ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》   作:ブイズ使い

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次回からまた島巡りとなります


取り戻したアローラ、再開する島巡り!

かがやきさまの正気を取り戻すことに成功し、無事ウルトラホールからアローラに帰還したシンジとリーリエ。無事に帰ってきた二人を、グラジオたちが明るく出迎えた。

 

ソルガレオがかがやきさま、ネクロズマから解放されたことによりウルトラオーラも安定し、それに触発されていたUBたちも残らずウルトラホールに帰っていった。再び訪れたアローラの危機は、彼らの活躍のお陰で回避することができたのだ。

 

 

「やはり誰かさんが不運を呼び寄せているのかもな」

「うっ、そ、それは……」

「ふっ、なに、ちょっとした冗談だ。それにお前がいなければこの世界を守れていないことぐらい分かっているさ。」

「お兄様……」

 

グラジオは微笑しながら珍しく冗談を言う。彼自身、シンジがいなかったらアローラだけでなく自分の家族も崩壊していた可能性があることを知っている。決して本心などではないのは言うまでもない。リーリエは自分の兄が冗談を言うなんて、と少し心の中で驚いていた。

 

「シンジ、それとリーリエ」

「ダルスさん?」

 

ダルスがアマモと共にシンジとリーリエに呼びかける。すると真面目な彼が普段見せることのない表情を浮かべていた。

 

「ありがとう、私たちの世界を救ってくれて。」

「ありがとうね!おにーちゃんとおねーちゃんがいなかったらこんな気持ちになれなかったよ!」

 

ダルスとアマモは心の底からの感謝の気持ちを二人に伝える。なんだかデジャブのような光景に少し苦笑する二人だが、気にする必要はないとダルスたちに言うのだった。

 

「お二人はこれからどうするんですか?」

「すぐに光を取り戻した我々の世界に戻りたい気持ちはある。だが、折角このアローラにきたのだ。少し観光でもしてから帰ろうと思う。」

「これだけいい気分になったの初めてかもしれないからね!それにベベノムもこの世界が気に入ったみたいだから♪」

『ベベベェ♪』

 

ダルスとアマモだけでなく、モンスターボールから出ているベベノムも楽し気に笑顔を浮かべている。ベベノムも自分の世界が平和になったことを察したのか。同じUBとしてウルトラオーラの反応を感知しているのだろう。

 

「シンジ君、それからリーリエも。本当にお疲れ様。」

「ルザミーネさん」

「お母様」

 

ルザミーネが2年前のあの時とは違う穏やかな表情で二人に話しかける。その後、ルザミーネは娘であるリーリエを抱きしめる。

 

「おかあ……さま……?」

「あなたたちが無事でよかった。ありがとう……本当にありがとう……」

 

ルザミーネの声が僅かに震えているのが伝わってくる。その声から、彼女が娘であるリーリエ、そしてシンジの無事を祈り心配していたのがわかり、感極まって涙を流してしまっているのを感じる。その気持ちが嬉しくて、リーリエも思わず涙を流して母親を強く抱きしめる。

 

みんなの前で、と本来であれば恥ずかしがってあまり快く思わない場面だ。しかしリーリエは母親の心から心配してくれていたその姿が、かつて自分を心配してくれて抱きしめてくれた温かさとその光景が重なっていた。大雨が降った中、帰ってきた自分を抱きしめて慰めてくれた優しかった母親と。その姿を見たシンジは、心の底からよかったと二人のその姿を祝福した。

 

『ラリオーナ』

「ほしぐもちゃん。あなたもありがとうございました。それと……守れなくてごめんなさい。」

 

リーリエはソルガレオに頭を下げて謝罪をする。そんなリーリエの姿を見て、彼女の頭部に自分の額を優しくピタッとくっつける。

 

「ほしぐもちゃん?」

 

リーリエはソルガレオの行動に疑問を持ち問いかける。瞬間、ソルガレオの感情が直接リーリエの脳内に流れ込んできた。

 

