ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》   作:ブイズ使い

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何故こんなに長くなってしまったのか……。私個人がグズマさん好きなので仕方ない


アーカラ島大試練!VSグズマ!

先日、半分成り行きでプルメリさんとバトルをした私、リーリエはコニコシティのポケモンセンターで泊まり一日を過ごしました。

 

そして翌日、遂にアーカラ島の大試練に挑戦する日がやってきました。相手は元スカル団のボスでもあったグズマさん。かつてシンジさんも苦戦させられていた指折りの実力者です。

 

初めて聞いた時はあの人がしまキングを務めていると言う事実に驚きました。実際私やシンジさん、お兄様にミヅキさんとは敵対関係にありました。しかも以前はお母様の味方をしており、お母様の指示で私をエーテルパラダイスまで連れ去ったことがあります。

 

そのような方が現四天王を務めているハラさんやライチさんたちと同じしまキングになっているなど正直信じられないことでした。ですがシンジさんから聞いた話では、私がアローラを去ってからグズマさんとバトルをし、ハラさんと一緒に説得することで改心させることができた、と言っていました。

 

スカル団のボスであったグズマさんは間違いなく強い。それもしまキングとなった彼は以前よりも強くなっている可能性の方が高いです。気を引き締めなければ、あっという間に倒されてしまうことでしょう。ですがどれだけ強い相手であろうと、私は絶対に勝って見せます。約束の場所に立つために、ここで負けるわけには行きません!

 

私がそんな事を考えながらポケモンセンターを後にするため外に出ると、そこには昨日戦ったプルメリさんが立っていました。プルメリさんは私の姿を見ると、軽い笑みを浮かべながら何かを手にし私の元へと歩み寄ってきました。

 

「よう姫さん。昨日はゆっくり眠れたかい?」

「はい!必ずグズマさんに勝って見せます!」

 

言うねぇ、とプルメリさんはニヤリと笑いながら、私に一つの紙切れを渡してきました。

 

読んでみな、と言ってそうなプルメリさんの顔を見た私は、二つ折りされた手紙を開きました。するとそこには、“俺様がぶっ壊してやる ビビッて逃げるんじゃねぇぞ”とだけ書いてありました。

 

「ったく、そんなこと書かなくても姫さんは逃げたりしないだろうに。」

 

そう呆れたように溜息交じりで呟いたあと、プルメリさんは“でも”と付け加えて言葉を続けました。

 

「あいつがそう言ったってことは、相当楽しみにしているみたいだね。姫さんとのバトルをさ。」

「私とのバトルを……ですか?」

 

私の言葉にプルメリさんは頷いて答えました。もしかしたら私とプルメリさんのバトルを見ていたのでしょうか?

 

グズマさんがそう言うなら、私の答えは決まっています。グズマさんの気持ちに応えるため、そしてなにより私自身のため、全力でグズマさんに立ち向かい勝利を手にしてみせます!

 

「その顔を見たら、これ以上余計なことを言う必要はないって分かったよ。行ってきな、そしてグズマの野郎に度肝を抜かしてやりな!」

「はい!」

 

私はプルメリさんに見送られ、グズマさんの待つ命の遺跡へと向かいました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

命の遺跡前へとやってきた私は、以前ここを訪れた出来事の事を思い出しました。当時は私はポケモントレーナーではなく、お母様の手から逃れ、ほしぐもちゃんを助けるために精一杯でした。

 

その時、私はシンジさんと当時しまクイーンであったライチさんの大試練バトルを目にし、バトルの凄さを目の当たりにしました。バトルに対して否定的、とまでは言いませんがあまり気乗りしなかった私でしたが、シンジさんのバトルを見ていると自然と鼓動が高鳴っていくのが自分でも分かりました。

 

それだけあの人のバトルは惹かれるものがあり、素人の私からしてもとても魅力を感じる事の出来るものでした。だからこそ私はあの人を目指して、ここまでやってくることができました。

 

(私はシンジさんの背中を見て、トレーナーになり、ここまでやってくることができました。守られるだけじゃなくて、大切な人に背中を預けられるように、一緒に歩むことができるように。)

