Full Bloom 〜満開の歌声を〜   作:grasshopper

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19話 アイのシナリオ(中編)

side優人

 

 

「おおー!いいな、コレ!」

 

 

俺は自分から望み、怪盗と対決することになった。その際、探偵の衣装がありますか?と聞くと、黒服の人達は渋々貸してくれた。

その衣装はそれこそ皆様が思い浮かぶような、シンプルな探偵服だった。しかし、それでも俺はテンションが上がってしまう。あとで貰えたら貰おう。

 

 

「咲野様。これを」

黒服の人が前に出てメタリックシルバーの長細い物を渡してきた。それには持ち手があったので、そこを握る。そして、もしや、と察する。

 

 

「あの……コレって……」

 

 

「はい。レイピアです」

 

 

「Wow……!It's so amazing!」

思わず英語が出てしまう。

 

 

「護身用ですので安心してください。それに、歯が無いので殺傷能力はありません。しかし、それでも生身の人間に向かって使用すれば、骨折や気絶は免れないでしょう」

スラスラと説明したけど、内容は大分ヘビーなモノだな。

 

俺はそう思いながらも、ベルトに鞘を押し込んだ。

 

 

「それと、コレも」

どうやら、まだ何か渡す物があるようだ。

 

 

「次は何です……か…………。あの、…………コレって……」

俺の言葉は途切れ途切れになった。それもそのはず。

 

黒服の人が持っているのはとある黒い物体。それは片手で持てれる程度の大きさだが、その黒塗りのモノは異質な存在感と重厚感を漂わせる。

 

そして、律儀にも俺の質問に答えてくれた。

 

 

 

 

 

「はい。ピストルです」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

腰にレイピア。

懐にピストル。

そして極め付けは、右袖に忍ばせた二丁目のピストル。

俺は本当に探偵なのか?下手すれば、探偵なんかよりもよっぽどタチが悪いぞ。暗殺者に間違えられかねん。

 

それにしても。

 

「何の手掛かりもないんじゃ探しようが無いな」

 

俺が捜査役を買って出たけど、恐らく裏でも探しているのだろう。普通はその道のプロに任せればいいんだけど、あんな我が儘を聞いてもらったんだ。少しでも手掛かりを見つけてやる。

 

そうしていると、ハロハピのみんなを見つけた。

向こうも俺の存在に気づいたようだ。てか、人数が2人足りなくないか?

 

 

 

side健

 

 

はぐれていた優人先輩を見つけたので、松原先輩と瀬田先輩なしのハロハピメンバーと一緒に駆け寄った。

すると、優人先輩はいなくなった2人同様に異世界バリな服装を纏っていたのだ。

 

 

「あ、優人先輩。どこ行ってたんですか?……って、その格好どうしたんですか?先輩も衣装着せられたんですか?お疲れ様です」

 

 

「ああ、まあそんなとこだ……先輩『も』ってどういうことだ?」

 

 

「怪盗さんが花音を連れ去ったのよ!」

弦巻さん、アバウトすぎます。

 

 

「なん……だと……!」

あれ?どうして優人先輩は若干「先手を打たれた」みたいな顔をしているのだろうか。一様、状況は知っていると思うけど。

 

 

「その怪盗はどこにいるんだ!?」

どうしたんですか?その目。今にも怪盗を見つけてはリンチにしそうなぐらいに目が燃えてますよ。

 

 

「一様、カジノに向かってるんですけど」

 

 

「よし、俺もついていく!」

なんか、優人先輩がすごくやる気になっている。馬鹿なのかな。

 

 

 

 

 

 

 

カジノに到着する。

するとそこには怪盗ハロハッピーこと瀬田先輩がいた。その時、優人先輩は怪盗が瀬田先輩だと初めて知ったらしく、リアクションに困って、真顔と呆れ顔の中間に位置するような表情をしていた。

そして、小さくため息をつき、入ってきたカジノの扉に逆戻りして行く。

 

 

「優人先輩。どこか行かれるのですか?」

 

 

「まあな、俺には別件があるしな」

そう言って派手な装飾の扉から出て行った。弦巻さんと北沢さんと瀬田先輩は勝手に話を進めていたので、優人先輩がいなくなったことに気づいていなかった。

 

 

 

 

side優人

 

カジノから出てしばらくしないうちに、俺は恐ろしい事実を突きつけられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ココドコ?」

 

 

 

 

そう、迷った。今さらだけど、大型客船の船内を一人で徘徊してると迷う確率120%だよな。

 

 

