Full Bloom 〜満開の歌声を〜   作:grasshopper

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お、お久しぶりです。。テストの勉強。。


20話 アイのシナリオ(後編)

side優人

 

 

 

「花音を救って!」

と、俺は言われたものの、何をしていいかわからなかった。第1にあの怪盗は瀬田だろ。危害なんか加えない筈だ。なのになんでこんな茶番に……。

 

あ、察し。

絶対こいつら怪盗の正体がわかってないな。それもそうか。こころやはぐみみたいな年中脳内お花畑みたいなお子ちゃまにはわからないな。

 

それはいいとして。花音を助ける方法が少し……いや、かなり鬼畜なことは皆からのダイジェスト版の説明を聞いてわかった。そう、愛の告白だ。しかも設定はお姫様と王子って……。そんな小っ恥ずかしいことできるわけないだろ!

 

 

「ちなみに、奥沢はもう挑戦したんだろ?どんな感じだったんだ?」

 

 

「えっ!?あ…………いや……」

 

奥沢は俺の問いに言葉を濁した。

 

 

「ダメダメだったわ!」

 

 

「ダメダメだったよ!」

 

 

「ダメダメでした。ムービー撮ったけど、参考に見ますか?」

 

代わりに答えたのはこころとはぐみと健の3人だった。

満場一致とはこのことを言うんだな。ここまで言うと、冗談抜きでダメダメな演技だったんだろうな。

 

 

「ちょっ!健!なんで動画を撮ったの!?それを他の人に見せたら口聞かないからね!」

 

 

「えっ!それはキツイよ……」

 

…………。何の茶番だよ今のは。

 

 

 

「で、俺はもう演技を始めていいのか?」

 

俺は面倒くさくなり、もう開き直って告白することにした。

すると、怪盗ハ、ハ…………。何だったか?ま、いいや。ステージ上の怪盗が俺の問いに対して返す。

 

 

「ああ、別に構わないが、この勝負はもう決着がついているから、君が演技したところで何の意味も無い」

 

 

「え?何それ?俺やる意味ないのか?俺のやる気返せよ」

 

俺はそう小声で毒を吐きながらやる気を持て余していた。でも、愛の告白をやらなくていいのなら、その方がいい。

しかし、

 

 

「行くのよ優人!」

 

こころが俺に向かって言った。どこに行けばいいんだ?いや、流れ的には明らかにステージに行けってニュアンスなのはわかるけど、必要性がないし。そもそもこいつは怪盗の話を聞いていたのか?

 

等々の事柄が頭の中を駆け巡って、何から言えばいいのかわからないので俺は簡潔に言う。

 

 

 

「は?」

 

 

「いいからステージに行くのよ優人!最高の演技を見せれば怪盗さんの考えも変わるかもしれないわ!」

 

 

「その前にお前の考えを覆したいんだけど」

 

ホント、思考回路イカレてるな。どういう方程式を使ったらその答えにたどり着くの?俺にその方程式を教えてくれ。

 

 

「さあ早く!」

 

 

「はぐみ、こいつをどうにかしてくれ」

 

俺はこの時チョイスを間違えた。こころとはぐみは意見がほとんど別れることがないことを。

 

 

「こころんの言う通りだよ!ゆーくん先輩!バシッと決めてきて!」

 

 

「えぇ〜。。奥沢、こいつらをどうにか……」

 

俺が奥沢に視線を向けると、何が起きたと思う?

 

答えは簡単。目を逸らされた。もうこの件には関わりたくないと、そう横顔が言っていた。

 

 

「健。もう頼れるのはお前だけだ」

 

俺は健に助けを求めた。こちらは目を逸らさなかった。

 

 

「優人先輩!俺に任せてください!」

 

おお、頼もしいな。俺はいい後輩を持ったなぁ。

 

そうして健はこころとはぐみを説得しようと試みた。何やら話し始めたが、俺にはよく聞こえなかった。

 

 

 

 

 

 

数分後、健が俺に報告に来た。しかし、説得しに行く前とは明らかに顔つきが変化していた。

 

 

 

泣いていた。。

 

 

「おい健?一様聞くけど結果は……?」

 

 

「撮影係の任務を全うします」

 

 

