ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》 作:ブイズ使い
それにしてもアニポケリーリエの凍りついた眼差しが可愛かった。さよならマーマネ回でもそうだったけど、怒っても可愛いとか卑怯でしょ。
まあアローラ編ラストなので楽しんでください。
フフフ…メタルジェノサイダー…デッドエンドシュート!
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僕はアローラ地方のチャンピオンとなり島巡りを始めた土地、メレメレ島に戻ってきた。僕たちがリリィタウンへと帰ると、そこでは母さんやリーリエが出迎えてくれた。
「リーリエ!?なんでここに!?」
「シンジさんがアローラチャンピオンになったと聞いて駆けつけてきたんです。お母様はグズマさんが見てくださるようで、今はぐっすりと眠っています。」
「……そっか。ありがとう、リーリエ。」
僕はわざわざ駆けつけてくれたリーリエに感謝すると、リーリエは笑顔で祝福してくれた。母さんも僕がチャンピオンになったことを喜んでくれているみたいで、泣きながらみんなに感謝してまわっていた。あんな母さんの姿を見たのは初めてだけど、それでも僕はとても嬉しかった。あの母さんが泣きながら自分のことのように喜んでくれるのがとても……。
その後、僕たちはその祭りを楽しむことにした。住人の方が開いてくれた屋台やミニゲーム、守り神に捧げる踊りにキャプテンやしまキング、しまクイーンたちによるZ技のポーズなども披露。木の陰でこちらを眺めているグラジオの姿も見かけたが、どうやら祭りを楽しんでいるリーリエを微笑みながら眺めており、安心したのか、それとも満足したのか、グラジオは立ち去っていく。
その後はトレーナーたちによるポケモンバトルが披露された。ククイ博士…………もといロイヤルマスクも参加したバトルロイヤルが行われた。みんな思い思いにバトルを楽しんでいたが、リーリエが僕に声をかけ、こっそり抜け出しませんか、と言ってきた。僕はリーリエについて行くことにしてみんなに気付かれないように祭りを抜け出す。
僕たちはマハラ山道、リーリエと出会ったつり橋についた。どうやら橋は修復されており、カプ・コケコのいる遺跡へと向かうことが出来るようになっていた。
「覚えていますか?私たちがここで出会った時の事……」
「……勿論だよ。あの時はほしぐもちゃんがオニスズメに襲われていて、僕は夢我夢中で助けたんだっけ。」
「あの時は本当にびっくりしましたよ。突然シンジさんが私の横を走って抜けていくんですから」
「あはは、僕は考えるよりも先に体が動いちゃうからね。」
僕とリーリエはここで出会った時のことを思い返す。思い返せば昔のように思えて、昨日のようにも感じてしまう、不思議な感覚だった。そこでリーリエは一つの提案をする。
「あの時、私たちはカプ・コケコさんに助けていただきました。今日はそのお礼をしようと思い、ここに来ました。」
「あの時は姿を見ることは出来なかったからね。面と向かってお礼をしたいと僕も思っていたよ。じゃあ行こうか!」
「はい!」
僕とリーリエは長いつり橋を渡っていく。今の僕たちにはこの程度のつり橋は怖くない。数多あった試練を乗り越えてきた僕とリーリエには。そしてカプ・コケコのいる遺跡に前で辿り着き、カプ・コケコが祀られているという祭壇に到着する。
「ここがカプ・コケコのいる……」
僕たちは祭壇に登り眼を瞑ってカプ・コケコを心の中で呼ぶ。すると不思議な感覚にとらわれ、目を開けると何もない空間に一人突っ立っていた。しかしすぐ目の前に黄色いポケモンが姿を現した。
「まさか……君がカプ・コケコ?」
僕は直感的に目の前にいるポケモンがカプ・コケコなのだと感じた。僕の言葉にカプ・コケコは頷き、僕のモンスターボールに指をさしてくる。どうやらカプ・コケコは僕とバトルがしたいようだ。
「そうか……わかった。それが君への感謝の気持ちとなるのなら、僕は喜んで君と戦うよ!」
あの気まぐれな守り神と言われるカプ・コケコから指名を貰ったのはなんだか偶然じゃないと僕は感じた。カプ・コケコは気まぐれであると同時に戦の守り神とも称されている。もしかしたら、カプ・コケコはこの島巡りの旅で僕が強くなり、また自分の目の前に立つ日を心待ちにしてくれていたのかもしれない。だったらその思いに応えるのも僕の使命だ!
