ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》   作:ブイズ使い

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マーレインと戦わせようと思ったけど、結果会話パートになりました。


ホクラニ天文台!目指せ約束の場所へ!

マリエシティに到着したリーリエは、折角ということでマリエ図書館へと立ち寄った。そこには兄であるグラジオの姿があり、2人で過去のアローラについて少しだけ知ることができた。

 

かがやきさまやアローラの訪れる災厄など、気になることも多々あるが、今自分に出来ることは島巡りを成功させることだと、リーリエはグラジオと別れて次なる目的地、試練の行われるホクラニ岳頂上にあるホクラニ天文台へと向かうことにした。

 

ホクラニ天文台へはどう行けばいいのかとロトム図鑑に尋ねるリーリエ。ロトム図鑑は『この先にもうすぐ来るバスに乗ればいいロ!』と返答する。どうやらホクラニ岳の道は険しく、歩いて登るのは少々厳しいらしい。リーリエはロトムの助言に従い、指定のバス停に到着し待機する。

 

暫くするとバス停に大型のバスがやってきた。天文台行き、ということもあり乗客はあまり乗っておらず、リーリエはすんなり座ることができた。リーリエは一番後ろの席に腰を下ろし、落ち着くことができると楽にする。バスが出発しようとしたとき、一人の少年が大声で走ってきたのであった。

 

「まってまってー!乗ります乗ります!」

 

少年の言葉が届き、バスは発車するのを一時停止する。それに安堵した少年は息を切らしバスへと乗り込む。その少年は小柄だが、少し小太りしている容姿であった。見た目通り体力はないようで、多くの汗を流して肩で息をしていた。

 

その少年が疲れた様子で後ろの席に座ると、リーリエは安心した少年に対して声をかけてみることにした。

 

「よかったですね、ギリギリで間に合って。」

「っ!?う、うん!」

 

その少年は体をビクッとさせてリーリエに返事をした。声が少し裏返っているところを見ると、どうやら彼は人見知りな性格のようである。

 

「す、すいません。話かけるのはマズかったですか?」

「い、いや、そんなことないよ!ただ、僕が人見知りなだけだから気にしないで。」

 

リーリエの謝罪に慌てて首を振り否定をする少年。リーリエに余計な気を使わせまいと言ってくれた言葉だろう。人見知りではあるが、心はとてもやさしい少年のようである。

 

「ところで、さ。君はホクラニ天文台に行くつもりなの?」

「はい、そうですけど。」

「ってことは、もしかして試練に挑戦するつもり?」

 

少年の問いかけにリーリエは頷いて返答する。少年は「やっぱり……」と少し俯き呟いた。その様子から察するに、おそらくとリーリエは少年に一つ問いかけてみた。

 

「もしかして……あなたがキャプテンの方、ですか?」

 

リーリエの問いに少年はドキッと体が跳ねる。「あはは、バレた?」と頭を掻きながら苦笑して肯定する。

 

「実はそうなんだよね。ホラ、一応UBの事件の時集会で集まった時にもいたんだけどね。」

 

そういえば、とリーリエはその時のことを思い出す。UBが出現した際、アローラのトレーナーたちがエーテルパラダイスへと招集された。その時集まったのはグズマやミヅキ達しまキング、しまクイーンを始めとした、各島のキャプテンたちである。

 

当然キャプテンであるマーマネもその場にいたのだが、その時は久しぶりに戻ってきたアローラ、そして緊急事態だということもあり、直接的な関りを持っていなかったこの少年のことには気付くことはなかったのである。

 

「す、すいません!失礼なことを言ってしまって。」

「いいよいいよ!そんなことは気にしてないから。」

 

そういった少年は、忘れてたと自己紹介を始める。

 

「僕はマーマネ。さっき言った通りホクラニ天文台でキャプテンを務めているんだ。」

「私はリーリエと言います。よろしくお願いします!マーマネさん!」

 

そう言って互いに挨拶を交わす。人見知りのマーマネではあるが、リーリエが優しく接しているからか、少しずつ緊張は解れてきた様子だ。リーリエには彼の表情が先ほどよりも柔らかく見えた。

 

「僕、ね。実はキャプテンって仕事、あんまり好きじゃないんだよね。」

「え?そうなんですか?」

 

意外だった。キャプテンと呼ばれる者たちは、全員が適正があるからや、好きだから、という理由で務めているのだと思っていた。中には推薦されているからという理由からキャプテンになったという話も聞くが、マーマネもその類なのかもしれない。

 

「僕、機械いじりや天体観測が好きでさ。よく天文台のマーさん……あっ、マーさんって言うのは僕の従兄弟で天文台の所長なんだけど、マーさんのところに遊びに行ってたんだよね。マーさんは優しくって、僕とよく遊んでくれてたんだけど、ある時次のキャプテンとして僕が指名されたんだ。」

 

そう言ってマーマネは当時のことを思い出しながら語り始める。リーリエも彼の話を静かに聞いていた。

 

「その時はマーさんに選んでもらえて僕はうれしかった。でもキャプテンとして働いている内に、好きな機械いじりや天体観測の時間がが減っていったんだ。それに僕ってほら、人見知りだからさ。知らない人と話すもの慣れてなくて。僕はそれが正直嫌だったんだ。」

「嫌、“だった”?」

 

リーリエはその言葉に意味が気になり復唱して尋ねる。するとマーマネは、先ほどまで少し暗い顔をしていたものの、次第に明るい表情になりリーリエに笑いながら答えた。

 

「うん、嫌だったんだ。“2年前まで”はね。」

「2年前……」

 

