクストラが発動する。フィールドに満開に広がる花々がカイリューを包み込み、大きな爆発を引き起こした。強力な技がカイリューに炸裂し、その代償としてヒナたちの体力はかなり消耗してしまっていた。
「はぁ……はぁ……これで、私たちの……っ!?」
爆風が包み込み手ごたえを感じていたヒナは勝利を確信した。しかし光が爆風を振り払い、そこには未だ逆鱗状態のカイリューが立っていた。そしてリーリエは腕をクロスさせ、腕に装着してあるZリングとZクリスタルが眩い輝きを放っていた。
「これが……私たちの全力です!ヒナさん!受け取ってください!」
リーリエが構えたのはノーマルタイプのZ技。その全力のオーラがカイリューを包み込む。カイリューもリーリエの想いを受け取り、全力のZ技を放った。
ウルトラダッシュアタック!
カイリューは背中に生えた翼を羽ばたかせ、地上に衝撃を引き起こしながら低空飛行でドレディアに向かって突っ込んでいく。Z技の発動で体力を失い、回避する体力もないドレディアにカイリューのウルトラダッシュアタックが直撃する。
その一撃でドレディアはヒナの背後まで吹き飛ばされ、壁に激突し追加ダメージを受けてしまう。ヒナが心配になり振り向くと、そこには目を回して力尽きていたドレディアの姿があった。
『でぃ……あ……』
「ドレディア!戦闘不能!カイリューの勝ち!よって勝者!リーリエ選手じゃ!」
「はぁ……はぁ……勝ちました……カイリューさん!勝ちましたよ!」
『ば……おう……』
リーリエは喜びカイリューに近付くが、当の功労者であるカイリューは逆鱗状態が解け、その上Z技の体力消耗によりその場で倒れ込み力尽きてしまう。
「カイリューさん、がんばりましたね。お疲れ様です。」
『ばうぅ』
リーリエは頑張ったカイリューに撫でながら感謝すると、カイリューは力ない声で返答する。ギリギリの勝負に喜びながらも、ドキドキした感情が抜けきれずにリーリエはカイリューをモンスターボールへと戻した。
「お疲れ様です。ドレディアちゃん。ゆっくり休んでください。」
同じくドレディアをモンスターボールに戻したヒナは、リーリエの元へと歩いていく。
「いやぁ、負けました!ですが私、今ではとてもすっきりしています!」
「ヒナさん。」
「正直ここまでこれるなんて思っていなかったんです。ですがリーリエさんと戦えて、リーリエさんも私に全力で応えてくれて、とても満足しました!絶対勝ち上がってください!私の分まで!」
「はい!必ず勝ち上がってみせます!全力で!」
ヒナとリーリエは最後に健闘を称えて握手を交わす。そんな二人を観客のみんなは暖かい拍手で称えていた。
そしてリーリエはバトルフィールドを去る前に、ある人物のいる場所へと目を移した。
(私は絶対に負けません。ヒナさんの想いを受け取りました。それに、あの人と戦うまで、負けられませんから!)
アンケートはまだまだ受付中です。好きなブイズでもいいので投票してくれると私は嬉しいです。
シンジが最終戦で使うブイズはニンフィア、イーブイに加え残り4匹は誰がいい?(投票数の多い順に選ばれます)
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エーフィ
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リーフィア
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グレイシア