ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》 作:ブイズ使い
某ウイルスにはかかってませんのでご安心ください。とりあえずアローラ編Lが完結までは失踪するつもりはない……と思います。なおシンジのアローラ編を書くかどうかは未定となります。どうせ原作と大差ないし(ボソッ
第二にククイ博士から出された課題は、三人一組でチームを組み少しの間共に過ごすこと。なので私はチームメンバーとなったヨウさん、ハウさんと共にキャンプを過ごしています。
そして今はと言うと……
「ニャヒート!かえんほうしゃ!」
「フクスロー!かわしてこのはー!」
『ニャット!』
『スロー!』
「ニトロチャージで迎え撃て!」
『ニャトォ!』
「フクスロー!ふいうちー!」
『スロォ!』
この様にヨウさんとハウさんがバトルをしています。
「あのー、なんでバトルをしているのですか?」
「ん?だってバトルした方が互いの事が分かるだろ?」
「いや、でもシングルバトルじゃああまり意味がない気がするのですが」
「でもじっとしてるのはおれたちの性分じゃないしねー」
「折角だからリーリエもバトルしようぜ?」
「は、はぁ……別に構いませんが」
私はヨウさんに多少強引な形でバトルする方へと流されてしまいました。なんかシンジさんと旅していた時とはかなり違い、2人とも少し落ち着きがない気がします。いえ、別にお二人の事を否定しているわけではないのですが……。
私がヨウさんたちと戦おうと準備すると、突然近くの茂みが少し揺れ動きました。
「ん?なんだろー?」
「おいハウ、不用意にあんまり近づかない方が……」
ハウさんはその揺れの正体が気になり、少しずつ揺れた茂みへと忍び足で近づいていきます。ハウさんがその茂みのすぐ傍にまで近づいたとき……。
『ピッカチュ!』
「あれ?ピカチュウさん?」
「ん?お前って……」
『ピカチュッピ!』
茂みからはピカチュウさんが姿を現しました。ですがこのピカチュウさん、どこかで見たことがある気がします。
姿を現したピカチュウさんは、私たちの姿を順番に見た後にヨウさんと目を合わせました。ヨウさんもピカチュウさんの目を見て動きを止めました。
『ピィカ』
「お前、もしかして……」
「おーい!みんなー!」
「あれ?ククイ博士ー」
『ピカッ!?』
大きな声がした方へと振り向くと、そこには手を振りながらククイ博士がこちらに走ってきていました。
「はぁはぁ、こっちに一匹のポケモンがこなかったかい?」
「え?ポケモンさんですか?」
ククイ博士が肩で息をした状態で私たちにそう問いかけてきました。
「あ、ああ。前回みんなに貸し出したポケモン達の様子を見ていたんだが、その最中に一匹のポケモンが逃げ出してしまったみたいなんだ」
「そのポケモンって?」
「ヨウ、君もよく知っているポケモンだよ」
「……やっぱりそうですか」
どうやらその逃げ出したポケモンは、ヨウさんがよく知っているポケモンさんのようです。そう聞いた私とハウさんも、そのポケモンさんの正体が分かりました。
「そのポケモンってさ、もしかしてもピカチュウだよねー?」
「ピカチュウさんなら、先ほど一瞬だけですが」
「見たのかい?」
ククイ博士の疑問符に私たちは頷いて答えました。
「そうか、やっぱり……。」
「やっぱりって?」
「……そのことは後で話すよ。それより……」
「はい!分かっています!」
「おれたちもピカチュウ探すの手伝うよー」
「そう、だな。」
「三人とも、ありがとう。ピチューの時からそうだが、あのピカチュウは少し人見知りだから、中々見つからないかもしれないけどね。」
ククイ博士の話を聞き、私たちは協力してピカチュウさんを探すことになりました。
「とは言ったものの、どこから探せばいいのでしょうか。」
「まぁ適当に探せば見つかるよー」
「…………」
「適当と言っても、人見知りのピカチュウさんを探すのは難しいのでは?」
「おれたちに対しては人見知りでもー、ヨウだったら大丈夫だと思うよー」
「確かに、そう言えばそうですね。ヨウさん、心当たりとかありますか?」
「…………」
「ヨウさん?どうかしましたか?」
「あ、わ、悪い。なに?」
私がヨウさんに声をかけると、ヨウさんはどこか浮かない顔をしながら歩いていました。ピカチュウさんの事が心配なのでしょうか?
