ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》 作:ブイズ使い
少し時間オーバーしてしまい申し訳ありませんでした。
「うむ、ついたぞ。ここじゃここじゃ!」
ハプウのバンバドロに乗り案内されたのは、隙間なく石を敷き詰めて作られた広い場所だ。四隅には四つのオブジェクトとなっている柱が立てられていて、如何にもバトルフィールドであると象徴しているようであった。
「わらわがしまクイーンになった際にバトルする場所に困ったからのぉ。挑戦者と思う存分戦えるようにと、この場所を作ってもらったのじゃ。」
2年前、しまクイーンと認められたばかりのハプウはシンジと戦う際、ある程度開けた場所であったポニの渓谷入り口でバトルをした。間違いなくあの場所よりも、このフィールドの方が気兼ねなく激しいバトルを繰り広げることができるであろう。
「っと、さて、挑戦者リーリエよ。わらわしまクイーンハプウはそなたの挑戦を正面から受け止める。だからそなたも持てる力の全てを出し切り、全力でわらわに挑むがよい!」
「ハプウさん……」
ハプウはバンバドロから降りると、リーリエの眼を真っ直ぐ見つめてそう言い放った。ハプウのその雰囲気は子どもっぽい見た目とは裏腹に、しまクイーンとして成長した彼女の威圧感がリーリエにプレッシャーとして襲い掛かった。
リーリエは彼女の雰囲気に一瞬呑まれそうになり喉をゴクリと鳴らす。しかし彼女も今まで多くの経験を積み、ここまで歩んできた一人のトレーナーだ。退くわけには行かないと、自分もバンバドロから降りてハプウの眼を見つめ返す。
「もちろんですハプウさん。今私の持てる力の全てを出し切って、あなたに勝って見せます!」
リーリエに瞳は、真っ直ぐとハプウを、そしてその先にあるであろう目標の背中がしっかりと映っていた。ハプウはそんな彼女の強い眼差しに、嬉しそうにニヤリと笑みを浮かべるのだった。
「ルールは3対3の一般ルール。どちらかが3体戦闘不能になった時点でバトル終了じゃ。それでよいか?」
ハプウのルール説明に、リーリエははい、と頷いて答える。最も互いの実力が分かりやすいと言われている3対3のバトル。最後の大試練に相応しいルールである。
お互いにルールを確認し、ハプウとリーリエは距離を離して振り返り対戦相手の姿を見据える。お互い準備万端と分かれば、もうこれ以上語ることは何もない。トレーナーならばバトルの中で会話をすればいい。
ハプウとリーリエはそれぞれモンスターボールを手に取る。そしてフィールド中央に投げると、互いの先発であるポケモンが姿を現す。
「お願いします!チラチーノさん!」
『チラチ!』
「出番じゃ!ダグトリオ!」
『ダグダッ!』
リーリエは先発としてチラチーノ、ハプウはダグトリオを繰り出した。ダグトリオの頭部には髪が生えており、おかっぱ、ウェーブ、ロン毛とそれぞれ特徴が違っていた。
『ダグトリオ、もぐらポケモン、アローラの姿。じめん・はがねタイプ。金色の髭はとても頑丈で、センサーの役割も持っている。抜け落ちた髭を持ち帰ると不幸になると言われている。』
髪に見えるそれはどうやら髭のようである。その髭こそが、通常とは違うアローラの姿、リージョンフォームの証でもあった。
(頑丈な髭……間違いなく強力な武器になりそうですね。注意しなければ……。)
頑丈な部位は強固な盾にもなれば、最大の武器にもなり得る。アローラのダグトリオと対峙するにあたり、最も注意するべき点であろうと、リーリエは警戒して気を引き締める。
「先行はリーリエからでいいぞ。存分にかかってくるのじゃ!」
「では遠慮なく行かせていただきます!チラチーノさん!スピードスターです!」
『チラ!』
チラチーノは尻尾を振るい星型の弾幕、スピードスターを放つ。無数のスピードスターはダグトリオ目掛けて接近していくが、ハプウはその攻撃を冷静に対処した。
「ダグトリオ!あなをほるじゃ!」
『ダグッ!』