「デスヨネ!」

 

一体、この数分間の中で、健の身に何があったのか気になるが、傷口を広げそうなので、聞かないことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな訳でステージ上。

 

 

「俺、何でここにいるんだろう……」

思わず本音が出た。やらなくてもいい告白をなんで。。

 

 

怪盗ハロ何ちゃらが、

「勝負には関係無いが、君の演技を見てあげよう」

 

いや、別に見なくてもいいっすよ。俺の黒歴史の一つになるであろう瞬間に立ち会う人間は1人でも減らしておきたい。

 

 

 

 

 

 

 

side花音

 

 

ど、どうしよう……。なんだかみんなの勢いで優人君も告白する流れになってるけど……。

 

演技だとしても優人君から告白されるのは嬉しいけど……。やっぱり恥ずかしいよぉ。///

 

優人君が目の前に立った。なんだか探偵?みたいな服装に身を包んでいるけど、その姿もカッコいい。

 

優人君は私の前でひざまづいて、右手を差し伸べた。

 

 

 

 

 

 

「あなたの美しさは最早言葉にできません。……………………好きです」

 

 

 

「///ゆ、優人君…………///」

 

多分、自分で理解している以上に私の頬は紅潮していると思う。

 

 

すると、ここで怪盗ハロハッピーさんが、

 

「君の愛はそれだけかい?まだまだだね」

 

え!まだ続けるんですか……!?これ以上続けると私……//

しかし優人君は、

 

 

「スゥ〜〜〜、ハァ〜〜〜。……よし花音、俺はまだできるぞ」

 

ふ、ふええ。……な、なんで優人君までやる気になってるんだろう。

優人君は再びこちらに向き直って、

 

 

 

 

「……………………全て捨てて、俺と逃げよう」

 

 

「ゆ、優人君。……は、恥ずかしいです///」

 

 

「まだまだ愛が伝わらないよ」

 

怪盗さん、も、もうやめてください///

 

 

「いや、もういいだろ」

 

 

「ならば、君の限界はそこまでというところだ」

 

か、怪盗さん、煽らないでください///このまま続けると……私もう…………。

 

 

 

 

「わかったよ。続ければいいんだろ!」

 

優人君は右手を私の顎に当て、軽くあげた。少女漫画で出てくる顎クイに該当するもの。

 

は、恥ずかしいです///

 

 

「…………お姫様。俺はあなたのことを国から、民から

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奪いたい」

 

 

 

 

 

 

 

side優人

 

 

「あなたのことを国から民から…………奪いたい」

 

…………な、何言ってんだ俺はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!

 

待て待て待て、自分で言っておきながら臭すぎないか?大丈夫かな?花音にひかれてないよな?

 

俺はそう考えて、意識を再び花音に向けると、顔を真っ赤にして、頭から湯気を出していた。

 

 

 

「お、おいっ!大丈夫か!?花音!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数十分後のこと。

結局、怪盗は花音を返して、瀬田に戻った。

帰ってきた花音はまだ気を失ったままなので、俺はとりあえず休憩所のソファに寝かせておいた。こころ達は俺に丸投げして、晩飯を食べに行った。

 

すると、

 

「あ、花音。起きたか」

 

 

「…………あれ?優人君?私どうして……?」

 

どうやら覚えてないらしい。

 

 

「あー……実はな、俺の告白の演技という名の黒歴史中に花音が倒れちゃったんだ」

 

 

「告……白……」

 

すると花音は思い出したようで、小さく「あっ……」と、声を漏らして顔を赤らめた。

 

 

「ゴメンな。意味のない演技に付き合わせて。俺の告白なんか聞きたくなかったろ?」

 

まあ、これだけ恥ずかしく思ってるということは嫌だったに違いない。しかし花音は。

 

 

「う、ううん。……そんなこと、ないよ……。私、ときめいたもん…………///」

 

花音はそう言いながらも顔は赤いままだった。

その表情と視線にドキリとした自分がいたことには気づかなかった。

そして、俺の顔も赤くなっていることに。

 

 

「な、なんかそう言ってもらえると……やった甲斐はあったかもな。…………それより花音、まだ少し気分悪いなら甲板に出て風でもあたるか?」

 

 