僕はカプ・コケコとの対決を決意し再び眼を瞑る。すると僕はまたカプ・コケコの祭壇へと立ち、カプ・コケコと対峙する。僕のその姿を見たリーリエは、どうやら何かあったことを察知して静かに僕の後ろで見守ってくれている。そして僕はカプ・コケコに対し、一番の相棒を繰り出すことに決めた。やはりここは君しかいないよね!
「お願い!ニンフィア!」
一番の相棒であるニンフィアを繰り出す。そして戦闘が始まると同時に、フィールド全体が黄色に染まる。どうやら自動的にエレキフィールドが発生したらしく、それこそがカプ・コケコの特性のようだ。ロトム図鑑によると、カプ・コケコの特性はエレキメイカーと言うらしい。
「行くよ!カプ・コケコ!」
カプ・コケコと向かい合った僕たちは、カプ・コケコよりも先に動き出す。様子を見ずに動くのは愚行かもしれないが、あのカプ・コケコが相手だ。可能な限り後手に回るのは避けたい。そして僕はニンフィアに攻撃の指示を出して先手を取る。
「ニンフィア!シャドーボール!」
ニンフィアはシャドーボールを放ちカプ・コケコを牽制する。しかしカプ・コケコは避ける動作をしない。それどころか両腕で顔を覆い、ガードの態勢に入る。どうやら僕たちの力を試そうとしているようだ。シャドーボールはカプ・コケコに直撃するも、まるで効いていないかのように腕を振るって煙を払う。当然のことながら一筋縄ではいかないようだと思い、僕とニンフィアもより一層気合を入れる。
次に動いたのはカプ・コケコだ。カプ・コケコは周囲一帯に電気をばら撒いて攻撃してくる。恐らくほうでんだろう。あまりに範囲が広く、避けるのも困難であるため、ニンフィアはそれをまともに受けて飛ばされてしまう。なんとか持ちこたえて倒れるのを拒んだものの、やはりエレキフィールドの効果も相まって威力も格段に上がっている。そのため、ニンフィアの体力も大きく削られてしまった。
「やっぱり強いね、カプ・コケコ。でも僕たちは負けないよ!でんこうせっか!」
ニンフィアは素早い動きで翻弄しながらカプ・コケコに接近する。しかしカプ・コケコも分かっていたと言わんばかりに、こうそくいどうで対抗してくる。だが逆に言えば、それは僕の想定内でもある。
「ジャンプしてムーンフォース!」
接近してきたカプ・コケコを飛び越え、頭上からムーンフォースを放つ。カプ・コケコは突然の動きに対応できず、そのまま直撃をくらい飛ばされる。素早さが早いのは初めて出会ったあの時から分かっていた。だからこそ素早さで対抗してくることは読めていた。
「シャドーボール!」
態勢を崩した今が攻め時だと思い、僕は追撃の指示を出す。しかしカプ・コケコは、その追撃を急上昇することで回避する。そしてカプ・コケコは急降下して地面を殴る。そこから紫色の稲光が出現する。直感でやばいと感じた僕は、ニンフィアにジャンプして躱すように指示を出す。なんとか躱すことが出来て安心したのも束の間、カプ・コケコは自慢のスピードでニンフィアに接近し、直接殴りかかってくる。空中で対応できないニンフィアは飛ばされてしまい、更にダメージを負ってしまう。先ほどの技で上手く誘導して追撃を仕掛ける様子を見て、カプ・コケコは戦の守り神と称される理由が分かった気がした。
だがニンフィアも直ぐに態勢を整え反撃の構えをとり、すかさずでんこうせっかを仕掛ける。カプ・コケコもダメージが残ってるのか、先ほどのスピードよりも動きが衰えており、避けることが出来ず腹部にでんこうせっかが直撃する。その攻撃でお互いに位置が一定の距離まで離れて相手の姿を見据える。どちらもこれまでの戦いの疲労とダメージを抱えているため肩で息をしている状態だ。とは言えこれ以上長引くと、確実にこちらが不利だろう。僕は最後の一手を仕掛けるために手を交差させて構える。
