ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》 作:ブイズ使い
と言うわけで今回はがんばリーリエ回です。がんばリーリエは更に可愛い(確信)
~~~ルザミーネの屋敷~~~
僕はルザミーネとの戦闘が終わり、ルザミーネがウルトラスペースへと姿を消した後、一日屋敷に泊めてもらうこととなった。リーリエとグラジオには空き室があるから使ってもいい、と言われ遠慮なく使わせてもらった。勿論ミヅキも、別室で泊まることになり今頃ゆっくりと休んでいる頃だろう。
「……まだこんな時間か」
時計を確認してみるとまだ明け方の時間帯で外は薄暗い状態だった。さきほどまでは寝ていたが、これ以上寝れそうにもないので僕は外の空気を吸おうと外に出ようとした。昨日あれだけの事があったから少し気分を変えたいしね。
「あれ?あれってもしかして?」
僕が外に出ると金髪のポニーテールで小さなリュックバックを背負った女の子の後ろ姿が見えた。服装も変わっていて印象がだいぶ違っているが、僕には見間違えることは出来なかった。
「あっ、シンジさん!おはようございます!」
彼女は僕の存在に気付くと、振り返って笑顔をみせ挨拶してくる。うん、やっぱり見間違えなんかじゃない。彼女は紛れもなくリーリエだ。服装がお嬢様風の衣装から活発なイメージを抱かせる服装に変わっている。そしてリーリエの顔には昨日までの迷いは一切見られない。
「リーリエ……その服……」
「これは以前マリエのブティックで購入してみたものです。その時は着るつもりはなかったのですが、私もお母様とほしぐもちゃんを助けたい。なので心機一転と思い、思い切って着てみました。どうですか?似合っているでしょうか?」
リーリエは僕に心の内を明かし、新しい服装についての感想を尋ねてくる。正直言えば凄く可愛い。しかし正直に言うのも恥ずかしいので少し控えめに伝えることにした。
「うん、すごく似合っているよ。」
「そうですか?えへへ、ありがとうございます。なんだかシンジさんに褒められると凄く嬉しいですね。なんででしょうか?」
どうやら喜んでくれたようだ。僕もリーリエが喜んでくれると嬉しい。彼女のこの笑顔を見て、僕は改めて決心する。必ずルザミーネの野望を阻止し、ルザミーネもほしぐもちゃんも助けると……。
「私……必ずお母様とお兄様の3人とまた一緒に暮らしたいです。だから最後までお母様と向き合ってみようと思います。」
リーリエは再び決意をあらわにすると、今度はノーマルZのポーズをとる。
「えへへ……ちょっとシンジさんの真似をしてみました。変じゃなかったですか?」
「ううん、全然変じゃなかったよ。凄く可愛かった。」
「…………か、かわ///」
……しまった!?思わず本音を言ってしまった!?リーリエも僕の言葉に照れているようで顔を真っ赤にしている。僕も今思い出せば恥ずかしいことを言ったしまったと思い返し、顔をそらしてしまう。恐らく今の僕はリーリエと同じくらい顔を赤くしているのだろう。今の外が薄暗くてよかったと思った瞬間だった。
「も、もう///急に何を言い出すんですか!」
リーリエが顔を赤くしたまま怒る。うん、正直可愛いとは思うし、リーリエと一緒にいると楽しい。でも急に面と向かってこんなことを言うのは非常識と言うものだろうか。
僕とリーリエがそんな会話をしていると、グラジオがやってきて話かけてくる。このまま続けていても気まずかったから助かったよ。
「リーリエ、シンジ、二人ともここにいたのか。お前たちはこれからどうするつもりだ?」
グラジオが僕たちにこれからのことを尋ねてくる。その問いにリーリエが答える。
「以前マリエの図書館で読んだ本に書かれていたのですが、ポニ島にある日輪の祭壇と呼ばれる場所で太陽の笛と月の笛を同時に吹くことで、伝説のポケモンであるソルガレオさんが現れてくれると読んだことがあります。シンジさん、どうか私とポニ島へ向かっていただけませんか?シンジさんに一緒に来ていただきたいんです!」
リーリエはそう言って僕に頭を下げながら頼んでくる。しかし僕の気持ちは決まっている。リーリエが昨日ルザミーネとほしぐもちゃんを助ける、と決意したあの時から……。
「勿論だよ。僕は元からリーリエに付いてくつもりだったからね。」
「シンジさん……ありがとうございます!」
リーリエは再び頭を下げて僕にお礼を言う。そこでグラジオはあるものを渡してくる。
「ならばこれを持っていけ。」
「お兄様……これって……」
グラジオが差し出したのは青色に輝き、月の模様が描かれている一つの笛だった。もしかしてこれが……
