ポケットモンスターサンムーン~ifストーリー~《本編完結》 作:ブイズ使い
海繋ぎの洞穴でウルトラ調査隊と名乗るダルスさん、アマモさんと再会した私は、島巡りを再開し次なる目的地となるリリィタウンへと向かっていました。
『あっ!見えてきたロ!』
道の先に見えてきた村をロトム図鑑さんが指し示します。間違いなくミヅキさんの大試練が待つ場所、リリィタウンです。遂に最初の試練の時がやってきて私も緊張してきました。
「あっ!リーリエー!こっちこっちー!」
「ミヅキさん!」
リリィタウンの中央にある舞台で私の姿を見つけたミヅキさんが手を振り呼びかけてきます。私もその声に答え小走りでミヅキさんの元へと駆け寄ります。
舞台の上には旅立つ前に見たようにハウさんとヨウさんの姿もありました。
「よ、リーリエ、遅かったな。」
「おれとヨウはもう大試練終わらせたよー」
「えっ?そうなんですか?随分と早いですね。」
既に大試練は終わったと告げる二人ですが、冷静になって考えてみれば私はカーラエ湾に寄り道してゆっくりしすぎていたのかもしれません。
「いやー、2人とも予想以上に強くなってたよ。本気じゃないとはいえまさか負けるなんて思わなかったなー。」
「いや、お前結構ガチになってたじゃん。」
「そ、そんなことないよ!」
「ホントー?」
「ホントだよ!?」
ミヅキさんとハウさん、ヨウさんが言い争っています。喧嘩ではないというのはなんとなく分かりますが、シンジさんと空気が違いすぎるため少し困惑してしまいます。
「あっ、ごめんねリーリエ。これいつものヤツだから。」
「そ、そうなんですか。」
「そーそー。ミヅキが弄られてヨウが弄り役。あっ、おれは勿論ツッコミ役ねー」
「えっ?」「えっ?」
ヨウさんとミヅキさんの方から呟きの声が聞こえます。私には少しついて行けないのでここは申し訳ありませんが強引に話を進めさせていただきます
「と、ところでミヅキさん、私も大試練受けさせていただいてもいいですか?」
「もちろんもちろん!大試練用にポケモンも複数用意してるから連戦でも全然問題ないよー!」
ミヅキさんは私の問いに快く承諾してくれて、私は改めてミヅキさんにお礼を言いました。ミヅキさんは『お礼を言うのは私を倒してからにしてほしいかな?』と言い、その瞬間にいつもの明るいミヅキさんから、しまクイーンとしての風格と言うか雰囲気を肌で感じました。当たり前ですが、気を引き締めて掛かる必要がありますね。
『リーリエ!バトルのアドバイスはできないロが、応援してるロ!がんばリーリエロ!』
私はロトム図鑑さんの声援を受け、大試練へと望むのでした。
私とミヅキさんは舞台の両サイドに立ち互いに準備が完了しました。ヨウさんとハウさんは勿論ですが、村の中央でもあるため他の人たちからの注目も浴びてしまってます。なんだかいつも以上に緊張しています。
「じゃあリーリエ、簡単にルールを説明するよ?」
「はい!よろしくお願いします!」
「ルールは至ってシンプル。使用ポケモンは2体、どちらかのポケモンが全て戦闘不能になったらバトル終了。他に面倒なルールは無しの真っ向勝負だよ!」
「分かりました!」
ミヅキさん曰く、大試練とは名ばかりで本人はチャレンジャーとの真剣勝負を楽しみたいのだそうです。シンプルと言えばシンプルですが、その分これはジム戦同様に明確な実力が試合の勝敗に影響が出ると言っても過言ではないでしょう。
「じゃあ私から、行くよ!ウインディ!」
『グルァア!』
大きな咆哮と共に登場したのはでんせつポケモンと言われるウインディさんです。でんせつポケモンは名ばかりでなく、素早い動きにより捉えるのは難しいポケモンさんです。
ウインディさんはほのおタイプを持つポケモンさんです。 でしたら私の一番手はこの子です!
