ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》   作:ブイズ使い

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今回は初期の頃書いた話の回想、及びリメイク回となります。

ダイパリメイク、ダイアドでの色ディアルガ厳選、ユナイトシーズンリセット、プリコネ動画、小説、残業と色々忙しい日々が続いている。


懐かしの思い出、あの日の約束

リーリエはウラウラ島の大試練を受けるため、しまキングであるクチナシの待つポータウンへと向かっていた。

 

ポータウンも目前、かと思いきや、突然天候が悪くなり雨が降り始めてしまった。びしょ濡れになってしまう前にどこか雨宿りのできる場所はないかとロトムと一緒に駆け出した。

 

『すぐそこに交番があるロ!』

「ではそこで少し雨宿りさせてもらいましょう!」

 

ロトムの情報を元にリーリエは走ると交番が見えてきた。急いで中に駆け込むと中は綺麗だったものの電気はついておらず、人の気配もまるで感じなかった。

 

「すみませーん!どなたかいませんかー!」

 

リーリエが大きな声で呼びかける。しかしその声に反応する者はおらず、彼女の声が反射して戻ってくるだけであった。

 

『ここは無人の交番だロ。スカル団が引き上げた後は管理はしてるけロ、人員を配置する意味がないから人がいないんだロ。』

 

ロトムの情報によるとスカル団がポータウンにたむろしたことにより寂れてしまったが、彼らが解散したことによりポータウンこの周辺の治安はよくなった。

 

とはいえこの近辺に近づく者はほとんどおらず、今では改心したスカル団がたまに集まる程度なので危険もないと判断され、管理はするが人員の配備はしないとのことである。今では偶に訪れる旅人の休憩所として利用されているそうだ。リーリエも今日は遅いし雨も降っているのでここで休ませてもらうことにした。

 

「ソファも綺麗ですね。」

 

ソファも綺麗に整っており、座ってみるとふかふかしていて非常に心地よい感覚に包まれる。

 

「なんだか気持ちよくて……だんだん……眠気が……。」

 

横になるとその心地よさから睡魔に襲われてしまい、リーリエは眠気に負けて瞼が自然と閉じて意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リーリエとシンジがナッシーアイランドに辿り着き、目の前には島の象徴ともなるアローラの姿をしたナッシーが数体歩いていた。その圧倒的な存在感に二人はただ唖然とするしかなかった。

 

二人がナッシーアイランドに来た目的は月の笛の対となっている太陽の笛を入手するためである。ポニ島の現在は亡きしまキングの孫であるハプウ曰く、ここに太陽の笛が保管されているとのことであった。

 

二人は太陽の笛を探すために歩き出す。しかしそんな二人の意思を阻害するかのように天候が悪くなり、突然大雨が降りだした。

 

「あそこに洞窟がある。一旦あそこで雨宿りしよう!」

「はい!」

 

シンジに従いリーリエは彼と洞窟の中に駆け込んで避難する。少しは濡れてしまったが、急いで近くの洞窟に駆け込んだためびしょ濡れ、とまではならなかった。

 

「急な雨でビックリしましたね。」

 

「そうだね。多分通り雨だと思うからすぐにやむだろうけど……。暫くはここにいた方がいいかもね。」

 

雨が止むまで洞窟の中で雨宿りをすることにしたシンジとリーリエ。しかしなんとなく二人きりと言う状況に意識してしまい、少し気まずい雰囲気になってしまって会話が続かない。

 

さすがにこの状況のまま時間が過ぎるのは気まずいと感じたシンジは、ある話題をリーリエに問いかける。

 

「そ、そう言えば昔のリーリエとルザミーネさんってどんな感じだったの?」

「む、昔の私とお母様、ですか?」

「あっ、あんまり話したくないなら無理しなくても……」

 

咄嗟のこととは言え人の過去に不用意に踏み込むのはマズかったか、と話題を切り上げようとするシンジ。しかしリーリエは首を横に振り、気にしなくてもいいと過去の自分たち家族の事を話し始めた。