「月の笛だ。太陽の笛は残念ながらここにはないが、これだけでもあれば少しの助けにはなるだろう。」
グラジオはそう言いながら月の笛をリーリエに渡す。リーリエはそれに笑顔で感謝する。グラジオは少し照れたようにいつもの片目を手で隠すようなキザなポーズを決めて「気にするな」、と言う。よく見るポーズではあるが、今回に限ってはグラジオの照れ隠しにも見えてしまう。僕も人のことを言えないが、グラジオも素直じゃないと内心で思いながら兄妹のやりとりを笑顔で見守る。
「太陽の笛がどこに存在するかは俺にも分からない。だがポニ島にいるハプウの叔父に聞けば教えてくれるかもしれない。奴の叔父はしまキングでもあるからな。」
「ハプウさんのお爺様ですか?」
ハプウさんは今までいろんな場所で僕やリーリエを助けてくれた優しい人だ。時にはデコボコ道で困っている僕をバンバドロ乗せてくれたり、時には道に迷ったリーリエを案内してくれたり。まさかまたハプウさんに助けてもらうことになるとは思わなかった。いつかお礼をするべきかもね。
「ポニ島までは俺が船で連れて行ってやる。ミヅキはどうやら修行がしたいらしく先に出ていった。昨日までの出来事であいつなりに思うところがあったようだな。」
どうやらミヅキは思い詰めているようだ。だが彼女は根が強いポケモントレーナーだ。必ず今よりも強くなって僕の前に現れるだろう。僕たちは僕たちのやるべきことをやろう。
僕とリーリエはグラジオに案内され、一階にある船着き場で船に乗る。そしてポニ島にある海の民の村と呼ばれる場所に辿り着く。グラジオはそこで僕たちと別れ、別に行動をすると告げる。群れることが嫌いなグラジオらしいといえばらしいけど。
しかし、最後にグラジオは呟くように一言僕に告げた。「母上のことをよろしく頼む」、と。その言葉だけで僕はグラジオの母を思う気持ちが伝わってきた。僕もその言葉に応えるように親指を立てる。僕のその姿を見たグラジオは安心したように再び船を走らせる。
今着いた海の民の村は、色んなポケモンたちを象った家が海に浮かんでいる少し変わった村だ。それが海の民と呼ばれる所以になったかは定かではないが。
「先ずは情報収集ですよね?では聞きこみを開始しましょう!」
リーリエが拳をギュッと握りしめてそう言い聞き込みを開始する。リーリエのそのやる気につられるように僕もリーリエに付いていく。しまキングと言うだけありやはり有名だった。しかし残念なことに、しまキングであるハプウさんのお爺さんは少し前に亡くなってしまったようだ。
だが残念な知らせだけと言うわけでもなかった。ハプウさんは現在ポニ島に戻ってきていると言う話も聞くことが出来た。僕達は早速ハプウさんを訪ねるために海の民の村を後にする。
そして僕たちはポニの古道と呼ばれる場所に辿り着きハプウさんの家を探す。このポニの古道は海の民の村から少し離れた場所に位置するが、この辺りに住んでいる人たちはかなり少数であるためすぐに見つかるだろう。
そんなことを考えていると、少し先にバンバドロの後ろ姿が見えた。ということは横に立っている少々小柄な女性が間違いなくハプウさんだろう。
「ハプウさん!」
「む?その声はシンジか?」
ハプウさんは僕の声に気が付くとこちらに振り向く。バンバドロもハプウさんと同じように振り向き僕らを見据える。
「おお!リーリエも一緒か。二人してどうしたのじゃ?わしに何か用かの?」
「実はハプウさんにお聞きしたいことがあって伺いに来ました。」
「ワシに?」
リーリエは僕たちがハプウさんを尋ねに来た理由をハプウさんに話す。ハプウさんも叔父さんの事をしまキングとして尊敬していたようで、懐かしみながら叔父さんの事を思い出しているようだ。
「そう言えば叔父から聞いたことがあるの。太陽の笛は確かこの近くのナッシーアイランドに保管されているはずじゃ。」
「本当ですか!?」
ハプウさんの言葉に眼を輝かせるリーリエ。有力な情報が早速見つかって嬉しいのだろう。すぐにナッシーアイランドへ向かおうとリーリエが走り出す。リーリエ曰く、あれは本気の姿らしいのだが、その本気の姿になってから妙にやる気に満ち溢れている気がする。
去り際にハプウさんにナッシーアイランドへと行く方法を教えてくれた。海の民の村にて船を貸してもらい送ってもらえばすぐに辿り着けるらしい。僕はハプウさんに感謝してリーリエを追いかける。
「さてと、わしも準備をするかの」
ハプウさんのその声は僕には届かなかったが……。
僕たちは海の民の村に戻り、ハプウさんに言われたように船を出してもらおうと村の人に話しかける。