 

だからこそ私は、グズマさんを倒し、先に進みます。約束の場所に行くために。

 

私は改めて決意を固め、大試練の門をくぐりました。するとその先には、見覚えのある背中が見えました。

 

背中にはスカル団を象徴とするドクロのマークが描かれていますが、それは大きく上から紫色のペンキで×を塗られていました。恐らくスカル団が解散した際、自らのケジメの意味を込めての行為でしょう。間違いなくその背中はグズマさんです。

 

私の気配に気づいたのか、グズマさんはこちらへと振り向きました。そして私は睨みつけてきます。グズマさんの目は鋭く、正直言えば怖いです。ですが覚悟を決めた以上、その程度の事で怯んで何ていられません。

 

私は恐れていないという意思表示のため、出来る限りの眼差しでグズマさんの眼を睨み返しました。するとグズマさんは口角を僅かに上げ、ようやく口を開きました。

 

「ハッ!それで睨んでるつもりかよ。だが、昔の箱入り嬢ちゃんの時とは違うみたいだな。」

 

グズマさんはそう言うと、モンスターボールを手に持ち、私も同じようにモンスターボールを構えました。私がバトルの意思があると確認したのか、グズマさんは言葉を続けました。

 

「ルールは2対2のシングルバトル。ここまで来たら余計な会話は必要ねぇ。大試練だろうが、オレさまの前でまどろっこしい事はなしだ。」

 

私はグズマさんの言葉に同意の意味を込め、頷くことで答えました。そしてグズマさんは大きく息を吸うと……。

 

「……ブッ壊してもブッ壊しても手を緩めなくて嫌われるグズマがここにいるぜ!簡単に壊れるんじゃねぇぞ!」

 

グズマさんがそう叫ぶと、それがバトルの合図となるようにモンスターボールを同時に投げました。

 

「出番だぁ!グソクムシャ!」

『ムシャァ』

「チラチーノさん!お願いします!」

『チラァ!』

 

『グソクムシャ、そうこうポケモン。むし・みずタイプ。巨大なツメで素早い一閃を繰り出す。体を覆うカラはダイヤモンド並みの強度を誇り、勝つためには手段を選ばない』

 

私は素早さの高いチラチーノさんを先鋒として選出しました。しかしグズマさんのポケモンは、まさかのグソクムシャさんでした。

 

確かグソクムシャさんはグズマさんのエースだったはず。それなのに最初のポケモンとして選出した?何か作戦があるのでしょうか?

 

私がグズマさんの考えを読んでいる内に、グズマさんは小さな声で呟き、グソクムシャさんはその言葉を受け取り行動に移しました。

 

「であいがしら」

『シャ』

『チラッ!?』

 

私とチラチーノさんが反応する前に、グソクムシャさんが気付けばチラチーノさんの目の前まで迫っていました。あまりのスピードに、チラチーノさんも対応することができず、グソクムシャさんの大きなツメにより大きく吹き飛ばされてしまいました。

 

「チラチーノさん!?」

『ちっ……ラァ!』

 

チラチーノさんは一度ダウンしてしまうも、スッと立ち上がりグソクムシャさんを睨みつけました。

 

「ほう?グソクムシャの一撃を受けて立ち上がってくるか。大抵の挑戦者は今の一撃で戦意を失っちまうんだがな。」

 

そう言って嬉しそうにニヤリと笑みを浮かべるグズマさん。確かに今の一撃は非常に重く、スピードも申し分なかった。ですが、今まで戦ってきた人たちも手練ればかりでした。今のは油断してしまっていた私たちに非があります。

 

「チラチーノさん、まだ行けますか?」

『チラッ!』

 

どうやら無用な心配だったようで、チラチーノさんはすぐに戦闘態勢へと移行しました。それを見たグズマさんは、ハッ、と口にしました。

 

「そうこなくちゃ待っていた甲斐がないってもんだ。グソクムシャ、ミサイルばり!」

「躱して接近してください!」

 

グソクムシャさんはミサイルばりで遠距離から連続で畳みかけてきました。チラチーノさんの得意な戦術は近接戦闘による素早い連続攻撃。自分の距離にするためにミサイルばりを次々と躱していきます。

