ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》 作:ブイズ使い
かがやきさまとの激戦が終わり、ポケモンセンターで一時の休息を得たリーリエ。翌日、キャプテンの一人であるマツリカと出会い、彼女の自宅へと招待された。
リーリエは彼女の自宅であるナマズン型の家に入る。外見よりも内装は意外と広く、室内には様々なポケモンの絵が飾られていた。そのどれもが笑顔で描かれていて、まるで命でも宿っているかと思わせる躍動感を感じさせるほどのものであった。
「す、すごいです……。これ、全部マツリカさんが描いたんですか?」
「そうだよぉ。私はポケモン専門の画家だからねぇ。ってあれ?名前教えたっけ?」
自分の名前を知っていたことに疑問を持ったマツリカに、先ほどまで一緒にいた兄でから聞いたのだと伝える。
「ああ、さっきの子はお兄さんかぁ。そう、私の名前はマツリカ。一応キャプテンやってます。」
「私はリーリエと言います。ところで、ここに私を呼んだ理由は……」
「そうそう、見ての通りマツリカは色んなポケモンの絵を描いてるんだけどねぇ、最近中々インスピレーション……って言うのかなぁ?ピンッとくるのが思いつかなくて。いわゆるスランプってやつ。」
マツリカは「そこで!」とリーリエの間近に迫る。さっきまでのマイペースな雰囲気と変わり、リーリエは少し戸惑っていた。
「キミを外で見た時、何か光るものを感じたんだぁ!だから、バトルでキミのポケモンを見せて欲しいんだ!」
「バトルで、ですか?」
「うん。それも普通のバトルじゃなくて、ダブルバトルをお願いしたいなぁ。もちろん、お礼としてフェアリーZもあげちゃうよぉ。」
そんな簡単に試練突破の証であるZクリスタルを渡してしまっていいのか、と心の中で思うリーリエ。しかし試練抜きにしても頼まれれば断ることのできない性格であり、それが試練と同じ扱いになるのであれば彼女に断る理由はなかった。
「分かりました。私でお役に立てるのであれば。」
「ありがとぉ。じゃあ早速始めようか。あっ、この村の家は見た目より丈夫だから中で暴れても大丈夫だよぉ。」
分かりました、とリーリエはマツリカとの距離をとる。ダブルバトルとのことなので、リーリエはモンスターボールを二つ取り出し準備をする。対するマツリカも鏡合わせの様に向かい合いモンスターボールを取り出した。
お互いに準備万端、と確認すると、同時に取り出したモンスターボールを正面に投げる。
「お願いします!シロン!マリルさん!」
『コォン!』
『リルル!』
「行くよぉ、グランブル、クチートぉ!」
『グルゥ』
『クッチート』
リーリエが繰り出したのはシロン、マリルの二体。対してマツリカが繰り出したポケモンはグランブル、クチートの二体である。フェアリー使いであるマツリカは、同じフェアリータイプであるシロン、マリルを見て目の色を輝かせていた。
「おお!キュウコンとマリル!いいねいいねぇ。すごくいいよぉ!」
対してリーリエはマツリカのポケモンを二体見て対戦相手の分析をする。グランブルとクチート、両者のタイプを見るとマツリカは間違いなくフェアリータイプ使い。その上どちらの特性も相手の攻撃力を下げるいかくである。シロンとマリルは相手の威圧感に怯んでしまい、物理攻撃力が下がってしまった。
「でも、バトルでは容赦しないよぉ?スランプ状態を取り戻すためにこのマツリカ、全力でお相手するよ!」
先ほどまであまりのマイペースっぷりから気が抜けてしまっていたが、いざバトルに入り対面すると、キャプテンとしての威圧感が半端ではなかった。間違いなくこの人は強いのだと伝わるほどの雰囲気。一瞬の油断が命取りだと気を引き締める。
「さあ、どこからでもかかってきていいよぉ。いい絵になりそうなバトル、期待しているからねぇ。」
