Full Bloom 〜満開の歌声を〜 作:grasshopper
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「こんにちわ、私は櫻井 春。高2の17歳だよ。
自己紹介っていわれても、特にいう事ないなあ。
因みに、私、バンドやってるんだけどね。
それがすっごい人気なんだよねー。
ネットで曲をあげたら、一気に再生回数が増えて、
あっという間に全国の若者の人気者になってたんだ。
あ、バンド名は《Full Bloom》だよ。
よかったら、応援よろしくね!」
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バンド:Full Bloom
パート:ベース&ボーカル
学校:花咲川学園
学年:高校2年生
誕生日:4月9日
星座:牡羊座
好きな食べ物:うどん、そば、ホットケーキ、エクレア
嫌いな食べ物:ニンニク
趣味:ゲーム!!!、マンガ!!!、ラノベ!!!
自己紹介:典型的なヲタク。ゲームして、食って、寝るのを繰り返す残念系女子。なのにスタイルは良くて、美人。ほとんど家に篭ってるので、肌も白くて綺麗。ことゲームにおいては燐子よりも実力を上回る(God knows…のexpertを初見フルコンでオールパーフェクトいけるくらい)。記憶力がいい。だけど運動は残念。ビリヤードくらいしかできない。
☆文化祭3日前
side優人
「ねえ、マジでこれ着なきゃいけないの?」
「うん、頑張って!」
春にそう言われて渡されたのはタキシード。文化祭で俺たちのクラスは執事喫茶をやる。
作った衣装は中々の出来栄えだが、これを着るとどうなるかわかっている。だが、腹をくくるしかない。冬夜も諦めて試着中だ。俺はカーテンに隠れて着替え始める。着替えながら、冬夜に話しかける。
「なあ、俺、だいたいオチ見えたんだけど」
「優人はまだましな方だろ。俺なんかは絶対に…………ハァ」
俺達は着替え終わってカーテンから出る。お互いに容姿を見ると、
「これは……」
冬夜が呟く。
「ああ、確定だ……」
俺も呟く。
「「これ、執事じゃなくてホストだろ!!」」
そう、至ってシンプルなタキシードを渡されて着崩さずに着たつもりだが、無理だった。
やはり現役男子高校生がタキシードを着てもチャラくなり下っ端のホスト感が溢れ出てくる。
「優人、お前はまだマシだろ」
「まあ、お前に比べたらな」
そう、冬夜の見た目はチャラい。よく遊んでる?ときかれるそうだ。よくわかる。金髪だから仕方がないがな。しかし冬夜の性格は、真面目な小心者なのだ。
つまり、ナンパできる程の度胸を持ち合わせてないチキンなのだ!(←ブーメラン)
「冬夜、なんかそれっぽい事言ってみろよ」
「えぇー、やだ!」
「俺もやるからさ」
「うぅー。…………わーったよ。やるよ」
「はーい!みんなちゅうもーーーく!漣 冬夜君がいまからホストのマネをするそうでーーす!」
一気にクラス内の視線が集まる。イェーーイ。これだから冬夜をいじるのはやめられないぜ!
…………はぁ、ホント俺ってクズだなぁ。だけどな、もう、後には引けないんだ。だから、すまん冬夜。最高のホストを期待してるぜ!
「えっ!ちょっ!おい!優人!この野ーー」
「ハイ!相手役、影村頼む!それと冬夜、無理ならホストが無理なら、ナルシストでいいからな!」
クラスメイトの女子の影村にホストに来た女性という程でやってもらう。なんで、まんざらでもない表情してんだよ、影村。嬉しそうですね。
「カウントダウンいくぞ!3!2!1!」
「え、えーっと。……………………ホント、君って魅力的だね。男子とか放っておかないんじゃないの?」
「え、いやいや、そんな事ないです!///」
「へぇ、そうなんだ。なら、今はフリーなの?」
「は、はい///」
「なら、
俺の物になれよ」
ドサドサドサドサドサッ!!
