Full Bloom 〜満開の歌声を〜   作:grasshopper

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1年前の話です!

基本的にside優人か、優人君が出てくるシーンでない限りギャグはないような、構成でやっていきたいのですが、今回はずっと真面目な優人君が見れるとおもいます。


8話

〜1年前〜

 

side沙綾

 

「マジヤバイ!どうしよう!」

 

「体熱い!」

 

「ちょっと!うちら緊張しすぎ!」

 

地元のお祭りのステージでライブをすることになった。出番は次で、メンバーは緊張している。

 

私も緊張していたが笑ってすませる。

 

「なつ、掛け声」

 

「あ!うん!……何言おう?」

 

「ちょっとステージ上がった時、大丈夫?」

 

「わかってるってば!」

 

「挨拶とばすなよ」

 

「その時は沙綾いるから!」

急に私に振ってきた。そんなの無理だよぉ。

 

「あ、そーだ!沙綾よろしく!」

 

「ええっ!?無理だってば!!」

 

「大丈夫だって!沙綾なら」

 

「ちょっと頼むよ〜」

 

私はなつに助けを求めた。

 

「任せなって!よし!!」

 

なつはそう言い、片手を差し出す。みんなはそれに応じて手に手を乗せる。最後に私も。

 

「それじゃあ、飛ばしたくぞー!!」

 

「「「オー!!」」」

 

 

その後、私たちはステージを見ている人たちの中に家族がいるか探した。

夏希、真結、文華は既に見つけた。

 

だけどーー。

 

私は自分の家族が観客の中にいないことに気づいた。

何かあったのかと心配になり、母さんに電話をかける。

 

数コール経った後に電話が繋がる。

 

「あ、もしもし。かあさ……」

 

しかし、私は言葉を止める。向こうから聴こえたのが母の声ではなく、弟と妹の泣き声だったから。

 

「純!母さんは!?」

 

しかし弟は泣いたままだ。

 

『純!それ貸せ!』

 

ふと、新たな声が聴こえた。

 

『沙綾、俺だ!』

 

「!優人先輩!母さんに何が……!」

 

『落ち着いて聞け。千紘さんが倒れた』

 

…………え?

やめてくださいよ。冗談キツイですよ先輩。

 

とは言えなかった。弟と妹の泣き声がと、優人先輩の声が事態の深刻さを伝えてきたから。

 

『沙綾、俺が病院に付き添うから、心配しなくてもいい!純と紗南も連れてくし、亘史さんにも連絡は入れた!だから気にせずライブしろよ!』

そう言って電話を切られた。

 

なつ達はこっちを見ていた。

 

「何かあったの?」

 

「母さんが……」

 

3人に今の電話の事を全て話した。

すると、

 

「早く行って!何してんの!」

 

「純達待ってるよ!」

 

「けど…………」

 

「ライブはいいから!」

 

私はそう言われてライブの衣装のまま、病院に向かった。

 

その道中、私はずっと泣いていた。

 

けど、病院に着くまでには泣き止んでいた。

 

いや、こらえたのかもしれない。

 

 

 

side優人

 

問題です!

 

正解は俺は今日は珍しく1人だ。(←問題を言わない謎のスタンス)

沙綾はお祭りでライブに行ってるし、亘史さんも今、出かけている。

亘史さんはあと20分くらいで戻ってきて、千紘さん達と一緒に沙綾のライブに行くらしい。おれも誘われたが、店番をしときます、と断った。

 

俺は一人暮らしの為、そういうのが羨ましい。

 

しかしーー。

 

 

 

ドサッ!

 

 

 

家の方から大きな音がする。

 

俺は急いで様子を見に行くと、俺の目に映ったのは泣き喚く子供2人と倒れた1人の女性。

 

「千紘さん!」

 

俺は駆け寄る。

 

「大丈夫ですか!?」

 

しかし意識がなかった。

 

すると、後方から電子的な音がする。千紘さんのスマホからだ。

しかし、いまはどうでもいい。俺は亘史さんに電話を入れて、俺が病院まで付き添うと言った。

電話が終わると、純が千紘さんのスマホを耳に当てて「お姉ちゃん、お姉ちゃん!」と言っていた。

沙綾か!

