ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》 作:ブイズ使い
みんなのトラウマ登場です
闇の世界と呼ばれるもう一つの世界、ウルトラメガロポリスに到着したシンジとリーリエ。ダルス、アマモの仲間であるウルトラ調査隊の隊長、シオニラよ秘書のミリンと出会い、ネクロズマが逃げたという高く聳え立つ塔の頂上を目指し螺旋階段を登っていた。
「それにしても長いね、この階段」
「はい。ですがもうそろそろつくと思います。」
「リーリエは以前にもこの光景を見たことがあるんだったよね?」
シンジの問いにリーリエはもう一度はい、と頷く。折角の機会なので、とウラウラ島で見た内容をシンジに話した。
「……なるほど。ウラウラ島の花園で霧に包まれ、さっきのネクロズマやこの世界の光景を見た、と言うことだね。」
「はい、あまり信じられないことだとは思いますが。」
リーリエの説明にシンジは考える。あるとしたら、とたった一つの考察に辿り着いた。
「リーリエが迷い込んだのは、恐らく月輪の祭壇だね。」
「月輪の祭壇?」
一瞬聞いたことがある気がする、とリーリエは記憶を遡る。そう、先ほどまでいた日輪の祭壇と名前が瓜二つなのである。思い出してみると、あの時見た祭壇は日輪の祭壇にそっくりであった。
「月輪の祭壇には色々と噂があるんだ。別の世界に繋がっている、とか、その他にもソルガレオやルナアーラに関係している、とかもね。」
「ソルガレオさんやルナアーラさんに?という事はほしぐもちゃんにも関係が?」
「といっても噂だからね。それに月輪の祭壇は謎が多くて、研究もまだ進んでいないんだ。かつて大きな街があったけど、カプの村同様に守り神の怒りを買って破壊された、と言う言い伝えもあるみたい。」
アローラのチャンピオンであるシンジでも曖昧で不可解な情報しか持っていない月輪の祭壇。どことなく不気味で、ある意味ホラースポットのようでリーリエは寒気がした。
「……でも、ほしぐもちゃんに関係性の強いリーリエが見たことに、何か意味が?ほしぐもちゃんが何かを伝えたかった?それとも……」
「シンジさん?」
シンジはぶつぶつと呟きながら階段を登っていく。どうしたのかと尋ねてみるリーリエに、シンジは首を振ってなんでもないと答える。彼がそう言ったのなら、リーリエは頷くことしかできなかった。
「……とにかく、またいづれ調べる必要があるかもしれないね。」
シンジは自分の中で何かを結論づけたようで、納得したように頷いた。
階段を登り始めてからどれくらい経ったか、疲れが実感してきた頃に上を見上げると、夜空とは違う暗い空が二人の視線に入ってきた。ようやく塔の頂上へと辿り着いたのだった。
やっとか、と一息つく彼らの前に広がっていたのは特に何かあるわけでもない塔の頂上。しかしただ一つ、ある物を除いては、だが。どうやら彼らに休む暇などはないようだ。
頂上にはソルガレオと融合したネクロズマが疲労のためか座って眠りについていた。不慣れな力のためか、それとも空間移動のために力を使ったためか、ネクロズマは休息している様子だ。
ネクロズマはシンジたちの気配に気づき体を起こす。こちらは休息している間もないと、シンジとリーリエは警戒態勢に入る。だがネクロズマは彼らに襲い掛かる様子は見せず、二人を見定めるようにただただ見つめている。
「ね、ネクロズマさん、どうしたのでしょうか?」
「分からない……。ただ何か違和感が……。」
日輪の祭壇ではあれだけ攻撃的だったにもかかわらず、今は一切攻撃をする素振りを見せない。その姿からどことなく懐かしい気を感じるが、そんな甘い考えは振り払う。今の彼はほしぐもではなく、暴走した驚異の存在、ネクロズマなのだから。
二人の間に緊張が走る。以前グラジオたちの力を借りたシンジたちを圧倒した力を持つネクロズマ。そんな彼に対して迂闊に動けば、一瞬の内にやられてしまうのは目に見えている。強敵だからこそ慎重に動かなければ勝ち目はない。
しばらく見つめ合うネクロズマとシンジたち。するとその静寂を破ったのは、ネクロズマのほうであった。