 

「私がまだ幼い頃、お母様はあんなに自分勝手な人ではなかったんです。優しくて、私が怖くて眠れない夜も一緒に寝て下さったんです。」

 

シンジは黙って彼女の話を頷きながら聞いている。リーリエは「でも」と昔話を続ける。

 

「ある日を境に、お母様は変わってしまったんです。」

「ある日?」

「エーテルパラダイスの代表であり研究員だった私たちのお父様が突然姿を消してしまったのです。研究中の事故で消息不明となってしまった、と私は聞きました。」

 

リーリエは当時の状況の事を思い出しながら少し目を伏せて語る。

 

「それ以来、エーテルパラダイスの代表となったお母様は人が変わってしまいました。お母様は私の着る服も勝手に決めるようになりました。私がピッピさんのままがいい、と昔から言っていたのに進化させてしまったり、仕事ばかりにかまけるようになって家族の時間が減ったりもしました。私はただ、お母様やお兄様と一緒に過ごしたかっただけなのに……。」

 

リーリエはそう語ると、シンジの方を向いて「あはは」と苦笑いをした。

 

「なんて、これも私の我儘ですね。私の方が自分勝手なのかもしれません。」

「……自分勝手、か。僕も同じかも。」

「え?」

「僕はこれまで色々な地方を旅してきた。別の地方に行くたびに母さんに挨拶して。でもその度、母さんは少し表情を曇らせていたんだ。本当は僕に行ってほしくないって言ってるみたいで、分かってたんだけど。」

「シンジさん……」

 

リーリエの話を聞いたあと、シンジも続けて自分の昔話をする。今度はリーリエがシンジの話に耳を傾ける。

 

「でも僕は旅が好きで、色んな地方の景色やポケモンが見たくて、強くなりたくて僕の我儘を押し通した。今思えば、僕と離れ離れになりたくないからアローラに引っ越したのかなって思ったりもするんだ。やっぱり僕も自分勝手なのかもしれないね。」

「あはは、お互い様ですね、私たち。」

 

リーリエはシンジの話を聞いてふと空を見上げる。外はまだ雨が降っていて、過去の思い出が彼女の頭に流れ込んできた。

 

「そう言えば……あの時も……」

「どうしたの?」

「あの時、私が急な雨に濡れて泣きながら遅く帰ったとき、私の事を探しに行こうとしたお母様と家の前でバッタリ会ったんです。その時お母様は泣いてる私に、優しい声で歌ってくれたんです。その歌を聞いていたら不思議とポカポカしてきて、気付けば私も泣き止んでお母様と一緒に歌っていました。当時の事は今でも鮮明に覚えています。」

 

懐かしの忘れられない思い出を、リーリエは嬉しそうにしながらもどこか切なそうな表情を浮かべながら語った。そんな彼女の顔を見たシンジは、笑顔で彼女に語り掛けた。

 

「じゃあウツロイドの呪縛から大好きだった昔のお母様を助け出さないとね。」

「ありがとうございます、シンジさん。」

 

優しい言葉をかけてくれるシンジにリーリエは感謝する。そんな彼の言葉が嬉しくて、リーリエはふと自分の気持ちを呟いた。

 

「なんだか、私が困っている時はいつもシンジさんが助けてくれている気がします。」

「そんなことないよ。それに、僕だってリーリエに助けられているし。」

「そう……でしょうか?」

 

シンジはそう言うが、リーリエ自身には彼を助けた記憶はなかった。彼が優しいからそう言ってくれただけなのか、それとも本当に自分が知らない間に助けていたのか。

 

「……私が困っていたら、いつでもシンジさんが助けてくれたりして」

「ん?何か言った?」

「い、いえ!?なんでもありません!」

 

小さく呟いた言葉を聞かれていなくて嬉しいような少し残念なような複雑な気持ちになり、気恥ずかしさを覚えるリーリエ。そんな感情を誤魔化すようにリーリエはシンジに質問をする。