「ヨウー、さっきから様子がおかしいけどどうかしたのー?」
「やっぱりピカチュウさんの事が心配なんですか?」
「いや、まぁ、それもあるんだけど……」
ヨウさんは少し困ったような素振りを見せてから、自分が何を考えていたのかを話してくれました。
「なんでピカチュウは博士のところを飛び出したのかなって思ってさ」
「なんで、ですか?」
「ピカチュウってピチューの頃から臆病で人見知りな性格だったからさ、一人で外に出るなんて想像できないんだよな。」
「そう言われれば確かにそうだよねー。何か目的があるのかなー?」
ヨウさんはハウさんのその言葉に「目的……」と呟いて顎に手を当てて考え込みます。
暫くすると何か思いついたかのようにハッと正面を見て、駆け出し始めました。
「ヨウさん!どこへ行くんですか!?」
「悪い!少し思いついたことがあるから、俺は俺でピカチュウを探すよ!」
ヨウさんはそう言って、私とハウさんの元から立ち去り森の奥へと姿を消していきました。
「どうしたんでしょう、ヨウさん。」
「どうしたんだろうねー。でも、ヨウのことだからなにか考えがあるんだと思うよー。」
「ハウさん、ヨウさんの事、信頼しているんですね。」
「まぁねー!これでも結構付き合い長いからねー。」
ハウさんはいつものように満面の笑みを浮かべながらそう言いました。私もハウさんみたいに、ヨウさんの事を信じて別行動でピカチュウさんの事を探すことにしました。
「はぁ……はぁ……ここまでくれば大丈夫か?」
リーリエ、ハウと別れた俺は肩で息をしながら呼吸を整えていた。さすがにいきなり走ると疲れるな。
「おーい!ピカチュウ!いるんだろ?いたら出てきてくれないか!?}
俺は森の中、一人大声を出して姿の見えないピカチュウに呼びかける。本当にこの場にピカチュウがいるという保証はないが、俺の想像が正しければ恐らくピカチュウはこの場にいる。
俺が大声で呼びかけたその時、近くの茂みが揺れ動いた。俺はピカチュウか、と思いその茂みに近付く。しかしそこから飛び出してきたのは……。
『アリアッ!』
「しまった!アリアドスか!?」
揺れた茂みから現れたのはピカチュウではなく、野生のアリアドスであった。アリアドスは自分から人間を襲う事はないが、自分の縄張りに入った相手には容赦なく襲い掛かるポケモンだ。
「くっ、仕方ない、ここはニャヒートで!」
『アッド!』
「なっ!?しまった!」
俺は仕方なくニャヒートで応戦しようとしたが、アリアドスは危険を察知したのか俺の持ったニャヒートのモンスターボールを口から吐き出した糸で取り上げた。
『アリアッ!』
「くっ、ま、マズイッ!?」
『ピッカァ!』
アリアドスに襲われそうになった俺は咄嗟に腕で顔を守るようにして眼を瞑る。しかしその時、突然目の前が光り輝き俺は驚いて目を開ける。
するとそこには電撃で痺れ体が茶色に焦げていたアリアドスの姿があった。アリアドスは突然の電撃に参り、その場を焦って立ち去った。この電撃には俺も身に覚えがあった。
「ピカチュウ?もしかしてピカチュウか?」
『ピカッ!?』
俺は急いでピカチュウの名前を呼ぶ。すると俺の声に反応して上ずった声をあげる。間違いなくピカチュウの声だと思い、俺は声がした自分の後ろへと振り向く。
そこにいたのは紛れもなく以前まで俺と行動を共にしていたピカチュウの姿であった。俺に姿を見られたピカチュは焦って周りに隠れられそうな場所がないかを探し始める。俺はそんなピカチュウにゆっくり近づいて声をかけた。
