ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》 作:ブイズ使い
因みにラストのシーズンは2944位まで上がりましたが、そこから麻痺、怯み、急所の運負けが3,4回続いて3桁上がり損ねました。結局3000位前後をウロウロする結果に……。やっぱり調子のいい日になるべく連戦した方がいいのかな?
先日グズマのアーカラ島大試練を無事突破したリーリエ。今日はとある用事のためにカンタイシティにて待ち合わせをしている。
「おーい!リーリエー!」
リーリエの名前を呼んで手を振りながら彼女の元へと走って近づいてくる人影が二人。リーリエの友人でありライバルでもあるハウ、そしてヨウである。
「おまたせー!」
「ごめん、待たせたか?」
「いえ、私もついさっき来たばかりですので。」
「ハウがまたマラサダを買うのに時間かけててな……。」
どうやらハウのマラサダ選びに付き合っていたら時間をくってしまっていたようだ。二人は島巡りにでても相変わらずなんだなぁ、とリーリエは心の中でそう思いながら微笑んだ。
三人は全員が揃ったことを確認するとゆっくりと歩き出した。ハウはマラサダを買いすぎた、とのことで少しリーリエにも分けてくれた。
普段マラサダを食べる機会もなかったリーリエだが、ハウから貰ったマラサダを食べるととても美味しいと口にした。外はカリッとしっかり揚げた食感をしていたが、中はふんわりと餅米のような食感。そして砂糖がかかっているのに甘すぎず、中にはクリームも入っていて味付けもよく、とても作り込まれている。
今リーリエが食べたのはごく普通の一般的なマラサダだが、他にも色々な味付けがあるようで、今度機会ができたら他の味を試してみるのもいいかもしれないと思った。
暫く歩いていると目的の場所が見えてきた。そこには広大なビーチ、目の前に青々と広がる海、そして海を見下ろすかのように建てられた大きな建物。3人はその光景を見て上手く言葉が出てこなかった。
「すっごーい!広いしでかいねー!」
最初に口を開いたのはハウであった。ハウはシンプルな感想を口にしたが、実際その言葉以外出てこない。
ここはハノハノリゾート、そして目の前に広がるビーチがハノハノビーチ。そう、ここは以前出会った四天王カヒリの実家である。今日、カヒリに会う為にここに来たのである。
「あ、あそこの集まりはなんでしょうか?」
リーリエが指差した先には、ビーチ椅子に寝そべったピカチュウと、数人のマイクやカメラと言った機材を持った人たちが集まっていた。
「んー?あー、あれは確かチュウジロウっていうポケモンタレントだねー。」
「チュウジロウ……さん?」
「ああ、話では今映画で大ブレイクしているしているらしいが、俺たちはあまり詳しくないからな。」
どうやらオフの日にポケモンタレントのチュウジロウがハノハノホテルに遊びに来たが、どこからか情報が漏れてしまい、マスコミたちがチュウジロウのプライベートを取材しに来てしまった、と言ったところか。
とは言えリーリエたちは一般人。可哀想だとは思うが、タレントなどと言った大きな世界に対して口出しをすることなど中々できない。そんな彼女たちの代わりにある人物がその様子を見かねて止めに入ってくれた。
「ちょっとあなたたち」
「えっ?あ、あなたはカヒリさん!?」
その人物とはリーリエたちがこれから会おうとしていたカヒリであった。その上カヒリは有名なプロゴルファーとしても知られている。二重の意味で有名なカヒリとの対面にマスコミたちは驚きを隠せないでいる。
「私のお店、リゾートのお客様に対して失礼なことしないでいただけますか?チュウジロウ様は今貴重なお休みの時間ですので、今日のところはどうかお引き取りをお願いします。」
カヒリにそう言われてしまってはマスコミもこれ以上何も言えないようで、そそくさとその場を去っていった。チュウジロウは助けてくれたカヒリに感謝をし、彼女は気にしないでと言いチュウジロウに頭を下げてその場を離れる。
その後、リーリエたちの存在に気付いたカヒリは、彼女たちの元へと歩いて近付いてきたのであった。
「三人とも、来ていたのですね。」
「は、はい、つい先ほどですけど。」
「カヒリさんカッコよかったー!」
カヒリの話曰く、ここのリゾートは全て父が経営しているようで有名な人やチュウジロウの様なポケモンも泊まりに来ることが少なくないそうだ。その度にああいったマスコミやファンが押しかけたりするが、カヒリはそれを見かけるたびに先ほどのようにして追い返しているそうだ。
「私たちも接客業ですからね、お客様が第一。お客様にはストレスなく休日を過ごして欲しいので。」
