ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》   作:ブイズ使い

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オーロット実装日

最近ハイボ瞑想+スピーダーのニンフィアにハマってます


光なき世界、ウルトラメガロポリス!

シンジとリーリエがウルトラホールに突入したその後、日輪の祭壇にてUBたちと激しい激闘が繰り広げられていた。

 

「ルカリオ!ボーンラッシュ!クロバットはアクロバット!」

『バウゥ!』

『クロ!』

 

UBの大群にグラジオのルカリオとクロバットの正面から突撃し、ボーンラッシュとアクロバットで迎え撃ち一掃する。二体の連続攻撃によりUBたちは倒れるが、次々と後続のUBたちがウルトラホールから姿を現してくる。

 

「くっ!?倒しても倒してもキリがない!」

『デンショック!』

 

次に前に出てきたのは電気ケーブルにも似た姿をしたUB、デンジュモクだ。デンジュモクは足を地面に突き刺し、周囲に電気を走らせる。エレキフィールドを展開しでんき技の威力を上げたのだ。

 

デンジュモクは自分のフィールドにしたのち、10まんボルトで攻撃を仕掛けてくる。エレキフィールドにより更に威力が上がったでんき技の迫力は凄まじいものであった。

 

「エレキフィールドなら私に任せて!ライチュウ!エレキボール!」

「俺たちも行くぞ!ピカチュウ!10まんボルト!」

『ライチュ!』

『ピッカチュ!』

 

ミヅキのライチュウ、ヨウのピカチュウも同じく威力の上がったでんき技で対抗する。二体の合わせ技によりデンジュモクの攻撃を相殺することに成功した。

 

「ライチュウ!アイアンテール!」

『ライラーイ♪』

『デン!?』

 

ライチュウは凄まじいスピードで駆け抜け、デンジュモクにアイアンテールを叩きつける。その目にも止まらぬスピードにデンジュモクは面食らった様子で、アイアンテールによって吹き飛ばされる。

 

アローラライチュウの特性はサーフテール。エレキフィールド下では素早さが2倍に跳ね上がる特性だ。デンジュモクはエレキフィールドによって、逆に自分に不利な状況を作ってしまったというわけだ。

 

「よし、っ!?みんな!かわせ!」

『っ!?』

 

ヨウの呼びかけに気付き反応した全員はその場から散り散りに撤退する。直後、みんなのいた場所に空から鋼の巨体がドシンッ、と大きな衝撃と共に降り立ってきた。高さ9.2m、重さ999.9㎏と言う巨躯を持つUB、テッカグヤである。

 

重ければ重いほど威力の上がる技、ヘビーボンバーにより祭壇にヒビが入る。しかしいち早く気付くことができたためこちらへの被害はなかった。

 

「今度はおれがー!クワガノン!10まんボルトー!」

『クワッ!』

『かがよふ』

 

ヘビーボンバーの着地隙を狙ってクワガノンが10まんボルトで攻撃する。ひこうタイプのテッカグヤにでんきタイプの10まんボルトは効果が抜群だ。しかしテッカグヤは、まもるを展開してクワガノンの攻撃を防御する。

 

まもるは相手の攻撃を完全に防ぐことのできる防御技だ。如何に弱点技であったとしても攻撃が通らなければ意味がない。しかし……

 

「甘いわよ!ムウマージ!マジカルフレイム!」

『マァジ!』

 

今度はルザミーネのムウマージがマジカルフレイムで追撃をする。

 

まもるは連続で使うと失敗してしまうことがある。テッカグヤは巨体故にスピードがなく回避することができない。そのため、まもるで再びムウマージの攻撃を防ごうとするが、連続で使ったために失敗してしまい防ぐことができなかった。

 

テッカグヤはマジカルフレイムの直撃を受けて怯む。その隙を見て、ハウはチャンスと捉えもう一度クワガノンで攻勢にでる。

 

「続けてワイルドボルトー!」

『クワクワクワ!』

『!?』

 

クワガノンのワイルドボルトがテッカグヤの胴体に突き刺さる。さしものテッカグヤと言えど、弱点技を連続で受ければ一溜りもない。その巨体は後方にゆっくりと倒れ、テッカグヤはダウンした。

