Full Bloom 〜満開の歌声を〜 作:grasshopper
side春
昼休み。私はいつも通り、クラスの女の子達と一緒にご飯を食べていた。その際に彩がなんだか考え事をしていた。
「どうしたの彩?悩み事なら相談乗るよ」
私はそう声をかけた。他の子達は呑気に会話をしていたため、私の声は聞こえていないだろう。
「えっ!な、なんでも無いよ……!」
彩が何か隠すような言い方をした。
なんだろう、気になるなぁ。
彩がジュースを口に含んだ。私はこのタイミングでとある質問をするけど、それは後悔することになるんだ。
「……恋?」
「ブッ!」
彩が口に含んだいちごオレを躊躇なく私の顔に吹きかけた。わざとじゃ無いんだろうけど、これは汚いなぁ。
まあ、それはともあれ。
「図星?」
私は顔を拭きながらまた質問する。
「ど、どうしてわかったの……」
彩は口の周りがベトベトになっていることにも気づかないほど、動揺していた。
「顔に書いてあったから。……それと顔を拭こうね。女の子がはしたないよ」
世の中で1番はしたない女の子が、アイドルの卵に女の子のあり方の説教をする日が来るなんてね……。
そんなことを考えながら、彩が口を拭くのを見守った。そして、拭き終わり。
「相手は優人だよね?」
私は笑顔でそう言う。笑顔の理由は面白くなりそうだからかな。そして私の言った通り、相手は優人で間違いないよねー。だって赤面しちゃってるもん。
「…………」
「彩?」
急に黙り込んだので、思わず声をかけた。すると、ゆっくりと口を開き、
「その……わからないんだ。…………今まで恋したことなかったから。……それに、私、一様アイドルだし」
ムムム。確かにアイドルは恋愛禁止だけど、優人になら彩を任せられるんだよなぁ。(父親目線)
「よし!こうなったらそれが恋かどうか確かめてみようよ!」
「ど、どうやって?」
「そりゃあ、優人の家に乗り込むの!」
「えっ!む、無理だよ!///」
「大丈夫大丈夫。私も付いて行くからさ!」
そう言うと、彩は了解した。
さてと問題は優人の家にどうやって行くかだよね。家に行く口実がないと上がらせてもらえないだろうし。。
「あ!そうだ!」
私はとある方法を思いついた。これなら大丈夫!
そう意気込んで、優人の元へ向かう。後ろには彩もゆっくりとだけど、付いてきていた。
しかし、私は優人の元にたどり着くと、言葉を失った。
side優人
親友とは良きものだ。
いつも支え合い、泣き合い、笑い合う。それこそが美しく、爽やかさのある高校生の人間関係だと思う。
そして俺は幸運に恵まれ、親友と呼べる人間が少なからずいる。一生忘れることのないであろう、大切な時間を共有したものだ。
つまり、俺の高校生活は恋愛などに興味がなくても、順風満帆に送っていたのだ。
なのに、
何が悲しくて親友の土下座を見下ろしているのだろうか。
それもクラスメイト全員が見ている前で。
因みに、今土下座をかましているのは漣 冬夜。一様親友だ。しかし、絶交しようと思う。なぜなら次にこう言ったからだ
「優人様!何なりとご命令を!そして……ご褒美を!!」
おい待て。発言が明らかにドMの言葉じゃねーか。俺に踏んで欲しいの?ガチホモなの、お前は?
なぜこうなったのか……
それはほんの数分前のことだった。
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あ、回想に入ると思ったか?
それは期待を裏切ってすみません。ただ、俺の親友がドMになってホモになったことなんて気にならないだろ?
それより大事なことがある。
梅雨が明け、7月の上旬になると、学校ではとあるイベントが発生する。学生諸君にはおわかりだろう。
期末試験だ。
人生のうちに、それも中学・高校生時代に何度も学生達の行く手を阻むあれだ。
そしてテストと言えばお決まりのイベントがあるだろう?
「勉強会だ!!」
青春モノには定番のイベントだ。そして大体は2人きりなどの場面が多い筈だ。
「1人、2人、3人……ハァ」
現実はそんなに甘くない。
つーか、なんで俺にイベントが来んの?他所でやってくれよ。そんな青春チックな漫画の主人公に俺は向いてないから。
今、部屋の中にいるのは俺以外に3人。春、丸山、そしてガチホモ。
「誰がガチホモだって!?」
うーわ。こいつ俺の考えてることがわかるとかいよいよ気持ち悪いな。さすがホモ。
「おお、ガチホモ。どっかわからないのか?悪いが俺じゃなくて春に質問してくれ。俺はそんな性癖持ち合わせてないから」
「だからホモじゃないからな!」
「あー、ハイハイ」
既に冬夜がホモだろうが興味はなかった。
ちなみにどこで勉強会を開いていると思うか?