ダグトリオは地中に潜ることでスピードスターを回避する。あなをほるでも一切ビクともしないところを見ると、このフィールドは相当丈夫に作られているようである。
「っ、一体どこから……」
姿が見えないダグトリオがどこから攻撃してくるか、リーリエとチラチーノは集中して警戒をする。しばらくするとチラチーノの足元が少し揺れ、ダグトリオが姿を現す合図なのだと悟った。
ダグトリオが足元から攻撃してくると悟ったチラチーノは、飛び出してくる直前にバックステップで回避した。しかし……
「そのままアイアンヘッドじゃ!」
『ダグッ!』
『チラッ!?』
ダグトリオはあなをほるで飛び出した勢いを利用し、バックステップで回避したはずのチラチーノをアイアンヘッドで追撃した。届かないと思われたその攻撃は、ダグトリオが穴から飛び出た頭部をさらに伸ばすことで命中した。
チラチーノにアイアンヘッドが命中し、その攻撃によってチラチーノは突き飛ばされ怯んでしまい膝を地面につく。
「チラチーノさん!」
『チラッチ!』
リーリエの声にチラチーノは元気よく返事をしてまだ大丈夫だと意思を示す。しかしハプウの攻撃の手は決して止むことはなかった。
「ダグトリオ!ステルスロックじゃ!」
『ダグダァ!』
ダグトリオは続けて細かい岩の破片をフィールドにばら撒いた。するとばら撒いた岩の破片はすぐに姿を消し、リーリエとチラチーノは困惑する。
「ステルスロックは相手のフィールドに見えない細かい岩をばら撒き、交代した相手にダメージを与える技じゃ。これからおぬしが交代するたびに、どんどん不利になっていくからのぉ。交代するなら考えることじゃの。」
交代するたびにこちらのポケモンにダメージが入る。後ろのポケモンに負担がかかり、無暗な交代は自らの身を削る行為に直結してしまう。リーリエの戦略がかなり限られてしまった。
「次はトライアタックじゃ!」
『ダグダグダグ!』
「スイープビンタで防いでください!」
『チラ』
3つの頭が連携して三属性を纏った攻撃を放った。チラチーノはスイープビンタの三連攻撃で弾き防ぐ。綺麗にコーティングされているチラチーノの毛並みであれば、この程度の反射は容易である。
「やるのぉ。じゃが!もう一度あなをほるじゃ!」
ダグトリオはもう一度あなをほるで地中に潜り姿を消す。このままでは防戦一方で倒されてしまうのも時間の問題だ。
ならばここは防御に回るより、攻撃に転じて反撃するしかないとリーリエはある作戦をとる。
「チラチーノさん!ダグトリオさんの潜った穴に入って下さい!」
『っ!?チラ!』
「なんと!?」
チラチーノはリーリエの指示通り穴の中に潜り込み、ダグトリオのあとを追いかける。ハプウはリーリエの意外な戦術に目を見開いて驚きの声をあげていた。
リーリエの行動は相手の土俵に自ら足を踏み込むのと同じこと。効果的ではあるかもしれないが、その分危険な行為でもあるのだ。しかし彼女にはむしろ最善の策だという確信があった。
「スイープビンタです!」
『チラッ!』
リーリエたちからは地中の姿は全く見えていない。リーリエの声が穴を通してチラチーノに届き、スイープビンタの準備をする。ダグトリオの背後から近づき、スイープビンタをぶつけて地中から引き釣り出した。背後からであればダグトリオのスピードであっても対応しきるのは難しい。
あなをほる中、背後から接近されてしまったダグトリオは対抗することができずに無抵抗で受け溜まらず地上でダウンした。そのままの勢いを維持して、チラチーノは地中から空中まで跳び上がった。
「今です!スピードスター!」
『チラッチ!』
『ダグッ!?』
チラチーノはスピードスターで倒れているダグトリオに追撃を仕掛ける。不意打ちのスイープビンタがかなり効いていたようで、素早さが早いダグトリオであっても回避できずスピードスターが直撃した。
ダグトリオは素早さと攻撃力が高い反面、防御力はかなり低いポケモンだ。チラチーノの素早く鋭い攻撃を連続で浴びてしまい、目を回して戦闘不能状態になってしまったようだ。