 

ミサイルばりの制度はかなり高く、チラチーノさんの行く先を的確に狙ってきています。しかしチラチーノさんのスピードはその上を行っているようで、ミサイルばりを寸前のところで回避することに成功しています。

 

「チラチーノさん!スイープビンタです!」

『チラッ!』

 

充分に距離を詰めたところで、チラチーノさんはスイープビンタで攻勢に出ました。この距離であればこちら側の得意な距離だと確信していました。

 

しかし、その想像は予想外の方法であっさりと崩されてしまいました。

 

「防御しろ!グソクムシャ!」

『ムシャ!』

 

グソクムシャさんは手を交差させて防御の態勢に入りました。グソクムシャさんの大きな腕によりチラチーノさんの攻撃は防がれ、あっさりと弾き返されてしまいました。

 

「ハッ、今だ!じごくづきぃ!」

『ムシャァ!』

『チッラ!?』

 

グソクムシャさんのじごくづきによる反撃が強力で、チラチーノさんは堪らず飛ばされてしまいます。私は思わず心配になり、すぐにチラチーノさんの元へと駆け寄りました。

 

「チラチーノさん!大丈夫ですか!?」

『ちっ……ラぁ……』

 

戦闘不能とはなっていませんが、今の一撃で最初のダメージよりも大きくなってしまっています。これ以上ダメージを貰ってしまうと厳しいですね。

 

グソクムシャさんのあの太い腕、かなり強固なもののようです。グソクムシャさんのカラはダイヤモンドよりも硬い、攻撃性能だけでなく、防御力も相当なものを備えているみたいですね。

 

ですがどんな強固なものであっても当然弱点はあります。その僅かなスキを狙って的確に弱点を突くしかありません。

 

「チラチーノさん、私の言う通りに動くことができますか?」

『チラ?』

 

私はチラチーノさんに自分の考えと作戦を伝えます。私が再度チラチーノさんに確認すると、彼女は元気よく頷いてくれました。私の事を信頼してくれているようで、嬉しさのあまり自然と笑みが零れてしまいます。

 

「作戦会議は済んだか?まだまだオレさまたちの攻撃は続くぜぇ!」

『ムシャ!』

「チラチーノさん!あなをほるです!」

『チラ!』

 

チラチーノさんはあなをほるで地中に姿を隠しました。グソクムシャさんは先ほどの猛攻と変わり、冷静に状況を確認しています。

 

チラチーノさんはグソクムシャさんの後ろから姿を現しました。グソクムシャさんはすぐさま振り向き、攻撃の態勢へと入ります。

 

「そんな攻撃は見え見えだ!グソクムシャ!アクアブレイク!」

 

グソクムシャさんは懐から水で出来た鋭い刃を生成、それを居合のように振りかざしました。ですがそれは逆に私たちの読み通りでもありました。

 

チラチーノさんはアクアブレイクをギリギリすれすれで回避しました。チラチーノさんの油のコーティングと持ち前のスピードであれば問題なかったようです。

 

「チラチーノさん!スイープビンタ!」

『チラァ!』

「グソクムシャァ!」

『ムッシャ!』

 

すかさず尻尾を縦から振り下ろすチラチーノさんに対して、グソクムシャさんはすぐに防御の態勢に入りチラチーノさんの攻撃を防ぎました。流石はグズマさんのエースなだけはあり、とてもよく育てられています。

 

ですがそれも当然私たちは読んでいて、先ほどチラチーノさんに伝えた作戦を実行に移しました。

 

『チッラァ!』

「っ!?」

『シャ!?』

 

チラチーノさんはグソクムシャさんの腕を使い踏み台にして、グソクムシャさんの頭上へと高くジャンプしました。この行動にはグソクムシャさんも驚いているようです。

 

チラチーノさんは更にジャンプした高さと降下の勢いを利用し、頭上から防御の薄い顔目掛けて尻尾を振り下ろしました。その一撃はグソクムシャさんの顔を捉え、見事命中しました。

 