女子が20人ほど倒れてやんのww。影村に至っては「私を襲って」とか言ってるよ。残念ながらRー18タグを付ける気はないから、その頭の中の妄想は捨てましょうね。
つーか、冬夜の奴、茹でタコみたに真っ赤になってら。
「冬夜、今の心境は?」
「死にたい死にたい死にたい!!///」
「面白かったから、安心しろ……ププッ」
おっと、思わず笑いが漏れてしまった。
「イラッ…………ほら、次は優人だろ。早くやーー」
「春ー。伊達メガネってあるか?」
冬夜の言葉を遮る。理由はみんなもわかってるよな!
「あるよー」
春は俺に眼鏡を渡す。
「サンキュ」
「いいって、これがないとホントにホストになっちゃうもんね」
「おい!優人!春ちゃんも会話を続けないで!」
「ほら、冬夜もつけろよ」
「もぉいいよう」
冬夜はキャラ変した。「もぉ」って言っちゃうあたりが気持ち悪ぃぃぃぃーー!!
ンンッ!話を変えよう。
「まあ俺はほとんどシフトないからいいんだけどな」
俺は通常のライブがあるし、後夜祭でもライブをするから忙しい。
「ほんと、こればっかりは変わってほしいよ」
涙を浮かべてガチトーンで嫌がる冬夜。
すまんな。俺のために犠牲になってくれ。
……「犠牲になってくれ」ってよく言うな俺。
「あ、そろそろ陸がくる時間だな。じゃあ、俺はこれで」
「ああ、陸によろしく」
「春〜。……て、あいつは?」
「もう行ったよ」
「早いな。待ってくれてもいいと思うんだが」
俺は急いで着替えて、校門に向かう。
なぜ今日、この学校に陸がくるかというと、ステージを見るためだ。
ドラムを他のバンドと共有で使うため、陸は試運転的なノリで軽く演奏したいらしい。
毎年同じドラムたがら、一緒だろぉ?
「よお陸」
「あ、やあ優人。なんだか疲れてるみたいだけど、大丈夫?」
大丈夫じゃないです。
自分がホストのチャラ男になったと思うと、どんどんメンタルが蝕まれていく感覚です。
「文化祭の準備が忙しいだけだ」
「そっか。ならいいんだけど。ライブ当日に体調崩すなよ」
「心配すんなって」
もう、殆ど体調崩してるのと同じ状態だからね。
「さっきから私、空気な気がするよ」
春が言った。いーじゃねーか。おれをおいてったくせによー。
「スマンスマン」
俺は軽く謝る。そして言葉を続ける。
「んじゃ、そろそろ行こーぜ」
体育館に到着すると、香澄達がいた。なんか、ドラムギターとか言う謎の単語が聞こえた。
て言うか、両方やる以前にギター自体弾けるのだろうか。
「あ!優人先輩!春先輩!陸先輩!」
うげぇ。見つかった。
「うへぇ。見つかった」
「「優人、声に出てるよ」」
おおっと。いかんいかん。思ったことがつい口から出てしまった。スマン香澄、悪気はない。まあ、聞こえてないだろうけど。
気をとりなおして。
「お前らもステージの下見か?」
「はい!」
「返事もいちいち元気なのね……」
後ろに(呆れ)はつけないことにしておこう。
「先輩達もですか?」
牛込がきいてくる。ああ、まともな子だ。一家に一台欲しくなるね。
「ああ、僕がドラムを軽く叩きに来たんだ」
「じゃあ、曲を弾くんですか?」
おたえが食いついてきたな。うん、予想してた。一家に入らないね!