「お願いします!マリルさん!」
『リルル!』
「みずタイプ、セオリー通りで来たね。でもそう簡単には行かないよ!」
『ガウッ!』
『リルッ!?』
ウインディさんが今一度短く咆哮しました。それと同時にマリルさんがひるむ様子を見せました。これは間違いなく……
「そっ、ウインディの特性“いかく”だよ。」
いかく。ブルーさんのグランブルさんも持っていた特性で、バトルに出た時に相手の攻撃力を下げる効果がある特性です。これでは相性の差が縮められてしまったかもしれませんね。
「じゃあ早速始めるよ?……ミヅキの大試練、乗り越えて見せて!」
ミヅキさんのその掛け声とともに大試練のゴングが鳴りました。そして最初に動き出したのはミヅキさんでした。
「ウインディ!まずは挨拶代わりのかえんほうしゃ!」
『ガウゥ!』
ウインディさんは初めほのおタイプ定番と言ってもいいかえんほうしゃで牽制攻撃を仕掛けてきました。流石に分かりやすい攻撃でしたので私はマリルさんに回避の指示を出しジャンプしてかえんほうしゃを避けました。
「ウインディ!しんそく!」
『グルァ!』
『リル!?』
避けた先にウインディさんが風を切るほどのスピードで駆け抜けマリルさんの突進してきました。その素早さに翻弄されてしまいマリルさんの体へと突き刺さります。
「マリルさん!」
『っ!リル!』
マリルさんはその攻撃を堪え切り再びウインディさんを見据えました。ウインディさんがしんそくを覚えているのであれば、最大限注意しなければなりません。
しんそくは素早さの序列に関係なく先制攻撃を仕掛ける技です。ただでさえ素早さが早いウインディさんにの放つしんそくを直撃してしまえばただでは済まないでしょう。これ以上直撃を受けるわけには行きません。
「もう一度かえんほうしゃ!」
『ガウッ!』
「躱しながら前進してください!」
『リル!』
しんそくで怯んだマリルさんに再びウインディさんはかえんほうしゃで畳みかけてきます。普通に避けただけではまた同じ目にあってしまうと思った私は、今度はウインディさんの元へと駆けるように指示を出しました。
マリルさんはウインディさんの攻撃を回避しそのまま走ります。近づけさせまいとウインディさんは連続でかえんほうしゃを放ちますが、マリルさんはその連続攻撃を躱し徐々に接近していきました。
「今です!アクアテール!」
『リル!』
『グルッ!?』
充分に距離を詰めたマリルは尻尾に水の渦を纏わせアクアテールをウインディ目掛けて振り下ろします。ウインディも防御の対応が間に合わずにアクアテールの直撃を浴びダメージを負ってしまいました。
「まだまだだよ!ウインディ!ワイルドボルト!」
『グルァ!』
「っ!?でんきタイプの技!?」
ウインディはアクアテールでのダメージを感じさせないかのように即座に態勢を立て直し、逆にダメージの反動を利用して加速しでんきタイプの技であるワイルドボルトを放ちました。
マリルはアクアテールの反動で反応が遅れるもワイルドボルトを僅かのところで回避しました。しかしその攻撃は僅かにマリルを掠めており、その威力による風圧で少なからずダメージがありました。とは言えでんきタイプの技であれほどの威力をまともに喰らっていれば戦闘不能になっていたのは間違いないでしょう。
「今よ!ウインディ!しんそく!」
『バウッ!』
チャンスだと踏んだミヅキさんとウインディさんはしんそくで決着をつけに来ました。ですがその技は私にとって逆に好機にもなり得る一手でもありました。
「マリルさん!ジャンプして躱してください!」
『リルル!』
マリルさんは私に指示に従い高くジャンプしてウインディさんの攻撃を回避しました。いくら見えない速度で攻撃してくるとは言え、事前にしんそくの存在を知っていて直線に来ると予想していれば避けること自体は難しくありません。
「ウインディ!かえんほうしゃ!」
『ガウッ!』
「マリルさん!バブルこうせんです!」
『リルゥ!』
ウインディさんは地上からのかえんほうしゃ、マリルさんは上空からのバブルこうせんで対抗しました。ウインディさんのかえんほうしゃの方が明らかに威力は上ですが、相性の差も加味し威力はほぼ互角、フィールド中央で互いの攻撃が相殺されました。
「今です!アクアテール!」
『リル!』
「っ!?ウインディ!ワイルドボルト!」
『グルァ!』
かえんほうしゃとバブルこうせんが相殺され発生した蒸気を振り払う勢いでアクアテールを上空からウインディ目掛けて振り下ろします。ミヅキさんは目を見開きながらもウインディさんにワイルドボルトの指示を出しました。
ウインディさんのワイルドボルトがマリルさんのアクアテールと激突します。互いの攻撃がぶつかりあい火花が散り、次第にマリルさんがウインディさんを押し返しました。
