ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》 作:ブイズ使い
ポータウンへと向かう為にアセロラから借りたブルンゲルに乗り水道を渡ったリーリエ。そのままクチナシが待つと言うポータウンへと道なりに進んでいると、風景が薄暗くなり周囲には花畑が広がっていた。
「ロトム図鑑さん、ここは?」
『ここはウラウラの花園だロ。』
ウラウラ島に広がる赤い花が咲いているウラウラの花園。その光景はどこかメレメレの花園を思わせる風景であった。
それもそのはず。メレメレの花園の花の蜜はオドリドリをぱちぱちスタイルに変化させるものだが、ウラウラの花園にある花の蜜は、逆にめらめらスタイルへと変化させる。ここに生息しているオドリドリは全てめらめらスタイルなのである。
黄色く明るいメレメレの花園と違って、ウラウラの花園は赤く暗い風景である。小さな池には蓮の花が浮いており、どことなく神秘的にも感じる場所だ。
『ここは基本一本道ケロ、時々霧が濃くなるから気を付けるロ。』
「は、はい、分かりました。」
ロトムがそう忠告した直後、早速段々と霧が濃くなり視界が悪くなってきてしまう。方向音痴である道ははぐれない様にロトムに声をかける。
「ロトム図鑑さん。近くにいますか?」
しかしロトムからの返信はない。どこに行ったのかと不安になりつつもロトムに呼びかけながら探すリーリエ。暫くすると霧が少しずつ晴れてきて視界が元に戻ってくる。
「あれ?ここは……」
だがそこには花畑の光景はなく、見知らぬ城の中であった。ところどころ柱が崩れているが、一応建物としての原型はとどめている。しかしその場にはロトムの姿はなかった。
どこにいったのかと周りを見渡しても、ロトムどころか人やポケモンの姿もまるで見当たらない。どうするべきかと悩むが、目の前に真っ直ぐ突き抜けた一本の通路があった。
これ以上勝手に歩くのは危険かもしれないが、この場で留まっていても状況は進展しない。それに何故かは分からないが、何者かが自分の事を招いている。そんな気がリーリエには感じられた。
リーリエは自分の感覚を信じて導かれるままに通路を進む。一切風景の変わらない通路だが、暫くすると奥に僅かな光が見えた。通路を通り抜けると、そこにあったのは祭壇であった。来たことの無い場所ではあるはずなのだが、リーリエにはその祭壇がどこか見覚えのある場所に感じた。
「……もしかしてここって……」
そう、かつて母親を助けるために立ち寄った日輪の祭壇に似ている雰囲気があった。日輪の祭壇があるのはポニ島だが、どことなく雰囲気が似ていた。それになにより、中央に描かれている文字が日輪の祭壇と酷似していたのだ。
一体ここはどこなのだろうと考察していると、突然上空にヒビがはいる。その現象に見覚えのあったリーリエは、恐怖と同時に最大限の警戒をする。
ヒビが広がりそこに出現したのは、紛れもなくUBが出現してくることでお馴染みのウルトラホールであった。まさかまた迷い込んでやってきてしまったのかと思うリーリエだが、起きた現象は想定とはまるで違っていた。
「なっ、ひ、光が強く!?」
ウルトラホールが突然輝きだし、さらに光が強くなる。リーリエは光に包まれ、眩しさのあまりに目を瞑る。
次第に光が弱まり、恐る恐るリーリエは目をゆっくりと開ける。するとそこには衝撃の光景が広がっていた。
「えっ?こ、ここって……」
まるで見覚えのない光景。光が全くなく、街灯による明かりが無ければ前が見えないほどである。
夜になるにはまだ早いと思い空を見上げるが、空にもまた違和感があった。何故なら星空はおろか、月の光すら見えなかった。まさに光がなく、闇そのものと言ったような世界であった。
その光景と同時にリーリエはとある話を思い出す。以前ウルトラ調査隊に聞いた話、彼らの住む光のない闇の世界の話である。ダルスの話によると、かつてあった光はかがやきさまが力を失ったことにより消えてしまった、とのことであった。
周囲には人の住居と思わしき建物と、リーリエの目の前には大きく聳え立つ塔がある。気になることは色々とあるが、やはり目の前にある塔には不思議とひかれてしまう。リーリエは引き寄せられるようにその塔の内部へと侵入していく。
塔の内部は果てしなく続く螺旋階段であった。それ以外特に変わったものはなく、ただひたすらに上へと階段が続くだけである。
長く続く階段をリーリエは登り続ける。本来であれば登り階段は疲労しやすく足が疲れるはずなのだが、不思議と疲労感や倦怠感は感じない。むしろ浮遊感を感じてしまうほど体が軽く感じていた。まるで自分の身体ではないように。
