ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》 作:ブイズ使い
シンジとリーリエがかがやきさまとバトルしている時、アローラではグラジオたちがUBと交戦、防衛していた。
「ルカリオ!はどうだん!」
『バウゥ!』
「ピクシー!マジカルシャイン!」
『ピッシ!』
グラジオたちは長時間に渡る激戦を強いられながらも、協力し合ってなんとかUBたちに対抗することができていた。しかしそれでも、ポケモン達の体力は限界に近付いていた。
『かぶっ!』
『クロッ!?』
「クロバットっ!?」
疲弊した隙を突かれ、グラジオのクロバットがUBの一体、フェローチェのとびひざげりを受けてダウンしてしまう。その他にもミヅキのウインディ、ヨウのウォーグル、ハウのクワガノン、さらにルザミーネのムウマージまでもがやられてしまった。
「うぅ、倒しても倒してもキリがないよー」
「弱音を吐くなっての。って言いたいところだけど、さすがにこの状況は厳しいな。」
ハウとヨウも珍しく弱気な姿を見せる。ミヅキの表情からも余裕は感じられず、いつものようにバトルを楽しむことすらできそうにない。
『っ!?バウッ……』
「ルカリオ……よく頑張った、戻って休んでくれ。」
先ほどのはどうだんを使った反動か、ルカリオは地面に膝をついてしまう。今までの戦いの疲労もあるのだろう。グラジオはこれ以上戦わせることができないと判断し、ルカリオをモンスターボールに戻した。
「グラジオ君……どうしよう……」
「あいつらならなんとかする。俺たちはなんとしてでも奴らの進行を阻止するんだ。」
「……うん、そうだね!シンジ君とリーリエを信じないとね!」
グラジオの言葉に勇気づけられ、ミヅキはまだまだ戦えるという意思を見せる。クロバットとルカリオが倒れたため、グラジオは新たにモンスターボールを手に取り継続して戦おうとする。しかしその時……
「っ!?ビッケ!バーネット!あれをみて!」
「あ、あれは……」
ルザミーネの声に反応し、ビッケとバーネット、他のメンバーも確認する。そこにはネクロズマが開いたウルトラホールが稲妻を発生させてバチバチと音を出していた。
「こ、これは!?」
「どうしたの!?ビッケ!」
「ウルトラオーラの反応、拡大中!ですがこれは……」
ビッケと一緒にバーネットも確認する。するとそこには増大していくウルトラオーラの反応があったが、先ほどとは全く様子が違っていた。
増大したウルトラオーラが一定の数値に達すると、それ以上上昇することも下降することもなく、その数値を保ち続けていた。ウルトラホールが発現してから不安定だったのにもかかわらずである。
ビッケとバーネットは引き続きウルトラオーラを測定する。しかししばらくすると、ウルトラホールから一筋の光が突然飛び出してきた。グラジオたちは驚きながらも光を眺める。
ウルトラホールから飛び出した光はアローラの空に導かれる。光はポニ島を覆っていた暗闇を突き抜け地上に光りをもたらした。
「空から……光が……」
誰かがそう呟く。アローラに光が戻り、太陽の暖かい輝きが照らされた。その輝きこそが、シンジたちが勝利した証であった。
光に照らされ、UBたちは落ち着きを取り戻し一斉に動きを止めた。正気に戻ったのか、各々がウルトラホールに戻っていく。ウルトラオーラが安定したことにより、高まっていたUBの力も収まったのだろう。
「……ふっ、ようやく勝ったか。相変わらずヒヤヒヤさせる奴だ。」
グラジオは元通りとなったアローラの空を見上げながら、小さく微笑むのであった。
ソルガレオのZ技、サンシャインスマッシャーが決まり、闇の世界と呼ばれていたこの世界の暗闇を振り払ったシンジとリーリエ。しかし、Z技の連続使用により体力を使いつくしたシンジは両手、両膝を地面について倒れこむ。
「シンジさん!大丈夫ですか!?」
「はぁ……はぁ……な、なんとか、と言いたいけど少しキツイかな……」
珍しくシンジが素直に弱音を吐く。その表情からはいつもの余裕が見られず、かなりの苦痛から心配させないように無理やり笑顔を作っていると言った様子だ。
『フィア……』
『グレイ』
『リフィ……』
「ニンフィア、グレイシア、リーフィアも、僕なら大丈夫だよ。みんなもお疲れ様、ありがとうね。」
シンジを心配してニンフィアたちがゆっくりと近付き擦り寄ってくる。シンジはそんな彼女たちの気持ちに応えるように、いつも通り優しく頭をなでて感謝する。ニンフィアたちはその温かい手の温もりが大好きで、自然と笑みが零れて嬉しそうに微笑みながら気持ちよさそうな声を出していた。
