Full Bloom 〜満開の歌声を〜 作:grasshopper
まあ、僕(作者)がイメージした優人君のお姉さん・舞衣はどういうキャラクターにしようかは《優人君よりヤバイキャラ》って決まってました。ヤバいかどうかはわかりませんが、優人よりはぶっ飛んでいたと思います。弟にあんな風に誘ってくる美人の姉って……そんなの現実にいねーよ!
そんな舞衣さんは今回も優人君を困らせます。
(後半はシリアスもどきですが)
side優人
現在の状況をおさらいしておこう。
隣には姉。そして背後には口の軽そうで頭のネジが抜けてる後輩2人。その2人は俺に姉がいることを知らない。さて、勘違いされたらめんどくさいぞ。
取り敢えず笑顔で取り繕う。
「よ、よお香澄。おたえ。ど、どうしたんだ?2人だけで?」
うん。ナチュラルだね。
「「優人先輩」」
「ん?どうした?」
いや、うん。ほんとは何言うか分かってるから言わなくていいよ。誤解だからな。
「「笑顔ひきつってますよ」」
………………………………そこかよ。
今、どーでもよくね?いや、姉ちゃんのことをスルーしてくれるなら、それは不幸中の幸いだけど。
つーか、コイツらのシンクロ率がクソ高いな。頭の中身が一緒だろ、絶対。
「「それと、彼女さんですか!?」」
ここでかよ!!
タイミング、ゼッテーおかしいからな!よく俺の笑顔の話からその話まで変えれたな!荒技すぎるだろ!
てか!目キラキラさせんなよ!絶対楽しんでるな!
そして俺の隣の人!!あんたなんでずっと微笑んでんの!?焦ったりしないの!?いや、俺も外見は焦ってないように見えるだろうけど!内心クッッッソ冷や冷やしてんだからな!
取り敢えず、否定の言葉を言っておこう。
「いや、ちがーー」
「そうだよー」
おいこら!咲野 舞衣ぃぃぃぃいいいい!!あんたなんなの!?そこまで俺をいじり倒したい訳!?流石My sisterだなぁ、おい!
「優人先輩!綺麗な人ですね!」
香澄、お前にうちの姉の頭の中身を見せてやりたいよ。そしたら、そんな祝福の言葉も出なくなると思うからさ。
「どっちから告白したんですか?優人先輩、再現してください」
…………おたえさん、今の質問には3つの間違いがあったぞ。
1つ。まずは「どっちから?」と聴いてるくせに俺から告白したと判断し、再現を求めてることだ。
2つ。告白というリア充のイベントを俺がするはずがないということだ。
3つ。そもそもコレ、うちの姉だから!俺の言い分を聞いてくれよ!!
「おいお前ら、言っとくけど、コレ姉だからな」
「「…………またまた〜」」
「なんで信じてくんねーの?」
俺の信用度ゼロかよ。。結構心にダメージだ。後輩から信頼がないのは悲しいことこの上ないぞ。
「ひどい!家では私を床に押し倒して、あんなことをしたのに……」
「テメェ殴るぞ」
姉だろうともう関係ない。そろそろ殴らせろ。第一、いかがわしいことなんか無かっただろ。でも姉ちゃんの発言でコイツら2人はまた勘違いするんだろうな。
「ねえ、おたえ。押し倒すって姉弟喧嘩でもしたのかな?」
「さあ、そんな言葉使わないからわかんない」
あ、コイツら、無知だわ。そーゆー知識が全くない純粋な生き物だ。俺も大してそーゆー知識持ってないけど。
とにかく、助かったってことだよな。いやー、安心したー。
「押し倒すっての意味はね、S○Xしたってことよ」
……………。完璧に詰んだ。詰んだ詰んだ詰んだ詰んだ詰んだ詰んだ詰んだ詰んだ詰んだ詰んだ詰んだ詰んだ詰んだ詰んだ詰んだ詰んだ。
うちの姉はなんでこんな風になったのだろうか。弟としてなんか嫌だ。もっとまともな姉が欲しい。
だって、ダイレクトにS○Xとか言う姉なんか!!もー嫌だ!僕帰る!