「あっ……うん」

 

そうして俺達は外に出た。

夜風は涼しさを超えて、肌寒さを感じさせた。夏も近いのに、やっぱり夜はまだ寒いな。

 

 

「花音、寒くないか?」

 

 

「だ、大丈夫だよ。……優人君こそ寒くないの?」

 

 

「まあ、これくらいならな。それより、空が綺麗だな」

 

俺は柵に手を掛け、感嘆の声を漏らした。

 

 

「本当だね。……今更だけど、優人君はなんで、探偵さんの服を着てるの?」

 

花音は俺同様に柵に手を添えて、こちらを見て、質問してきた。

 

 

「ああ、これか。これは…………あっ!!忘れてたぁぁぁぁ!!」

 

 

「ど、どうしたの?」

 

俺は何も知らない花音に説明することにした。今更、話しても関係ないだろう。どうせ俺はもうあのカードの意味がわかんねーし。

 

 

「いや、俺さ、黒服の人達に任務を任され(立候補し)ててさ。で、今までそれを忘れてた」

 

 

「そ、そうだったんだ。続けなくていいの?」

 

 

「ああ、別に俺には無茶だったし。何より暗号の意味が…………」

 

俺は言葉を止める。なぜなら、答えにたどり着いたかもしれないからだ。もしかするとあれは……。

 

 

「なあ花音。高い物って聞くと、どんな単位を思い浮かべる?」

 

今度は俺が花音に質問する。花音は何のことかサッパリわかっていない。

 

 

「え!……えーっと、やっぱりお金の単位かな?」

 

 

「だよな。じゃあ、高い場所って聞くと、どんな単位が思いつく?」

 

 

「え、えーっと、それもお金、かな?あとは……何回建とか、地上何メートルとかかな」

 

そうか。やっぱりそうだったんだ。じゃああの時の謎も納得がいく。てことは場所は……あそこか。

 

 

「花音、俺ちょっと用事ができた。行ってくる」

 

 

「え!……き、急にどうしたの?」

 

 

「いや、謎が解けたんだ。だから終わらせに行く。………花音も来るか?多分危なくないだろうし」

 

 

「え、えーっと。……じゃあ行こうかな」

 

 

「よし!早速行くぞ」

 

そうして俺達はとある場所に向かった。その場所に向かう道中、俺は花音にカードを見せて、怪盗の存在と謎解きの説明をした。そうして場所についた。

目の前のドアを開く。その先には1つの人影。おそらく怪盗だろう。すると、向こうから声をかけられる。

 

 

「どうしてこの場所がわかったのですか?」

 

ビンゴだ。こいつの発言から怪盗であることは100%確定だな。

そして、俺はキザなマントを纏っている紳士に向かった。

 

 

「そんなの簡単さ。…………と言いたいけど、けっこう悩んだな。まあ、それはいいとして。

 

お前が俺宛に落としたカード。

『1番高く、新しい扉.私はそこに現れる』

 

ってやつから『新しい扉.』がまづ初めに気になった。『()』ではなく『.(ピリオド)』を使ってたのから違和感があった。つまりこれは日本語ではなく、英語にしろということだ。

『新しい扉』は『NEW DOOR』だ。

 

しかし、これではダメだ。この7つのアルファベットを並び替えると『ONE WORD』になるんだ。

ONE WORD(1つの単語)』……つまり、船内全ての店や場所も英単語にして、1単語になる場所なわけだ。

 

レストランとかはイタリアンとか、中華とかあったからまず無い。トイレ、休憩所、ホールとかも複数あるから無い。

 

しかしこれでも絞り込めてないから、最初の『1番高く』だ。これから、どの場所の建設費が高いのかを考えた。そうして俺はシアターを選んだんだ」

 

 

「ですが、ここはシアターではありませんよ」

 

怪盗が言う。そりゃそうだ。俺の推理は1つ間違いがあるのだから。

 

 

「俺はシアターでないことに気づいた。なぜなら『1番高く』は金額ではなかったからだ」

 

 

「ほう……ならば続きを聞かせてもらえますか?」

 

 

「もちろんだ。単純な話、これは金額ではなく、高度の話だったんだろ。だから1番高度の高い場所なんかは1つしかない。

 

