Full Bloom 〜満開の歌声を〜 作:grasshopper
視点は彩ちゃんです。12月27日ですが、学校がある設定です。
12月27日
まん丸お山に彩りを。
パスパレのピンク担当、丸山 彩です!
私事ながら、今日は誕生日なんです!ファンの皆さんからも沢山のプレゼントやメッセージを貰えて嬉しいです!
そして、学校でも色んな人から祝ってもらってます!友達からは勿論、違うクラスや学年でファンの子達からも「おめでとう」って言われたんです!
ただ……
「おっ、おはよう丸山」
「あ!おはよう優人君!」
彼は私の想い人で、歌のレッスンをしてくれているんです。そんな優人君と仲良いと思っていた私は、プレゼントがもらえるなんて図々しい事は考えてなかったけど、祝福の言葉くらい贈ってもらえると思っていました。でも。
多分優人君は今日が私の誕生日だと知らない。
こんな事なら昨日とかに「明日誕生日なんだ!」とかさり気無く言っておけば良かった(泣)。当日になって言うのは何か欲しいって言ってるみたいだから言いづらいし……。
すると、春ちゃんがやって来て。
「彩ーー!誕生日おめで!また1つ老けたね!」
春ちゃんがプレゼントを渡してくる。箱の大きさからしてアクセサリー類かな?
「う……素直に喜べないよ春ちゃん。でもありがと!」
春ちゃんとそんなやり取りをしながらも優人君のことを見る。今の会話を聴いててくれたら……。
しかし横には机にうつ伏せになった同い年の少年が見切れただけ。
って!優人君もう寝てるのーー!?
そのまま授業の時間になったのは言うまでも無いよね……。
そして放課後。優人君はちゃんと授業は受けていたが、今日はグループ学習や優人君が教科書を忘れるなどが無かったため、殆ど話せていなかった。
せっかくの誕生日なのに……ついてないなぁ。
と、思っていたら。
「丸山、その紙袋の量、どうしたんだ?」
優人君が自身のリュックを背負いながら私に問いかけた。
私はこれをチャンスだと思った。……なんで私「おめでとう」を言ってもらいたいだけなのに、こんなに必死になってるんだろう。
やっぱり愛かな!
「実は私今日誕生日なんだ」
さり気無く言ったし、向こうから聴いてきたのだから自然な流れだと思う。
「えっ!」
優人君はどうやら驚いたようだった。やっぱり私の誕生日知らなかったんだね。言ってない私が悪いんだけど。
すると、優人君は左腕に巻いていた腕時計を確認した。すると、焦り始めて。
「悪い丸山!じゃあな!」
優人君はそう言い残して教室から去って行った。
「……結局『おめでとう』って言って貰えなかった……」
結局、優人君からは祝福されずに家への帰路に立っていた。
春ちゃんと一緒に帰っていると、突然「今日はこっち通ろ?」と言われた。その道はちょっとした坂道で夕焼けが綺麗に見える。
その坂の途中にある公園に寄ろうと春ちゃんが提案してきた。今日はレッスンがない日だし、春ちゃんも自主練だそうなので、疑問には思ったけど何も言わずに着いて行く。
そこからは絶景が見えた。
夕日の光が眩しくて、上手く目は開けられなかったけど、春ちゃんはこれを見せたかったんだと思う。
「ありがとう!春ちゃん!」
私がそう言うと、春ちゃんは私がその言葉を言うのを待っていたような顔をした。
「まだだよ。実はもう少しサプライズがあるんだ」
「えっ……?」
私はこれ以上に何があるのだろうと思った。すると、背後から第三者の声がした。
「丸山」
私はその声の方へ振り向いた。
いつまでも聴いていたいと思うほど素敵な歌を歌うその声を。
「優人君!?」
私はなんでここに?という意味も含めてなまを呼ぶ。そして、答えたのは彼自身ではなく、隣にいる美少女だった。
「実はさっき優人から連絡あって、彩をここに連れて来て欲しいって。……じゃ、あとはごゆっくり〜」
春ちゃんはザックリとした説明をしてから去って行った。恐らく気を使ってくれたのだろう。
今の状況は、私達は見つめ合っている状況だ。優人君は私がまだ驚いてると思ったようで、口を開いた。
「いやぁ、その……ごめん!」
目の前に立つ彼は頭を下げた。
「……どうして優人君が謝るの?」
「だって……誕生日知らなかったし……」
「でもっ!私が言ってなかったわけだし……!」
「そう言ってもらえると助かるんだけどな。……まあ、何はともあれ……」
優人君は少し間を作った。意図的なのか、それとも躊躇うことでもあったのかな?
「誕生日おめでとう、丸山」
これなんだ。
私が聞きたかったのはこの一言だけ。
私はこれさえかけたんだから、もう何も望まなかった。でも優人君はこちらに歩み寄って来て、学校では持っていなかった大き目の紙袋を私の手の中に納めた。
「……今買いに行ったから、そんな悩んでる時間無かったけど、喜んでくれたら嬉しいな」
どうやらプレゼントまで買って来てくれたみたい。だから教室を急いで……。
私は袋の中身を覗き見てみた。
中に入っていたのは、
「ピンクの…………薔薇……」
思わず口に出てしまった。
すると、頰に熱い感覚がした。
涙だった。
嬉しくて泣いていたんだと思う。こんなことで泣くなんて安い人間かもしれない。
でも、それほど嬉しかったから。
相手が他の誰でもない、優人君だったから。
「ちょ!ま、丸山!?ど、どうして泣いてるんだ!?泣くほど嫌だったか!?やっぱり彼氏でもないのに薔薇なんてキモいよな!ごめんな!」
優人君は自分で選んだ物を否定し始めた。そんなことはない!と私は言いたかった。だから。
「ううん、そうじゃなくて……嬉しくて泣いてるんだよ。……………………ホントに、ありがとう優人君」
「…………そっか。喜んで貰えたなら走った甲斐があったかな。でも、『ありがとう』は泣き顔じゃなくて、笑顔で言って欲しいかな」
優人君はイタズラに微笑みながら、そんな事を言う。ならば、私も誠意に答えるべきだろう。
なので、最大級の笑顔を作って。
「ありがとう」
「ああ、どういたしまして」
そのまま流れで優人君は私を家まで送ってくれた。その途中には色々な話をして、それでも会話が尽きなかった。寧ろ、まだまだ会話していたいと思うほどに。
優人君も同じ事を考えてくれてると幸せだなぁ。
しかし、家に到着してしまった。
「ホントに今日はありがとう、優人君」
「いや、いいんだよ。俺がしたくてしたことだからさ。……あっ!そうだ」
優人君は手招きで耳を貸してくれとジェスチャーをした。私は言う通りに耳を近づける。これだけでもドキドキしていた。しかし、今から不意打ちを食らうんだ。
「ハッピーバースデイ、
私は顔が人生1の赤さになっていたと思う。
優人君は耳にそっと囁いて、終わったと思えばすぐに帰って行った。多分、彼も恥ずかしかったんだと思う。
私は優人君の贈ってくた薔薇の入った紙袋の取ってを強く握りしめて、心で誓った。
ーー絶対に枯らしたりはしない。
ーーこの薔薇も。この想いも。
めっちゃ急ぎました!