そう言ってマツリカはリーリエを挑発してくる。ならばこちらも期待に沿えなければならないと、マツリカよりも先に動くのであった。
「シロン!こおりのつぶてです!」
『コン!』
「グランブル!ほのおのキバ!」
『グラァ』
シロンはこおりのつぶてで何時ものように様子見を兼ねた先制攻撃を仕掛ける。しかしその攻撃はグランブルのほのおのキバによって阻まれてしまう。タイプ相性による問題もあるだろうが、それ以上にいかくによるダブル攻撃ダウンも効いているだろう。
「っ!?マリルさん!アクアテール!」
『リル!』
「クチート!こごえるかぜ!」
『クチィト!』
今度はマリルがアクアテールによる近接戦闘を仕掛ける。しかしクチートのこごえるかぜによりマリルは接近する前に押し返されてしまう。
さらにクチートのこごえるかぜの範囲が広く、シロンにも同時に命中してしまう。そしてこごえるかぜによる追加効果により足の一部が凍りついてしまい素早さが低下する。
「今だよぉ!グランブル!ビルドアップ!」
『グラッブ!』
グランブルは自身の筋肉を増長させ、攻撃力と防御力を上げてくる。相手の動きを止め、その間に能力を確実に上げる戦略は、非常に完成されたものがある。マツリカは恐らくダブルバトルに慣れているのだろう。
「グランブル!キュウコンにじゃれつく!」
『グラァ!』
『コォン!?』
グランブルはシロン目掛けて走っていきじゃれつくで攻撃する。ビルドアップにより攻撃力が上がっており、文字通りのじゃれつくはシロンの体力を奪っていく。
『リルゥ!』
『グッブ!?』
マリルは咄嗟にアクアテールでグランブルを弾き飛ばし、シロンをじゃれつくから解放する。グランブルは受け身を取りダメージを軽減するものの、傷を負っているのは確認できる。間違いなくダメージは少なからず入っている。
「くっ……マリルさん!ころがるです!シロンはムーンフォースで援護を!」
『リル!』『コォン!』
マリルは丸まりころがるで勢いよく突進する。その背後からシロンは力を溜め込み、ムーンフォースでグランブルとクチートを攻撃した。
「グランブルはばかぢからでムーンフォースを防いでぇ!クチートはおどろかすだよぉ!」
『グッブゥ!』『……チィト!』
グランブルは前に出て全力の殴打でムーンフォースを破砕する。ばかぢからは強烈な威力を誇る分、自身の攻撃力と防御力を下げてしまう。これでビルドアップ分の能力は相殺された。
クチートはころがるで接近してきたマリルに背中の大きな口でおどろかす。おどろかすで怯んだマリルのころがる状態が解除されてしまい、マリルは動きを止めてしまった。
「そのままぶんまわす!」
『リルッ!?』
おどろかすで怯み動きを止めてしまったマリルの足を大きな口で掴み、ブンブンと振り回す。そして勢いついたところでクチートはマリルを投げ飛ばした。
『コォン!?』
投げ飛ばされたマリルがシロンに直撃し二人とも吹き飛ばされる。マツリカが手強いのはもちろんだが、彼女の雰囲気からは想像できないラフな戦術に驚くと同時に関心させられる。
ダブルバトルは様々な戦術があり、ポケモンの組み合わせや役割も重要になってくる。マツリカはクチートによる妨害やサポートで防ぎ、グランブルのパワーで畳みかけている。これほどの連携が簡単に熟せるのは、それだけ彼女の実力が高いという証明である。
「っ、マツリカさん、強いです。」
マツリカの強さに驚愕するも、リーリエは心のどこかでワクワクした気持ちが湧いてきていた。まだ諦めていない、そんな想いを感じさせるリーリエの瞳を見て、マツリカはいいねぇと嬉しそうに笑っていた。
まだまだこれから、と二人が意気込んだ次の瞬間、何かが扉にゴツンッとぶつかる音がした。すると扉が勢いよく開かれ、外から大きなポケモンが飛び込んできた。
『アブリボン、ツリアブポケモン。むし・フェアリータイプ。花粉と蜜を集めて団子を作る。雨に濡れることを嫌い、晴天にしか姿を現さない。』
