ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》   作:ブイズ使い

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今回短め。ハプウ戦前の閑話みたいな感じです。明日のカービィが楽しみすぎてあんまり考えが纏まらなかった……。


しまクイーン、ハプウの過去

マツリカの試練を無事突破し、遂に最後の大試練を迎えることとなったリーリエ。ポニ島のしまクイーン、ハプウの元を訪ねるため、村のはずれにある彼女の実家へとやってきていた。

 

リーリエはハプウの名を呼びかけながら家の戸を叩く。すると家から出てきたのは、中年をすぎたと思われる女性であった。

 

「おや?あなたは……」

「あっ、す、すいません。えっと、しまクイーンのハプウさんはいらっしゃいますか?」

「ごめんね。今はいないのよ。でももうすぐ帰ってくると思うから、家に上がって待ってるかい?」

 

ハプウがいつ帰ってくるか分からないため、ここはお言葉に甘えて家にあがらせてもらう事にする。リーリエはリビングにある椅子に腰かけ、女性は客をもてなす準備を始めた。

 

「はいこれ、あったかいお茶と家でとれた自慢のポニ大根。好きなだけ食べていいわよ。」

「は、はい、ありがとうございます。」

 

大試練を受けるためだけに訪れたつもりだったが、想定していなかったおもてなしを受けて少し戸惑いながらも気を遣わせてしまって申し訳なく思うリーリエ。しかしおもてなししてくれた女性の気持ちを無下にはできないと、素直におもてなしを受けることにした。

 

「あっ……この大根、すごく美味しいです!」

「そうだろそうだろう♪なんたって家で育てた自慢の大根だからねぇ。あの子もようやくいい大根を作れるようになったもんだよ。」

 

あの子、と言うのは恐らくハプウのことだろう。つまりこの大根を作ったのはハプウと言うことになる。

 

そう言えば以前アーカラ島やウラウラ島で出会った際に大根をバンバドロに持たせて出荷していた。彼女はしまクイーンとしてだけでなく、野菜農家を経営して生計を立てているようだ。二つの仕事を同時に熟しているハプウに、リーリエは改めて感心する。

 

「えっと……あなたはハプウさんのお母様……?」

「あらそう見える?私はあの子の祖母だよ。あの子の両親はあの子が幼い頃に事故で亡くなったからね。」

「あっ……す、すいません……」

 

孫であるハプウの親と言うことは祖母であるこの女性の子どもにもあたる。リーリエは余計なことを口走ってしまったと申し訳なさそうに謝った。

 

「別に構わないよ。あの子はそれから私と旦那である先代しまキングが育ててきたんだ。その影響か、ポケモンバトルがとても興味を示すようになってね。あの人に一から十まで教えてもらっていたのさ。」

 

おばあさんは昔のことを思い出しながら語り始めた。リーリエは彼女の話を静かに聞き続けていた。

 

「あの子は人一倍に負けず嫌いでね。負けるたびにおじいちゃんと特訓して、リベンジするのを繰り返していったんだ。そうしていく内に腕を上げていったんだけど、次第に対戦相手がいなくなっちゃってねぇ。昔から友達がポケモンたちしかいなくなっちゃったのよね。バトルへの興味も薄れて、しまクイーンとして守り神、カプ・レヒレに認められようともしなくなっちゃって。」

 

おばあさんは「でもね……」とその後も話を続ける。

 

「今のチャンピオン……シンジ君と出会ってからあの子も変わったのよ。シンジ君としまクイーンとして戦う為にカプ・レヒレに認められ、戦って久しぶりに負けて、悔しいと言いながらもどこか嬉しそうに笑って……あんなに楽しそうにしているあの子を見るのは久しぶりだったよ。」

 

以前、リーリエも彼女がカプ・レヒレに認められに遺跡へと訪れていたのは立ち会っていたために知っている。だからポニ島には長いことしまキング、しまクイーンが不在だったのかと理由が分かった。

 

ハプウは強い。それはシンジとの戦いを2年前に見届けていたため知っている。あれだけの強さを持っている人がしまクイーンとして認められなかったのには違和感があったが、今の話を聞いて合点がいった。彼女の過去が原因だったのである。

 

しかしその現状をシンジが意図していないとはいえ変えた。自分もよく知っていることだが、彼にはそれだけ他人を引き付けるほどのものがある。

 

「ただいまー」

 

そんな考えを頭の中で過らせていると、話の中心となっていた人物が帰ってきた。

 

「おっ?リーリエではないか?アローラ。もしかして大試練を受けにきたのかの?」

「ハプウさん!アローラ、です。はい、お邪魔してます。」

「すまないのぉ、待たせてしまって。わしは今からでも構わないが、リーリエはよいのか?」

 

おもてなしとして出してもらったポニ大根も食し、おばあさんからの話も終わった。リーリエとしても準備を済ませて訪れていたため、答えは既に決まっていた。

 

「はい!大試練!よろしくお願いします!」

「うむ!では行くとしよう!」

 

ハプウは意気揚々と再び家を出る。リーリエも後を付いていこうとすると、おばあさんが彼女のことを呼び止めた。

 

「君、リーリエって言うのね。」

「え、はい、そうですが……。」

「そう、あなたが……。あなたのことも、ハプウから聞いているわ。」

「私のことも、ですか?」

「まだまだ先代には程遠いけれど、あの子も着実に腕を上げているわ。間違いなく苦戦するとは思うけれど、私はあなたのことを応援してるわよ。それが、あの子の成長にも繋がると思うから。」

「……はい!頑張ります!」

 

そう返事をしたリーリエはハプウの実家を後にする。その姿を見届けたおばあさんは、近くにある仏壇を見つめて呟いた。

 

「……おじいさん。あの子があなたに届くのはいつかしらね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リーリエが外に出ると、ハプウのバンバドロが大人しく待機しており、ハプウはバンバドロの背中を優しく撫でていた。

 

「大試練場まで少し歩くからの。このバンバドロに乗って行くぞ。ほれ、リーリエ。掴まるのじゃ。」

「はい。では失礼します。」

 

リーリエはハプウの手を取りバンバドロの後ろに乗る。ハプウがバンバドロに合図をすると、バンバドロはゆっくりと歩き始めた。

 

(ハプウさんは負けるたびに強くなり、しまクイーンになった今でも腕を上げている。負けず嫌いで努力家……より一層気を引き締めなければ、間違いなくあっさりやられてしまいます。)

 

おばあさんの話を聞き、ハプウの強さを改めて感じたリーリエ。先代しまキングの意思を引き継いだ小さなしまクイーンとの戦いを、バンバドロに揺らされながら楽しみにして待つのであった。




アニポケハプウの両親は海の民の村にて健在です。原作では祖母のみが登場して出自など不明なので、この小説でのオリジナル設定+設定の掘り下げみたいなものだと考えていただければ。

海外のリーク情報によると次に出るUNITEのポケモンはマリルリだそう。

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