「ピカチュウ、もしかしてお前、俺を探しに来たんじゃないか?」
『ピカッ!?』
恐らくピカチュウは俺を探しに来たのだと俺は思った。だからこそ臆病なピカチュウは1人で博士の元を飛び出したのではないかと予想した。
だが何度も言うがピカチュウは臆病な性格だ。そんなピカチュウが人前にすぐに出られるはずもなく、俺以外の人間、リーリエとハウ、それからククイ博士の声に驚いたあの場を立ち去ってしまったのだろう。だからこそ俺はリーリエたちの元を離れ、一人になれば姿を見せてくれるのではないかと思ったのだ。
「俺が危ないと思って助けてくれたんだろ?ありがとな、ピカチュウ。」
『ピッ!?』
俺はピカチュウの頭を撫でてあげようと手を伸ばすと、ピカチュウはその場から走り出して逃げてしまった。俺はまだちゃんとお礼を出来ていないと思っているので、先ほどアリアドスに取られてしまったニャヒートのモンスターボールを回収し、急いでピカチュウを追いかける。
「くそっ!?ピカチュウ!待ってくれ!」
先ほどもハウたちの元から離れた時に走った影響で俺も既に体力が少なくなっている状態だ。俺は息も絶え絶えになりながらもピカチュウの姿を見失わないように追いかけ続ける。
ピカチュウを追いかけていると、森の奥から光が見えてくる。俺はそこへと駆け込むと、森の出口へと辿り着いた。しかし、そこは俺にとって見覚えのある場所であった。
「あれ?ここは?」
多くのピカチュウが遊んでいる姿があり、奥にはピカチュウを模したトレーラーがあった。こんな特徴的な場所を忘れるわけがない。ここは間違いなく先日立ち寄ったピカチュウの谷だ。
「おや、君はヨウ君じゃないか」
「あっ、お、おじさん!こ、こんにちは!」
俺の挨拶にピカチュウ好きのおじさんもこんにちは、と挨拶を返してくる。そんなおじさんは、俺にあるポケモンを差し出してきた。
「君の探し物は、この子だろう?」
『ピカァ……』
「ピカチュウ!?」
そのポケモンは紛れもなく俺が追いかけていたピカチュウであった。どうやらここに迷い込んだピカチュウをすぐに捕まえてくれていたようだ。
「でも、どうしてそのピカチュウだと分かったんですか?」
俺に疑問は最もだと思う。以前俺がこの人に会った時にはまだピチューのままだった。知らない間に進化していたピカチュウが何故以前会ったピチューだと思ったのかが不思議だった。
「はっはっは!私が一度会ったピカチュウを間違えるはずないさ!」
「…………」
俺は何故かその言葉で納得してしまった。この人なら理屈無しでピカチュウの違いを見分けてしまえそうな気がしたのだ。
男性はピカチュウを俺の目の前へと優しく離した。俺は未だ俯いて顔を見てくれないピカチュウに対して屈み話しかけてみる。
「なぁ、ピカチュウ。どうして俺から逃げたんだ?」
『ピカッ……』
「俺のこと、まだ怖いか?」
『ピカッ!?ピカチュピカチュ!』
俺の問いにピカチュウは慌てて全力で首を横に振る。ならばどうしてかともう一度尋ねても、ピカチュウは顔を赤くして再び俯いてしまう。
『ピッカ!ピカピカチュウ!』
「むっ?どうしたんだい、ピカチュウ」
そこに男性のパートナーでもあるメスのピカチュウがやってくる。男性はピカチュウの言葉にふむふむ、と頷いている。
『ピカッ!ピカピピカッ!ピカチュッピッピカ!』
