ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》   作:ブイズ使い

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本当は書く気が無かった回ですが、思いついたので閑話的な感じで

大試練の後の羽休め


リーリエ、約束への想い

フシギバナのZ技、ブルームシャインエクストラがバンバドロに炸裂し、バンバドロは力尽きる。これにより、ポニ島の大試練であるハプウとの戦いはリーリエの勝利と言う結果になった。

 

激戦を制し、リーリエは喜びと同時に今までの疲れがどっと出て力が抜けその場にへたり込む。そんなリーリエを心配し、フシギバナはその巨体と背中の大きな花びらを揺らしながらゆっくりと近付いてきた。

 

「フシギバナさん、ありがとうございました。」

『バァナ♪』

 

フシギバナはリーリエに笑顔で応える。フシギソウの時に比べ声は低く、少し厳つい顔にはなったものの、彼の笑顔はフシギソウ、いや、フシギダネの時から何一つ変わっておらず、リーリエはフシギバナの成長と変化していない笑顔に安心感と喜びを同時に感じていた。

 

「お疲れじゃったな、バンバドロ。ゆっくりと休むがよい。」

 

戦闘不能になったバンバドロを撫でながらハプウはモンスターボールへと戻す。ハプウはバンバドロの入ったモンスターボールを懐にしまうと、リーリエの方へと歩いてくる。

 

「挑戦者リーリエよ、素晴らしいバトルだった。ワシの完敗じゃよ。」

「ハプウさん……」

 

ハプウは健闘を称え、リーリエに手を差し出してきた。リーリエはその手を掴み引っ張られるように立ち上がる。

 

「こちらこそありがとうございました!私の想いに応えてくれたフシギバナさん、カイリューさん、チラチーノさん、それから対戦相手のハプウさん、皆さんがいてくれたから全力でバトルをすることができました!」

「仲間との信頼関係、それから相手を思いやる気持ち、その二つがあるおぬしならこれを受け取るに相応しいじゃろう。ほれ、ジメンZじゃ。受け取るがよい!」

「ありがとうございます!」

 

ハプウが手渡ししてきたじめんタイプのZクリスタル、ジメンZを受け取った。大試練を突破した証、ジメンZを手に入れたと同時に、リーリエは目標の舞台へと立つために必要な全ての条件をクリアしたのであった。

 

「これで遂にあそこに行く条件が揃ったかの、リーリエ。」

「はい!」

 

リーリエはそう返事をして今まで大試練で入手したクリスタル、カクトウZ、ムシZ、アクZ、そしてジメンZを見せる。それを見たハプウも、どこか満足そうに頷いていた。

 

「そうかそうか!では残されているのは……」

「はい!シンジさんの待つ、ラナキラマウンテン……ポケモンリーグです!」

 

遂に目前まで見えてきた目標の舞台。リーリエにとっての最終目標地点であり、約束の舞台。そこに今まで目指していた背中が、彼がリーリエの到着を待っている。

 

(遂に見えてきました……あの人の背中が。ここまで長かったですけど、私は辿り着くことができましたよ、シンジさん。)

 

リーリエはその人物の名を口にする。チャンピオンシンジ……リーリエとリーリエの家族を救い、アローラ初代チャンピオンとして君臨したアローラ最強のトレーナーにしてリーリエの目標。更には幾度となくアローラを救った、アローラの住民からすれば英雄にも等しいトレーナーである。

 

リーリエは彼の姿に憧れ、トレーナーとして旅に出ることを決意した。そして今、目標とする人物のいる場所までくることができたのだ。そう改めて実感すると、リーリエの心臓が今まで以上にバクバクと脳に響いてくるのが分かる。心臓の音が頭から離れず、緊張からか彼女の額を汗が滴り落ちていく。

 

「……リーリエよ。」

「は、はい!」

 

ハプウが声をかけると、先ほどの嬉しそうな表情とは裏腹に緊張から顔が強張ってしまっているのが分かる。その表情から、ハプウにもリーリエの感じている鼓動と緊張が伝わってきた。

 

「リーリエ、ワシについてくるのじゃ。よいところに連れて行ってやろう。」

「よいところ、ですか?」

 

どこだろうか、と思うリーリエだが、ハプウのことなので何か考えがあるのだろうと彼女をついて行くことにするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うむ!ついたぞ!ここじゃ!」

「ここって……」

 

リーリエはハプウに連れられるままに船に乗り込んだ。暫くして辿り着いたのは、見覚えのある小さな島であった。しかしその島には巨大な体と長い首を空高く伸ばしたポケモン、アローラの姿をしたナッシーが何体か生息していた。

 

そして島の入り口にある少し古びた看板に描かれているナッシーのイラストと島の名前、ナッシーアイランド。そう、2年前にリーリエがシンジと共に訪れた島である。

 

「あ、あそこは……」

 