そう語るカヒリに対し、リーリエたちはやっぱり凄い人だなぁ、と心の中で感じる事ができたのである。
「あっ、私の話はよかったわね。早速なんだけど……」
「あ、あの?」
カヒリが何かを言う前に、珍しくリーリエが先に口を出した。カヒリは驚きながらも優しい笑顔でどうしたの、と尋ねてみた。
「す、すいません、突然話を止めてしまって……」
「気にしなくていいですよ。それで、リーリエさん、どうしたのですか?」
「……あの、私と、バトルしてくださいませんか?」
リーリエの突然の提案にヨウとハウは驚いた。普段のリーリエであれば突然このような提案はしないと思っていたからだ。
しかしカヒリは優しいながらも真剣な眼差しでその理由をリーリエに問いかけた。
「カヒリさんは前に言ってました。私の事をシンジさんから聞いていたと。」
「ええ、言いましたね。」
「私、シンジさんとの約束を果たすためにこの島巡りに挑戦しました。もちろん、それは簡単な道じゃないってことは分かっています。だから、だからこそ!シンジさんのところに辿り着くために、四天王であるカヒリさんとバトルをして経験を積みたいんです!お願いします!」
リーリエは勢いよく頭を下げる。それを見たカヒリは、彼女の想いは本物なんだ、と感じた。
「いいでしょう、分かりました。それに元より、私の方からリーリエさんにバトルを申し込むつもりでした。」
「え?」
「シンジさんから、よくあなたの話を聞くんです。その度に彼、とても楽しそうに話しているんです。それであなたに興味を持ったので、是非バトルをしてみたい、と。」
そう言って一呼吸おき、カヒリは改めてリーリエに尋ねたのであった。
「……是非、私とバトルをしてくださいませんか?」
「!?は、はい!よろしくお願いします!」
こうして、四天王カヒリとリーリエによるバトルが決定し、リーリエたちはリゾートの裏手にあるバトルフィールドへと移動することにした。
「ルールは1対1のシングルバトル。戦闘不能、または私の判断でバトル終了にします。よろしいですか?」
カヒリのルール説明にリーリエは頷く。ハウとヨウが(マラサダを食しながら)見守る中、リーリエの肯定を確認したカヒリが先にポケモンを繰り出した。
「では行きますよ!ドデカバシ!」
『カバシ!』
『ドデカバシ、おおづつポケモン!ノーマル・ひこうタイプ!発熱させたクチバシは100度を超え、突かれるだけで大火傷する。番が仲睦まじいことでも知られている。』
カヒリのポケモンは、彼女の相棒でもあるドデカバシ。ドデカバシの立派で大きなクチバシ、そして力強く羽ばたかせる翼。普通のドデカバシとはどこか雰囲気が違う。流石は四天王のパートナーである。
「では私も、お願いします!シロン!」
『コン!』
リーリエのポケモンは同じく彼女のパートナーであるシロン。ひこうタイプであるドデカバシにこおりタイプを持っているシロンは相性が非常にいい。
「お先にいいですよ。」
カヒリはリーリエに先攻を譲りそう促す。しかしリーリエは喉をゴクリと鳴らしつつ動こうとしない。
四天王、それも相棒であるドデカバシが相手だ。迂闊に動いてしまえばそれだけで命取りになりかねない。リーリエは緊張から汗がたらりと落ちてくる。
「……そちらからこないのならばこちらから行きますよ!ドデカバシ!タネマシンガン!」
『カバシッ!』
「っ!?シロン!こおりのつぶてです!」
『コォン!』
警戒するリーリエたちにドデカバシはタネマシンガンで先制攻撃を仕掛けてくる。シロンもこおりのつぶてで反撃し、互いの攻撃が開幕フィールド中央でぶつかりあった。シロンのこおりのつぶてによりドデカバシのタネマシンガンは打ち消された。威力はほぼ互角と見ていいか。
「続けてニトロチャージ!」
「なっ!?ほのおタイプの技!?」
ドデカバシは体に炎を纏い、シロンに対して速攻を仕掛けてくる。先ほどのフィールド中央で発生した衝撃を正面から突破し、シロンにニトロチャージが炸裂する。
こおりタイプのシロンにニトロチャージは効果抜群。更にニトロチャージは追加効果として、自身の素早さを上げる効果がある。
ドデカバシは元々あまり早くないポケモン。しかしニトロチャージの効果によりその欠点を補い、更に苦手なこおりタイプの対策にもなっているということだ。
「もう一度ニトロチャージ!」
『カバッ!』
「くっ!れいとうビームで反撃してください!」
『ッ!?コォン!』
ドデカバシはここぞとばかりに怒涛の追撃を仕掛けてくる。普段冷静なカヒリからは予想できない戦術だ。
