Full Bloom 〜満開の歌声を〜   作:grasshopper

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ナオト・インティライミの『いつかきっと』です。
番外編です。。冬夜君の恋模様を描こうかなぁ。冬夜君のヒロインは見てのお楽しみですよ。

4〜7話のタイトルを変更しました。
4話は嵐の『Happines』です。なんか明るい曲だから、ドキドキにあってるかなと解釈しました。
5話は中川翔子の『空色デイズ』。香澄とおたえとの部室での練習はこの曲です。恐らく文化祭でも歌ったのだと。。
6話はコブクロの『未来』。優人君が聴いた健君の曲はこれだったのでしょう。


11.5話 いつかきっと

side冬夜

 

文化祭1日目。

俺は今、休憩中だ。と言っても、1人虚しく歩き回る以外にする事がねーけど。女子達に一緒に回ろうと誘われたけど、あいつらの事あんまりしらねーからなぁ。。そういうわけで1人なのだ。

まあ、他にも理由がなくは無い。それは俺に好きな人がいる、ということだ。しかし、困った事に向こうは俺の事なんかミジンコぐらいにしか思っていないだろう。そもそも俺の存在を知らないかも。。

その人とは中3で同じクラスになったのだが、ハッキリ言うとあまり話した事がない!なんかいつもキョドッちまうんだよなぁ。それでもクラスが別々になってもたまに見かけたからな。向こう側は見つけてくれてないだろうけど。

だから、その人と一緒に文化祭を回れたらどんなに幸せだろうか……。例えばこの廊下の向こう側から1人で歩いて来るなんてこと、ないかな。

………………ないよな。

 

その事だけに頭を使っていからか、俺は下を向いて歩いていた。すると、誰かにぶつかってしまった。

 

「あっ、スミマセン………!」

 

そこにあるのは柱だった。

もしや俺の想っている人では……と少し期待した自分が恥ずかしい!

 

「柱になんか謝って、変な人ね」

突然、後ろから微笑混じりに声をかけられた。いや、名前は呼ばれてないけど柱にぶつかったのは俺くらいだろうからさ。

そして「誰だ?」と思いつつ振り返る。と言っても、この声は……

 

「し、白鷺!?」

あちゃー!やっちまったー!1番見られたくないところを1番見られたくない人に見られてしまった!!

 

「下を向いて歩いてたら、次は転げるわよ」

 

「えっ、あっ、いや!………き、気をつけます」

またしてもやっちまったわ。あーもう!なんでこんなにすぐキョドるんだよ俺は!他の女子なら大丈夫なのにぃ!

そう、俺が密かに想いを寄せている人物は今、目の前にいる白鷺 千聖だ。

とはいえ、この恋は叶わない。彼女は芸能人で、アイドル。俺は一般高校生。住む世界も違うし、アイドルは恋愛ができないし。だから、この想いは誰にも打ち明けないと決めていたのに……。なんで文化祭の日に限って。しかも白鷺は1人だし。

 

「……白鷺、1人なのか?松原とかは?」

 

「花音なら、後輩の子達に連れて行かれたわ」

へー。松原って後輩に知り合いがいたんだ。……って、今はどうでもいい!つ、つまり今、白鷺は1人って事か?なら、俺が誘ったらワンチャン…………。

思い切って言ってみよう。

 

「な、ならさ。お、俺と一緒に回らないか?」

 

「えっ……」

 

「あっ、いや!そういうんじゃなくて!俺、1人だからさ!」

 

「でも、噂とかになったりしたら……」

 

「いくらアイドルでも校内で男子と文化祭回る程度なら大丈夫だろ?」

いける。いけるぞぉぉぉ!!

 

「いえ、そうじゃなくて。漣君は噂になってもいいのかしら?」

あ、そうくるの……。いや、でも白鷺と噂になるのは願ったり叶ったりだ!

 

「お、俺は平気だぜ!今までにもそういうのあったし……」

これは本当の事だ。体育祭で二人三脚でペアになった女子と噂になった。くじで決めたのになんであーなったんだろ?

 

「まあいいわ。じゃあ一緒に回りましょ」

よっしゃああああああああああああああ!!!!!

超超超嬉しい。涙出そうだわ。

「でも」

 

「ん?」

まだ何か心配事があるのか?

 

「くれぐれも彼氏ヅラはやめてもらえると……」

えぇぇ。ガンガン彼氏ヅラするつもりなのに。こんなチキンの俺が想い人を誘えれたんだから彼氏ヅラくらい……。しかし、ここでOKしとかないと絶対に俺の気持ちがバレる。それだけはまずい。ならばこの申し出を受け入れるしかない。

 

「OK、そもそもそんな事俺みたいなチキンにはできねーよ」

うわー、自分で言ったくせに傷つくわー。

 

「ありがとう。じゃあ、行きましょ」

こうして白鷺との文化祭が始まった。

 

 

 

その後は時間があっという間に過ぎていった。

お化け屋敷に行き怖がる白鷺を見れたり、メイド喫茶に行き少し気まずくなったり、ダーツを全部真ん中に的中させようとしたら全然別の方に飛んでいったり、などなど。

 

ホントにたくさん笑った。

距離も縮まったかな。

 

「はぁ、この時間がいつまでも続けばいいのに……」

 

「今何か言った?」

 

「あ!いや、なんでも無い!」

そう言うと白鷺は首を傾げて、不思議そうに思っていた。その仕草、可愛い!!!

ホントにこの時間が永遠になれよ!