そのポケモンの正体はアブリボンであった。しかし通常のアブリボンよりも一回り二回りデカい体をしており、紛れもなくぬしポケモンであることが分かった。
「うーん……この子がやってくるなんて珍しいなぁ。キミのバトルに興味を持ったのかな?」
『アブリィ♪』
マツリカの問いに呼応するかのようにアブリボンの羽がパタパタと動く。どうやらヌシポケモンのアブリボンはリーリエとバトルがしたいようだ。
「オーケーオーケー。じゃあここからは私じゃなくて、マツリカが育てたアブリボンと戦ってもらおうかなぁ。キミもそれでいいかい?」
「は、はい!私はそれで構いません!」
「決まりだね。グランブル、クチート、お疲れ様。ゆっくり休んでねぇ。」
マツリカはグランブルとクチートをモンスターボールに戻す。リーリエも傷ついたシロンとマリルをモンスターボールに戻すことにしたが。
「シロン、マリルさん、戻って休んでてください。」
『コォン!』『リルル!』
「え?まだやりたい、ですか?」
リーリエの問いにシロンとマリルは頷いて答えた。傷ついたシロンたちをこのまま戦わせてもいいものかと悩むが、自分のことをまっすぐ見ているシロンたちの意思を無下にすることができなかった。
「……分かりました。ここは二人にお任せします。」
これ以上戦わせるのは危険かもしれないが、シロンとマリルの信頼と覚悟の眼差しを彼女は信じることにした。
『アブリィ!』
アブリボンは宙を踊るように華麗な舞を披露した。特殊攻撃と防御、素早さを上げる技だ。開幕から攻撃的な態勢をとってくるアブリボンにリーリエは警戒する。
『ブリィ』
続けてアブリボンを両手を上に広げると、空中から光を降り注いできた。フェアリータイプの技であるマジカルシャインである。能力を上げた後に繰り出されるマジカルシャインは、シロンとマリルを同時に包み込むのであった。
「っ!?マリルさん!バブルこうせんです!」
『リルゥ!』
「シロン!マリルさんのバブルこうせんに合わせてれいとうビームです!」
『コォン!』
マリルのバブルこうせんでマジカルシャインの衝撃を打ち払い、シロンのれいとうビームでバブルこうせん
と同時に攻撃する。シロンのれいとうビームがバブルこうせんと重なり、バブルこうせんの泡を凍らせ、無数の氷の刃を生成した。
シロンとマリルの合わせ技に驚くアブリボンはその攻撃を回避するが、全ての攻撃を回避しきることはできずに一部の氷の刃を掠めていく。
『リリリリリリ♪』
今度はアブリボンの反撃、触角や羽で不快な音波を発生させてきた。むしタイプの技であるむしのさざめきである。あまりの強烈な音に、思わずシロンとマリルは顔を歪ませている。後ろで指示を出しているリーリエも同じく顔を歪ませ、耳を塞いでいるほどだ。
「うっ……シロンっ!こおりのつぶてです!」
『ッ!コォン!』
シロンはこおりのつぶてで反撃する。アブリボンはむしのさざめきに集中していたため、こおりのつぶてを避けられずに直撃する。ダメージを受けたアブリボンのむしのさざめきは中断され、シロンとマリルも苦しみから解放される。
『ッ!?リボォ!』
アブリボンは態勢を整え、体内に力を溜め込む。シロンと同じフェアリータイプの技、ムーンフォースの態勢だろう。それならばと、リーリエも同じくシロンに迎え撃つ指示を出した。
「シロン!ムーンフォースです!」
シロンも同じように力を溜め込む。互いに力を溜めると、同時にムーンフォースを全力で解き放った。
お互いのムーンフォースがぶつかり合い、拮抗したのちにシロンのムーンフォースが打ち破られる。ちょうのまいによる能力上昇の差がでかいのだろう。アブリボンの攻撃の方が一枚上手だった。
シロンとマリルは回避し、床に着弾したムーンフォースによる衝撃で視界を遮る。視界が見えなくなっても、アブリボンは羽と触角の揺れによってシロンたちの動きを感知しようとする。
