Full Bloom 〜満開の歌声を〜 作:grasshopper
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「初めまして。僕は桃月 陸、高校2年生だね。
今、僕はスリーピースバンドを組んでるんだ。
2人とも個性的で、面白くて、
本当に大切な親友だと思ってる。
僕が優人をバンドをやろうと誘ったのが始まりなんだけど、
今思えばよくあんな事を言えたなぁって思うよ。
でも、今ではあの時優人を誘ったのは正解だったと思うよ。
じゃないと僕は多分後悔してたからさ。
なんか話それたかな……。
というわけで、応援よろしくお願いします」
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バンド:Full Bloom
パート:ドラム
学校:羽丘学園
学年:高校2年生
誕生日:2月13日
星座:みずがめ座
好きな食べ物:海の家の焼きそば、たこ焼き、抹茶系のお菓子
嫌いな食べ物:無し
趣味:映画鑑賞、読書、天体観測
自己紹介:優しくて、常に穏やか。頭脳明晰で日菜と一位争いを度々繰り返しているが、2人とも全教科満点のため、決着がつかない。運動はできる方。あまり自分の事は話そうとせず、大人びている。基本的には会話の輪に入ろうとせず、暖かく見守る。
昨日の文化祭ライブ以降、大した出来事もなく文化祭2日目も終わっていった。
残すところ、後夜祭のみ。後夜祭までの時間は主にクラスで片付けをする時間だ。
優人はその間、クラスの仕事をサボった事がバレ、正直に謝ると、クラスメイトは「演奏が最高だったから許す!」と皆口を揃えて言った。
そして、一昨年や去年と同様に、多くの女子が優人に告白をしてきた。おそらくこの2日間で50人は超えていた。
そして、今も優人は呼び出されていた。校舎裏で話があると言われた優人。まだ告白とはわからないが、この流れは告白だと超絶鈍感王の優人でもわかった。
ただ、相手は3年生だったので、優人は強く物言いはできないし、相手も腹をくくっているので、自分もまじめに答えるつもりだ。
「ねえ、後輩君。私の事、どう思う?」
相手はテニス部員で、スタイルも良く、顔も綺麗な先輩だった。誰から見ても魅力的だろうが、優人からしたらそんな事は関係ない。何故なら答えは最初から決まっているからだ。
「別に、綺麗だと思いますよ」
「じゃあ、その……」
「?どうかしたんですか?」
「お、女の私から言わせるつもり……!」///
(って言われてもなぁ。俺、先輩の事あんま知らないし。第1、俺は告白しないし。俺から言う事があるとすれば『スミマセン』くらいなんだけど……)
そして、この場には優人と3年生の先輩以外にもう1人いた。丸山 彩だった。たまたま、優人を見かけたので声をかけようと思ったが、告白の雰囲気だったので、見守っている。
彩はこの状況を楽しんでいいのかどうかわからなかった。
「あの、俺から言う事は無いんですけど……」
「…………じゃあ、私から。………………好きです。付き合ってください」
ズキン
「…………スミマセン。俺、恋愛とかは」
優人は頭を下げる。
「ううん、わかってたから。じゃあね」
そう言うと、先輩は去って行く。
優人も教室へと戻っていった。
しかし彩はその場から動いていなかった。
彩は優人の告白を見て何を思ったのか、俯いていた。優人が告白される前は他人事のように眺めていたが、優人が告白された瞬間に胸がざわついた。明らかに『ズキン』という音が聞こえた。
(なんでだろう。……なんでこんなに胸が痛いの?)
時は過ぎて、いよいよ後夜祭。これが終われば本当に文化祭は終わる。優人は、陸は、春はステージに上がり、それぞれ準備をする。
優人はスタンドマイクを握り、
「文化祭、最後まで盛りあがろうぜ!!!」
次に春が、
「最後まで楽しもー!!!」
陸も、
「さあ、〆にしよう!!!」
そしてMCは春に戻り、
「一曲目!《君に届け』!!」
3人は演奏を始める。
最後まで文化祭を楽しんでもらうために、そして、自分達が最後まで楽しめるように。前奏、Aメロ、Bメロ、サビ。春はフレーズを次々とリズムに合わせて並べる。
(ああ、この時間も、もうすぐ終わる)
おそらく、演奏を聴いている人達はテンションが上がっているが、こんなことも頭の片隅で考えていただろう。
そして、優人も。
(これが終わったら、残すところ、来年のあと一回か……)
気付けば一曲目が終わっていた。優人は無心で演奏していたので、陸に小声で名前を呼ばれるまで放心していた。そして、二曲目に入る前に再びMC。
「みんな、いよいよ二曲目、、最後の曲だ。今から歌うのは新曲だけど、みんなが盛り上がる事を期待してる。だからさ…………もっと燃え尽きようぜ!!!」
観客側からは大きな歓声が生まれた。
二曲目が始まる。
殆どの生徒が参加していた後夜祭。プログラム自体は30分程度のものなのに、記憶にハッキリと残るだろう。少なくとも優人はそうだ。自分達で企画したイベントがこんなにも大成功するのは嬉しい事この上ない。
(だけど、運営側は疲れるからもうやりたくねーな)
二曲目も終わり、文化祭の最終プログラム。
フォークダンスだ。
男子の人数は明らかに少ない。だから、もちろん男子の争奪戦になり、逆に男子は選り取り見取りになる。そにで例外なのは陸ただ1人のはずだった。なんと陸は他校生にも関わらず、花咲川学園の生徒にダンスのお誘いがきていた。しかし陸は断っていた。先日、優人に話していたように、やはり参加しないのだろう。それを先読みした優人は、