『だぐだ……』
「よく頑張ったのダグトリオ。ゆっくりと休むがよい。」
ハプウは頑張ってくれたダグトリオに優しく声をかけてモンスターボールへと戻す。そしてハプウは、次なるポケモンが入ったモンスターボールを手に取り、フィールドへと投げるのであった。
「ゆくぞ!フライゴン!」
『フリャア!』
『フライゴン、せいれいポケモン。じめん・ドラゴンタイプ。はばたくことで砂嵐を巻き起こしその中心にいるため滅多に姿を現さない。羽音が歌声に聴こえることから砂漠の精霊と呼ばれた。』
ハプウの次なるポケモンはドラゴンタイプも併せ持つフライゴンであった。図鑑説明にもあったように、フライゴンの羽音は優しく心地のいい歌声に聴こえ、その姿から精霊に見えても不思議はないと感じた。
「この調子で行きます!チラチーノさん!スイープビンタです!」
『チラチ!チラッ!?』
ダグトリオを倒した勢いで一気に攻め立てようと意気込み素早さを活かして突進するチラチーノ。しかし体の調子がおかしいと感じ、驚きの声をあげていた。
「っ!?こ、これは……」
素早さが自慢のチラチーノだが、フライゴンはスイープビンタをあっさりと回避した。明らかに様子がおかしいことに、リーリエはどうしてなのかと困惑する。
「フライゴン!ドラゴンクローじゃ!」
『フリャ!』
フライゴンは回避した状態のまま、隙だらけのチラチーノを鋭い竜のツメで切り裂いた。チラチーノは強力なドラゴンクローに吹き飛ばされ、背中を地面に思いっきり打ち付けダメージを抱えた。
「ばくおんぱでとどめじゃ!」
『フライ!』
フライゴンは上空から翼の羽ばたきを強くし、歌声の様な心地よい音から攻撃的な荒々しい音に変換する。その文字通りの爆音は強い衝撃波となり、動けないチラチーノを上空から襲い掛かった。
「チラチーノさん!?」
『ち……ら……』
チラチーノは怒涛の連続攻撃と、ダグトリオ戦でのダメージが重なって戦闘不能になってしまう。リーリエは戦ってくれたチラチーノにお礼を言い、モンスターボールへと戻した。
リーリエはチラチーノがやられたことで一度冷静になり先ほどの戦闘を思い返す。チラチーノの調子がおかしくなった原因はなんなのか。
その時、リーリエの中に一つの特性の名前が思い浮かんだ。アローラの姿をしたダグトリオの特性、カーリーヘアーである。
ダグトリオの特性、カーリーヘアーは接触した相手に影響を及ぼす特性で、相手の素早さを低下させる厄介な特性だ。ステルスロックとカーリーヘアー、この二つの特徴を活かすためにハプウはダグトリオを先発として出したのである。
(やはりしまクイーンのハプウさん……一筋縄ではいきませんね……)
元より手強いことは理解していた。しかし改めて手合わせすると、しまクイーンに恥じない実力を持っていることがよく分かる。より気を引き締める必要があると、深く深呼吸をして気合を入れる。
「さぁ、次はどんなポケモンでくるのじゃ?」
「私の2番手は、この子です!お願いします!フシギソウさん!」
『ソウソウ!』
次に繰り出したのはフシギソウであった。ハプウはフシギソウを見て、いい面構えじゃなと関心する。
『ソウッ!?』
フシギソウが場に出た瞬間、フシギソウを待機していたステルスロックが一斉に襲い掛かった。場に出たことにより、ステルスロックが自動的に起動してフシギソウの体力を奪う。
「じゃが、そう簡単にやらせはせんぞ!フライゴン!マッドショット!」
『フリャ!』
「フシギソウさん!はっぱカッターです!」
『ソウ!』
フライゴンは泥の塊を複数投げつける。フシギソウははっぱカッターで反撃し、フライゴンのマッドショットを切り裂いた。
「ならばドラゴンクローじゃ!」
『フライ!』
「つるのムチで捕まえて下さい!」
『ソウ!』
フライゴンは急降下してドラゴンクローによる攻撃を仕掛けてくる。フシギソウはその攻撃をフライゴンの翼をつるのムチで捕まえることで抑えつけようとする。しかし……