ドデカバシのニトロチャージに対しシロンはれいとうビームで正面から止めようと反撃する。しかしドデカバシはシロンの攻撃をヒラリと回避し、そのままニトロチャージを確実に決めていく。明らかに先ほどよりも素早さが上がっており、ドデカバシも一手一手を冷静に見極めている。
「っ!?シロン!大丈夫ですか!?」
『っ……こぉ、ん……コォン!』
シロンはなんとか立ち上がる。ダメージも蓄積していてふらついているが、まだまだ戦う闘志は潰えていないようである。リーリエもまだまだ行ける、と言った様子。
「……いい目をしていますね。ドデカバシ!そろそろフィニッシュです!」
『カバァ!』
ドデカバシのクチバシが赤く染まっていく。一体何が、と警戒するリーリエだが、第六感が早く止めなければと囁き、シロンに慌てて反撃の指示を出した。
「し、シロン!ムーンフォースです!」
『コォン!』
シロンは急いで力を溜め込む。そして力を解き放ちドデカバシに向かって全力でムーンフォースを放った。
しかし対応が僅かに遅れてしまい、ドデカバシの攻撃準備も整い万全の様子。ドデカバシは次の瞬間、全力の一撃を解き放ったのである。
「ドデカバシ!くちばしキャノン、発射!」
『カァバアアアァァ!』
ドデカバシは発熱した大きなクチバシを開口し、次の瞬間に強力な一撃の光線を発射した。ドデカバシの専用技、くちばしキャノンだ。
くちばしキャノンはチャージを必要とするが、チャージ中に触れた相手を火傷状態にする追加効果を持っている。そしてチャージした強力な一撃を相手に叩きこむ技である。
くちばしキャノンの威力は非常に高い、そしてその使用者は四天王カヒリのパートナーだ。当然威力も凄まじく、ドデカバシの一撃は体力が落ちてしまっているシロンのムーンフォースをあっさりと打ち破り、シロンに接近する。
リーリエはシロンの名前を叫ぶが、シロンも体力がかなり厳しく、咄嗟に回避することができない。万事休すか、と思ったが、ドデカバシの攻撃は僅かにシロンから逸れ、直撃は免れた。
カヒリとドデカバシがわざと外れるようにしたのか、それともムーンフォースの一撃によって軌道が逸れたのか、どちらにせよ命拾いをしたシロンであった。
「……本日はここまでにしましょう。あなたのポケモンも、体力が限界に近いようですしね。」
カヒリのその言葉を聞き、リーリエは慌ててシロンに呼びかけ駆け寄った。
「シロン!大丈夫ですか?」
『コォン……』
座り込むシロンだが、リーリエに対して笑顔を向けていたため無事だと分かった。単純に緊張とバトルによる疲労が溜まっているだけのようである。
「リーリエさん、あなたのキュウコン、シロンでしたか。とてもよく育てられていますね。」
「あ、ありがとうございます。やっぱり四天王は強いですね。」
まったく歯が立たなかった、そう評したリーリエに、カヒリは苦笑いをし答えた。
「確かにバトルだけ見れば結果はあっさりとしているかもしれません。ですが、あなた方には可能性を感じる事ができました。」
「可能性、ですか?」
「ええ。バトルをしている最中、一瞬ですがまるでチャンピオン、シンジさんと戦っているように感じられましたから。」
「…………」
そう言われてリーリエはくすぐったいような、嬉しいような、不思議な感覚になったのである。憧れの人物に似ている、そのようなことを言われればそう感じるのも仕方ないだろう。
「今日はありがとうございました!いい経験になりました!」
「こちらこそ、ありがとうございます。私にとってもこれはいい経験になりましたし。」
そう言って互いに握手を交わし、その後カヒリが続けて口を開き言葉を続けた。
「良ければ私が次の島、ウラウラ島に送っていきますよ。今日バトルしてくれたお礼です。」
「そ、そんなお礼だなんて!悪いですよ!」
「元々は私からバトルを申し込む予定だったのです。それに、もう少しあなたともお話ししたいですし。」
「カヒリさん……」
「それと、今日は是非私たちのホテルで休んでいってください。大切なお客様として、精一杯おもてなしをさせてもらいますよ。」
「ホントに!?やったー!今日は豪華ホテルでお泊りだー!」
「おいおい、子どもみたいにはしゃぐなよ……。」
ホテルに泊まれると聞いてはしゃぐハウ、それに呆れるヨウ、いつもの光景にリーリエは笑みが零れた。
恐縮な気持ちはあるが、折角のカヒリからの好意を無下にすることはできない。リーリエたちは今日一日カヒリの実家であるホテルで休み、後日、カヒリのプライベートクルーザーで第三の島、ウラウラ島に向かうのであった。
原作本編でもカヒリさんの話もう少し広げて欲しかった。
グソクムシャの特性、交代先に素早さとかのバフが付いたら一気に強くなりそう。