「陸、春。お前ら踊ってこいよ」
「「えっ!!」」
「いや、なんで驚いてんの?」
「いや、僕と春が!?恥ずかしくて無理だよ!」
「そ、そーだよ優人!それに陸君にも迷惑だし!」
「でも、このまま踊らないと陸には誘いが来る一方だぞ。その方が陸は困るんじゃねーの?だけど誰かと踊ってれば、誘いは来ないだろ」
「そ、そういう事なら……!」
「ち、ちよ!春!?優人の口車に乗せられたらダメだよ!」
「ならば陸、俺と踊るか?」
「…………あー!もう!わかったよ!」
陸は決心をする。
そして春の目の前に立ち、右手を差し出す。
「春、踊ろ」
陸の頰が赤いのは、キャンプファイヤーのせいなのかはわからない。しかし、春も赤くして、
「……うん」
と言って陸の手を取る。
優人はそんな2人を見送り、1人になる。
「……さてと。俺はどうすっかなぁ。俺を誘う奴なんかいないだろうから、自分から誘ってみるしかないよな」
優人のところにおそらく女子が群がるだろう。問題は優人がそんなはずはないと思っていることだ。優人はこの2日で多くの女の子に告白され、その全てを振ったというのに未だに自分のルックスを認識できていない。
なので彼は辺りを見回して、フリーな人はいないかと探す。しかしながら殆どがペアを組んでいる。女子同士の量が多すぎるが。
「校内に誰か残ってたりしないかな?」
優人はそう呟き、校舎に入る。流石に教室とかには誰もいないと思ったのか、階段は素通りした。向かったのは職員室だった。
しかし職員室の入り口には誰もいないし、室内から出てくる気配も無い。
「仕方ないか、1人虚しくダンスを眺めてーー」
「ゆ、優人……君?」
刹那後ろから声が聞こえてくる。
優人は女子の声だと気付いた。そして、振り返る。
「おお!花音じゃん!久しぶりだな!」
優人に声をかけたのは松原 花音だった。2人は高等部1年の時に同じクラスでそれなりに仲が良かった。
「ひ、久しぶり……だね。ライブ……見てたよ」
「ああ、サンキューな。それより花音はどうして職員室に?」
「あ……私、教室の鍵を返し忘れてて。それで……」
「そういう事か。ところでお前、1人か?」
「うん。そうだけど……どうかしたの?」
すると、優人は安堵の笑みを作って、
「丁度良かった!花音、俺と踊らないか!?」
「…………えぇ!?」
「ん?何か問題あったか?それとも嫌か?」
「えっ!……いや、その、……私でいいのかな?」
花音が質問する。優人はその問いに答えるべく、口を開く。
「何言ってんだよ。花音がいいんだよ」
その発言に花音は顔を真っ赤にする。
「ゆ……優人君、あんまり今の言葉……言わない方がいいよ……。勘違いするから……」///
「じゃあ、花音も勘違いしたのか?」
一層花音は顔を赤らめる。耳まで赤い。ここまでくると優人はわざとやっているようにしか見えないだろう。実際彼はわざとやってるのだし。
「ハハハ、ごめんごめん。なんかいじめたくなっちゃうんだよな」
「ひ、ひどいよぉ……」
花音は少し涙を浮かべた。
「わ、悪かったって。それより、俺と踊るの?踊らないの?」
「う…………うん。お……踊る……」
花音は優人の誘いに乗った。
「OK花音。じゃあ、行こうか」
そして2人は鍵を返した後、グラウンドに戻って来る。優人は手を差し出し。笑顔を作り。
「踊ろうぜ」
花音は優人の手に触れる。すると優人は強く握りしめ、リードする。2人はこの時間を楽しんだだろう。
帰り道。
春とは別々に帰っていた優人と陸。
2人はいつも通りの会話をして、いつも通りの2人だった。だが、不意に優人が言う、
「俺達はあと1年半と少しで卒業するんだよなぁ」
すると陸は驚いた顔をして、何事か?という顔をしたが、すぐにいつもの穏やかな笑みに戻り。
「そうだね。でも、それが普通なんだよ。……青春時代はいつか終わる」
「ああ。……でも、俺らの関係は終わらないよな?」
「何言ってんの。当たり前じゃないかそんなの。たとえ音楽を、バンドをやめても僕らはずっと変わらないよ」
陸がそんなことを言うと、優人は安心の表情の中に悲しみを見せた。
「だよ……な。………………お前はいつも俺の横にいて、それは死ぬまで続く。でもって、死んだ後も墓は隣か?」
「ハハハ、そ、そこまで考えるのは気が早いよ。……でも、そのくらい固い絆で結ばれてたいな」
「ああ…………俺もだよ。でもさ……」
優人が口籠る。陸は優人の異変に気付き、問いかける。
「どうかした?」と。
「なら……さ。『バンドをやめても』とか言うなよ…………」
優人は俯き、悲しい声で言い放った。
「も、もしもの話だからね」
「《もしも》そうなるのが俺は嫌なんだよ」
優人はこういうところが自分の短所だとわかっていた。しかし陸はそうなことは気にしていない。そして、少し声を大きめに言う。
「君がやめない限り、僕もやめないよ」
優人は顔を上げ、真っ直ぐに陸の方を見据える。そして次に優人が声を発する前に、陸が続ける。
「だから安心しなよ。信じなよ。僕達の絆を。…………そんなことより。ほら、1番星が見えるよ」
優人はその時、いつもの笑顔を取り戻したいた。
「ああ、そうだな……!」
どうしよう。問題がこの話で二つも……。
一つ目は優人君が他にもフラグ建ててたことです。まあ、これはまだいいんですよ。
問題は二つ目ですよ。
そう。陸君のヒロイン感が強すぎるんですよ!そういう結末を想像してたつもりは無いのにな……。
今のところ、タグに『ボーイズラブ』を追加する予定はありません!断じてありません!!!