いや待て。最早香澄とおたえが絶句してる。これは完全に信じ込んでるな。なんで俺の言葉は信じないのに、今日初めて会った姉ちゃんの言葉は受け入れるの!?つか、このハイテンション&天然の2人組を黙らさせるなんてよく考えたらすごいわ。って素直に感心できねーよ!
「姉ちゃん、そろそろやめてほしい。もう精神的に限界が」
うん。ここまで来ると疲れるわ。
「わかったよ。じゃあ、2人にネタばらしするから」
「ああ、頼んだ」
そう言って姉ちゃんは石化していた2人に事情を話していた。
数分後。
「で、誤解は解けた?」
「ええ。バッチリ」
「なら良かった。因みに何て言ったんだ?」
「『ごめんね2人共。実は私と優人は姉弟なの。ほらコレ、身分証。あ、優人とエッチしたのは本当だから』って」
うん。ストップ。問題が1つしか解決されてないよな。しかも姉弟でそーゆーことしたって思われてるだろうし。今度学校で誤解を解くのが面倒くさい。
「もーいいや。それより早くケーキ屋行こうぜ」
その後、姉とケーキ屋に到着しそこでケーキを味わい、マンションに帰った。うまかったなぁ。また今度食べに行こう。
「ところで姉ちゃんは今日、うちに泊まってくのか?」
「ええ。そのつもりよ。優人の家だから何しても構わないから」
「ふざけるな」
ああ、今日でどれだけ疲れた事か。それなのにまだ俺を困らせるか。もう休ませろよな。
「まあそんな下らない事、どうでもいいや。それより昼の続きは?」
「えっ?昼の続きって押したーー」
「そこじゃねーよ。姉ちゃんが今日、俺に話しに来たことだよ。《本題》のことだよ」
「ああ、あれね。聞きたいの?」
「まあ、そりゃな」
「わかった。でもその前に変な質問をしていい?」
目の前に座っている姉の目は急に真面目に変わった。相当深刻な内容なんだろうな。
「いいけど」
「じゃあ、優人。あなたにーー
親友はできた?」
なんでそんな質問を?と俺は聞き返そうとしない。なぜなら今の質問で姉ちゃんが今日俺に会いに来た本当の理由と、今日ふざけていた理由が全てわかったからだ。会いに来た理由は俺の人間関係を知るため。俺をおもちゃにしてた理由はこの後の展開を考えると気が重くなるから、笑っておきたかったのだろう。
「…………」
俺は沈黙を貫いた。いや、答えを探していた。
「嫌なら答えなくてもいいよ」
姉ちゃんはそう言ってくれる。でもこれは答えなければならないのだろう。
俺には確かに親友がいる。
俺は心を決め、口を開く。
「いや、できたよ」
「そう。なら、ここからが本題。その子は
!!!
俺はこの質問が来ることを恐れていた。正直自分の中で答えが出てるわけでもなく、解答を見つけ出そうという気もない。けど、そんな俺の気持ちとは正反対に脳が俺の記憶から答えを導き出そうとする。
春か?
ーーいや、違う。
冬夜か?
ーーコイツも違う。
クラスメイトか?
ーー丸山達でも無いな。
蘭?Afterglow?
ーーいや、蘭達も否だ。けど惜しいな。羽丘か?