 

「し、シンジさんは島巡りが終わったらどうするのですか?」

「島巡りが終わったら……か。考えてなかったなぁ。」

 

シンジは先のことは特に考えてなかった。ククイに誘われアローラに訪れ島巡りに参加し、リーリエと出会い、今では彼女の母親を助けるためにここまで来ている。

 

ルザミーネの件が終われば島巡りも終盤。もしそれが終わればどうするのか。もっと強くなるために旅に出るのか、それともアローラに残るのか。先のことは彼自身にも分からない。

 

先の事を悩むシンジの顔を見て、リーリエは自分のふとした考えを彼に言う。

 

「私、トレーナーになってみたいんです。」

「トレーナーに?」

「はい。今まではポケモンさんが傷ついてしまうバトルがあまり好きではありませんでした。しかし、シンジさんの戦いを見て、その考えも少しずつ変わってきたんです。ポケモンさんたちと楽しそうにバトルをしている、シンジさんの顔が私は好きです。」

 

好きと言われてシンジは反応してしまい思わずビクッとしてしまう。彼女には深い意味はないのだろうと、シンジは気を取り直してリーリエの話を聞いていた。

 

「もし、私がトレーナーになったらどうなるんだろうって、興味を持つようになったんです。だから……もし私がトレーナーになったら……一緒に旅をしてくれませんか?って、迷惑……でしたかね?」

 

不安そうに尋ねるリーリエにシンジは首を振って答えた。

 

「そんなことないよ。僕も嬉しい。いつか必ず、一緒に旅をしよう!」

「ありがとうございます!シンジさん!」

 

二人は、いつか必ず一緒に旅をしようと約束をする。彼らの気持ちに応えるように、空を覆っていた雲は去り大雨も嘘のように止んでいた。

 

雨が止んだことを確認したリーリエは外に飛び出すと、シンジの方へと振り返って満面の笑みで口を開いた。

 

「なにかいいことありそう……いえ、ありますよね♪」

 

リーリエの笑顔が、シンジにはまるで太陽のように輝いて見えたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……んっ、あれ?ここは……?」

『ビビッ!リーリエ、目が覚めたロ?』

 

目が覚めるとリーリエはソファの上で横たわっていた。なんだか懐かしい夢を見ていたような気がするが、未だ寝ぼけている様子のリーリエに、ロトムは現状を説明する。

 

『ここは交番ロ。雨宿りするために入ったらソファですぐにグッスリ眠ってしまったロ。きっと疲れていたんだロ。』

 

そう言えば、とリーリエは寝ぼけていた頭を徐々に覚醒させていく。交番に入ったソファが思いの外心地よくて、気が付けばそのまま寝落ちしまっていたのだと。

 

ロトム曰くあのまま夜が明けるまで寝ていたそうだ。それだけ疲れていたのだろうと、とロトムは察してくれる。気遣いのできるよくできた図鑑である。

 

夜が明けた外を見ると、雨はすっかりと止んでいて空も澄みきった青が続いている。どうやら通り雨のようで、その空は懐かしい夢で見たあの時と全く同じ空であった。

 

「……なんだかいいことありそうです。」

『ビビッ?リーリエ、なにか言ったロ?』

「いいえ!なんでもありません♪」

 

澄み渡った青い空と同じように機嫌をよくするリーリエ。この言葉は自分と彼、二人だけの思い出であり約束なのだと心にしまう。

 

晴れやかな気分と共に、ウラウラ島の大試練、クチナシが待つポータウンへと向かう為に再び歩みを進めるのであった。




昔の話を少し掘り下げてこの小説らしく書きました。久しぶりでなんだかすごく楽しかったです。

そう言えば前回グレイシア回でしたけど、翌日のアニポケもグレイシアでしたね。なにも意識していないただの偶然ですけど、これはまさに運命!

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