例えグソクムシャさんのカラが硬くとも、カラのない部位、つまり頭部は無防備であり急所でもあります。一瞬の隙を突き当てることができれば、大きくダメージを与えることができます。

 

私の作戦通りに決まり、グソクムシャさんにダメージが入りグソクムシャさんは一歩後退りました。そして防御が下がった今こそ追撃のチャンスだと、チラチーノさんは更に攻撃を加えました。

 

「続けて行きます!スピードスターです!」

『チラッチラァ!』

 

スイープビンタで引き下がったグソクムシャさんに追撃のスピードスターが炸裂しました。同じように防御の薄い頭部に命中し、グソクムシャさんは更なるダメージによる膝をつきました。

 

(よし!この調子なら行けます!)

 

ダメージが溜まった今ならチラチーノさんのスピードで撹乱しながら倒すことができる。そう確信した私ですが、その瞬間にグズマさんがニヤリと笑いました。

 

一体どうしたのか、と私が考えようとすると、次の瞬間にグソクムシャさんがグズマさんのモンスターボールへと勝手に戻っていってしまいました。

 

思わず私は“えっ”と口にしてしまいましたが、グソクムシャさんと入れ替わりで別のポケモンさんが姿を現しました。

 

『ハッサ!』

 

次に姿を現したのはハッサムさんでした。グソクムシャさんと同じむしタイプ、そしてはがねタイプを所持しているポケモンさんですが、突然の状況に私は思考が追い付きませんでした。

 

「バレットパンチ」

『ハッサム!』

「っ!?か、躱してください!」

『チラッ!?』

 

私はハッとなり慌てて回避の指示を出しましたが時すでに遅し、ハッサムさんの素早い先制攻撃についていくことができず、チラチーノさんにハッサムさんの弾丸の様な一撃が突き刺さってしまいました。

 

私はチラチーノさんの事が心配になり慌てて駆け寄り抱えました。見るからにチラチーノさんはボロボロで、これ以上の戦闘は間違いなくできません。

 

「チラチーノさん、大丈夫ですか?」

『ちら……ちっ……』

 

私の問いかけに辛うじて声を振り絞るチラチーノさん。私は戦ってくれたチラチーノさんに感謝しつつ、後で必ず癒してあげると約束をし、モンスターボールへと戻しました。

 

冷静になって思い返すと、確かグソクムシャさんの特性は“ききかいひ”。危険を感じると手持ちのポケモンさんと入れ替わる特性です。だから突然グソクムシャさんは手持ちに戻り、ハッサムさんと入れ替わったということです。

 

迂闊でした。初めから予想さえしていれば決して対処できない動きではありませんでした。最初のであいがしらの時と言い、私もまだまだ未熟だということを思い知らされます。

 

「さぁ、さっさと次のポケモンを出しな。どんなやつが来てもブッ壊してやるからよ!」

 

グズマさんは手を握り締めてそう言い放ってきましたあの眼は間違いなく本気です。プルメリさんの言った通り、荒々しいバトルに偽りのない実力。今ならシンジさんやお兄様に匹敵する程の実力者だということが分かります。

 

ですが私の手持ちはまだ残っています。正直ハッサムさんに有利なポケモンさんはいませんが、それでも私は自分のポケモンさんを信じます。必ず勝って、前へ進みます!

 

「お願いします!シロン!」

『コォン!』

「……こおりとフェアリータイプか」

 

こおりタイプとフェアリータイプを持つシロンははがねタイプのハッサムさんとの相性が最悪です。ですが私はシロンを信頼しています。シロンなら、相性の壁も乗り越えてくれます!