 

「純!それ貸せ!」

 

俺は無理矢理奪い取り、応答する。

 

「沙綾、俺だ!」

 

 

 

検査が終わったあとに気づいたのだが、沙綾からメールが来ていた。

シンプルに『病院に向かってます』と。

あいつ、ライブをすっぽかして来たんだな。

俺は病院の入り口で待っていた。

 

「沙綾、お前ライブは……」

 

しかし、沙綾は答えなかった。そして俺も答えはわかっていた。

 

「…………千紘さん、貧血だって。命に別状はないそうだ」

 

俺は追求しないことにした。俺には関係ないから。亘史さんか千紘さんが必ず何か言うだろう。

 

でも、もし二人が何も言わなかった時は俺が言ってやらなきゃならない。それは義務だと思うんだ。

 

「そう……ですか。…………ありがとうございます」

 

俺は千紘さんのいる場所を教えた。

 

 

 

side沙綾

 

家に帰ると、なつ達がいた。

ライブがどうなったか色々聞かせてもらった。

 

申し訳なかった。

 

心が痛かった。

 

自分のせいで迷惑をかけていると気付いた。

 

バンドをやめるべきだと悟った。

 

だって、私だけ楽しんでいいはずがないから。

 

 

 

数日後、私はバンドをぬけた。

理由は話さなかった。

 

家に帰ってその事を家族に話した。母さんは申し訳なさそうにしていた。

 

誰からも何も言われないので、私はお店の手伝いをする。

 

店番を優人先輩としていると、

 

「沙綾がバンドをやめる必要はなかったんじゃねーの?」

 

「え?」

突拍子の無い事を言い出したので、思わず間抜けな返事をしてしまう。

 

「だって、お前がやりたい事を我慢するなんて千紘さんはのぞんでないだろ」

 

「…………」

確かにそうだと思う。そして、その気持ちは自分1番わかってあげなきゃいけないはずだ。

 

「それに、お前もバンド続けたいんだろ」

 

「……はい」

正直な答えがでた。なんでこんなに素直に答えれたかはわからない。ただ、落ち着く。でも、次の瞬間には、

 

「なら、続ければいいんじゃないのか?」

この一言で私はもっと素直になった。だけど、先輩にあたるのは間違っている。だけど私は先輩に向かって、

 

「先輩に何がわかるんですかっ!」

思わず声を荒らげてしまった。

 

「何もわかんねーよ」

 

「そーですよね!だって、先輩は他人ですもんね!」

これは言ってはならない。だけど、全部吐き出したい。

 

「ああ、他人だな」

 

「なら、首を突っ込まないでください!先輩には関係ないんですから!!」

 

「確かに関係ないな。…………でも、俺は先輩だからな。ここでビシッと後輩の相談に乗ってやらなきゃな、と思ったんだよ」

 

「そんなこと頼んでないです!」

そう、先輩が勝手にやっていることなとだ。だから、もうやめてほしい。

 

「でも、話したい事があるんだろ?話して少しでも楽になりたいんだろ?」

 

「……」

先輩はわかってくれていた。理解した上で私を楽にするために、私を怒らせたのかもしれない。

 

「…………沙綾、お前はさ、ちゃんとメンバーに相談してやめたのか?自分で考えて自分で決めたんじゃないのか?」

 

「!!」

そうだ。なんでもかんでも一人で決めていた。

 

「それってさ、苦しくないか?1人で抱え込むって辛くないか」

 

「…………」

 

何も言えなかった。だって、全部本当だから。

 

「沙綾、一つ質問するから、正直に答えてくれ」

 

「はい」

 

「今、泣きたいか?」

この質問には驚いた。もっとバンド云々の質問だと思ったから。でも、この問いには、せめて、

 

「………………はい」

 

「もう泣いてるぞ」

 

「あれ、私、いつから」

 

私は質問に答えながら泣いていたようだ。

先輩はそっと私を抱き締めた。

そして囁いた。

 

「お前がどれだけ重いものを背負ってるかは俺にはわからない。でも、いつかそれを分け合える仲間に出会えるよ。………きっとな」

 

 

 

 

 




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次回も割とマトモな回です。

週一ペースで頑張りたい……。

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