「取り敢えず、歩くか」

 

そうして、止めていた両足を、右足から順に、交互に出そうとする。すると、右足の裏に変な感触がした。

俺は何かを踏んでしまったようで、拾い上げるとそれは手紙だった。

 

包みには『挑戦状』と記してあった。ムムム、と顔をしかめ、中身を確認すると一枚のカードが入っていた。

そのカードの面には、船に乗る前に拾った赤薔薇、赤十字のモノと同じだった。違う点は、赤薔薇が白薔薇に。赤十字が白十字になっていたことくらいだ。

 

しかし、裏面は全く違う。

 

1枚目の赤薔薇ver.は裏面には何も書かれていなかった。しかし、今、手の中にある白薔薇ver.は裏面に文字が書いてあった。

 

 

『1番高く、新しい扉.私はそこに現れる』と。

 

 

…………意味わかんねぇ。高くて新しい扉なんか、自分の目で判断するしかないだろぉ!

でも、挑戦状ってことは、引っ掛け問題みたいなんだろ。どうせ。考える気にならないな。。

 

つかよ!なんで挑戦状とか送る訳!?え、何?俺舐められてんの!?そもそもカードで送るとか、怪盗キッドかよ!こちとら身体が縮んでないからコナン君にはなれないんだよ!ああそうかい!わかったよ!コナン君が無理なら金田一少年になるし!

 

そんな8割ふざけた脳内での葛藤と共に俺は右手のカードをへし折ろうとする。しかし、俺はカードの文章のあるおかしな部分に気づく。

 

 

「待てよ……」

 

文章を読み返す。

 

「ん〜………………………………あ!そういうことか!」

(※皆さまもよろしければお考えください)

 

 

答えのわかった俺はそのカードが示す場所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は指定場所に到着した。そこにはもちろん扉があるが、扉の前に怪盗キッドが立っているわけではない。恐らく扉の向こう側にいる。

 

開ける前にある2つのことに気づいた。そこの室内が防音対策されていることだ。なぜなら、ここはシアター。つまりはミュージカルを観たりする場所。なぜ俺がここだと思った理由はもう少し秘密だ。つまり悲鳴をあげようと、銃を発泡しようと、殆ど外には漏れない。

 

そしてもう1つはそのシアター内に、人の気配が既にしていることだ。あくまで怪盗キッドのイメージだが、彼は人に危害を加えない。だから、怪盗は皆、少なからず良心的かつ話し合いのできる輩なのだろう。間違っても、目が合っただけで心臓に穴を開けたり、毒薬を盛らないはず。もし今までに、そんなことしていたら怪盗ではなく世界を股にかけた殺戮者だ。

 

だから俺は、デスゲームモノの開幕アウトで死亡みたいなことはないだろう。シアターだけに開幕って、うまい事言ったなぁ。

 

 

「ハハッ…………こんな状況でもこんな間抜けな事考えられるなんて……。余裕だな、俺」

 

自分で自分に突っ込まんでいるのはいつもの習慣か。それとも、怪盗と対峙することに対して心を落ち着かせているのか。

 

その答えはわからないままだが、扉を勢いよく開く。

 

 

 

 

 

しかし、そこには怪盗キッドの姿はなかった。

 

いるのは、ハロハピのメンバー5人に健だ。はあ、また1から操作洗い流しか。。と言いたいのは山々だが、ステージには、いささか、気になるものがあった。

 

それは奥沢と瀬田が順番に花音に告白するというなんとも同人誌チックなものだった。俺はドアを開けた瞬間にその光景が飛び込んできたため、驚かざるを得なかった。そして、呆然と立ち尽くした。

 

そして、6人はもちろん俺の存在に気づいた。そして声がこちらに投げかけられる。

 

 

 

「どこ行ってたんですか?優人先輩」

健が1番最初に話しかけてきてくれた。良かった話が通じる奴が一番手で。

 

「あ、……ああ健、大したことじゃないから気にするな」

 

 

「そう言われると余計に気になりますよ」

 

 

「なあ、それよりこれはどういう状況なんだ?」

 

 

「あ、これはですね。怪盗ハロハピッーがーー」

しかし、ここで健の声が遮られる。

 

 

「優人!」

「ゆーくん先輩!」

こころとはぐみが俺の名を呼ぶ。

 

 

「ん?どうした2人共?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「花音を取り返して!」

「かのちゃん先輩を取り返して!」




次で終わる予定……。皆さんも、怪盗アルンからの挑戦状の謎を解いてみてください。答えは客船の中のとある場所になります。

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