僕の最後の一手。それはZ技しかない。特にカプ・コケコのような相手ならば出し惜しみしている余裕なんかない。カプ・コケコも僕たちの全力のZ技を待っていたかのように、電気を身に纏って向かい打つ態勢をとる。構えを見る限りでは、ワイルドボルトだろうか。僕とニンフィアも心を一つにして全力のZ技を放つ。
「カプ・コケコ!これが僕たちの全力だ!」
――――『ウルトラダッシュアタック!!』
僕たちの放ったZ技はノーマルZのZ技…………ウルトラダッシュアタックだ。カプ・コケコも同時のタイミングでワイルドボルトで迎え撃ってくる。そしてお互いの技が中央でぶつかり合う。どちらの技も威力が凄まじいため、祭壇一面に土埃が舞い上がり中央の様子が見えなくなってしまう。僕も爆風に飛ばされない様に帽子を押さえて必死に耐える。それほどまでの衝撃だった。
暫くすると爆風も収まり、少しずつ中央の様子が見えてくる。そしてハッキリと映った瞬間、その様子は驚きの光景だった。ニンフィアもカプ・コケコも互いにボロボロではあったが倒れていなかったのだ。一瞬僕のニンフィアがふらついて倒れそうになるも、僕が名前を呼んだ瞬間、なんとかして持ちこたえてくれた。その様子に僕が安心すると、今度はカプ・コケコがふらつき、耐えることが出来ずに倒れてしまう。その瞬間、僕とニンフィアの勝利が決定した。
ニンフィアはその様子を確認すると、僕の元へと走ってきて飛び込んでくる。僕はその突然の行動に驚いたものの、なんとか倒れこみながらニンフィアを受け止める。Z技の反動もあり、あれだけ強力なカプ・コケコの攻撃を受けていたのにも関わらず、僕の元へとやってきてくれるニンフィアに呆れながらも感謝の気持ちも抱きながらニンフィアの頭を撫でる。ニンフィアも嬉しそうな笑みを浮かべている。
カプ・コケコもどうやら気が付いたようで、すぐに飛び上がり僕たちの姿を見据える。やはりカプ・コケコは強い。それもとんでもないほどに。カプ・コケコはどこか満足した様子で再び姿を消す。その時のカプ・コケコは、またいつか戦おう、と言ってくれたような気がした。
「やっぱりシンジさんはすごいです!あのカプ・コケコさんを倒してしまうなんて!」
リーリエが飛びつくような勢いで僕の元に駆け寄ってくる。正直カプ・コケコとの戦いは冷や冷やしたが、なんとか勝利をもぎ取ることができたことに僕は心の中で言葉にできないほどの喜びを感じていた。これもポケモントレーナーとしての性だろうか
「今の戦い……凄く疲れたよ。これ以上あの場を離れると怪しまれそうだし、早めに戻ろうか。」
「そうですね。じゃあ行きましょうか!」
僕はリーリエと村に戻ると決めた時、リーリエが僕の手を握ってきた。僕は少し恥ずかしいと感じたが、それでも嬉しく感じた。村に行くまでリーリエと手を繋いでいたが、それがミヅキにバレた時は茶化されて恥ずかしい思いをした。でも、なぜかそれが嫌には感じなかった。僕はその時、リーリエに対して初めて自分の気持ちを知ったような気がした。それでも僕は少し迷っていたのだ。この気持ちをどう表せばいいのかを……。
そして最後は僕が今まで旅を共にしてきたポケモンたちを皆に披露して、初代アローラチャンピオンになった日の楽しい思い出は幕を閉じたのだった。
そして翌日。僕の元には衝撃の真実が舞い込んできた。朝方にミヅキが僕の家に駆けこんできて今夜リーリエがこのアローラ地方を去るというのだ。僕は突然な知らせに驚きながらも、どこかでそんな日が来ると感じていたのかもしれない。
僕はこのままリーリエを見送るわけには行かない。夜まではまだ時間がある。それまでにリーリエにプレゼントを贈ろうと。せめてものお礼をしたかった。リーリエがいなければここまで充実した旅は味わえなかったし、僕がこの感情を抱くことはなかっただろうから。