2年前。それを聞いてリーリエはハッとなった。2年前といったら忘れることはない、あの時の出来事なのだから。

 

「そう、2年前。現チャンピオン、シンジが挑戦しに来た時だよ。」

 

やっぱり、とリーリエが想像していたことをマーマネは口にしたのである。それから先はリーリエの想像通りの内容であった。

 

「あの時、彼のバトルを目の前で見たんだ。そしたら僕、なんだか不思議と感動しちゃってさ。戦い方がカッコよくて、綺麗で、何より楽しそうにしてた。目がすごくキラキラ輝いていたんだ。ただ純粋にポケモンたちとバトルを楽しんでるって言うのが伝わってきて、ポケモンたちとの深い繋がりが感じられて、自然と僕まで楽しくなってきちゃったんだ。見てるだけで楽しくなる、こんなバトルもあるんだなって思えたんだ。」

「今でもキャプテンの仕事のことを……?」

「おかげさまで、今はとても楽しくキャプテンやらせてもらっているよ。機械いじりとか天体観測はもちろん楽しいけど、色んなトレーナーのバトルを見るのも、とっても楽しいことなんだって思うことができるようになったから。」

 

一通りの出来事を話し終えたマーマネは、あっ、と口にした後申し訳なさそうに再び口を開いた。

 

「ご、ごめんね?こんなこと初対面の人に話すことじゃなかったよね。」

「いえ!しん……チャンピオンさんの話を聞くことができて嬉しかったです!」

 

リーリエはそう言ってマーマネに感謝する。マーマネも、なんだかスッキリした気持ちになり、最初の時に感じていた緊張も気づけばどこかに去ってしまっていた。

 

「だからさ……」

「?」

「リーリエも、チャンピオンに負けないくらいすごいバトル!試練で僕に見せてよ!」

「はい!もちろんです!」

 

マーマネ、そしてシンジの過去話ですっかり打ち解けた二人。そんな話を交わしていると、気付いた時にはホクラニ岳の頂上、ホクラニ天文台へと到着した。

 

ホクラニ天文台のバス停に停車し、リーリエたちはバスを降車する。そこで二人を待っていたのは、少し猫背で眼鏡をかけた優しそうな細身の男性であった。

 

「マーくん、お疲れ様。おや?この子は?」

「マーさん!この人はリーリエ!島巡りのトレーナーで、僕の試練に挑戦しにきたんだ。」

「初めまして、リーリエです!本日はよろしくお願いします!」

「リーリエ君……そうかい。僕はマーレイン。ここホクラニ天文台の所長を務めているよ。君のことは、ククイ君から聞いているよ。」

「ククイ博士から、ですか?」

 

マーレインの話によると、彼とククイは昔ながらの親友らしい。ククイはちょくちょくここに訪れるのだが、そのたびにリーリエやシンジ、注目するトレーナーたちの話を聞かせてくれるようである。博士であるククイにとって、才能あるトレーナーを見送るというのは生きがいにも等しいことなのかもしれない。

 

「さあマーくん。挑戦者を迎え入れる準備をしてくるといいよ。」

「うん!行ってくるよ!」

 

マーマネは元気よく返事をし、天文台の中へと入っていった。人見知りの彼でも、従兄弟であるマーレインに対しては心を開ききっているようである。

 

そんなマーマネを笑顔で見送ったマーレインは、さて、と言いリーリエの方へと向きなおした。

 

「リーリエ君、試練に挑戦する前に、こっちへ来てご覧。」

 

マーレインはリーリエにそう言うと、ホクラニ岳の端へと誘導した。リーリエも彼の誘導に従い同じ場所に立つ。

 

この日は綺麗な快晴で見晴らしがよく、景色がとてもよく見える。綺麗な景色に見とれるリーリエだが、その先には一際目立つ大きな山があった。

 

その山はこのホクラニ岳よりもさらに高くそびえ立っており、山の上は遠くからでもわかるくらい白い雪で積もっていた。その山を指さし、マーレインは口を開いた。

 

「あの山はアローラで最も高いといわれているラナキラマウンテン。そして、その頂上に設立されたのが、アローラポケモンリーグだよ。」

「アローラ……ポケモンリーグ……」

 

その言葉を聞いて、リーリエの内に緊張が走るのがわかる。手をギュッと握りしめ、喉をゴクリと鳴らした。

 

アローラポケモンリーグ。島巡りのトレーナーが目指すべき最終地点にして、アローラ最強のトレーナー、チャンピオンがいる場所。アローラ中のトレーナーが目指す場所。そして……リーリエにとって約束の場所である。

 

ラナキラマウンテンが目の前にある。届きそうな位置に存在している。遂にここまで来たのかという実感と、まだ遠くにあるのだと感じる不思議な気持ちがリーリエの脳内を巡る。

 

(シンジさんはアローラで最も高いところ、ラナキラマウンテンの頂上で待っています。あそこに辿りつくためには残り二つの大試練を突破する必要があります。まだまだ道のりはありますが、必ず辿り着いて見せます。待っていてください!シンジさん!)

 

高く高くそびえたつラナキラマウンテン、一層気が引き締まるリーリエ。約束の場所を目指して、もっともっとトレーナーとして精進しようと気持ちが高まった。

 

そんな彼女の顔を見たマーレインは、軽く微笑むと……。

 

「そろそろマーくんも準備を終えている頃だろう。さぁ、天文台の中に入ろうか。」

 

そう言ってマーレインはリーリエを天文台へと案内する。残る試練も後少し。約束の場所を目指し、リーリエの次なる試練が始まるのであった。




バルファルク復活おめでとおおおおおおおおおおおおお!!

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