「なんと!?そう言うことだったのか!」
「ピカチュウはなんて?」
「ヨウ君、このピカチュウは厳密には君のピカチュウではないみたいだね。」
「えっ?は、はい、そうですけど。」
「どうやらこのピカチュウ君は、君と一緒に旅をしたいと考えているようだ。」
「え?そ、そうなのか?ピカチュウ」
俺の言葉にピカチュウは暫く間を開けて頷いた。まさか俺と旅がしたいという理由で飛び出したとは思わなかった。これもピカチュウなりの勇気という事だろうか。
それにしてもこの人違和感なくピカチュウと話してたけど、いったい何者なのだろうか。
「でも、本当に俺でいいのか?」
『ピッカチュ!ピカチュ!』
ピカチュウは今度は首を縦に振り肯定の意思を見せる。ピカチュウから俺を選んでくれるなんて、これ以上に嬉しいことはないな。
「よし!それじゃあ早速……」
「おーい!」
「あっ、この声は」
俺が声のした方へと振り向く。するとそこにはククイ博士に加え、リーリエとハウも一緒にこっちへと走ってきていた。
「ヨウ、ピカチュウは見つかったかい?」
「はい、ピカチュウならここに」
博士たちの登場に驚いたのか、俺の後ろにサッと隠れたピカチュウの姿をチラリと見せる。その姿を見た博士はホッとした表情を浮かべるの同時に、俺に微笑みながら声を掛けてきた。
「どうやらこのピカチュウは君によく懐いているみたいだね。」
「はい、博士。それで博士にお願いがあるんですけど……。」
「ああ、分かってるよ。そのピカチュウは君に預けよう。その方がピカチュウのためにもなるだろうしね。」
「いいんですか?そんな簡単に決めてしまって。」
「なに、いいんだよ。なによりこのピカチュウが心を開いているのはボクよりもヨウ、君なんだ。君と一緒にいる方がこのピカチュウにとっても幸せだろう。」
ククイ博士の心遣いに俺は感謝し、博士からピカチュウのモンスターボールを受け取る。俺はそのモンスターボールを構え、ピカチュウの目の前で屈んだ。
「ピカチュウ、これからよろしくな!」
『ピカッ、ピカチュウ!』
ピカチュウは静かにモンスターボールの先端をタッチする。するとピカチュウはモンスターボールの中へと吸い込まれていき、ピコンッと音が鳴り正式にヨウのポケモンとしてゲットされた。
「ピカチュウ、ゲットだぜ」
「おめでとうございます!ヨウさん!」
「おめでとー!ヨウ!」
「リーリエ、ハウ、二人ともありがとうな!」
俺はピカチュウのゲットを祝福してくれた二人に感謝の言葉を伝える。ピカチュウ、改めてよろしくな。
俺のそんな気持ちを感じ取ったのか、ピカチュウのモンスターボールは頷くように縦に揺れるのだった。
「いやー、子どもとピカチュウの成長を見るのは実にいいものですなぁ!」
「あなたは?」
「なに、私はただのピカチュウ好きのおじさんですよ。」
「そうでしたか。ヨウがお世話になったみたいで。」
「いやいや、ただ私はピカチュウが好きなだけで、なにもしていませんよ。全て彼の力です。」
「ははは、そうですか。」
「ヨウ君、ピカチュウ君、これからも仲良く過ごしたまえよ。」
新しい仲間、ピカチュウを自分のポケモンとしてゲットしたヨウ。これから先、彼らはどのように成長していくのだろうか。それを楽しみにしながら、二人の大人は子供たちの姿を眺めて微笑んでいた。
当初の予定ではピカチュウのゲットはなかったのですが気付けばこんな話を書いていた。後悔も反省もしていない。