ネクロズマは太陽の光も月の光もない空を見上げる。次の瞬間、ネクロズマは大きな咆哮をあげたのだった。
『ラリオーナ!!』
ネクロズマの咆哮がウルトラメガロポリス全域に広がる。咆哮と同時にネクロズマの体を光が包み込んだ。光のない闇の世界をネクロズマの光が照らしていた。
闇の世界を照らす光が徐々に大きくなっていく。その光がネクロズマの形状を別のものに変化させていく。
ソルガレオだったその姿は見る影もなく、光が解き放たれた時にそこにいたのは別の生命体であった。竜にも似たその姿に全身が光り、闇をも一切寄せ付けることのない輝き。まるで神様のようであった。
『シ…シ…シカリ…!!』
それもそのはずである。シンジにもリーリエにも、あの姿には見覚えがあった。リーリエが霧の中で見た光景はまさにこの姿であり、シンジがルザミーネに見せられた石板に描かれていた姿が目の前の存在であった。その姿こそがまさに、かがやきさまの真の姿と言うことの証明だ。
目の前に存在しているのは紛れもなくネクロズマであり、この世界においての神、かがやきさまだ。その威圧感は尋常ではなく、シンジもリーリエも、あまりに強大すぎる力を前にして汗ばむ手をグっと強く握りしめる。
そんな二人の気持ちに気付いたのか、懐にあるモンスターボールがブルブルと揺れ、触れてもいないのに開いて中身からポケモンが飛び出した。飛び出したのは彼らの相棒でもあるニンフィア、そしてシロンであった。
『フィア!』
『コォン!』
「シロン!?ど、どうして?」
「ニンフィア!?だ、ダメじゃないか!キミたちは休んでいないと!?」
ニンフィアとシロンは先ほどのネクロズマとの戦いで傷付いている。戦える体力など残っているはずもない。二人は相棒の体を気遣い、すぐにモンスターボールに戻るよう促した。しかしニンフィアとシロンはその要求を拒否し、自分のマスターの元へとゆっくりと近付いた。
『フィーア♪』
「ニンフィア?」
『コォン♪』
「し、シロン?」
ニンフィアはシンジの手にリボンを優しく巻き付け、シロンはリーリエの横に立って頭を擦り付けた。
その時、ニンフィアとシロンの気持ちが体を通して伝わってきた。不安を感じている二人の気持ちを察し、安心させるために出てきたのである。マスターは一人じゃない、自分たちも傍にいるのだと勇気づけるために。
「……そうだよね。ありがとう、ニンフィア。」
「シロンもありがとうございます。そうですよね。私たちは一人じゃありません。」
ここにはシンジとリーリエ、それにニンフィアやシロン、苦楽を共にしてきた仲間たちがいる。そう考えると、不思議と恐怖がなくなってきた。これだけ強大で恐ろしいほどの威圧感を前にしても。
「かがやきさま……いざ目の前にしてみるととてつもない存在ですね。」
「でもここまで来た以上、僕たちのやることは決まっているよ。」
「はい!もちろんです!」
リーリエは手をギュッと握りしめて気合を入れる。傍に大切な人が、頼れるポケモンたちがいるから怖くない。そう自分に言い聞かせてモンスターボールを手にする。
「お願いします!カイリューさん!」
『バウゥ!』
「行くよ!ブラッキー!エーフィ!」
『ブラッキ』
『エフィ!』
リーリエはカイリュー、シンジはブラッキーとエーフィを繰り出した。相手がかがやきさまともなれば、こちらも出し惜しみなどしてはいられない。
相手はとてつもなく強大な力を持った相手。彼らのポケモンたちはいつも以上に身構え臨戦態勢をとる。間違いなく歴代戦う中でも最強の敵である。
そしてかがやきさまもシンジたちの姿を見て、彼らの事を敵なのだと認識した。身を屈め、蓄えた力を一気に解放しかがやきさまの光が遥かに増す。闇をも振り払わんとする光は、ぬしポケモンが纏うオーラと同じものであった。しかし感じられる強さはその比ではなく、背中にぞわりと畏怖を感じるほどのものであった。
戦う意思を見せたかがやきさまに対し、いつしかけるべきか様子を見るシンジたち。次の瞬間、最初に動き始めたのはなんとかがやきさまからであった。
かがやきさまは大きな両翼で身を屈める。するとかがやきさまの翼に光りが集約し、一層輝きが強くなる。そして翼を広げると、虹色の光が乱反射してシンジたちに襲い掛かった。日輪の祭壇でも見せたネクロズマの技、プリズムレーザーだ。