「うん。そのつもりだけど」
春が答えた。多分、こいつら聴きたいとか言うんだろうな。
「「聴かせてください!」」
香澄とおたえって息ピッタリだな。なんか感心。波長ってやつが全く同じなのね。。。もはや、生き別れの双子!?なわけねーよな。
「まあ勝手に聴くのは構わないけど」
「やったーー!!」
「香澄うるせぇー!」
はい、ナイスツッコミ市ヶ谷。一家に一台欲しいな。一人暮らしだから、こんなツッコミが欲しいよ。……まあ、ホントのところはいらないけど。(上げて落としてくスタイルは優人君の自称専売特許だそーです)
「市ヶ谷ってそんなキャラだったんだ。なんかイメージと違ったなぁ」
あまり香澄達と交流のない陸が言った。
「な、何の事ですか?桃月先輩?」
「いや、もう遅いだろ」
ツッコんでしまう。まあ、そんなキャラ変は無理がありすぎたからな。
「……」
市ヶ谷は諦めた。
ここで「市ヶ谷ドンマイ」とか言ったら、どれだけ面白い反応をするか。あ、これフラグだな。次の瞬間誰かが……。
「ドンマイ有咲」
流石おたえ。市ヶ谷の事わかってるなー。
市ヶ谷は起こり始める。顔が凄く赤いな。そこまで猫を被る必要がわからぬ。香澄や牛込はそれを見て笑っている。
「そろそろ演奏しない?」
あ……。
「すっかり忘れてた」
「うん、だと思った」
春さん、冷静ですね。その冷静さを分けておくれよ。いや、《冷静》の《静》だけ渡しそうだな。そしたら俺がずっと黙っているスタイル。ありえねーよな、そんなの!喋ってこそ俺だ。そうでないと俺が俺じゃなくなっちまう。。。
俺達はステージに上がる。結構物見客が多いな。たかが練習だぜ。そんなに聞きたいんなら。んー。どーしよっかなー。これが焦らしプレイか。
そんな事はさておき、演奏を始める。
演奏中、俺はさっきの事の続きを考えていた。
《冷静》についてだ。自分で言うのもあれだけど、意外かもしれないが、俺はどちらかと言うと冷静かもしれない。
それで、少し驚くと思うが、逆に春はそんな冷静なタイプじゃねーけどな。俺の暴走抑止軍特別隊隊長ってだけだ。……肩書きながすぎ。因みに総司令官が陸な。
それに俺もホントはこんなにバカな発言をするキャラじゃないんだよな。
俺は無理してキャラ作ってるだけなんだよなぁ。
☆文化祭2日前
side陸
今日も練習がある。でも僕はその前に楽器店によっていた。
なんていうか、周りに楽器があるだけで創作意欲とか湧いてくるんだよな。
「集え少女よ!大志を抱け!フゥーーー!!」
…………ひなこ先輩。
何やってるんですか。また、リィ先輩に怒られますよ。
「抱けーーーー!」
新たな声。
香澄ちゃん…………。
君も何をやっているんだ。
「お店に迷惑だーーーー!!」
なんですかそれ!?理不尽とはこういうものなんだね。
「キラキラ星の香澄ちゃん!花園ミステリアスたえちゃん!蔵弁慶の有咲ちゃん!そして、マイシスターりみちゃん!」
静かになる様子がない。僕はその場に向かい、止めようとする。
「ひなこ先輩、僕からも、静かにしてください」
「「「「先輩!」」」」
後輩4人綺麗にそろったね。
「あ!ボクっ娘ドラマーの陸君!」
なんですかそれ。僕は女子でもオネエでもないですよ。
「その紹介文は酷くないですか……」
「可愛い少女達はぜーんぶ、ひなちゃんワールドにごしょうたーーい!」
あくまで僕は女子ですか。確かに女顔とはよく言われますけど、そんなにもど直球は酷いですよ……。
「ウルセェ!仕事中だ!」
リィ先輩がキレたよ。ありがとうございます。これでこの謎の空気から解放されるよ。…………まあ、僕から絡みに行ったんだけど。
だけど先輩の勢いは止まらなかった。有咲ちゃんのツインテールに顔を擦りつけるという最早どうする事も出来ない状況になる。
「先輩方!どちらかドラムやってくれませんか!?」
香澄ちゃん???