ご察しの通り、ウチだ。
「何で俺の家なんだよ……」
すると俺の声が聞こえたようで、春がこちらを見てきた。
「理由ききたい?」
春がなんだか嫌な笑みを浮かべている。大した理由があるのだろうか。
「ああ、教えてくれよ」
「えっとねー……」
春が俺の問いに答えようとする。その瞬間。
「だ、ダメェーー!」
丸山が叫んだ。そして春の口を両手で塞いだ。
「ど、どうしたんだよ?そんなに焦って?」
「い、いや。なんでもないよ」
丸山はそう言い、わざとらしい口笛をした。絶対裏があるな。なるほどな。そこまで勉強に切羽詰まってたのか。
「わかった。理由は聞かない。ただ、おまえが勉強してないのはわかったから」
side彩
あれ?今、なんか変な勘違いされたよね?
絶対優人君、私が全然勉強してないって勘違いしたよね?優人君の家で勉強会を開きたい理由がバレなくてよかったけど、なんだか傷つくなぁ。
「で、どっかわかんない所あるか?理数系なら任せろよ」
「う、うん!」
はあ、やっぱり優しいなぁ。急に勉強会を開かせてもらったのに。私は申し訳なくなってきた。
そして数分後。
「ねえ、優人君。ここ、教えてもらえないかな?」
「おお、いいぜ。……あ、そこか。この問題はここを……こうして……。どうだ!」
す、すごい。私が5分くらい悩んでギブアップした問題をこうも簡単に……。
「これ結構引っ掛けだからな。多分テストに出るだろうから、解き方覚えといたらいいよ」
「あ、うん。ありがと!」
かっこいいなぁ。
なんであんなにスマートにこなせるんだろう。そんなところに惹かれる人も多いんだろうなぁ。
優人君はさっきまで座っていたところに戻っていった。私はその姿を目で追いかけていた。椅子に座り、真剣な表情でノートと向き合い始める。
ドキッ。
普段の教室などではあまり見られない、真面目な表情。いつもとのギャップが激しく、なんだか大人っぽく見える。
わからない問題で頭を掻く仕草。
シャープペンシルの頭を下唇に当てて芯を出す仕草。
不意にこちらの視線に気づいて微笑んでくれる仕草。
疲れた時に窓から夕焼けを見る仕草。
その後、子供みたいにやる気を出す仕草。
今日一日で、優人君の色々な顔が見れた気がする。そしたらもっと色々な顔が見たくなり、優人君に惹かれる自分に気づいた。
あ、これが恋なんだ。
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勉強会は無事に終わり、私と春ちゃんは帰路についていた。その際、
「それで、優人のことをどう思ってるか、気づいた?」
「……うん」
「それは恋心?」
春ちゃんが少しいたずらな笑みを浮かべて聞いた。ほんとはわかってるのに、聞いてくるなんて。。でも、相談にも乗ってくれたので、ちゃんと答えるべきだと私は思った。
「…………うん」
その時、私の頰は紅潮していたと思うけど、夕日でバレてないよね?と、そっと願った。
〜おまけ〜
side優人
今日、俺と春と陸は、映画館に来ていた。
「あー!Fate面白かったー!!」
春が大きな声でそういった。そう、皆さん忘れてると思うが、彼女は生粋のアニオタである。見た目とは打って変わって、女の子とは程遠いくらいに部屋も散らかってる。
そして今日は俺と陸も映画に付き合わされていた。
「全く分からなかったけど、結構面白かったな」
原作はゲームらしいが、全く分からず。アニメや小説も見たことないため、全く分からないまま、Fateという映画を見に来たのだが、なかなか面白いものだった。
「ああ、そうだね。今度から僕もアニメとか見てみようかな?」
陸も高評価を出していた。この映画は3部作になっているようだが、残りの2作も見ようと思った。
「それより、春、お前は今日で何回目だ?」
「7回目!」
この数字は、今見終わった映画を何回見たか、ということだ。7……か。さすがだな。俺にはとても真似できん。
「だって、You ●ubeで動画あげるだけで、かなりのお金が入るから有効活用しなきゃね!」
こいつの金の使い道は全部アニメとかゲームに注ぎ込まれてるんだろうな。
「また見る時は僕も誘ってね。面白かったし」
陸のやつ、ハマったな。
まあいいや。
俺もハマりそうだし。
「これだから、日本はサイコーなんだよ!」
春が元気に叫んだ。珍しく子供っぽいところを見た気がする。
でも、今日ぐらいはいいだろう。
ずっと見たがってもんな。
俺と陸が帰りに深夜アニメの劇場版のDVDを借りたのは別の話だ。
Fate面白かったー。
見てないなら、見ることをオススメしますよ!
◎感想、評価等々、よろしくおねがいします。