そして互いの攻撃がぶつかりあったまま、重力に引かれ地面へと激突しました。その衝撃で発生した煙で二人の姿が見えなくなり、私たちは緊張から喉を鳴らします。
次第に煙が晴れてきて姿が見えてきた頃、そこには衝撃の光景がありました。
『リルル……』
『ガウ……』
「ありゃりゃ、2人とも戦闘不能だね。」
そこには私のマリルさん、そしてミヅキさんのウインディさんが同時に戦闘不能になっていました。恐らくダメージ蓄積で言えばマリルさんの方が上でしたが、上空からの攻撃、それからほのおタイプに対するみずタイプの技という点で打ち勝ったのでしょう。
最もウインディさんの技はでんきタイプであったためマリルさんも体力が限界を訪れて戦闘不能となってしまいましたが、最初のいかくを考えると不利だとも言えるこの戦いにこの結果は充分すぎる成果と言えるでしょう。
「お疲れ様です、マリルさん。ゆっくり休んでください。」
「よく頑張ったね、ウインディ。ありがとう。」
私とミヅキさんはそれぞれ頑張ってくれたポケモンさんたちを労いモンスターボールへと戻しました。そしてミヅキさんは私の方へと視線を向け口を開きました。
「やるねリーリエ。いかくの事も考えると寧ろ私の方が有利だと思ったのに!」
「マリルさんが頑張ってくれたからです!」
「フェローチェとの戦いでも思ってたけど、まさかこんなに成長して戻ってくるなんて、私嬉しいよ!」
ミヅキさんは感傷に浸りながらそう呟きました。ですがその後『でも』と言い言葉を続けモンスターボールを手にしました。
「私もしまクイーンとしてのプライドもあるからね。そう簡単に勝たせるわけには行かないよ!ライチュウ!お願い!」
『ライラーイ!』
ミヅキさんの最後のポケモンさんはアローラの姿をしたライチュウさんでした。ミヅキさんにとって相棒であるアシレーヌさんに並ぶパートナーです。間違いなく油断できない相手です。
「でしたら私も行きます!フシギソウさん!お願いします!」
『ソウ!』
「フシギソウ?てっきりシロンを出すのかと思ったよ。」
「私にとってシロンの次のパートナーはフシギソウさんでした。この場には相応しいかと思います。」
「あはは、確かにね。でも遠慮はしないからね!」
「もちろんです!全力で行きます!」
『ライライ!』
『ソウソウ!』
その掛け声と同時にライチュウさんは自分の尻尾をサーフボードのように乗り空中を泳ぐように突進してきました。
アローラの姿をしたライチュウさんはでんきタイプだけでなくエスパータイプも所持しています。ロトム図鑑さん曰く、あれは自身のサイコパワーで浮いているのだそうです。
「ライチュウ!エレキボール!」
『ラーイ!』
ライチュウさんは自分の尻尾をバネにして高くジャンプし、そのまま尻尾に電気のエネルギーを溜め、球体のエネルギー弾を放ちました。
「フシギソウさん!エナジーボールです!」
『ソウッ!』
フシギソウさんはエレキボールに対しエナジーボールで正面から対抗しました。エレキボールと共にエナジーボールのエネルギーが爆発し互いの攻撃が相殺されました。
「アイアンテール!」
「つるのムチです!」
ライチュウさんがアイアンテールで煙を晴らしアイアンテールを振り下ろしてきました。私もよく利用する戦術であるためその行動を先読みし、つるのムチで受ける止める態勢に入っていました。
フシギソウさんはつるのムチを眼前でクロスさせ、ライチュウさんのアイアンテールを防ぎました。とは言え攻撃力ではあちらが上、このまま受け続けてしまえば間違いなく押し切られてしまいます。
「フシギソウさん!」
『ソウ!』
フシギソウさんは私の考えが理解できたようで私の声に頷きました。するとすぐさま片方のつるのムチを一瞬だけ離し、即座にライチュウさんの頬を叩き振り払いました。
上手くライチュウさんを引き剥がすことに成功し先に優勢をとることができました。ですがミヅキさんのライチュウさんはそう簡単に優位を渡してくれる相手ではありませんでした。
「ライチュウ!そのまま10まんボルト!」
『ラッイィ!』
ライチュウさんは飛ばされた状態のまま10まんボルトを放ちました。まさかあの状態から10まんボルトを撃てるとは思わず、フシギソウさんは無防備な状態で10まんボルトの直撃を受けてしまいました。
「フシギソウさん!」
『っ!?ソウ!』
フシギソウさんはなんとか持ちこたえました。威力が高くともくさタイプのフシギソウさんにでんきタイプの10まんボルトは効果は薄いです。耐えることは難しくありません。
対するライチュウさんはというと、地面に接触して余計なダメージを負ってしまう前に再び尻尾をサーフボード代わりにして受け身をとり空中へと浮かび上がりました。これは一筋縄ではいきませんね。
