Full Bloom 〜満開の歌声を〜   作:grasshopper

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この話は次の話に繋がるためなので大した意味ないですね。文化祭の《序章》みたいに思ってくれたら、幸いです!


5話 空色デイズ

side優人

 

退屈な授業を終わり、放課後。綺麗な夕焼けが見える。そんな時間に俺は後輩の少女2人と部室にいた。そんな風に言ったら、どこの恋愛小説だ!って言われそうだな。俺も言いたい。ただ、俺もこいつら2人も恋愛というものにまるで興味のない3人だった。

という訳で、部室で香澄とおたえにギターを教えている。といっても、

「おたえ、お前フツーにうまいじゃん。俺が教えれることはないよ」

俺が素直におたえを褒める。しかしおたえは謙虚に

「いえ、私なんかは全然です」

おたえのその言葉を聞いた香澄は、

「じゃあ、私はもっと全然だ〜」

香澄が死んだ声で言う。その目は明後日の方向を見ていた。と言うのはジョークです。香澄がそんな簡単に諦めるはずないもんね。

 

「まあ確かに今の香澄の状態じゃ、とても文化祭で演奏できるレベルじゃねーもんな」

ズバリ言ってやる。飴と鞭だな。つっても飴をやった覚えがないが。…………これってただのドSだわ。まあ、ドMよりはマシだよな!な!

 

「そういえば先輩も、もちろん出るんですよね。学園祭」

おたえがありえない質問を投げかける。

 

「何言ってんだ、おたえ。そんなの当たり前だろ?今、春が申請書出しに行ってるよ。一応あいつが部長だからな」

 

 

 

 

side春

今、私は生徒会室に来ていて、文化祭の申請書を提出しようとしていた。

しかし、七菜先輩はいなかったので、というか、1人しかいなかったのでその子に申請書を出している最中だ。

その男子はどうやら1年生らしい。見た目は焦げ茶っぽい髪をしていて、身長は平均くらいだろう。顔は俗に言う可愛い系というやつだけど、そんな見た目とは裏腹に、歳上の相手にはちゃんとした敬語で対応できる、いかにも真面目そうな後輩だった。

 

「はい、確かに」

その1年生君は書類に一通り目を通して、そう言った。

 

「ありがとう……えーっと、誰君?」

 

「1年の芽吹 健(めぶき たける)です。あなたは2年の櫻井 春先輩ですよね。有名だから知ってます」

芽吹っていう苗字珍しいなー。なんかかっこいい!

私はそう思いながら健君の持っていた書類を見ようとする。しかし、私の視線は書類から、彼の手へと代わった。

 

「私達ってそんなに有名なんだ……ま、いっか。私の事は気軽に春先輩でいいから。それと……いや、なんでもないよ。失礼しました」

 

私はそう言って生徒会室を後にした。

健君は???ていう顔をしてたね〜。

 

でも、多分だけど、健君はギターをやっている。それも、かなりの練習量だと思う。

でなければあんな手にはならない。

 

部室に戻ると、香澄とおたえの姿はなかった。

「あれ?2人は?もう帰ったよ。あいつらも、なんか学祭で忙しいみたいだし」

 

「そーなんだ。それよりさ」

私は健君の事を話すことにした。なぜなら、新メンバーが必要だからだ。

 

「ん?」

 

「この学校でギターを本格的にやってる人がいたら、どうする?勧誘する?」

 

「当たり前だろ。俺は歌うからあと1人はギターが欲しいよ。あと、キーボードも」

即答しなくていいから。

 

「じゃあ、勧誘行く?」

私がそう言うと、

「いたのか!?ギター弾けるやつ!?」

食いつかなくていいから。

 

「多分ね。しかも並み大抵の練習量じゃないよ」

 

「まじか!そいつ帰宅部か!?まあ、他の部活入ってても勧誘するけど!」

目を輝かせないでいいから。

 

「生徒会だよ。新しく入ったから、多分優人は知らないと思うな」

 

「生徒会か。…………よし、生徒会室に乗り込むぞ」

目をやる気に満ち溢れさせないでいいから。

あ、ホントに入れるつもりなんだ。

てゆーかさ、3回連続で『から』を使わせないでよ。

 

「七菜先輩も、会長やりながらバンドやってるから無理ではないだろ」

 

「そうだけど。今から行くの?」

これで今から行くって言ったらただの単細ぼ……。

 

「そーだよ。善は急げってな」

ただの単細胞でした。

 

「1人で行ってよ。私は自主練してるー」

 

「じゃあ、この曲のアレンジをしててくれよ。この曲、学祭演奏するときのセットリストにあるけど、この曲は春が歌うだろ?」

そう言って手渡された譜面はflumpoolの『君に届け』。文化祭では、オリジナルを4曲、カバーを2曲歌う予定だ。プラス、後夜祭で新曲とカバー曲を歌う。『君に届け』は後夜祭で歌う曲だ。因みにもう一つのカバー曲を歌うのは優人だ。

 

私達《Full Bloom》のボーカルは曲によって私と優人で分けている。たまにドラム無しで陸君がボーカルの曲も作る。

 

気がつけば優人はもういなかった。全く、優人はなんでそんなのなのかなぁ。

 

私は譜面とスマホ、そしてベースを取り出し、

「じゃあ、やろうかな」

 