すると、早速快く了承してくれた人がいた。その人はなんとこの村の村長であるらしく、漁師も兼ねているため船の運航はお手の物だと言う。僕たちは村長の愛用しているコイキングを模した船、通称コイキング丸に乗せてもらい、ナッシーアイランドへと向かうことにした。
コイキング丸へと乗った僕たちはナッシーアイランドに辿り着いた。島には「ナッシーアイランドへようこそ!」と、ナッシーが描かれた看板があった。
「ここがナッシーアイランドですか。すごいですね……。」
リーリエの言う通り本当にすごい。ここに自然ばかりがあって、人の手がほとんど加えられていない。そして一番すごいのは、アローラの姿のナッシーだ。僕の知っているナッシーとは違い、異常なまでに首が長い。その迫力にはただただ圧巻されるばかりだ。
ロトム図鑑によると、アローラのナッシーの首が長いのは、適切な環境で育ったため充分な栄養を得られたからだと言う。そう考えると、アローラのナッシーは彼らの正しい姿なのかもしれないね。
「アローラのナッシーさんってすごいですね。私も本などでは見たことがありますが、本物を見たのは初めてです。」
「うん。僕もこれには驚いたよ。今までライチュウやラッタ、ニャースみたいなアローラのポケモンはみたことがあったけど、こんなにも迫力のあるアローラのポケモンは初めてだよ。」
「そうですね。」
僕とリーリエはアローラのナッシーの大きさに見惚れていた。しかしそこではタイミングの悪いことに雨が降ってきてしまった。急いで雨宿りをしなければ二人ともずぶ濡れになって風邪を引いてしまう。
「あそこに洞穴があります!急いで入りましょう!」
僕とリーリエは急いで見つけた洞穴の中に入る。洞穴の中はあまり広いとは言えなかったが、僕たち二人が入るには充分なサイズだった。
「急に雨が降ってビックリしましたね。少し濡れてしまいました。」
「うん。でも運よく洞穴が見つかってよかったよね。」
「そうですね。運が良かったです。」
リーリエがその後微笑みながら今までのことをポツリポツリと語っていく。昔のルザミーネが雨の降った日に帰ってきたリーリエを心配して、よく歌ってくれていたことや優しく接してくれていたこと。そしていつの日からか…………ルザミーネがウルトラビーストのことばかりを考えるようになってしまったことも。それから僕がいつもリーリエのピンチの時に駆けつけて助けてくれたということも。
「私が困っていたらいつでもシンジさんに会えたりして……」
「ん?何か言った?」
「い、いえ///なんでもありません!」
リーリエは顔を赤くして否定する。リーリエの今のつぶやきが聞こえなかったのが少し残念に思えるが、それでも僕は追及するのはやめようと思い留まる。
「……シンジさんは島巡りを終えたらどうなさるんですか?」
「え?」
僕はリーリエの問いに一瞬戸惑う。僕はこの旅が終わればどうするのだろう。その先がまだ見えていない。確かに僕は別の地方も旅してきた。でもアローラの旅が終わったら僕は……
「……正直まだ分からない。この先僕は何がしたいのか。強くなりたいのか、それともポケモン図鑑を完成させたいのか、もしくはまだ旅を続けたいのか。」
「そうですか。」
僕が俯きながら答えるとリーリエは笑いながら更に言葉を紡ぐ。
「私は…………トレーナーになってシンジさんと一緒に旅がしてみたいです。」
リーリエは僕の顔を覗き込みながらそう答えてくれた。それは僕の望んでいた答えかもしれない。だけど今の僕にはその答えがハッキリと見えていない。それでもリーリエは僕の眼を真っ直ぐみてそう言ってくれた。リーリエの眼はとても澄んだ色をしていて、その気持ちに偽りがないことが伝わってくる。リーリエのその言葉が僕自身すごくうれしかった。
「迷惑……でしたでしょうか?」
「……迷惑なんかじゃないよ。僕も嬉しい。いつか……必ず一緒に旅をしよう!」
「!?はい!ありがとうございます!」
リーリエは満面の笑みでそう言ってくれた。すると、僕たちの気持ちに応えるかのように雨は上がり、さっきまでの天気が嘘のように雲が去っていく。
「あっ、雨が上がりましたね!」
リーリエは雨が上がると一歩前に出て振り返り、笑顔を見せながらこう言った。
「なにかいいことありそう……っというかありますよね!」
アローラナッシーは公開当初からネタ要素しかない。フラd……カエンジシさんの時もネタ要素が尽きなかったけど。地味にナッシーアイランドに行ってみたいと思っている今日この頃。そもそもブイズと一緒に旅がしたい(真顔)
次回もほとんど……と言うか回想回で一気に進みますね。まあそればっかりはどうかご勘弁を。