ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》 作:ブイズ使い
実際は少し前に手術は終わって退院もしてたんですけど、入院中に出来なかったことをやりたかったために色々やってたら完全に放置状態でした。すいません。
手術中一度覚醒したヌシですが、なぜかそのまま二度寝してしまった。我ながらよく眠れたものね。
島巡りの途中、新米トレーナーのヒナと暫くの間同行することとなったリーリエ。丁度お昼時になり、二人で協力して食事の準備をしていた。
「リーリエさん、お皿並べ終わりました!」
「ありがとうございます。こちらも準備できました!」
ヒナは自分で食事を作ったことがないため、基本的に食事の準備はリーリエが担当し、テーブルや食器の準備などはヒナが担当していた。そんなヒナを見て、リーリエはなんだか以前までの自分を見ているようで懐かしさのようなものを感じていた。
(シンジさんもこんな気持ちだったんですかね。)
比較的簡単なものではあるものの、人に料理を作ると言うのはこんな温かい気持ちなのだと言うことを実感するリーリエ。
世の中には料理するのが面倒だと言う人も当然いる。しかしリーリエはどちらかと言うと料理をするのが好きになってきているのだ。
確かに簡単な料理などであっても準備に時間がかかり、食事をするのは調理する時間よりも短い。しかし、料理を振舞い喜んでもらえると、自然と心の底から温かい気持ちが溢れて、作ってよかったのだと思う瞬間がある。
以前リーリエは慣れないながらもシンジに料理を振舞ったが、その際にシンジはリーリエの料理を美味しいと言って心から喜んでくれていた。その言葉に嘘偽りがなく、シンジは笑顔でリーリエの出した食事を完食してくれた。その時、リーリエは心が温かくなり、自分も嬉しい気持ちで溢れたそうだ。
「う~ん!やっぱりリーリエさんの料理美味しいです♪」
今もヒナはリーリエの食事を美味しそうに頬張っている。その様子を見たリーリエは、まるで子供を見守る母親のように温かい眼差しをしていた。
(ヒナさん、とっても美味しそうに食べてくれてます。やっぱり人に喜んで貰うのっていいですね。自分まで嬉しくなっちゃいます。)
純粋な心を持っているリーリエは、心の中でそう思っていたのであった。母親であるルザミーネや、共に旅をしていたシンジも同じ気持ちになっていたのだろうと思いながら。
彼女のパートナーであるモクローも、リーリエお手製のポケモンフーズを美味しそうに食べている。ペットは飼い主に似る、と言うが、ポケモンもトレーナーに似るところは同じようである。
「リーリエさん?どうかしましたか?」
「ふふ、なんでもありません。おかわりもありますから、いっぱい食べてくださいね!」
ヒナはリーリエの言葉に大きな返事をして次々と料理を口にしていく。ここまでおいしそうに食べているのを見ると、見ている側もお腹いっぱいになりそうである。
二人がそうやって食事を楽しんでいると、近くの草むらがゴソゴソと動き出した。
なんだろうと2人が草むらに目を向けてみると、そこから一匹のポケモンがヒョコッと姿を現した。
「このポケモンさんは……」
リーリエの言葉と同時に、ロトム図鑑が起動しそのポケモンの詳細を解説し始めた。
『チュリネ、ねっこポケモン!くさタイプ!主に綺麗な水や土地を好むポケモン。頭の葉っぱは苦いが、健康によく元気になれるとして有名。』
そのポケモンはねっこポケモンのチュリネだ。以前ルザミーネが持っていたドレディアの進化前のポケモンである。
因みにドレディアに進化するためには、たいようのいしという特殊なアイテムが必要である。
「かわいい~♪」
チュリネを見た途端、ヒナは目をキラキラと輝かせる。
「でもこのチュリネさん、なんだか様子が変ですね?」
「そう言えばそうですね。」
リーリエの言葉にヒナはチュリネの違和感に気付く。チュリネは何かを訴えようとするが、次の瞬間にその場に倒れ伏せてしまった。
「あっ!チュリネちゃん!大丈夫!?」
「ひどい傷です!すぐにポケモンセンターに連れていかないと!」
よく見るとチュリネの体には複数の傷ができていて、チュリネ自身も弱っている様子だった。ヒナはチュリネを抱え、急いで最寄りのポケモンセンターへと連れて行くのであった。