「ライチュウ!サイコショック!」
『ライライ!』
今度はライチュウさんのサイコショックです。ライチュウさんの周りには具現化したサイコパワーが浮かんでおり、ライチュウさんの合図とともにフシギソウさんを襲ってきます。
どくタイプを持つフシギソウさんがこの攻撃を受けてしまえばさすがにマズいです。
「フシギソウさん!走ってください!」
『ソウ!』
フシギソウさんのスピードを活かして走ることでサイコショックをやり過ごそうとしました。しかしそこで私の予想を超える出来事が起きました。
「そう簡単に逃がさないよ!」
サイコショックが地面に当たると思った瞬間、サイコショックが地面スレスレで曲がりフシギソウさんを追尾してきたのです。
「っ!?そんなっ!」
『ソウ!?』
まさかの現象に私とフシギソウさんは驚き口を開きます。ライチュウさんの強いサイコパワーでサイコショックを自由自在に操っているようです。これは相当鍛えてなければできない芸当です。このままではいずれサイコショックに追いつかれやられてしまいます。
「今だよライチュウ!」
『ライラーイ!』
そんなフシギソウさんを追い込むようにライチュウさんは正面から突っ込んできて迎撃の態勢に入ります。
「10まんボルト!」
『ラァイ!』
ライチュウさんは正面から10まんボルトを放ちました。背後にはサイコショック、逃げ道はありません。
横に回避しようにも前方に走りながら横に移動するのは難しいです。これはいよいよピンチです。
(正面も背後もダメ、横に避けるのも難しい。どうすれば……)
私はこの一瞬の内に頭をフル回転させます。なにか必ず穴があるはずです。
(……っ!?いえ、これはピンチではなく、逆にチャンスかもしれません!試してみる価値はあると思います!)
そう思い私はある作戦を決行する決意をします。正直成功する確率は低いかもしれませんが、それでも私はフシギソウさんを信じています。
「フシギソウさん!」
『ソウッ!?……ソウ!』
フシギソウさんは最初は驚いた様子で私の声に答えましたが、私の顔を一瞬だけ振り返ると頷いて返してくれました。
「あの顔……ホントシンジ君そっくりだよね。一体この状況で何を見せてくれるのかな!?」
「フシギソウさん!つるのムチです!地面にぶつけてください!」
『ソウ!』
サイコショックと10まんボルトを十分に引き付け、フシギソウさんはサイドのつるのムチを地面に叩きつけました。それと同時にフシギソウさんの体が宙に浮きました。
そしてフシギソウさんの下で10まんボルトとサイコショックが激突しました。一瞬フシギソウさんもその攻撃に巻き込まれたかのように思えましたが、すぐにそうではないのだというのが分かりました。
「なっ!?そんな!?」
『ライッ!?』
その時、フシギソウさんは10まんボルトとサイコショックを間一髪で回避し、背後で衝突した技同士の衝撃で空高く飛び上がったのです。これが最大のチャンスとなりました。
「これで決めます!フシギソウさん!つるのムチです!」
『ソォウ!』
フシギソウさんは空中で更に回転を加えつるのムチをライチュウさんを上から叩きつけました。ライチュウさんは予想外の出来事に反応することができず、その攻撃を直撃してしまいました。
叩きつけられた衝撃は大きく、ライチュウさんとフシギソウさんの姿が見えなくなるほどのものでした。そしてその衝撃が晴れてくると……。
「っ!?ライチュウ!」
『らい……らい……』
そこには目を回し、戦闘不能となっているライチュウさんの姿がありました。その瞬間、私の最初の大試練は終わりを告げました。
なんか私はアイアンテールが好きなのかよく出てくる気がします。だっていろんなポケモンが覚えるからバトル組みやすくなるんだもん……。
実はウインディはカツラ戦でマリルと戦ってます。当時は負けていたのでこれは成長です(書いた後で思い出したとか口が裂けても言えない)
アンケートは1ヶ月分(4話ぐらい)続けて行おうかと思います。結果もその時公表するので気楽に投票してくだしあ。
そういえば本編だけで遂に100話を超えたぞ!やったね!たえちゃん!
リーリエの最後のポケモンは?
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べベノム(アーゴヨン)
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やっぱりあのポケモン
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おまはんに任せる