心からの声だ。しかしそんな事が起こるわけもなく、今から体育館で優人達のライブを見たら俺の休憩時間は終わる。はあ、鬱になりそうだわ。

そして体育館に到着した。

優人達のバンドが丁度始まったところだ。どうやら一曲目はオリジナル曲のようだ。

そして二曲目はカバー曲だった。曲名は『いつかきっと』。なんかこの曲、すっごい『青春』な曲だから俺、この曲好きなんだよな。そう思っていたら、

 

「え……?」

 

「ん?どうかしたか?」

 

「今『好きなんだ』って言ってたから……」

 

「…………へ?」

えっと……。え?えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!まじか!声に出てたのかよ!!早く訂正しないと……。しかし俺の口は開かず、無意識に彼女の手を取り、体育館から出て行き、別の場所に移る。あまり人気の無いところに俺は行った。そして俺は、

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、俺、好きなんだ!お前の事が!」

 

 

いや、俺何言ってんの!?こんな事、言うつもり無いのに!!

 

「初めて同じクラスになった時から好きだ!」

止まれ!止まれよ俺の口!しかし俺の意思とは裏腹に、

 

「お前の……君の声が好きだ。演技が好きだ。いつも、どんな役でもこなして。そこに俺は魅了されたんだ」

まだ止まらなかった。

「クラス替えして、別々のクラスになってからも、ずっと目で追いかけてた!」

止まれない。そして最後に。

 

 

 

「好きなんだ!!」

 

 

 

俺は白鷺の顔を覗き込む。

そこには明らかに困っていた白鷺がいた。

 

「…………ごめんなさい」

 

「……………………そう……だよな」

わかっていた。こうなる事はわかっていた。なのに俺はなんで告白なんかしたのだろう……。でも、後悔はしていない。

 

「なあ、因みに白鷺がアイドルじゃなかったら俺と付き合ってくれてた?」

俺はこの質問を投げかけたのは少しでも希望が欲しかったからだ。

 

「……いいえ」

…………だよな。脈ナシに決まってる。わかってた。わかってたんだ。

 

「わかった。ごめんな、時間とって。俺、そろそろ休憩終わるから戻るな。それと…………」

俺はそこで一旦区切ると、

 

「?何かしら?」

俺は白鷺の目をまっすぐ見て、右手の人差し指を立てて向ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いつかきっと……いや、絶対に『好き』って言わせるからな!!」

俺はそう言い残して教室に戻って行く。その道中。

何言ってんだ俺ぇぇ!!!クッソ恥ずい。あれじゃあナルシストじゃん!あれじゃあホストじゃん!!絶対ドン引きされたよな〜。

あー、もう。絶対気持ち悪い奴って思われたよ。

 

 

 

side千聖

 

「いつかきっと……いや、絶対に『好き』って言わせるからな!!」

そう言い残して漣君は帰って行った。

特に彼には好意を抱いていなかった。どちらかと言うと、見た目は遊んでいそうだなとも思っていた。

なのにあんな純粋でベタな告白をしてくるなんて……。

 

「不意打ちだわ……」

以前と変わらず漣君には恋愛感情は抱いていない。でも、少しだけ気になる存在になっていた。

 

お芝居でなら恋愛ものなんて幾らでもした事あるのに、現実で告白するとこうも違うなんて……。人ってあんなに真剣な表情で顔を紅くできるものなのね。

 

「あっ!千聖ちゃん!」

背後から私を呼ぶ声がする。

 

「花音!」

そこにいたのは友人の松原 花音だった。

 

「こんな所でどうしたの?」

花音が質問を投げかけてくる。

 

「ううん、何でも無いわ。……ただ、少し面白くなりそうだから」

 

 

 

 

 

 

 

〜おまけ〜

 

俺は優人に、白鷺に告白した事を話した。

「はあ!?告白した!?お前が!?白鷺に!?」

 

「う、うん。悪いかよ」

 

「いや、悪くねーけど。……以外だなって」

 

「え?なんで?」

 

「いや、お前の事だからそんな度胸ないだろって思ってたからさ」

 

「うぐっ……!」

どストレートに言ってきやがって。

 

「それはお前にも当てはまるだろ?優人」

 

「残念ながら、俺に好きな人がいた事はないし、これからもできるはずがない」

 

「……なんでそこまで言い切れんだよ」

 

「さぁな、もしかしてゲイなのかもな」

 

「えっ!!」

 

俺は思わず距離をとる。

 

「ハハハ、冗談だって。ただ、俺は誰かと一緒に人生を歩むつもりがないだけさ」

 

「…………高校2年生が何言ってんだよ」

 

「俺には誰かと歩み寄る権利なんか無いって事だよ」

 

「フーン、変な奴だな」

 

「お前には言われたく無いな。それより、なんで白鷺が好きなんだ?単にビジュアルか?それなら他にもいたんじゃないのか?」

 

「いや、ビジュアルとかじゃなくって。彼女の演技に惚れたんだ。白鷺の演技が、表情がとても綺麗で愛おしく思えたんだよ」

 

「フーン。で、気付いてたら恋に落ちてたと」

 

「うん、まあ、そんなとこだな」

 

「……………………」

 

「…………なんで黙り込んだんだ優人?」

 

「いや、青春してて羨ましいなぁって」

 

「お前も俺と同年代だろ」

 

「まあ、そうなんだけどさ……」

そう言っていた優人の顔は儚げだったことに俺は気付いていなかった。


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