ここ、屋上に該当する『ヘリポート』しかないんだよ。

 

これで正解だろ?」

 

俺の推理を全て話すと怪盗は不敵な笑みを浮かべて、

 

 

「パーフェクトです。ならば私をどうしますか?捕まえますか?」

 

 

「いや、そんなことはしねぇよ。ただ1つ、答えてくれ。()()()()()()()()()?」

 

すると、怪盗はすぐに答えなかった。解答がないのか、それとも俺を揺さぶっているのか。どちらかやからなかったが、ようやく口を開いた。

 

 

「それは、どうしてでしょうね?」

 

 

「は?」

 

こんだけ待たせてなんだよその答えは。

 

 

「恐らく、あなたならここまでたどり着けると思ったからでしょうね」

 

 

「なんだよ、それ」

 

俺は呆れてしまった。最早ため息も出ないほどにな。

 

 

「それでは私は退散するとしましょう。もう目当ての物は手に入れましたから」

 

すると、怪盗は懐から宝石を取り出した。

 

 

「あ!おい待て!まだ聴きたいことが!」

 

しかし怪盗は聞く耳を持たずに指をパチンと鳴らす。すると、風が吹き荒れた。なんだか強い気がする。変な音がする。だんだん強くなるので、俺は花音に覆いかぶさった。

 

それは突然上から現れた。

 

上にはなんとヘリコプターがあった。そこから簡易ハシゴが垂らされており怪盗はそれに捕まる。

俺は阻止しようとするも、風で動けなかった。何より、俺が離れたら花音が危ないから動こうとも思わなかった。

そのままヘリは怪盗を乗せて去って行った。

 

 

「花音、もう大丈夫」

 

 

「あ…………うん」

 

花音は立ち上がろうとするが、足が震えていた。俺は肩を組んで、支えてあげる。

花音は立ち上がることができ、一息ついてから俺に聞く。

 

 

「結局、怪盗さんの正体、わからなかったね」

 

 

「いや、そんなことない。……てか、俺は最初から殆どわかってた」

 

 

「えっ!……そ、そうだったの……!?」

 

花音は驚いた。まあ、それが普通の反応だろう。

 

 

「あの怪盗は恐らく、黒服の人達の内の1人だ。

 

理由は、

まず今日俺に健から奇妙な電話がかかってきたんだ。その内容がヤバかったから俺はこころの家に行ったんだ。

そこから、あいつの手の上だったんだ。

 

健のスマホに細工できるのは家族か、弦巻家に仕える人達だけだ。つまり、あいつは健のスマホに細工をして、俺のスマホに時限式で電話をかけた。

 

そして、俺のスマホから履歴を消そうとするはずだ。俺はこころの家に着く途中に二回、人とぶつかった。恐らく、一回目で俺のスマホを盗んで履歴を削除。2回目は服装を変えて、衝突に紛れてスマホを俺のポケットに入れる。

 

まあ、こんな感じだろう」

 

俺がスラスラと説明すると花音は。

 

 

「ゆ、優人君って……すごいね」

 

 

「え?そうか?」

 

 

「う、うん。すごいよ。……だってそんなに簡単に謎を解いちゃうなんて……私には全然……」

 

 

「そっか。そういうもんか。…………それより俺らも飯食いに行こうぜ。腹がずっと減ってるんだ」

 

 

「あ、うん。みんなはもう食べてるんだっけ……?」

 

 

「そうなんだよ。全く。薄情な奴らだよな」

 

そして俺は花音の手を握った。

 

 

「えっ……!?ゆ、優人君……!?///」

 

 

「腹減っていかたないんだ。走るぞ花音」

 

 

「じゃなくて、手……///」

 

 

「ああ、これか?花音って方向音痴だろ。このヘリポートに来るまで散々迷いそうになってたからさ」

 

 

「だからって、これは恥ずかしいよ……//」

 

 

「気にすんな。ほら、行くぞ」

 

そうして俺は花音の手を握ったまま駆け出す。花音の手は小さくて、華奢だった。そんな手を俺は優しく、それでいて強く握っていたようだ。

 

月が良く見える。

雲1つない夜に、船の上。

 

そこから君と見た景色は忘れないだろう。


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