島の中央付近には洞窟にも近い窪みがあり、彼女にとっても思い出深い場所であった。その場所はかつてシンジと共にナッシーアイランドに訪れた際、雨宿りをするために入った窪みである。

 

「シンジから聞いたぞ。おぬし、ここであやつと約束をしたそうじゃな。」

 

ハプウの言葉と共にリーリエの脳内の過去の映像が自然と蘇ってくる。あの時ここに訪れたのは、ほしぐもを目覚めさせるために太陽の笛を取りに来るためであった。

 

その時突然大雨が降り、シンジとリーリエは窪みの中で雨宿りをすることになった。その時話した会話は様々で、過去の母親との思い出、シンジが目指す目標、旅が終わった後どうするのか、そして彼との約束。

 

「はい。シンジさんと共に旅をすること。」

「うむ。そしてそなたらはカントー地方で無事に約束を果たすのじゃったな。」

 

元々は自分一人の力でカントー地方を旅し、成長した姿をシンジに見せる予定であった。しかしシンジは約束を守るため、カントー地方まで態々出向き約束を果たした上にスピアーの群れから自分のことを守ってくれたのだった。

 

「そして次はおぬしの番、と。」

「はい。あの時シンジさんは約束を果たしてくれました。今度は私が果たす番です。」

 

カントーのポケモンリーグにて交わした約束、アローラのポケモンリーグで待っている、と。彼はリーリエに向かってそう告げてくれた。リーリエは無事全ての大試練を突破し、そしてシンジの待つアローラポケモンリーグに向かうのである。

 

「それは緊張もするじゃろうな。じゃがな……」

 

ハプウは話に一区切りつけると歩みを止める。リーリエも同じく足を止めると、ハプウはリーリエの方へと振り向いた。

 

「であるならば、おぬしは堂々としておるとよい。もちろん、緊張だってするじゃろう。じゃが、おぬしには仲間であるポケモンたちがいる。今まで紡いできた経験、思い出がある。堂々とぶつかり、シンジに挑戦するがよい!おぬしは、挑戦者なんじゃからな!」

 

ハプウはニカッ、と笑いながらリーリエにトレーナーの先輩として、しまクイーンとしてアドバイスを送った。リーリエも彼女の言葉に胸を打たれ納得する。

 

そうだ、大試練が終わったとしても自分は挑戦者だ。今までと何も変わらない。ならば挑戦者は挑戦者らしく、堂々と挑戦するまでだ。

 

「ハプウさん、ありがとうございます!私、挑戦者らしくぶつかってみます!」

「うむ!よくいったぞ!」

 

緊張が解けたリーリエはいつもの元気な姿をハプウに見せる。ハプウはそんなリーリエを見て、いつもの彼女に戻ったと明るい笑顔で頷いた。

 

大試練と言う激戦を終えたため、時刻は既に夕暮れ時。島から眺める海の向こうには、アローラの太陽が水平線の向こうへと沈もうとしていた。

 

「ふむ、これをリーリエに見せたかったのじゃ。」

「え?これをですか?」

「うむ。ここから夕陽が沈む瞬間を見た者は、願いが叶うと言われているんじゃ。夕暮れを見たそなたなら、必ず願いを、夢を実現することができるじゃろう。」

 

ハプウのその言葉を聞いたリーリエは、夕陽が沈む瞬間をしっかりと目に焼き付ける。綺麗な夕焼けの空、そしてアローラの綺麗な海に沈む夕陽の神秘的な瞬間は、リーリエの脳内から決して消えることはないであろう。

 

「ハプウさん、ありがとうございます!私、がんばります!」

「うむ!がんばリーリエ、じゃ!」

「はい!がんばリーリエ、です!」

 

改めて手をギュッと握りしめ、リーリエは船へと戻っていく。ハプウはそんな彼女の背中を見つめ、誰にも聞こえない声で呟いていた。

 

「願いが叶う……と言うのは半分嘘じゃ。そんなものはタダの迷信にすぎんのじゃよ。」

 

じゃが、とハプウは続けて言葉を口にする。

 

「ここから海に沈む夕陽を見た者は、大切な者と結ばれる、と言う話は本当じゃと思うがな♪」

 

ハプウはかつて祖父から聞いた話を思い出しながらそう呟いた。そしてポニ島の守り神、カプ・レヒレに願いを込める。

 

「ポニ島の守り神カプ・レヒレよ。あの者に幸があらんことを。」

 

そう願うと、ハプウもリーリエの後をついていき一緒に船へと乗り込むのであった。

シンジが最終戦で使うブイズはニンフィア、イーブイに加え残り4匹は誰がいい?(投票数の多い順に選ばれます)

  • シャワーズ
  • サンダース
  • ブースター
  • エーフィ
  • ブラッキー
  • リーフィア
  • グレイシア

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