Full Bloom 〜満開の歌声を〜   作:grasshopper

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長いです!!!

タイトルはこう書かれていますが、入りはほぼ遊びです。それにデートの部分も尺を取るために欲しかっただけです。重要なの最後です。




10話

side優人

 

雲なき日。それを日本人は『晴れ』を超えて、『快晴』と呼ぶ。今日はそんな日だ。

この青空は1つの青春の前触れだっのだろうか。

 

そんな空の下。

今日は待ちに待った文化祭。あと10分程で始まる。

なので文化祭実行委員(キング)がここで何か一言言うのだ。そして、それは冬夜だった。正直な話、押し付けられていたようだがな。

今、クラス全員が冬夜に注目している。

 

「正直……俺なんかが『キング』でいいのか、俺にはわからない。でも、一つだけ言えることは、俺は『生きたい』」

 

……………………は?

俺は謎に思った。は?もう一回言おう。は?『生きたい』?何故に今、そんなことを?今は文化祭の士気を上げようってことじゃないの?ほら、皆を見てみろよ…………って、あれ!?皆なんでそんなに真剣な表情で聴いてんの!?ツッコミたくないの!?

 

「生きて……この文化祭(ゲーム)を終わらせて……死んでしまった仲間達と……一緒に生きた仲間達を救いたい」

 

……………………へ?

いや、謎すぎる!?!?『死んだ』って誰が!?てゆーか!仲間って俺らのことだろ!?てことは死んだの俺達かよ!勝手に殺すな!!

 

「今はまだ救う方法がわからないけど……これだけは誓えるーー…………『皆が信じてくれるなら、俺は絶対に裏切らない』って事」

 

…………ちゃんといい事言うなぁ。やっとマトモな言葉を聴いた気がする。

 

「だから、この『キング』という役割を与えられた事に、ワクワクしてる俺がいる」

 

おお!士気上がるな!この後ホストするけどな……。(※執事です)

 

「皆の命を背負える事に、俺は誇りを感じている」

 

……………………はいぃ?

冬夜ー。大至急戻ってこーい。頭ぶつけたのかー。保健室に付き添ってやるぞー。

 

「その命を託してくれれば、俺は、どこまでも強くなれる」

 

 

???????????????????????

 

ごめん、謎が増えたわ。最早意味わかんねー。なぁ皆……って、アッレー。皆さんどうしてプルプルしてんの!?なんで「いいね!」とか言ってんの!?違和感無いの!?もしかして変なの俺だけ!?なんかの流行なのか?俺、遅れてる…………?皆、俺を置いてかないで!!!

 

「さぁ行こう。勝つのは俺達だーー……」

あ、売り上げ1位を目指すって事だよね!うん!きっとそうだよな!!

 

 

 

「生きるのは俺達だ!!」

『ウオオオオオオオオオオオオオオオオ!(クラス一同)』

 

 

 

 

 

いや、待てい!色々あったぞ!色々ツッコミ所あったぞ!

1番ツッコミたい箇所は最後にするけど。

 

まず一つ目、冬夜、どうした?色々……というか全体的に問題だらけだったぞ。流石の俺でもついていけないよ。「生きたい」とか「生きる」とか「死んだ」とか「救いたい」ったなんだったんだ!?色々謎すぎたよ!!

 

二つ目、最初からだが、文化祭実行委員を《キング》っていう当て字にしたのは俺の脳内だよな?お前に話してないよな?なら、なんでわかんだよ!?なんで知ってんだよ!?最早、サイコパスの域だぞ、冬夜!それに文化祭を《ゲーム》に置き換えるって狂ってるだろ!クレイジーだろ!

 

そして三つ目、この学校って女子の人数が圧倒的に多い。そしてこのクラスも例外でない。現に40人のクラスに男子は10人くらいしかいない。そのはずなのに…………女の子が「ウオオオオオオオオオオオオ!」とか言っちゃダメだろ!どうした現役JK!?

 

最後の四つ目、やっぱりお前だよ、冬夜!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今のセリフってどっかで聴いたことあるぞーーーーーー!!!!!

 

名言を悪用するなぁーーーーー!!!!!!!

 

 

 

元ネタなんだったっけ。

 

てかよ、少しはアレンジしろよな。まんまパクるのはアウトでしょ。

 

 

 

 

 

 

 

そんないつも通り(?)のクラスの雰囲気で士気は完全に上がった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

時は過ぎて文化祭が始まった。

早速シフトが入っていたので俺は接客に励んでいた。ただ、、、

 

「なんでこんなに客が多いんだ?」

俺は料理を取りに行くため、この教室の目の前の空き教室で料理を作っているので、そこに来ていた。そこには俺とシフトが全く同じな、春やその他がいた。そして俺は先程の質問をしたのだ。

 

「ああ、それはね、皆が優人と冬夜君のツーショット写真(執事姿)のチラシを前もって配ってたからだよ」

 

「へーー、、、っておい!肖像権の侵害だろ!ていうか学校側もよくそんな広告配る許可だしたな、オイ!それに、もはや、やり口がホストだろ!てゆーか!なんで俺らなんだよ!?なんで俺なんだ!?俺、イケメンでもないのに!!」

 

 

 

side春

 

はぁ、この男はまだ自分の事を理解しきれていない。

「何言ってんのよ。あんた鏡見た事ある?」

 

「あるよ。この死んだ魚みたいな目を、どうにかしたいと日中考えてるよ」

 

「わかってないんだね、優人は。あんた、この学校で1番イケメンって言われてるの、知らないの?」

半ば呆れ口調になってしまう私。

 

「…………またまたぁ。そんな訳ねーだろ」

 