『……リボっ!?』
次の瞬間、シロンのこおりのつぶてがとんでくるのを読んでアブリボンは上空に回避した。しかし、その動きはリーリエたちも読んでいたことであった。
「マリルさん!ハイドロポンプです!」
『リィルゥ!』
マリルは自身の持つ最大威力の技、ハイドロポンプで衝撃ごと突き抜ける。鉄をも裂く勢いのハイドロポンプに、アブリボンは対応しきることができずに直撃してしまう。シロンの誘導に本命のマリル。これもダブルバトル特有の戦術である。
アブリボンはマリルのハイドロポンプで大きなダメージを受ける。それだけでなく翼や体が濡れてしまったことにより、先ほどよりも明らかに素早さが低下している。水で濡れて体が重くなり機敏な動きが封じられてしまったのだ。
「今です!れいとうビームです!」
『コォン!』
『アブリィ!?』
シロンはジャンプして飛び出し、動きの遅くなったアブリボンにれいとうビームで追撃を加える。アブリボンは当然避けることができず、怒涛の連携攻撃をもろに受けてしまい床に撃ち落とされてしまった。
『あ……りぃ……』
アブリボンは目を回し戦闘不能となる。さすがのぬしポケモンと言えど、これだけのダメージを立て続けに受けてしまえば一溜まりもなかったようだ。
「おおぉ……アブリボンに勝ったね。お見事お見事ぉ♪」
マツリカは拍手をしながら前に出てくる。キャプテンとしてぬしポケモンに勝利したことを祝福してくれているのだろう。
しかしその表情は先ほどよりもどこか嬉しそうで、彼女の顔が笑顔で溢れている。
「実はマツリカ、あんまりぬしポケモンをしっかりと育ててるわけじゃなくてね。この子も他のぬしポケモンに比べて鍛えているわけじゃないんだぁ。」
確かに言われてみれば、弱いわけでは一切なかったのだが、それでも他のぬしポケモンほど苦戦した印象はなかった。リーリエとポケモンたちが強くなった、と言う要因もあるのだろうが、アブリボン自身が強敵ではなかったというのが一番の要因のようだ。
「でもでもぉ、決して弱いわけじゃないからね。それにマツリカと戦ったあとにアブリボンに勝ったんだから、試練突破に文句はないよねぇ。」
と言うわけで、と、マツリカは懐からある光る物を取り出した。ピンク色に光るそれは紛れもなくフェアリータイプのZクリスタルであった。
「ほら、これがマツリカの試練を突破した証、フェアリーZだよぉ。」
「ありがとうございます、マツリカさん!フェアリーZ、ゲットです!」
『コォン♪』『リルル♪』
リーリエと一緒にシロン、マリルも試練の突破を喜ぶ。トレーナーと一緒になって喜びを共有する姿に、マツリカは何かピンッと閃きを感じた。
「おおぉ!なにか、なにかマツリカの頭にインスピレーションが沸いてきたぁ!」
「本当ですか?」
「ありがとう!キミ……いや、リーリエのおかげで閃いたよ!新しい絵が描けたら、その時はリーリエに見て欲しい!」
「はい!その時は是非!」
マツリカの閃いた絵が完成したら見せて貰うという約束をしたリーリエ。感謝するマツリカに対し、リーリエもダブルバトルの良い経験をさせてもらったと感謝する。
これで全ての試練を突破することができたリーリエだが、もう一つ頂に行くために残された戦いが一つある。それはポニ島のしまクイーン、ハプウの大試練である。
リーリエは最後の大試練を受けるため、ポニ島にいるはずのしまクイーンハプウを探すため、マツリカの家を後にするのであった。
前回ゼラオラでサーナイトの特殊ホロウェアも販売されたから次きそうだとは思ってたけど、本当にニンフィアのホロウェアがシーズンパスで登場して私は大歓喜。
当然即日解放しました。しかし今まで以上にバグが増えているのがUNITEクオリティ。なぜ過去に修正したはずのバグが復活するのか。