僕はすぐにラナキラマウンテンに向かう。ライドポケモンのリザードンを借りていたため、辿り着くにはそんなに時間はかからなかった。僕はラナキラマウンテンで何時間もかけてあるものを探す。そしてようやくあるものが見つかった時には既に夕方だった。僕はそのあるものを持ちリーリエの待つ船着き場へと向かうことにした。
「リーリエ!」
「!?」
僕は船着き場でリーリエの姿を見つけた。僕の姿に気付いたリーリエは涙を見せながら笑って振り向いてくれた。
「リーリエ……本当に行っちゃうんだね」
「はい……。お母様はウツロイドの神経毒にかなりやられちゃっているみたいです。その毒を取り除くには、カントー地方にある薬を手に入れなければなりません。」
「そうか……カントー地方に……」
カントー地方は僕の地元だ。どれだけ遠いところかはよく知っている。でも僕にはリーリエを引き留めることが出来なかった。そんなことをすれば、リーリエの家族で暮らすという夢を壊してしまうことになりかねないから。
「シンジさん……それって……」
リーリエは僕の持っているものに気付く。僕はそれをリーリエに渡す。
「これ……リーリエにあげるよ……」
「え?でもこれってポケモンさんの……」
そうだ。僕が探していたものはポケモンのタマゴだ。これがなんのポケモンのタマゴかは僕は知っているが、あえてリーリエには伝えない。その方が楽しさも嬉しさも増えるからだ。
「シンジさん!?手がすごいボロボロですよ!?」
リーリエはタマゴを受け取ると、僕の手がボロボロになっていることに気付く。僕はタマゴを必死に探すのに地面を手探りでずっと探していた。これからリーリエのパートナーとして付き合ってくれる最初のポケモンを見つけるために。
「シンジさん……そこまでして私のために……」
リーリエは涙を流し泣きじゃくった。僕はそんなリーリエを抱きしめる。
「私……一生大切にします……。この子も……シンジさんとの思い出も……。」
リーリエはそう言って言葉を紡ぐ。リーリエは最後にさよなら、と言葉を紡ごうとするが、僕はその口を塞ぐ。唇を重ね合わせて……。
「ん!?」
リーリエは突然のことに戸惑っている。それでも僕は感情を抑えることが出来なかった。そして僕はリーリエと離れると本当の最後の言葉を紡ぐ。
「急にごめんね。でも最後はこう言って別れてほしいんだ。またねって。……大好きだよ……リーリエ。」
少し卑怯だとも感じたが、僕は今の気持ちをリーリエに伝える。リーリエは僕の言葉の意味を理解したのか、涙を流しながら最後の言葉を口にする。
「はい!またお会いしましょう!私も大好きです!」
そう言ってリーリエは僕にあるものを差し出す。それはピッピ人形だった。
「リーリエ……これは……」
「私からの贈り物です。少しくたびれていますが、私の大事にしていたものです。どうか、受け取ってください。」
僕はリーリエの差し出してくれたピッピ人形を受け取る。僕はこれ以上に嬉しい贈り物はないと思い、リーリエに微笑みながらお礼を言う。
「ありがとう、リーリエ。一生大切にするよ。」
「シンジさん……ありがとうございます!」
リーリエは最後に最高の笑顔を僕に見せてくれた。それだけでも僕はリーリエが遠くに行っても寂しくないと感じることができた。だってリーリエは僕の中にずっといてくれている。たとえ離れ離れになったとしても、必ずまた会える。僕がリーリエのことを思い、リーリエが僕のことを思ってくれている限り。
そしてリーリエは船に乗り、カントー地方へと旅に出る。これがリーリエにとっての新しい旅路だ。僕もリーリエを見送る。姿が見えなくなるまで何度も手を振って、声が枯れるくらいに何度も名前を叫びながら。いつか…………この世界のどこかで再会できると信じて…………。
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リーリエ
がんばリーリエ
おこリーリエ
しょんぼリーリエ←今ここ
原作にておかえリーリエが追加
もうちっとだけ続くんじゃよ