「はい、喜んで!」
ひなこ先輩も軽すぎるよ。
「んー、でも君達の近くにはひなこちゃんよりバッチリな子、いるぜー。ね、なっちゃん!」
「ひなこ先輩!それは……!」
僕がこの話題を止めようとするも、時、既に遅し。
「……沙綾のことですか?」
夏希ちゃんが答えちゃったよ。どうしようこれ。絶対に香澄ちゃんは沙綾ちゃんのこと誘うって。…………いや、待った。それはそれでいいことなのでは?この件に関しては僕ほとんど何も知らないからなあ。
とりあえず、優人にメールを送っておこうか。
☆文化祭前日
side沙綾
「沙綾。香澄が来てるぞー」
キッチンで母さんの手伝いをしていた私にバイト中の優人先輩がそう言った。
それにしても香澄が?どうしたんだろう?
私はお店の方のドアから出る。
「どうしたの?練習は?明日本番でしょ?」
「うん。するよ。するけど……」
香澄のにえきらない返事から察する。
「お腹空いた?」
「うーん。お腹も空いたかも?」
変だ。いつもの香澄はなんでもかんでもズバッと遠慮なく発言するのに。
「ん?香澄、変だよ」
すると、香澄は意を決した表情で。
「あのね……バンドのこと、聞いちゃった」
「えっ…………」
き、聞き間違いじゃないよね。
香澄は今、確かに「バンドのことを聞いた」と言った。誰に?誰から聞いたの?
「沙綾、ドラムーー」
「ストップ」
私は冷たく言い放つ。
「!!」
「部屋行こ」
side香澄
沙綾の部屋でなっちゃんから話を聞いたと話した。
「なっちゃん、心配してたよ。沙綾わ何も言ってくれないって。……今のままじゃやだなって。……私、沙綾がドラム叩いてるとこ見たい!やろ?沙綾!」
「他の人探してよ」
諦めない。
「沙綾がいい!新しい曲も一緒に……」
「無理だよ。練習してないし。迷惑かけるだけ」
「いいよ」
そんなの気にしないから。
「やだよ、もうバンドやるつもり無いから」
「なんで?」
この質問の答えはなっちゃん達も知らない。だから、理由さえ聞ければ。
「帰り遅くなるの嫌なんだ。純達寂しがるし、母さん無理しちゃうし」
「お母さん?」
「昔から体弱いんだ。なのに家の事全部やろうてして。私、あの時まで気づかなかった。純達すごい泣いてて、先輩やなつ達に迷惑かけた。これ以上、迷惑かけたく無い」
そんなのって、自分でそう思いこんでるだげだよ。
それに、
「私もいっぱい迷惑かけた!」
「別に迷惑だなんて…………」
私もーー
「迷惑だなんて思わない!」
私はベッドに腰掛ける沙綾の前まで行って、手を差し伸べる。
「一緒にやろ?お店忙しかったら手伝う!じゅんじゅん達と一緒に遊ぶ!宿題も見る!放課後ダメなら昼休みにやろ!」
これが私にできる事。だから、届いてーー
「無理だよ」
「無理じゃない!」
お願い!届いて!!
私は沙綾の手を握る。沙綾はこっちを見てくれない。
「ごめん」
その声は掠れていた。
沙綾は私の手をほどいた。
「どうして、……あんなに楽しそうだったのに………………………………バンド、嫌いになっちゃったの?」
すると、沙綾は私のその言葉に反応し、立ち上がった。
「そんなわけないじゃん!!」
side優人
俺は今、盗み聞きをしている。大丈夫変な事じゃない。ただ、バイト先の女の子の部屋を盗み聞きしてるだけだからな。……こういうと、変な意味になるな。
真面目な話、今、沙綾と香澄が話している。昨日、陸からメールが来た時に知ったのだが、香澄達は沙綾の過去を知ってしまった。そうして今、沙綾をバンドに引き込む為に説得に来ている。
しかし、
『そんなわけないじゃん!!』
部屋の中からの沙綾の声。聞き耳をたてなくても充分に聴こえる声量だった。
『香澄にはわかんない!ライブ滅茶苦茶にして、みんな気遣って、自分の事より私の事ばっか!なつも真結も文華もホントに楽しいの!?私だけ楽しんでいいの!いいわけ無いじゃん!!』
それは違う!3人ともお前とバンドが出来るから楽しかったんだ!お前、そんなこともわかんねぇのか!?