 

「速攻で終わらせてやるよ!ハッサム!バレットパンチ!」

『ハサッ!』

 

ハッサムさんは先ほどと同じようにスピードに乗ってバレットパンチで直線的に狙ってきました。ですが、今度はその動きも分かっています。

 

「シロン!こおりのつぶてです!」

『コン!』

「全てブッ壊せ!」

『ハッサ!』

 

シロンはこおりのつぶてを無数に飛ばし対抗します。ハッサムさんは低空飛行の状態を維持しながらこおりのつぶてを迎撃します。しかし、砕け散るこおりのつぶてにより、次第にハッサムさんの動きに変化が出てきました。

 

『ハッサ!?』

「っ!?ハッサムの動きが」

 

ハッサムさんは元々飛行があまり得意なポケモンさんではありません。そのため小さな羽を激しく羽ばたかせてバトルに利用しています。砕け散ったこおりのつぶては次々とハッサムさんの横へと散っていきます。

 

砕けたこおりのつぶてはハッサムさんの羽ばたく羽に吸い寄せられるように少しずつ蓄積され、ハッサムさんの羽は凍りついていきました。それに伴い、ハッサムさんの動きもだんだんと鈍くなり、果てには羽ばたくことができず飛行すること自体が困難となりました。

 

ハッサムさんは戸惑い、今こそが最大のチャンスだとシロンはすかさずに追撃の態勢へと入りました。

 

「シロン!れいとうビームです!」

『コォォォン!』

『ハサ!?』

 

シロンのれいとうビームがハッサムさんを直撃しました。シロンの渾身の一撃がハッサムさんを吹き飛ばし、ハッサムさんは今の一撃で戦闘不能となりました。

 

作戦、という程立派なものではありませんでした。正直言って殆どまぐれの様なものです。ですがどんな結果であれ、ハッサムさんを突破することができたのは非常に大きいです。

 

『はっ……さ……』

「……戻れ、ハッサム」

 

戦闘不能となったハッサムさんをモンスターボールへと戻すグズマさん。これで互いに残ったポケモンさんはシロンとグソクムシャさん、お互いのエース対決を残すのみです。

 

「……グソクムシャァ!」

『ムシャ!』

 

グズマさんのエース、グソクムシャさんが再びフィールドに降り立ちました。

 

グソクムシャさんは先ほどの戦闘によるダメージがあるとは言え、グズマさんの絶対的なエース。決して油断することはできません。

 

「グソクムシャ!であいがしらぁ!」

『ムッシャ!』

 

再びグソクムシャさんのであいがしら。であいがしらは戦闘に出た時にしか使えませんが、素早い動きで相手に不意の一撃を与える技です。先ほどは本当の意味で不意を受けてしまったため対応できませんでしたが、今度は違います。

 

「こおりのつぶてです!」

『コォン!』

 

グソクムシャさんがシロンの目の前に現れますが、こおりのつぶてでグソクムシャさんの一撃が当たる前に反撃をしました。零距離でぶつかった技は打ち消し合い、互いにノックバックする結果となりました。

 

「逃がすんじゃねえ!ミサイルばりぃ!」

「れいとうビームで撃ち落としてください!」

 

グソクムシャさんのミサイルばりが上空から襲い掛かってきますが、それらはシロンはれいとうビームで全て薙ぎ払いました。

 

その光景を見たグズマさんは、舌打ちをしながらも嬉しそうに口元を緩めていました。

 

「面白れぇじゃねぇか。だったらお前の全力、オレさまにぶつけてみろ!オレさまのグソクムシャはヤワじゃねぇ!」

『ムシャ!』

 

グソクムシャさんも“かかってこい”と言わんばかりに構えて挑発してきます。そこまで言われたら私も応えないわけには行きません。

 

「行きますよ!シロン!」

『コン!』

 

私はシロンと合図をとり、Z技のポーズをとります。私とシロンの絆、全力の攻撃です!

 

絶対零度のように全てを凍てつかせる氷の力

 

 

 

 

 

――レイジングジオフリーズ!