 

しかしそれでもまだまだ数は残っている。ウルトラホールが開いている限り、UBの数は衰えることを知らない。

 

それでも今自分たちができることはアローラにUBを進出させないことのみである。グラジオたちはただただUBを必死に止め続ける。

 

「ピクシー!マジカルシャイン!」

『ピックシ!』

「オンバーン!ばくおんぱー!」

『バッオン!』

 

ピクシーのマジカルシャイン、オンバーンのばくおんぱで一斉に攻撃する。どちらの技も範囲が広い攻撃で、大勢のUBにヒットしてダメージを与える。こうやって少しずつでも押し返していくしかない。

 

「っ!?ピクシー!うしろよ!」

『ピッシ!?』

 

ルザミーネの声に反応したピクシーは後ろを振り返る。するとそこには刀の様な腕を振りかぶったUB、カミツルギが接近してきていた。

 

小さな体と素早い動きにより音もなくピクシーに接近したカミツルギは鋭い刃、リーフブレードで切り裂こうと構える。ピクシーのピンチ化と思いきや、その攻撃をあるポケモンが阻止したのだった。

 

「ウォーグル!ブレイククロー!」

『ウォー!』

 

ウォーグルは鋭いツメによる一撃、ブレイククローでピクシーの背後に回り込んでカミツルギのリーフブレードと交える。互いの鋭い一閃はそれぞれの攻撃を止めるには充分であった。

 

「ウインディ!しんそく!」

『ガウ!』

 

ウォーグルのブレイククローにより身動きの取れないカミツルギを、ウインディが横からしんそくで吹き飛ばし妨害する。

 

「かえんほうしゃ!」

 

ウインディはかえんほうしゃでカミツルギに追撃する。カミツルギははがね・くさタイプ。弱点であるほのお技を受けてこれ以上戦えるはずもない。

 

みんなが戦っている中、ビッケとバーネットがウルトラオーラについて調査していた。

 

「このウルトラオーラの数値、あまりにも不可解です。」

「ええ、本来ウルトラオーラは一定の数値を保っているはず。でもこのウルトラオーラの数値はあまりに不安定すぎる。」

 

バーネットが検知されたウルトラオーラの数値を見て考える。

 

従来のUBから検知されるウルトラオーラはUBの強さを示す数値のようなもの。しかし今検知されているウルトラオーラは全く異なり、強くなったり弱くなったりとかなり波があり、正確に判定することができない。まるで催眠にでもかけられているかのように自我がなく、不安定なのである。

 

「恐らくネクロズマが影響しているのだろう。」

「ネクロズマが?」

「ネクロズマはね、かがやきさまとしての力があったときは、膨大な量のウルトラオーラを所持していたんだ。」

「ネクロズマがかつての力を取り戻した。しかし吸収したのはこの世界のソルガレオだった。」

「その力があまりに大きすぎるから、ネクロズマ自身も制御しきれていないんだよ。」

 

ダルスとアマモの説明にビッケとバーネットは納得する。

 

「確かに、そう考えると辻褄が合うわね。」

「膨大すぎるウルトラオーラの影響を受けて、UBたちがこの世界に誘われて暴走している、と言うことですか。」

 

ビッケの言う通り、このUBたちは現在ネクロズマの出すウルトラオーラの影響を受けて暴走中の状態だ。我々の言うことに耳を貸すこともなければ、ウルトラボールで捕まえることも不可能だろう。

 

「彼らを止める唯一の方法……それはネクロズマを止め、かがやきさまとしての本来の力を取り戻してもらうしかない。」

「つまり、お兄ちゃんたち次第、ってことだね。」

「そう、全てはシンジ君とリーリエにかかっているわけね。」

 

戦いながら耳を傾けていたルザミーネが、一瞬娘たちの入っていったウルトラオーラを見つめて呟いた。

 

「みんな!あの二人が戻ってくるまで、全力で止めるわよ!」

『ああ!』

 