「回転して防ぐのじゃ!」
『フラァイ!』
フライゴンは回転しながら突進してくることで、フシギソウのつるのムチを弾き返した。ハプウの対応の速さに、リーリエは驚きながらも関心していた。
フライゴンのドラゴンクローでフシギソウは切り裂かれる。チラチーノにも致命傷を与えたフライゴンのドラゴンクローは、フシギソウの体力も大きく削る。
「フシギソウさん!大丈夫ですか!?」
『ソウ……ソウ!』
ダメージはあるが、それでもまだ大丈夫だと意思表示をするフシギソウ。しかしつるのムチを防がれてしまい、その上空中にいる相手では不利かと、仕方ないとフシギソウのモンスターボールを手にとった。
「フシギソウさん、戻ってください。」
リーリエはフシギソウをモンスターボールへと戻した。まさかの行為にハプウは驚き目を見開いた。
「……お願いします!カイリューさん!」
『バウゥ!』
カイリューは大きな咆哮と共に登場する。この間の戦いから改めて加入したリーリエの頼もしい仲間である。
しかしそんなカイリューにもステルスロックが襲い掛かり突き刺さった。カイリューは咄嗟に防御するも、それでもダメージは確かにある。
「カイリューさん……」
『バウ!』
この程度問題ないと、カイリューは大きく声を出して自分自身を鼓舞していく。そして自分よりも上空にいるフライゴンに目を移し、彼を敵として認識する。
「どのポケモンもいい目をしておる。フライゴン!ばくおんぱじゃ!」
『フリャ!』
「カイリューさん!しんそくです!」
『バウ!』
フライゴンのばくおんぱを、カイリューはしんそくで目にも止まらぬ速度で回避しながら接近する。カイリューの攻撃で、フライゴンは地面に叩きつけられる。
「れいとうビームです!」
『バオウ!』
「っ!?かわすのじゃ!」
『フリャ!』
カイリューは追撃でれいとうビームを放つが、再び上空に羽ばたいて空を飛び回避する。
「こちらも行くぞ!ドラゴンクローじゃ!」
『フリャア!』
「カイリューさん!げきりんです!」
『バウ……バオゥ!!』
カイリューはげきりんで荒々しくも力強くフライゴンのドラゴンクローを正面から受け止める。そして受け止めた状態からそのまま地面に投げつけ、フライゴンを再び地面に叩きつけた。
「くっ……なんてパワーじゃ……」
「そのまま畳みかけてください!」
『バオォウ!』
「かわしてばくおんぱじゃ!」
げきりん状態のままフライゴンに畳みかけるカイリュー。フライゴンはその攻撃を辛うじて回避するも、回避したフィールドは凹みクレーターができていた。そのあまりのパワーに、ハプウとフライゴンは冷や汗を流す。
回避したフライゴンはばくおんぱですぐさま反撃する。カイリューはまだげきりん状態が続いており、正面から勢いよく突進していく。
ばくおんぱをかき分け、ダメージを無視しカイリューは突撃していく。そのあまりの荒々しさと強引さにフライゴンは驚いていた。そしてカイリューの超パワーが炸裂し、フライゴンはげきりんに吹き飛ばされた。
「なっ!?フライゴン!」
『ふりゃ……』
フライゴンはげきりんの一撃で戦闘不能になってしまった。かなり前線はしたが、それでもカイリューのパワーはすさまじかった。
「頑張ったの、フライゴン。あとは任せるのじゃ。」
フライゴンを戻したハプウは懐にしまい、隣に顔色一つ変えることなく不動の如く立って待機していたバンバドロの方へと振り向いた。
「バンバドロ、あとは任せるぞ?」
『……ブル』
バンバドロはハプウに頷いて答える。その後ゆっくりとフィールドに出て、カイリューの眼を見据えていた。
「遂に来ましたね……バンバドロさん……」
ハプウのエースであるバンバドロ。佇まいや雰囲気からとてつもない力を持っているのだとリーリエにもひしひしと伝わってくる。これは今まで戦った中でもトップクラスに強敵なのではと感じるほどだ。
「それでも、負けません!カイリューさん!」
『バウゥ!』