 

 

 

 

 

氷の柱がシロンを高く持ち上げ、シロンは力を溜め込みます。そして一点に集中したその力を解き放ち、Z技としてグソクムシャさんに一直線に向かいました。

 

地面を凍らせながら放たれたその一撃は、グソクムシャさんを完全に捉えていました。しかしグソクムシャさんは動じることなく、態勢を低くして居合の構えをとっていました。

 

「オレさまを……グソクムシャを舐めるなぁ!アクアブレイク!!」

『……ムシャ!』

 

グソクムシャさんは神経を集中させ、直前に迫ってきたレイジングジオフリーズに対してアクアブレイクの一閃を放ちます。するとグソクムシャさんの一撃は、Z技であるレイジングジオフリーズに匹敵する威力で競り合っていました。

 

グソクムシャさんは更に力を解放し、全力でアクアブレイクを振り払いました。すると驚くことに、シロンのZ技、レイジングジオフリーズを切り裂いてしまいました。

 

Z技とグソクムシャさんの一撃という大技のぶつかり合いにより、大きな衝撃が辺り一面に広がります。互いの姿が見えないその状況でしたが、複数の光がシロンに迫ってきているのが分かりました。

 

「シロン!こおりのつぶてです!」

『コン!』

 

その攻撃は間違いなくグソクムシャさんのミサイルばりで、シロンはこりのつぶてで反撃します。こおりのつぶてはミサイルばりを撃ち落とし、いくつかの流れ弾が衝撃を貫きグソクムシャさんへと向かっていきました。

 

「チィ!弾き返せ!」

『ムシャ!』

 

グソクムシャさんは大きなツメを振り払い、頑丈なカラを利用してこおりのつぶてを弾き返してきました。バトルは既に最終局面。私も必至にシロンに呼びかけました。

 

「シロン!」

『コォン!』

 

私の呼びかけに応答し、シロンはグソクムシャさんの方へと飛びかかっていきました。今の一声で私の意図を読み取ってくれたようです。

 

シロンは弾き返されたこおりのつぶての破片を口に咥えました。技がぶつかりあった礫は鋭さを増し、その先端はまるで剣のように尖っていました。

 

「っ!?グソクムシャ!アクアブレイク!」

『ムシャ!』

 

シロンは咥えたこおりのつぶてを振りかざし、グソクムシャさんは慌ててアクアブレイク準備をしました。互いに刃を振り、切り裂く音と同時にすれ違いました。

 

その後、暫く静寂が続きました。その後シロンが口からこおりのつぶてを落としてしまったため、もしかしてと不安が過りました。

 

しかし次の瞬間、グソクムシャさんが前のめりに倒れ、大きな音が響きました。どうやらグソクムシャさんは戦闘不能となり、決着がついたようです。

 

「……勝った?やりました!やりましたよシロン!」

『コォン♪』

 

感極まって私は飛び上がり、シロンも私の元へと駆け寄ってくれました。私たちは激戦に勝利し、互いに喜びを分かち合いました。

 

「……グソクムシャ、戻れ。」

 

グズマさんはグソクムシャさんをモンスターボールへと戻しました。すると息を大きく吸い込み……

 

「グズマァ!!なにやってるんだああ!!」

 

そう叫んだのち、ふっと息を吐いて私の元へと歩み寄ってきました。

 

「って、昔のオレさまなら叫んでいただろうな。ったく、誰かさんのせいでブッ壊されたのはオレさまみたいだな。」

「グズマさん……」

「ほらよ、むしZだ、持ってきな。元々オレさまには似合わねぇ代物だ。」

 

グズマさんからむしZを受け取ると、グズマさんは後ろに振り返り、一言だけ呟きました。

 

「……ありがとな、いいバトルだった。」

「っ!?」

「チッ、さっさと行きやがれ!あの野郎と同じで、お前も気に入らねぇ奴の一人なんだからよ!」

「は、はい!」

 

私にはその言葉が照れ隠しであると同時に、グズマさんにとっての最大の激励なのだと感じました。私はグズマさんの言葉を背に受け、命の遺跡を足し去っていきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チッ、ホントに気に入らねぇ奴らだよ、ったく」

 

グズマはそう呟きながら空を見上げ、どこか嬉しそうな笑みを浮かべたのであった。

 

「……さっさとこいつらを回復させてやるか」




グズマさんはZ技を好まないので基本使いません。剣盾のネズさん的なイメージです。

ライズが面白すぎてずっとやってます。最近ではソロでラスボス周回という作業を。
暇つぶしにあげた百竜夜行のソロ動画が謎に再生数伸びてて驚いてます。こんなに短期間で伸びたのは辿異種ガノトトスをマグスパでやった動画以来だよ。

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