「お待たせしました!チュリネはすっかり元気になりましたよ!」
「ありがとうございます!ジョーイさん!」
『チュリチュリ♪』
チュリネは恩人であるヒナを見つけると、すぐに飛びついて元気であることを証明した。野生のようだが、どうやら人懐っこい性格のようである。
「よかったですね!チュリネさん!」
「ところでこのチュリネはあなたの?」
「いえ、たまたまチュリネちゃんが弱っているところに遭遇して……」
「そう、やっぱり……」
ジョーイのやっぱり、という言葉が引っ掛かり、2人はなんのことなのかが気になったためジョーイに尋ねてみることにした。
「実は最近、この近くの野生のポケモンたちの様子が変なの。」
「変、ですか?」
「つい最近になって、急に野生のポケモンたちがこのポケモンセンターに運ばれることが多くなったのよ。それもそれぞれ状態に違いが大きくてね。」
ジョーイの話によると、麻痺や毒、火傷状態になっているポケモン、チュリネのように傷ついて運ばれてくるポケモン、足に縛られた跡がついたポケモンなどもいるそうだ。
リーリエはその話を聞いた時、ふとある人物のことが頭に思い浮かんだ。
「それって……ポケモンハンター!?」
「その可能性はありえそうね。」
リーリエの問いにジョーイも頷いて答える。頭に疑問符を浮かべたヒナは、リーリエにポケモンハンターとはなんなのかを尋ねた。
「ポケモンハンターは、違法な手段を使ってポケモンさんたちを捕まえて、高値で売りさばく悪い人たちです。」
「そんな!?ポケモンを売りさばくなんて!ひどい!」
心優しくポケモンが大好きなヒナも、流石にポケモンを商品として扱う行為には怒り心頭のようだ。
ポケモンハンターはその職業柄、トレーナーとしての実力はかなりのものである。しかし、ハンターとしての力量には大きく差があるようだ。
ポケモンを売る関係上、商品としての価値が下がらないように可能な限り傷つけないように捕らえるのが普通だ。しかし中にはハンターとしての実力がないのか、ポケモンに目立つ傷をつけてしまったり、酷い状態異常へと追い込んでしまったりするものもいる。今回のポケモンハンターは、少々荒々しいハンターの可能性があると補足した。
「あなたたちも旅をするのであれば、くれぐれも注意してね。」
ジョーイの忠告を受け、リーリエとヒナはチュリネを連れてポケモンセンターを後にしたのであった。
「…………」
『チュリ?』
チュリネを抱きかかえてるヒナはどこか表情が暗い。そんな彼女の不安を感じ取ったのか、チュリネはヒナの表情を見上げた。
ヒナは少し微笑みながら、チュリネを不安にさせないように頭を優しく撫でた。チュリネも嬉しそうな笑みを浮かべる。
そんなチュリネの表情を見たヒナは、ある決心をするのだった。
「……あの、リーリエさん!」
「分かってます、チュリネさんを助けるんですよね?」
「!?はい!」
どうやらリーリエも気持ちは同じだったようで、ヒナが言う前にそう答える。そんなリーリエにヒナは感謝し、一緒にチュリネの住処へと足を運ぶのだった。
チュリネの案内の元、リーリエとヒナは現場にたどり着いた。するとそこには一人の少し小太り気味な男がブツブツと何かを口にしている姿があった。
「くっそ、また逃げられちまった。全然うまくいかねぇな……。」
その男には捕獲ネットと、近くのトラックの荷台には鉄格子があった。間違いなくあの人物が例のポケモンハンターだろう。
あの様子を見る限りでは、ポケモンの捕獲は上手くいってないようである。恐らく彼もポケモンハンターとしてはまだまだ新米なのであろう。
「あの人がポケモンハンター?」
「どうやらまだポケモンさんは捕まえられていないようです。ですがトレーナーとしての腕は別です。注意していきましょう。」
リーリエの言葉にヒナも頷く。そしてポケモンハンターの悪行を止めるべく二人は飛び出しモンスターボールを手に取った。
「そこまでですよ!ポケモンハンター!」
『チュリ!』
「なっ!?さっき逃がしたチュリネ!?これはチャンスだ!」
ポケモンハンターは好機と見たのか、リーリエとヒナには目もくれずにチュリネをターゲットと捉えてモンスターボールからポケモンを繰り出した。