ルザミーネの一喝にみんなが呼応して声をあげる。ネクロズマを追い、ソルガレオを助けに行った二人を信じて、UBたちとの戦いを続けるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方そのころ、ウルトラオーラに突入したシンジとリーリエは……

 

「ウルトラオーラ、本当に不思議なところだね。」

「はい、まるで先に進んでいる気がしません。」

 

ウルトラオーラ内部は一切風景が変わらず、先に進んでいるのかさえも自覚できない。それどころか、まるで時間が停止しているかのような錯覚さえ覚える程だ。

 

「リーリエ、体調に変化はない?」

「私は問題ないです。シンジさんはどうですか?」

「僕の方も問題ないよ。このスーツのおかげだね。」

 

ダルスたちから借りたスーツのお陰で、シンジたちの体に一切の影響はない。少し息苦しくは感じるが、それはあくまでスーツとヘルメットが少しキツイからであって、ウルトラホールに入ってからなんら変化は感じない。

 

ウルトラホールに入ってからどれほど経っただろうか。10分、20分、1時間、いや、時間の経過を感じられないため何日もの時が経過しているようにさえ思えてしまう。

 

『マヒナペェ!』

「ルナアーラさん?どうかしたんですか?」

「もしかしたら目的地に近付いてきたのかもしれないね。」

「……いよいよ……ですか」

 

ルナアーラの反応からダルスたちの闇の世界に近付いてきたことを察するシンジ。リーリエは喉をゴクリと鳴らし緊張感をあらわにする。

 

自然を失ってしまった闇の世界とはどのようなところなのか、今から行く世界は未知の世界だ。緊張しない方が無理と言うものだ。

 

そしてネクロズマの存在。ソルガレオを吸収し、力を取り戻したネクロズマは更に強力な力を得てしまった。そんな力に対抗することができるのか、ソルガレオを救出することができるのか、リーリエの脳に駆け巡るのは不安ばかりだ。

 

リーリエの不安を悟ったシンジは、彼女に声をかける。

 

「リーリエ。」

「は、はい!」

「強敵であるネクロズマに勝てるか不安、なんだよね?」

「はい……私たちが束になってもあしらわれてしまいました。カイリューさんがいなければ、全滅していた可能性もありました。」

 

あの時、自分のパートナーであるシロンだけでなく、グラジオのシルヴァディ、シンジのニンフィアさえも返り討ちにされてしまった。それほど強大な相手にこれから挑もうと言うのだ。不安を抱くなというほうが無理な話だ。

 

「……僕たちはネクロズマと戦いに行くわけじゃないよ。」

「え?」

「ソルガレオ……ほしぐもちゃんを救出する。そしてネクロズマも助ける。それが僕たちの世界、そしてダルスさんたちの世界を救う方法。だからリーリエは戦うんじゃなくて、ほしぐもちゃんに声を届ける。」

「ほしぐもちゃんに……声を……」

 

リーリエはシンジの言葉で昔のことを思い出す。ほしぐもちゃんと一緒に冒険してきた数々の思い出。大変なこともあったが、その分たくさんの経験をして、楽しい思い出もできて、間違いなく二人の間には切っても切れない絆がある。それだけは何物にも代えられないものであり、ほしぐもちゃんとの絆はだれにも負けないと自負できる。

 

「ありがとうございます、シンジさん。ほしぐもちゃん……必ず助けて見せますから!」

 

リーリエの不安はまだ拭えない。しかしそれでも先ほどの暗い表情よりは明らかによくなった。その眼には不安などよりも、希望の光が灯っているようにシンジには見えた。

 

シンジも彼女に負けられないと改めて覚悟を決める。そんな二人を迎え入れるかのように、ウルトラホールの奥にある光が包み込んだ。ついにダルスたちの世界にやってきたのであった。

 

しかしその奥には光ではなく、辺り一面真っ暗闇であった。街灯や建物の灯りがあるから視界は確保できているが、それでも夜以上に暗さが増している。

 

シンジは空を見上げてみる。しかし月はおろか、星空の光すら見えない。雲で覆われているわけでもないのにこの暗さは異常である。

 

「あっ!シンジさん!あそこに誰かいますよ?」

 