風景が変化せず終わりのないように感じた螺旋階段の先に出口が見えた。ようやく頂上に辿りついたリーリエの目の前に現れたのは、ひざまずいて倒れている黒い巨大なポケモンの姿であった。
「こ、このポケモンさんは……」
目の前にいるポケモンには一切見覚えがない。書物ですら読んだことのないポケモンの姿に戸惑うリーリエだが、現在はロトム図鑑もいないため尋ねることができない。
どうやら力尽きてしまって動けないようだ。助けるべきだろうか、と恐る恐る正体不明のポケモンに近付こうとすると、突然黒いポケモンが強く光りだしてリーリエの視界を奪う。
徐々に光が弱まり、リーリエは何があったのかと目の前を確認する。するとそこには黒いポケモンの姿はなく、光り輝く竜のような容姿をした黄金のポケモンであった。
黄金色に輝く体に神々しい威圧感。その姿は神様とでも言うべき存在に近しいものだ。その姿を見て、リーリエはこれが例の“かがやきさま”なのではないかと感じてしまう。
かがやきさまと思われるポケモンは力を溜め込み、空に向かって光を放つ。見た目の威圧感とは裏腹に、その光はどこか温かさを感じ、まるでZ技にも似た感覚を感じた。
光は世界を包み、リーリエをも包み込んだ。あまりの眩しさにリーリエは目を瞑った。
光が弱まりリーリエは再び目を開ける。するとそこには先ほどの黒いポケモンと、さらにはソルガレオが対峙している光景があった。
周りを見てみるとその場所には見覚えがあり、ポニ島にある日輪の祭壇と全く同じであった。そして加えて、シンジやグラジオ、ハウにヨウ、ミヅキ、しかも何故か自分の姿まであった。それだけでなく、エーテル財団の代表、ルザミーネに秘書のビッケ、空間研究所の所長、バーネット。それにウルトラ調査隊のダルスとアマモもいた。
驚きのあまり声を出そうとするが声が出ない。恐怖からとかではなく、声を出そうとしてもなぜか出ないのだ。そんな時、彼女の耳によく知っている声が入ってくる。
『ほしぐもちゃん!』
その声は明らかに自分であった。目の前にいる自分の声に反応し、ソルガレオは黒いポケモンに突撃する。黒いポケモンもソルガレオに真っ向から立ち向かう。
黒いポケモンとソルガレオは空中で火花を散らしてぶつかり合う。互いの戦闘は激しさを増し、どちらも一歩も引かない戦いとなった。互いの力は拮抗している、そう思われた。
しかし次第に力の差が開き、黒いポケモンがその巨大な腕でソルガレオの頭を抑えつけ地面に叩きつける。その剛腕にソルガレオは抵抗できず、抗うことができなかった。
次の瞬間、黒いポケモンの腕が光り輝き、自分とソルガレオの姿を包み込む。するとそこには黒いポケモンとソルガレオではなく、黒いアーマーを纏ったかのような禍々しい姿のソルガレオがいたのである。
その後彼の周囲に多数のウルトラホールが開き、更に一つ大きなウルトラホールが開かれた。黒いソルガレオはそのまま巨大なウルトラホールを通り姿を消す。それと同時に再び光が強く輝き、リーリエを包み込む。
リーリエが目をあけると、今度は濃い霧の中に佇んでいた。一体何が、と思っていると、次第に霧が晴れて目の前には見覚えのある景色が広がっていた。
そこには赤い花が咲いていた。間違いなくウラウラの花畑である。先ほどまで見ていたのは一体なんなのだろうかと疑問に思う。
リーリエが何だったのかと考えていると、彼女に耳に見知った声が聞こえてきた。
『リーリエ!ここにいたロ?探してもいないから心配したロ!』
その声の主はロトム図鑑であった。どうやら自分が迷子になりロトム図鑑が必死で探してくれたようである。
「すいません、ロトム図鑑さん。急に霧が濃くなってはぐれてしまったみたいです。」
『ビビッ?濃い霧なんて出ていないロヨ?』
「え?」
ロトム図鑑は濃霧を一切確認していないようである。しかしリーリエは確かに霧の中に迷い込んでしまった。一緒にいたはずのロトムと自分にこれまで差があるのは一体なぜなのだろうか。
『リーリエは方向音痴なんだロから気を付けるロ。万が一があったら大変ロ。』
「……す、すみません。気を付けます。」
霧の正体は謎に包まれてしまったが、これ以上考えても仕方ないということでリーリエは先に進むことにした。
あの時見た光景は幻だったのだろうか?それとも夢だったのだろうか?しかしどちらにしても今回見た光景はどこか現実味を感じられた。
考えても答えは出ないのだろうが、それでも今回の出来事は非常に強く印象に残った。あの光景は、リーリエの頭の中をグルグルと回り続けるのであった。
伏線的ななにかです。突然起こるご都合主義の謎現象。
一番好きなポケモンであるニンフィアがUNITEでも原作でも自分にしっくりくるのは奇跡を超えてもはや必然
拘り眼鏡、気合の鉢巻、物知り眼鏡+なんでもなおしが強い
技はマジカルフレイム&ドレインキッス派です