プリズムレーザーは無造作に放たれ、どこを、誰を狙っているのかが全く読めない。ニンフィアやシロンたちは避けるしか対抗策がなかった。
「っ!エーフィ!ひかりのかべ!」
『エッフィ!』
エーフィはひかりのかべを張って守りの態勢に入った。特殊技の効果を軽減するひかりのかべによりプリズムレーザーの威力は弱まるが、それでも元々途方もないエネルギーであるかがやきさまの放つプリズムレーザー、容易く防げるとは思っていない。
「ブラッキー!」
『ブラッキ!』
今度はブラッキーが前に出る。プリズムレーザーがブラッキーに直撃するが、ブラッキーは怯むことなく前進する。
あくタイプであるブラッキーにエスパータイプの技は効果がない。とは言え相手は常識を超越した存在、かがやきさまだ。無傷で済むはずがない。エーフィのひかりのかべの効果が相まってブラッキーをかがやきさまの攻撃から守ったのだ。これで突破口を少しでも開くことができた。
「ブラッキー!あくのはどう!」
『ラッキィ!』
ブラッキーは頭部からあくのはどうを放ちかがやきさまに攻撃する。かがやきさまは反撃するでもなく、ブラッキーのあくのはどうの直撃を受ける。
『っ!?』
ブラッキーの攻撃を受けたネクロズマは少し後退して怯む様子を見せた。それと同時に、プリズムレーザーによる攻撃がピタリと止んだのだった。
「攻撃が止みました!カイリューさん!しんそくです!」
『バウ!』
カイリューは素早い動きで接近し、巨大な体をしたかがやきさまの腹部に強烈な一撃を叩きこむ。いくらかがやきさまと言えど、連続攻撃はさすがに応えるようで顔色を変えているのが分かる。
強力な技だからこそ隙は存在する。かがやきさまのプリズムレーザーは強力であるが故に、使用したら動けなくなるデメリットがある。だからかがやきさまは見え見えの彼らの反撃に対応ができなかったのである。
「シロン!れいとうビームです!」
『コォン!』
「ニンフィア!シャドーボール!」
『フィア!』
シロンはれいとうビーム、ニンフィアはシャドーボールで追撃する。どちらの攻撃も隙を晒したかがやきさまにクリーンヒットする。かがやきさまの姿が爆発で隠れるが、しばらくするとかがやきさまの光により姿を現した。
しかしその体には傷ひとつ入っておらず、目に見えてのダメージが分からなかった。顔色を変えたにも関わらず、ニンフィアたちの攻撃が何一つ通用していないかのような錯覚にさえおちてしまう。
そんなはずはない……例え神と言われるかがやきさまであろうとも元は同じ生き物、無敵であるはずがない。
「っ!?シロン!こおりのつぶて!カイリューさんはれいとうビームです!」
『コォン!』
『バウッ!』
シロンのこおりのつぶて、カイリューのれいとうビームがかがやきさまを襲い掛かる。しかしかがやきさまはその攻撃に対抗して反撃する。
『シカッ……!』
かがやきさまの口はから放たれるその技はりゅうのはどう。シロンとカイリューの技と衝突するが、あっさりと二人の技を打ち消した。
こおりのつぶてとれいとうビームを破ったりゅうのはどうは、弾道が僅かに逸れてカイリューとシロンの足元に着弾し爆発する。二人はその強大な威力の余波にやられて吹き飛ばされた。
「カイリューさん!シロン!」
吹き飛ばされたカイリューとシロンの身を案じるリーリエ。しかしかがやきさまの攻撃の手は一切休むことはなかった。
『っ!』
かがやきさまは続けてシンジたちにターゲットを絞る。りゅうのはどうとは違い、自分の光の力を体内から口元に伝って集中させる。
「こ、これはっ!?」
間違いなくこれはまずい、とシンジは嫌な予感を察して攻撃に転じた。
「ブラッキーはシャドーボール!エーフィはサイケこうせん!ニンフィアはムーンフォース!」
『ブラッキ!』
『エフィ!』
『フィア!』
ブラッキーのシャドーボール、エーフィのサイケこうせん、ニンフィアのムーンフォースを同時に解き放ったかがやきさまの攻撃を止めに入る。しかしニンフィアたちの攻撃が辿り着くよりも早く、かがやきさまは凝縮された光のエネルギーを放った。