「行け!ホルード!」
『ホッドォ!』
ポケモンハンターが繰り出したのはノーマル・じめんタイプのホルードであった。ホルードは手足の様に扱う強靭な耳の力が驚異的なポケモンである。決して油断できる相手ではない。
「チュリネちゃんを助けるよ!モクローちゃん!」
『クロー!』
「私もサポートします!フシギソウさん!お願いします!」
『ソウ!』
ヒナはモクロー、リーリエはフシギソウを繰り出した。互いにくさタイプのポケモンであるため、じめんタイプを持つホルードに対してはかなり有利だ。
「邪魔をするのは容赦しないぞ!マッドショット!」
『ホッド!』
「躱して!」
「躱してください!」
モクローとフシギソウはホルードのマッドショットをうまいこと回避した。
「モクローちゃん!たいあたり!」
『クロクロー!』
モクローは高い脚力を活かし素早く接近したいあたりを仕掛ける。しかしポケモンハンターもバトルの腕は高いようで、そう簡単に決めさせてはくれなかった。
「ホルード!にどげり!」
『ホッド!』
ホルードは一度目のキックでモクローのたいあたりを抑え、二度目のキックでモクローを弾き返した。
「ああ!?モクローちゃん!」
『くろぉ……』
慌てたヒナはモクローに歩み寄る。まだ新米トレーナーで戦い慣れていないヒナはモクローが傷ついたことに対して慌ててしまう。しかしポケモンハンターはそんなこと気にすることはなく、続けて攻撃を畳みかけてくる。
「ワイルドボルトでとどめを刺せ!」
『ホルドォ!』
「あっ!?」
『チュリ!?』
ホルードは電気を全身に纏い、ワイルドボルトで全力の攻撃を仕掛けてくる。ヒナは咄嗟にモクローを抱き寄せるが、その場から動くことができない。ヒナはもうダメだと諦めてしまうが、あるポケモンが目の前に立ちはだかり、自分たちを守ってくれたのだった。
「フシギソウさん!つるのムチです!」
『ソウソウ!』
そのポケモンはリーリエのフシギソウであった。フシギソウは背中から出したつるのムチでワイルドボルトを正面から抑える。
しかしワイルドボルトの威力は高く、フシギソウもじりじりと少しずつ押し返されてしまう。そんな時、リーリエが大きな声でヒナに対して呼びかけた。
「今ですヒナさん!モクローさんに指示を!」
「っ!?は、はい!モクローちゃん!このは!」
『クロッ!クロォ!』
『ホルッ!?』
フシギソウのつるのムチに加え、モクローの咄嗟に出したこのはによる二重の攻撃にホルードは怯んで吹き飛ばされる。ホルードの技の攻撃力がいかに高くとも、二つの攻撃を同時に浴びてしまってはさすがに分が悪い。
「ヒナさん!大丈夫ですか!?」
「は、はい、ありがとうございます、助かりました。」
なんとか無事に済んだことにホッと胸を撫で下ろすヒナ。助けてくれたフシギソウにもお礼を言い、フシギソウも笑顔でその礼に答えてくれた。
「相手の力量が分からない時は不用意に突っ込まない方がいいですよ。慌てずにじっくりと観察をすることが大切です!」
「わ、分かりました!」
トレーナーとして先輩であるリーリエの助言にヒナは元気よく返事をする。強いトレーナーを目指すものとして、先輩トレーナーのアドバイスは非常にありがたいものである。
「ぐぬぬ!俺の商売の邪魔をするな!ホルード!マッドショット!」
「ポケモンさんを売るなんて、そんなの許せません!フシギソウさん!はっぱカッターです!」
「そうだよ!ポケモンは道具でも売り物でもないんだから!モクローちゃん!このは!」
ホルードのマッドショットをフシギソウのはっぱカッター、モクローのこのはで防ぐ。マッドショットは全て撃ち落とされ、ポケモンハンターの怒りもピークに達していた。
「くっそ!こうなったら無理やりにでも!」
そう言ってポケモンハンターは懐から捕獲用の道具を取り出して強行手段に出ようとする。どんな手をも厭わないポケモンハンターの行動に、リーリエたちも身構える。
『っ!?チュリ!』
「なっ!?チュリネちゃん!」
突然チュリネが飛び出してポケモンハンターに対して黄色い粉を頭部からばら撒いた。次の瞬間、ポケモンハンターはその場で膝を崩してガクガクと震え始めた。