カイリューはリーリエの声に大きく返事するが、げきりんの反動により少し足元がふらついている。げきりんは暫く行動を続けると、混乱してしまうデメリットがある技だ。それゆえに、少し足元がおぼつかない。失敗すると自らを攻撃してしまう事もある、
「っ!?カイリューさん!れいとうビームです!」
『バオウゥ!』
カイリューはれいとうビームで攻撃する。遠距離攻撃であれば多少安全であろうという判断からである。カイリューは無事攻撃に成功するが、バンバドロはその攻撃を冷静に対処する。
「バンバドロ!」
『ブル!』
バンバドロは地面をその逞しい前足で叩きつけ岩盤の壁を立てて盾にし防御した。苦手なタイプの攻撃を対策しているのは、さすがしまクイーンのエースと言ったところだろうか。
「っ!それならばしんそくです!」
『バ……オオウ!』
少しふらつきながらも、カイリューはしんそくでバンバドロに突撃していく。バンバドロは微動だにせず、カイリューのしんそくはバンバドロの頭部とぶつかり合う。
直撃、それは間違いない。しかしバンバドロにはダメージが見受けられず、バンバドロは顔色を一切変えていない。
「カウンターじゃ!」
『ブル』
『バウ!?』
バンバドロはカウンターで反撃した。バンバドロのカウンターはカイリューの腹部に直撃し弾き返し、そのダメージからカイリューは地面に叩き伏せられた。
「カイリューさん!?」
『ば……うぅ……』
カイリューはカウンターの一撃で戦闘不能となってしまう。カウンターは相手の攻撃を倍にして跳ね返す技だ。カイリューの高い攻撃力が仇となり、バンバドロの高い耐久力を活かして上手い事反撃されてしまった。
「カイリューさん、お疲れ様です。ゆっくり休んでください。」
ステルスロック、フライゴン戦の疲労、そしてバンバドロのカウンター、強力なカイリューを跳ね返すほどのチームワークに、リーリエは勉強になると関心以外の言葉が思いつかない。
「……あとは、あなただけです。フシギソウさん!」
『ソウ!』
残るは先ほどのバトルで少しダメージが蓄積してしまっているフシギソウ。その上再びフィールドに出たことによりステルスロックが突き刺さった。フシギソウはステルスロックのダメージで、更に体力を奪われる。
「フシギソウさん!」
『ソウ……ソウ!』
フシギソウはステルスロックのダメージを耐え抜く。しかしそれでも、かなり体力は蝕まれてしまっており、本来の力を発揮できそうにない。その上相手のバンバドロはほぼ無傷。この状態で勝ち目はかなり薄いと言える。
「さて、ここからどのようなバトルを見せてくれるのか……バンバドロ!がんせきふうじじゃ!」
『ブルル!』
「フシギソウさん!つるのムチでジャンプしてください!」
バンバドロはがんせきふうじでフシギソウの行動を防ぎにかかる。しかしフシギソウはつるのムチを地面に叩きつけ、自らの体を宙に浮かせジャンプした。
「エナジーボールです!」
『ソウ!』
「受け止めるのじゃ!」
『ブル』
フシギソウはエナジーボールで空中から攻撃する。しかしバンバドロはその攻撃を避けることなく、構えて正面から受け止める。弱点である草技なのにもかかわらず、バンバドロに対してのダメージは低いようである。そのあまりにも高い耐久力に、リーリエもフシギソウも目を見開いていた。
「10まんばりきじゃ!」
『ソウ!?』
バンバドロはフシギソウの落下地点に走り、後ろ足によって吹き飛ばした。その強靭な脚による攻撃はすさまじく、突き飛ばされたフシギソウは立つことすらままならない。
「フシギソウさん!」
リーリエはフシギソウに必死に呼びかける。しかしフシギソウは返事をすることができず、フィールドに伏せてしまう。むしろここまで戦えたことの方が奇跡かもしれない。
これ以上はダメか、リーリエとハプウ、双方がそう思った矢先の出来事であった。フシギソウの体を青白い光が包み込み、フシギソウの姿を変化させていった。
「こ、この光りは……」