光のエネルギーは三人の技とぶつかった。しかし相殺や打ち消すどころか、寧ろ三人の技を吸収しさらに大きさが増した。驚くべきことにニンフィアたちの攻撃を吸収し技の威力が高まったのだ。
より強大になったかがやきさまの攻撃、フォトンゲイザーは一番前に出ていたエーフィに着弾してしまう。着弾と同時に光の柱が立ち、エーフィは耐えることなどできるはずもなく容易く吹き飛ばされた。
そして背後にいるブラッキーをも巻き込み、エーフィとブラッキーは同時に転がって倒れてしまう。ひかりのかべがあったのにも関わらず、それすらも無視して吹き飛ばしてしまうかがやきさまの攻撃力にシンジたちは驚愕する。
「ブラッキー!エーフィ!」
『ブラッ……』
『エッフ……』
「……よく頑張ったね、ゆっくり休んで」
『フィアァ……』
あんな一撃を喰らってしまっては一溜りもない。これ以上戦う事はできないと判断し、シンジはブラッキーとエーフィをモンスターボールへと戻した。やはりかがやきさまは途方もない存在であるのだと再認識させられる。
「…………」
ブラッキーとエーフィを失ってしまい、どうするのか打開策を考えるシンジ。たった一撃で自慢のポケモン達を戦闘不能に追い込むとは思ってもいなかった。
これだけ強大な敵にどうやって勝てばいいのか。もはや答えは、たった一つしかなかった。
「……ほしぐもちゃんに賭けるしかない。」
「し、シンジさん?一体何を?」
リーリエはシンジが一体何を言っているのか理解できなかった。シンジの言うほしぐもは現在ネクロズマに吸収され、悲劇的にも彼らの敵として対峙してしまっている。力を借りることなどできるはずもない。
「……でもこれしか方法はない。」
「どういう、ことですか?」
「ネクロズマとほしぐもちゃんは融合し、かがやきさまとしての力を得てしまっている。だけど、もしほしぐもちゃんが完全にネクロズマに取り込まれていなかったらまだ間に合うかもしれない。」
「ほしぐもちゃんをネクロズマさんから引き離せば、なんとかなるかもしれない?」
リーリエの疑問にシンジは頷いて応えた。
「で、ですが一体どうやって?」
「それができる唯一の方法……それはこれしかない。」
シンジは自分の腕に装着したあるものをリーリエに見せつける。それを見たリーリエは、彼が何を言いたいのかを理解した。
「Z技、ですか。」
「うん」
アローラのトレーナーに代々より伝わるZ技。例え光の輝きを纏っていようとも、暴走してしまっているかがやきさまは闇そのもの。アローラの光でもあるZ技をぶつければ可能性はある。
それになにより、リーリエは以前見たマリエ図書館での本の1ページを思い出した。
おおぞら より
ひかりのりゃくだつしゃ あらわれ
せかい やみに つつまれる
たいようを くらいし けもの うばい
たそがれの たてがみ となる
わかものと まもりがみ
いしを つかい ひかりを はなち
たいようを くらいし けものと
ひかりのりゃくだつしゃを わかちて
アローラの やみを おいはらう
【いしをつかいひかりをはなつ】それがZ技のことなのであれば、それこそがかがやきさまを止める唯一の手段となり得る。それ以上有効な手段を思いつかない以上、このたった一手に賭けるしかない。
「リーリエ、僕を信じて欲しい。」
「……シンジさん」
シンジは真っ直ぐリーリエの瞳を見つめる。その真っ直ぐな瞳を見て、リーリエは迷う事も悩む事も一切なかった。
「……もちろん、私はシンジさんのことを信じていますから!」
「……ありがとう、リーリエ。」
『バウゥ!』
『コォン!』
『フィア!』
シンジは小さくリーリエに感謝する。彼らの残されたポケモン達もトレーナーの決意に背中を押されて立ち上がる。そして二人でかがやきさまを見つめ、紛れもない最終ラウンドに入るのだった。
「さあ、最後の戦いだ!」
「全力でまいります!」
『シ…シカリッ!』
遂にウルトラネクロズマ戦となりました。次に決着は着くでしょう。
ポケモンUNITE現在レート1700超えました。シーズン終わるまでに1800は乗りたいね。
因みに次出るのはリーク情報だとギルガルドらしいです。本当かどうか分からないけど、実際出たら難しそうだけど面白そう。