しかし10分後。

「優人まだ来ないなぁー」

まあ、説得が難しいなら、このくらいかかってもおかしくないよね。もうしばらく待ってみよ。

 

30分後。

「ちょっと遅すぎないかな?何話してるんだろ?」

流石に30分は遅い。何か事故でもあったのかな?学校内だけど。。

 

1時間後。

優人は未だ、生徒会室から帰還していなかった。

何があったんだろう。最早、拉致された?優人は女子に人気あるからなぁ。毎日告白されてるらしいし。

 

その時私は最早アレンジする気力が残っていなかった。

 

「……………………帰ろう」

誰もいない部室で、1人、そう呟いた。

私は家で練習をしようと決め、帰路に向かう。

 

 

 

帰り道。

不意にスマホがなった。

すると、意外な人物からの電話だった。

「もしもし」

 

『あっ、春先輩ですか?少し相談があって今すぐ会えますか?』

相手は有咲だった。この子から連続きたの、何気に初めてだよ。

 

「いいけど。どうしたの?」

 

『バンド名を考えていたんですけど、少し悩んでて』

 

「そういうことならわかった。じゃあ私が蔵に向かうよ。今、近いし」

 

『ありがとうございます』

と言って有紗は電話を切った。冷たい。いや、これはツンデレか。

そんな、無駄な事に脳を働かせながら、蔵へ向かう。

 

 

「なるほどなるほど」

私は有紗に渡されたノートを眺めていた。

 

「どうですか?」

 

「どれも100点!」

私は舌をペロッと出し、ノートを持っていない左手で親指を立てた。

 

「バカにしてるんですか?」

もお、そんなに怒らないでよ。なんか、面白い事を言わないと気まずいから、優人の真似をしたのに……。

 

「んー。どれも有紗達らしくていいと思うけど。なんか、どれもバカっ……明るくて弾むような名前ばっかりだけど……」

バカっぽいとは言わない。と言うか、バカに当てはまるのは香澄とおたえだけでしょ。

 

「先輩達はなんで《Full Bloom》にしたんですか?」

有紗からの意外な質問。

私はその質問が来るのを待っていた。

「あ、聞きたい?何々興味ある?」

 

「…………はい」

有紗、興味ないって顔してるよ。

 

「まぁ、私達3人の苗字には『春』の漢字が使われてるからね。私は『櫻』で、優人は『咲く』、陸君は『桃』があるから。だから《満開》の意味する《Full Bloom》なんだ。これが1番の理由かな」

説明してみたかったんだよね、一回だけでも。

そのくせごめん、説明雑だね。かと言って、直す気はさらさらないけど。

 

「じゃあ、もうメンバーは増えないんですか?」

 

「いや、増えると思うよ」

 

「でも、そんな都合良くいます?苗字に『春』関連の漢字が入ってて、演奏できる人」

有紗の話し方が少し砕けてきているが、気にせず話そうかな。

うん!そうしよう!多分これがホントの有紗だと思うから!

 

「それが都合良くいたんだよねー、『春』の苗字の生徒が。今、優人がメンバーにしようとしてるよ」

 

「そーなんですか」

 

「でも入ってくれるかわからないんだよねー」

 

「誰なんですか?」

 

「1年の芽吹 健君。ギターをやってるっぽいんだよ」

 

「芽吹……。どっかで聞いた事あるような……」

 

「今まで不動の一位だった市ヶ谷 有紗から、トップの座を奪ったらしいよ。あの子は高校から編入して来たんだって」

 

私のこの発言に有紗は眉をひそめた。

 

へぇ。一位取られたのが嫌だったんだ。意外と負けず嫌いなのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜オマケ〜

翌日、教室にて私は優人にき 昨日、何があったのか聴いていた。

すると、思わぬ返答が返ってきたので、

「え!?帰ってた!?」

と、大きな声をあげた。

 

「おう!悪いな、連絡するの忘れてて。上手く言い逃れて健のやつ帰ったから」

 

私は怒りがこみ上げてきた。

私が1人黙々とアレンジしてたのに、連絡せずに帰ってた?

「ちょっと」

 

「はい?」

 

「謝罪を要求する」

私はそう言う。これで素直に謝れば許してやらないこともないよ、優人。

 

「スミマセンデシタ」

あ、案外潔くあやまるんだ。

いや、絶対すぐ謝れば許してもらえると思ってる。……………………いや、ううん。人を疑うのはやめておこう。私も人間。優人も人間。誰だって間違いはある。

 

「わかってるなら、立ってよし」

 

優人は私の言葉を聞くと安心して立ち上がった。

まあ、ここらで許しておこう。

 

 

 

 

という気は微塵もない。

 

 

私は隙をついて、正拳突きを食らわせる。

 

「グホッ!!!」

 

この光景は最早、このクラスでは当たり前のようになっていた。これはもうコントというジャンルに属するらしい。

 

「そんなに痛くないでしょ」

 

「確かに威力はないけど、的確に痛い所突いてくんなよ」

まだまだ甘いね優人。君はこの後、今までの人生で味わった事のない悪寒と吐き気に見舞われるよ。(←本当です)

 

「力がないなら、技術で補わないと」

 

 

この後優人はトイレに駆け込んだよww。

 




これから、文化祭編に入ります。沙綾の話と、健の話を上手く同時に進めたいです!!!

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