俺だったら、そう言うだろう。しかし今は香澄のターンだ。ここは任せよう。
『一緒にやっても練習に行けない!SPACEでライブしたいんでしょ!?そんなの私、足手まといになるだけじゃん!!』
なんで、そこまで苦しんでまで……。
『そしてみんなまた気遣う。大丈夫だよって。……大丈夫なわけないじゃん!楽しくできるわけない!てゆーか、どんな顔して出ればいいの!!』
違う!違う違う違う違う!沙綾、お前は考えすぎなんだよ!気遣ってるんじゃないんだよ!お前の事が仲間として大切だったから心配してくれたんじゃないか!!
『私の代わりに誰かが損をしてる。だからやめたのに……今更…………』
『………………できるよ』
『できない!!』
『できるよ!……なんでも1人で決めちゃうのズルい!ズルいズルい!!
…………一緒に……考えさせてよ………………!』
泣いてるのか?なんとなくだが、そんな雰囲気がする。
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!喧嘩しちゃダメ!みんな仲良くしなきゃダメ〜!」
「あ!こら!紗南!!」
沙綾の妹の紗南が勝手にドアを開けた。ていうか、俺も存在に気づいてなかった。
「喧嘩じゃないって!な!そうだよな!香澄!」
俺は紗南の頭を撫でながら香澄に話を振った。こいつらから喧嘩じゃないと言わせなきゃ意味が無いから。
「そうだよ、喧嘩じゃないよ」
香澄は涙を拭い、
「泣いた振り〜」
「ホント?」
「元気。元気〜!ほ〜ら、ヨシヨシ」
話は結果的にここで終わりになった。
とても話ができる状態ではなかった。
階段を降りると、
「お疲れ」
そこいは市ヶ谷、牛込、おたえの姿があった。
「なんで?」
「香澄が先に行っちゃったから」
香澄の問いに答えたのはおたえだった。
「声、下まで聴こえてたぞー」
「純くん、怖くてお店の方に行っちゃった」
市ヶ谷とりみが続けて言う。このまま話し合いをするのだろうか。
「さて、帰るか」
市ヶ谷が何の躊躇もなく言う。それもそうだ。こんな状況で話し合いは切り出すまい。
「まあ、ライブはどうでもいいんだけど。知らない人よりは山吹さんの方が楽かな。私は」
そう言い残して出て行く市ヶ谷。
「私も沙綾ちゃんとできたら、すごく嬉しい」
次に牛込。
沙綾のスマホが鳴る。
「曲のデータ送った」
おたえも帰って行く。
「無理だってば」
沙綾の声。
「待ってる。…………待ってるから!」
答えたのは、香澄。
香澄も帰って行った。
俺もここは何か言っておこう。
「沙綾、俺、明日は朝から練習あるからさ、バイト来ないから」
「……はい」
「まあ、その、あれだ。お前も練習したくなったら、来いよ」
「…………」
これには答えてくれなかった。
俺は沙綾の家を出て香澄達を追いかけた。
「おーい!」
「先輩?」
香澄にはいつもの元気がなかった。
「沙綾をバンドに入れたいんだろ?」
香澄は声を出さずに首を動かし、頷く。
「なら、俺にできることは言ってくれ。何でもする」
「ありがとう……ございます」
そうして、香澄達とも別れ、俺は練習に向かった。
明日がいよいよ本番だ。
泣いても笑っても、これで全部決まる。
香澄の気持ちが届くか、届かないか。