『ぼくたちはともだちだから』

 

ソルガレオその気持ちにリーリエは嬉しくなり涙を流した。涙とともに、自分の感情も脳を通してソルガレオに伝える。私たちはいつまでも友達だと。その気持ちは友達と言いながらも、どことなく子どもの成長を喜ぶ母親のようでもあり、リーリエにとって不思議な感情であった。

 

リーリエと挨拶を交わしたソルガレオは、光を取り戻した太陽に向かって帰っていく。リーリエは手を振って太陽の化身、ソルガレオを見送り、シンジたちもまたソルガレオの背中を見送った。必ずまた会いましょうと約束をして。

 

太陽の化身と呼ばれるソルガレオは、これからも太陽のようにこのアローラを、そしてリーリエたちの事を暖かく見守ってくれることだろう。

 

「さてと、さすがに今回は疲れたし、一先ず引き上げて休もうぜ。」

「そうだねー。おれも疲れたし、ポケモンたちも休ませてあげたいしねー。」

「じゃあこの島にある海の民の村に行こう。そこのポケモンセンターで今日は休もうよ。」

 

ヨウ、ハウ、ミヅキの順でこれからのプランを口にする。そのプランには誰も異論はないようで、グラジオ、シンジ、リーリエは賛同する。

 

「私たちは一度エーテルパラダイスに戻るわ。あそこならポケモンの治療設備も揃っているし、ウルトラオーラの研究も進めなくてはならないし。」

「そうね。これからの対策も、オーラとUBの関係も進展しそうだしね。」

「了解しました!皆さんも、麓までお送りしますよ。」

 

ビッケは全員をヘリに誘導する。シンジも乗り込もうとするが、神経にバチッとした刺激がきたかのような感覚を感じ振り返った。しかし、そこには何もない、ただアローラの平和な青い空が広がっているだけであった。

 

「シンジさん?どうかしましたか?」

「……いや、なんでもないよ。」

 

自分の気のせいだろう、とリーリエの問いに首を振り自分もヘリに乗り込んだ。ウルトラオーラも安定し、ウルトラホールも閉じてUBは残らず帰還した。これ以上何かが起こるはずもないだろう。シンジはそう考えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方そのころ、エーテルパラダイスの地下研究所とある一室では……

 

「ウルトラオーラの数値、空間の歪み、世界の繋がり。全ては私の計算通りです。研究データもウルトラエネルギーも充分すぎる程溜まりました。後はこれを完成させるだけ!」

 

そう言ってサングラスをかけた男は資料に目を通しながらニヤニヤと笑みを浮かべている。

 

「これが成功すれば、私がエーテル財団の代表となれる日も近付く。いや、間違いなくそうなるでしょう。そうすればこのアローラは私のもの。チャンピオンなど恐れることはない!ふふふふ……ハッハッハッハッハァ!」

 

誰もいないエーテルパラダイス地下研究所に、一人の男の高笑いが響き渡る。一難去ってまた一難……遠くない未来に、一人の男の野望が新たな危機をもたらすことは誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、ポケモンセンターで一夜を過ごし休息をとった一同。朝を迎え、目を覚ましたリーリエが外の空気を吸う為にポケモンセンターを出た。

 

「んーっ、ハァ。やっぱりアローラの空気は気持ちいいです!」

 

太陽の光を取り戻し、アローラの空気の素晴らしさを改めて実感するリーリエ。そんな彼女の元に、一足先に起きていた人物が近付いてきた。

 

「リーリエ、起きたか。」

「お兄様!先に起きていたのですね。」

「ああ、最もあの三バカはまだ寝ているようだからな。」

「三バカ……」

 

三バカと言う言葉でなんとなくその人物のことが分かってしまった。幼馴染であるヨウ、ハウ、ミヅキたちであろう。三バカと称する兄に対してもだが、その言葉だけで分かってしまう自分に対しても大概だなと苦笑してしまう。

 