「シロンもお疲れ様です。ゆっくりと休んでください。」
『コォン♪』
シンジとリーリエは自分のポケモンたちを休ませるためにモンスターボールへと戻した。かがやきさまとの死闘を繰り広げたのだから、当然ポケモンたちにも休息は必要だろう。
「キミたち!大丈夫か!」
そこにウルトラ調査隊の隊長であるシオニラと、その秘書であるミリンが慌てた様子でやってきた。そして塔の頂上で膝を付き大人しくしているかがやきさまを見て、二人は驚きを隠せないでいた。
「かがやきさまが大人しくなっている……。隊長、どうやら決着がついたようです。」
「ふむ、そうか。キミたち、何があったのか教えてくれるか?」
「は、はい。実は……」
シンジとリーリエはかがやきさまとのバトルで起きた内容をシオニラたちに伝える。自分たちの世界にはほとんど存在しないポケモンの凄さを痛感させられる。
「ふむ……ダルスから聞いていたが、ポケモンとは実に興味深い生き物だ。それからポケモントレーナーと言うものも……。同時に少し恐ろしくも感じるが。」
「恐らくかがやきさまはソルガレオの光の力をZ技を通して放出され、ウルトラオーラが安定したことによって暴走状態が抑制されたのでしょう。その結果、私たちの世界にも光が戻ったみたいです。」
「まさかこのような結果が訪れるとは思っていなかった。改めて礼を言う。ありがとう。」
シオニラとミリンは同時に頭を下げて感謝の言葉を口にする。
「お、お二人とも頭を上げてください!」
「僕たちはただ自分たちの意思でやっただけですので、どうか気になさらないでください。」
ダルスとの約束、そしてほしぐもを助けるために行動しただけ、だからお礼を言われることではないと言う二人。しかしこの世界の住人からすれば先祖の犯した過ちの尻拭い、そしてこの世界の再び太陽と言う大いなる光を灯してくれた英雄だ。いくら感謝してもしきれないだろう。二人が自覚していなくとも、それだけのことをやってのけたのだ。
本音はすぐにでも宴を開いて英雄である二人をもてなしたいところだが、シンジたちはそう言ってはいられない。
「僕たちはすぐにでも戻らないと。」
「そうですね。あまり遅くなってしまうと、お兄様たちが心配してしまいますから。」
「……そうか。ではまた改めてこの世界に来てほしい。」
「その時は是非、私たちが誠心誠意を込めておもてなしをさせていただきますわ。」
『ラリオーナ♪』
その時は是非、とシンジたちもまたこの世界に来ることを約束する。シンジとシオニラ、リーリエとミリンが約束と共に握手を交わすと、膝を崩して力尽きていたかがやきさまが体を起こして立ち上がった。
「か、かがやきさま……」
急に体を起こしたかがやきさまに思わず警戒するリーリエ。先ほどまで敵対し、その上あれだけの苦戦を強いられれば警戒するのも当然だ。しかし、彼女のその心配は杞憂であった。
『……シカリ』
「ありがとう……かがやきさまはそう言っているみたいだな。」
「かがやきさまも、暴走している自分を止めてくれた二人に感謝しているみたいです。」
「……こちらこそ、ありがとう、かがやきさま。」
「今度はお友達としてお会いしましょう!」
そう言って二人はかがシオニラとミリン、かがやきさまに別れを告げる。彼らに別れを告げた二人はソルガレオに跨り、そしてソルガレオが開いたウルトラホールへと姿を消すのであった。
「……ありがとう、二人の英雄様。」
「お二人に、太陽のご加護があらんことを。」
救われた世界を祝福するかのように、太陽の暖かく眩しい光が、ウルトラメガロポリスにそびえ立つ塔を照らし包み込むのであった。
「あっ!見て!ウルトラホールが!」
UBが撤退し、日輪の祭壇で待機していたグラジオたち。ミヅキが新しく開いたウルトラホールを指差すと、そこから一匹のポケモンが姿を現した。その背中には、みんなのよく知る二人の人間が乗っていた。
「リーリエ!シンジ!」
「二人はやっぱり無事だったねー!」
「よかった、本当に、よかった……」
無事に帰還した二人の姿に安堵し、胸を撫で下ろす一同。ソルガレオはそんな一同の前に着地し、二人はソルガレオの背中から降りた。
「全く、一時はどうなるかと思ったぞ。」
「ははは、心配かけたね。」
「すみません、お兄様……」
「……まぁ、今はこう言っておこう。」
グラジオは一呼吸置き、小さく微笑んでこう告げた。
「……おかえり、シンジ、リーリエ。」
『っ、ただいま!』
アローラの友たちから祝福を受け、シンジとリーリエはいつものように元気な笑顔を見せるのであった。
プリコネフェスのキャラライブが神過ぎた