「今のはチュリネさんのしびれごなです!」
「チュリネちゃん、もしかして、私たちと戦ってくれるの?」
『チュリ!』
どうやらチュリネは戦うヒナたちの姿を見て後押しされたようだ。戦う彼女たちの背中を見て、自分も戦わなくてはと意を決したらしい。
「うっ、ぐぐ、ホルードっ、ワイルドボルトっ」
ポケモンハンターは痺れながらもホルードにワイルドボルトの指示を出した。一方ヒナは、威勢よく出たはいいものの、この後どうしたらいいか分からず焦ってしまっていた。
「ええっと、ど、どうすれば!?」
「落ち着いて下さいヒナさん!チュリネさんはやどりぎのタネが使えるみたいです!」
「は、はい!チュリネちゃん!やどりぎのタネ!」
『チュリ!』
『ホド!?』
チュリネはやどりぎのタネを頭部からホルード目掛けて発射する。一直線に突撃していたホルードは当然避けることができず、ヒットした種から芽が出てホルードの動きを封じた。
「ええっと、他の技は……よし!チュリネちゃん!マジカルリーフ!」
『チュリィ!』
チュリネは今度はマジカルリーフでホルードをやどりぎのタネごと引き裂いた。ホルードはその一撃でかなりのダメージを受け、動きがかなり鈍くなっていた。
「ヒナさん!ラスト行きますよ!」
「はい!リーリエさん!」
「フシギソウさん!エナジーボール!」
「モクローちゃん!このは!」
『ソウソウソウッ!』
『クロォ!』
『チュリィ!』
フシギソウはエナジーボール、モクローはこのは、それに合わせてチュリネはマジカルリーフでホルードに一斉攻撃を仕掛ける。その攻撃によりホルードは大きく吹き飛ばされ、主であるポケモンハンターを巻き込んで共に目を回して倒れたのだった。
「や……やった?やりました!モクローちゃん!チュリネちゃん!」
『クロー!』
『チュリチュリ!』
ヒナは一緒に戦ってくれたモクロー、チュリネと共に喜びを分かち合う。非公式の戦いとは言え、ヒナにとってはこれが初の勝利でもあるため、余計嬉しくなってしまったのだろう。
「チュリネさんとヒナさん、とても息が合ってましたね!」
「そう言えば、なんだかチュリネちゃんとは自然と戦うことができましたね。」
『チュリ?』
天然な性格をしているのか、チュリネはなんだか不思議そうな表情でヒナを見つめていた。そんなチュリネを見て、リーリエはとある提案をした。
「どうでしょうか。チュリネさんと一緒に旅をしてみては。」
「えっ?チュリネちゃんと?」
「ポケモンハンターさんたちのような悪い人たちは他にも大勢いると聞きます。またチュリネさんを一人にするより、トレーナーと一緒にいたほうが安心すると思うんです。それに、チュリネさんはヒナさんに懐いているようですし。」
その言葉を聞いてヒナはチュリネを見つめる。そしてチュリネは、先ほどのように不思議そうに首を傾げてヒナを見つめ返す。
「……チュリネちゃん……私と、一緒に行く?」
『チュリ?……チュリ♪』
どうやらチュリネもヒナの気持ちを理解したようで、笑顔で頷きそう答えた。チュリネも自分と一緒に行きたいと思ってくれてると思うと、心から喜びが溢れ、自然と涙が出てきてしまっていた。
「……これからよろしくね!チュリネちゃん!」
『チュリ!』
ヒナはチュリネにモンスターボールを軽く当てる。するとモンスターボールがパカッと開き、チュリネはその中へと吸い込まれていった。
モンスターボールが数回揺れ、ピコンッという音と共にヒナはチュリネの仲間になったのだった。
「っ!初めての新しい仲間!チュリネちゃん!ゲットです!」
『クロォ!』
「おめでとうございます!ヒナさん!」
「ありがとうございます!リーリエさん!」
初めての新しい仲間、チュリネを迎え入れたヒナ。その喜びを噛み締め、リーリエと共に再び旅を続けるのであった。
因みに、その日の夜、ヒナはあまりの喜びと嬉しさで一睡もできなかったそうである。また、ポケモンハンターもジュンサーに引き渡され、一つの事件は終わりを迎えたのであった。
次の話でヒナちゃんの立ち位置が決まると思います。
なぜチュリネにしたかと言うと、鎧の孤島イベントのチュリネドレディア親子?が可愛すぎたからです。
あっ、ウオノラゴンの色違い厳選成功しました。