「あはは、まあ昨日は色々あって疲れたでしょうし、仕方ないですよ。」

「ふっ、一番疲労が溜まってそうな奴は一足先に起きて行っちまったがな。」

「えっ?」

 

一番疲労が溜まっていて、そそくさと出ていく人物など一人しかいない。その彼の姿が頭に浮かび、大丈夫なのかと心配になる。

 

「大丈夫……なのでしょうか?」

「どうだろうな。だがアイツの体の事はアイツが一番よく分かっているだろう。それに、お前もアイツがそんな軟なトレーナーじゃないってことくらい分かっているはずだ。」

「それは……そうですが……。」

「……まぁ、お前の心配も分かるさ。だが今回の件は四天王の人たちも知っているはずだ。あれだけの事があったんだから、気を遣って無茶なことはさせないはずだ。心配することもないだろう。」

「……そうですよね。あの人なら大丈夫です。」

 

誰より彼の強さを知っている自分が信じなくてどうする、とリーリエは気を取り直して拳をギュッと握る。

 

しかしそんな彼女を手に持つ筆越しに、じっくりと観察する女性の姿があった。リーリエはその視線に気づき、彼女に恐る恐ると声をかける。

 

「あ、あのぉ……何かご用でしょうか?」

「ああ、ごめんごめん。いい表情だったからつい観察したくなってね。おおっと、アローラ、アローラ」

 

女性は少しぎこちない印象ではあるが、アローラ特有の挨拶をする。リーリエも戸惑いながらもアローラ、と返答した。

 

「んー、どこかで見たような気がするんだけど……気のせいかなぁ?まあいいや。ねぇ、キミ。キミは島巡りをしているんだよねぇ?」

「は、はい、そうですが。」

「なるほどなるほどぉ。じゃあウチに来てよー。いいもの、見せてあげるからぁ。」

 

そう言って彼女は自分の言えと思われるナマズン型の家に入っていった。独特な雰囲気を見せる女性だが、リーリエは彼女から並々ならぬオーラを感じていた。

 

「あ、あの人は一体……」

「……彼女はマツリカだな。」

「お兄様、知っているのですか?」

「ああ。彼女はポニ島のキャプテンだからな。」

「えっ!?そうなのですか!?」

 

兄からさらりと告げられる衝撃の事実にリーリエは驚きの余り声をあげる。今まで色々なキャプテンと出会ってきたが、その誰とも雰囲気が全く一致しない独特の持ち主だったからだ。

 

それに彼女の手には筆とスケッチブックが握られており、トレーナーと言うよりも画家と言うイメージだ。

 

「気を付けろ。彼女はあんな見た目だが、実力で言えばキャプテンの中でも未知数だそうだ。その本当の実力を知る者はいないという。用心するに越したことはないだろう。」

 

グラジオから語られる情報にリーリエは喉をゴクリと鳴らす。知識がないことほど恐ろしいものはない。彼女の実力が未知数であるのならば、どのような試練が言い渡されるのかも想像がつかない。

 

リーリエはグラジオの忠告を胸にして、覚悟してマツリカの元に向かう。かなりの騒動があったが、島巡りもいよいよ終盤。最後の試練を突破し、ポニ島の大試練をクリアすれば、待つのは遂に約束の場所だ。

 

ここで絶対にコケるわけにはいかない。約束の場所に辿り着くために、リーリエは最後の試練の扉を開くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方そのころ……

 

「うへへ~、もう食べられないよ~」

 

「いけ~、そこだ~、ガオガエン~」

 

「負けないぞー、ジュナイパー、ねらいうてー」

 

三バカたちはまだ寝ていたのであった。




マツリカさんの喋り方と性格がわかんなーいのでイメージで書きます。アニメともなんかイメージ違うし、原作だと殆ど出番なかったし……。



今日からUNITEにまさかのフーパ参戦ですぞ!2体目の幻が意外だったけど、この調子で色んなポケモンが続々と参戦してほしいですな。

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