リーリエが二人組の人影に気付き、話しかけてみようと近付く。するとシンジたちの気配に気づいたのか、二人はこちらへとゆっくり振り向く。

 

一人は鼻の下から生えたカイゼル髭が特徴的な青白い肌の年配の男性。もう一人は同じく青白い肌だが、艶やかな髪で右目を隠すようにしている大人っぽい女性。

 

しかし二人の見た目で特に印象的なのはその服だ。その服は紛れもなくダルスたちと同じものであった。つまりはこの二人もまたウルトラ調査隊の人物なのだろう。

 

「容姿、特徴が一致します。隊長、彼らで間違いないでしょう。」

「うむ。キミたちがシンジ君にリーリエ君だね?」

「は、はい、私たちのこと知っているのですか?」

「ダルスたちから報告を受けているよ。もちろん君たちの目的も聞いている。」

 

どうやらシンジたちがウルトラホールへと突入したあと、ダルスたちはこちらの世界と何らかの手段を使って交信していたようだ。自然が失われてしまった分、生きていくために必要な技術力はかなり進んでいる様子だ。

 

「ここはウルトラメガロポリス。光を失い、それでも希望を持って生きている者たちが集う場所だ。」

 

ウルトラメガロポリス。それがこの都市の名前だそうだ。ダルスたちから聞いた話の通り、かがやきさまが力を失い暴走してしまったことが原因でかなり昔から光をなくしてしまった世界だ。

 

以降、技術力を進歩させることでかがやきさまを封印することに成功するも、彼は自ら突然封印を解除しウルトラホールへと姿を消した。そしてアローラの世界に姿を現し、ソルガレオを吸収したのだ。ほしぐもの持つウルトラオーラに呼応し、ネクロズマが再び暴走して力を取り戻した。そして今に至るのである。

 

「私はシオニラ。ウルトラ調査隊の隊長を任されている。」

「私はミリンです。隊長の秘書として勤めています。」

「僕たちも一応自己紹介を。僕はシンジ、アローラのチャンピオンをさせてもらっています。」

「私はリーリエと言います。ポケモントレーナーの一人です。」

「ポケモントレーナー。報告によるとポケモンと呼ばれる生物を従えて戦わせる者、だったか。」

 

少々誤解を生みそうな物言いではあるが、概ね間違ってはいないとシンジたちは頷く。事は急を要するため、早速本題へと移った。

 

「シオニラさん。肝心のネクロズマはどこに……」

「ネクロズマならあの塔の頂上にいる。」

 

シオニラは指を指す方向、都市の中央には大きな塔がそびえ立っていた。空高く伸びている塔は暗闇から頂上が見えない。だがリーリエは、その塔になんとなく見覚えがあった。

 

「あ、あの塔は……」

「リーリエ?どうかした?」

「……以前、夢の中で少し見た記憶がありまして。」

 

以前ウラウラ島で見た塔にそっくりだと感じるリーリエ。もしあの光景と同じなのであれば、あの頂上にネクロズマが倒れ込んで力を蓄えているのだろう。リーリエはその時見た光景をシンジに伝えた。

 

「……そうか。気を引き締めて行った方がいいね。」

「はい。」

 

シンジとリーリエは拳をギュッと握りしめていよいよ来たのだと実感する。自分たちの行動にアローラの、そしてこの世界の運命がかかっている。そう考えると、改めて緊張が走ってしまうのを感じる。

 

「私たちはポケモントレーナーではないので同行できません。申し訳ありませんが……。」

「いえ、分かっています。お二人はここで待機していてください。」

「私たちが必ず食い止めて見せますから。」

 

最悪の未来を避け、ソルガレオを解放する。その上でネクロズマも、この世界も助ける。そんな決意で二人はこの場に立っている。今更引き返すことなんてできない。

 

シンジとリーリエは覚悟を決めて歩き出す。都市の中央にそびえ立つ塔、その頂上のネクロズマの元へと向かって。いよいよ未来を決めるための最終決戦へと突入するのだ!

 




いよいよ最終決戦となります
1話で完結するか2話で完結するかは分かりませんが、楽しみにしていただけると幸いです。

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