そう、ポケモンの進化の光である。小柄なフシギソウの体は見る見ると大きさを増していき、光が放たれた時には背中に立派な大きい花が咲いていた。
『バナァ!』
『フシギバナ、たねポケモン。フシギソウの進化形。くさ・どくタイプ。背中の大きな花は太陽の光を吸収し、エネルギーに変換できる。花の香りは人の心を癒す効果がある。』
フシギソウは遂に最終進化形、フシギバナへと進化を遂げた。リーリエはそのことに喜ぶも、この状況をどう打開するかと頭を悩ませる。その時、フシギバナの背中が光を吸収しているのが確認できた。
「これは……こうごうせい?フシギバナさん!こうごうせいを覚えたんですね!」
『バナ!』
フシギソウはこうごうせいを習得した。こうごうせいは自分の体力を回復させるくさタイプの技だ。これにより今までの蓄積ダメージが嘘のように、フシギバナの体の傷を癒していった。
「完全回復はさせはしない!バンバドロ!10まんばりきじゃ!」
『ブルルゥ!』
「フシギバナさん!つるのムチです!」
バンバドロは走っていき10まんばりきで攻撃する。しかしその後ろ足による攻撃を、フシギバナはつるのムチを巧みに使って防ぐ。バンバドロのパワーに対抗できるほど、フシギバナの攻撃力も上がっていた。
「っ!?ならば、これで一気にケリをつける!」
バンバドロはハプウの気合いに呼応するかのようにフシギバナのつるのムチを弾き怯ませる。するとハプウは手を交差させ、一回転して手を地面に突き立てる。地面タイプのZ技のポーズだ。
「ゆくぞ!わらわたちの全力の一撃、受け止めてみよ!」
『ブルル!』
「来ますよ!フシギバナさん!」
『バナァ!』
バンバドロはハプウからのZパワーを受け取り、体の底から力が込み上がる。その力を糧とし、丈夫なフィールドに地割れを発生させフシギバナを落とした。
――ライジングランドオーバー!
バンバドロはフシギバナを追いかけ地下深くに潜り込む。フシギバナをマグマに押し込み、噴火を巻き込ませて力強い一撃を与えた。その衝撃がフィールド全体を包み込む。
自分の持つ全力全開のZ技。これを受けて立っていたものはいないとハプウは勝利を確信した。しかし、衝撃が晴れてそこにいたのは、ハプウとバンバドロのZ技に耐えていたフシギバナであった。
「な、なんと!?」
『ブル!?』
ハプウとバンバドロは驚きのあまり目を見開いていた。進化したことにより、パワーだけでなく耐久力も大きく跳ね上がっていた。
「今度は私たちの番です!行きますよ!」
『バナ!』
こうごうせいによる回復も相まって、フシギバナの体力は充分に戻っていた。バンバドロのZ技を耐え、次は自分たちの番だとZ技のポーズをとる。
まるで地面から花が咲く姿を印象付けさせるそのポーズは、紛れもなくさタイプのZ技であった。
「これが……私たちの全力です!」
『バナアァ!』
――ブルームシャインエクストラ!
フシギバナは光を吸収し、草花の生命力を活性化させフィールド全体にエネルギーが放出する。そのエネルギーはフィールドに花を咲かせ、バンバドロの周囲を包み込み爆発を引き起こした。
バンバドロを包み込み、彼の姿が見えなくなる。リーリエとハプウに緊張が走り、徐々にその姿が見えてくる。
「バンバドロ!っ!?」
そこにあったのはバンバドロの立ち姿であった。しかしバンバドロはその場から微動だにせず、様子がおかしいとハプウは察した。バンバドロは目を回し、戦闘不能状態となってしまっていたのだ。
さしものバンバドロも、効果抜群のZ技を受けてしまっては一溜りもなかったようだ。バンバドロが戦闘不能となり、これでハプウは3体のポケモンを失った。つまりこれは、リーリエの奇跡的な逆転勝利を意味していたのである。
思ったよりかなり長くなってしまいました。途中内容も大幅に変更したりと、色々手を加えたりしていたらこうなりました。
あっ、カービィディスカバリー100%クリアは達成しました。
じゃあ私はポケマスで新衣装のリーリエ引いてきます。