となるとやっぱり、
「陸」
俺は口から思わず陸の名前が漏れた。
「その子が1番の親友なの?」
再び答えに行き詰まる。けど、やっぱり
「…………ああ、俺らのバンドのドラマー。桃月 陸は俺の1番の親友だ」
俺は言い切る。でも本当は、心にはまだ迷いがあった。
「ふーん。本当にそう思ってるの?」
やっぱり姉ちゃんは鋭い。やっぱり頭いいんだな。いや、俺の姉だからか。
「……………………ああ、思ってるよ」
「じゃあ今の間はなんなの?」
「…………」
…………。
最早俺の頭も心も、
思考も感情も、
記憶も思い出も、今の質問の答えは導き出せない。
「なんでそんな意地悪な質問するんだよ」
「…………わかったわ。質問を変える」
「そうしてくれると助かる」
「優人の生きる理由は?」
ーーこの人は俺という人間の核心を突いて来る質問しかしない。
ーー本当に嫌な人間だ。
ーーでも憎めない。なぜなら俺のために聞いているのだから。
「俺の生きる理由は…………誰かが俺の…………いや、あいつの歌声を待っているから……………………」
すると姉ちゃんは口を開いて、現実を俺に教える。
「今の発言からして、まだあなたの1番の親友はその桃月 陸君ではないようね」
ーーああ、本当は自分自身が1番わかってた。
「結局優人は2年前、中3の夏にうちから出て行った時から……いや、
ーーそれも自分でわかってる。だから、もう言わないでくれ。
「優人の生きる理由はずっと過去にあるまま、変わらない」
ーーわかってる。わかってるから。だから、もう続きは言わないでくれ。
「過去を捨てろとも言わないわ。……でも、未来を捨ててるあなたは間違っている」
ーーもうやめろ。聞きたくない。
「今の優人は自分のために生きてないわ」
ーーやめろ。やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ。
「親友ができたなんて言ってるけど、結局あなたはひとりぼっちなんでしょう?」
ーー黙れよ!そんなの認めたくないけど、俺が1番わかってる!だから黙れよ!!
「あなたは咲野 優人じゃない」
ーーわかってる!俺自身がそれを望んだんだから!!
「あなた、…………死んでるのと同じよ」
「わかってるよ!!!!!」
俺はとうとう声を上げる。
「優人……」
「俺が1番わかってることを、俺が望んでやったことを知った風に言いやがって!!」
「じゃあ、なんでギターも続けてるの!?」
「決まってるだろ!俺がギターを弾き続けないと、あいつが悲しむんだよ!!」
「なにそれ!?ただの自己満足じゃない!結局優人は死んでなんかないじゃない!!」
「ちげーよ!!死んだんだよ!!」
「違うわ!!あの時自分が死んでれば良かったらって、ずっと後悔してるだけじゃない!!!」
「!!!……ああ、そうだよ。俺なんか死んでれば良かったんだ。俺なんかよりもあいつの方がよっぽど必要とされてたんだ。俺なんかが生きる必要なんか無かったんだ。だからずっと後悔してたんだ。家を出てから2年間、ずっと苦しんでたんだ。俺なんか死ねばいいってずっとーー」
パァン!!
刹那、頰に痛みが走る。ぶたれた。
「お前、何すんだ!姉だからっていつまでも偉そうに……!」
「ええ。私はあなたの姉よ。そして優人は弟。…………姉の私は優人に死んでほしくなんかない!誰にも必要とされてないなら、私が必要とする!だから、死んでもいいなんて、二度と言っちゃダメよ!!」
「!!姉ちゃん……!」
「それに、私以上にあなたを必要としてる人がいるんでしょ!?バンドやってるんでしょ!?ギターボーカルが死んでどうするの!?」
不覚にも心に響いた。そうだ、陸と春がいるんだ。
でも、
それを姉ちゃんにとやかく言われる筋合いは無い。
「ああ、そうだな。話は終わりか?じゃあ、出てってくれよ。あいにく、客人ようの布団とか無いからさ」
「!!言われなくても……そのつもりよ!」
姉ちゃんは持って来ていた大きなバッグを持って足早にドアの前まで行った。その時、
「ゴメンね、優人」
姉ちゃんが呟いて、出て行った。
なんで姉ちゃんが謝るんだよ。
一方的に切れて、それでも姉ちゃんは俺を見捨てず、前へ進めさせようとしてくれたのに。
全部俺が悪いのに。
明日は学校だ。練習もある。陸と春に会って一旦心の中を整理しよう。
俺は明日もいつも通り過ごせるだろう。
だって、
姉ちゃんと喧嘩しても、何も変わってないから。
シリアスにかけてたら嬉しいなー。でも、自分で読み返すと結構ぐちゃぐちゃになってますね笑。
優人君の過去には一体何が?そして度々出てきた《あいつ》とは?
真相が明かされるまで首を長くしてお待ちください!!
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