「まあ、私も最近知ったんだけど、《花咲川学園イケメンランキング》ていうものが女子の間で存在するらしいんだけど……

 

5位・・・一ノ瀬 卓也(3年生)

4位・・・笹原 涼介(1年生)

3位・・・芽吹 健(1年生)」

 

「おおー、健ランクインしてんじゃん!」

確かにイケメンだと思うし、選ばれても当然だよねー。でも、理由は他にもあった。それはーー

「なんか、可愛い系でMっぽいけど、Sの姿もみてみたいって子がいるらしいよ」

 

「……健も苦労してんだな。ていうか誰がランキングつけたんだ?どうせ、誰か1人の偏見だろ?」

まあ、疑問に思うよね。

 

「男子の秘密裏に3年生の先輩方が高等部・中等部の両方の女子全員からアンケートをとったそうだよ」

 

「……マジかよ。極秘でよくできたな。因みに春は誰に入れたんだ?」

 

「死票だよ。陸君がいれば、投票してたけどね」

 

「あ、さいですか」

 

「続きを発表するよ。

 

2位・・・漣 冬夜

 

そして1位の栄光に輝いたのは………

 

咲野 優人!」

 

「………………………………」

ちょっと、間を空けないでよ。恥ずかしいじゃない。もしかして、まだ信じてないの?

 

「…………仮にそれが本当だとして、選考理由はなんなんだ?」

あー、それ気になる?気になっちゃう?

 

「後悔しても知らないよ」

 

「その程度で後悔はしないさ」

まあ、多分、後悔はしないだろうけど。優人の方はマトモなのばっかりだったらしい。問題は冬夜君だよ。ヤバかったらしい。

 

「じゃあ、ついでに冬夜君のも教えるね」

 

「ああ、頼む」

 

「冬夜君は、まとめ役だけどいじられキャラだし、その上、金髪で遊んでるっぽいっていう、そんな謎めいた、ミステリアスチックな所がいいんだって」

 

「はあ、あいつが遊んでる?ミステリアスぅ?なわけ。あいつはただのいじられチキンだろ」

ひどい言われようだね。本人がいないから……いや、優人は本人の前でも言ってるね。

 

「まあ、今の理由が半分の人らしいよ」

 

「へぇ、んじゃあ残りは」

これに答えていいのかな?いや、答えよう。私から聞かなくても、多分、他の人から聞くと思うし。

 

「残りは…………鞭で叩きたいそうです」

 

「………………大丈夫なのか?この学校」

ううん。全然大丈夫じゃないね。

 

「まあ、あいつはドM顔だしな。……で、俺が選ばれた理由は?」

さらっとドMって言われる冬夜君の扱いって。まあ、ドMっぽいけど。

 

「えーっとね。優人が選ばれた理由は、ギター弾いてる姿がかっこすぎてww、それでいてクールで(笑)、でも優しくて相談にも真剣にのってくれる。そして、仲良い人達だけに見せる面白い一面のギャップが最高!…………らしいよ」

前半は笑いどころしかなかったね。優人がクール?何それ!?こんなにもクールにかけ離れた人間はいないよ!」

 

「おい、声に出てたぞ」

あ、やってしまった。……まあ、でも

 

「優人はどう考えてもクールには見えないからさぁ」

 

「だから!それはお前も最後に言ったろ?仲良い人には面白い一面を見せる、って。それだよ、それ!それに俺、教室じゃ大人しくしてるだろ!」

む。

確かにそうかも。

まあ、そういう事にしといてあげるよ。

 

「おーい優人!早く戻って来い!人手が足りない!」

冬夜君が言いに来た。

 

「お!悪い悪い、ドMの冬夜」

あ、バカ!流石にそれは言ったらマズイよ!

 

「…………はい?」

冬夜君は疑問符を頭上に3つほど浮かべていた。当たり前だよね。

 

「いや、なんでもない!」

優人はそう切り返して教室に戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

「いや、料理持ってって!!」

 

 

 

side優人

 

春と話してからもう1時間ほど経っていた。

シフトもあと30分くらいで終わり、今日の仕事はライブだけになる。

このまま何事も起きずおわってくれ。てゆーか俺のシフトなかに知り合いくるな。知り合いくるな。知り合いくるな!

あれ?俺、誰か文化祭に行くって言ってたような……。両親とは離れて暮らしてるし、元々呼ぶ気なんて無い。

友達か?いや、中高一貫だから、いないな。いや、羽丘学園に……まあ、陸は来るよな。あいつはいいんだよ、あいつは!じゃあ他に誰が……。

っとと、客が…………じゃなくてご主人様orお嬢様がお帰りになられた。責務を果たさねば。

俺は礼のモーションに入ったので、顔は見てないが体型や服装からして女性だろう。

 

「お帰りなさいませ。お嬢さまあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

俺が叫んだ理由。それは俺が先程悩んでいた事に繋がった。今、目の前にいるのが俺の知り合いの5人だっからだ。

 

「優人先輩!来ましたよー!執事喫茶?そのわりには、ホストにしか見えませんよ!」

1人目が絶対先手の《電光石火》で俺のメンタルを削る。《電光石火》の割にはダメージ大きい!

 

「ゆーと先輩、カックイイ〜〜」パシャパシャパシャ

2人目が俺の写メを撮る。普通は最後の人が写真撮って、「何撮ってんだよ!」と言いつつ、笑いながら終わるというはずだが……。2人目で写メって最早後3人が何するか予想つかなくて怖いよ!《フラッシュ》の効果、恐るべし!

 

「あんまり先輩にトラウマ植え付けるなよ。せっかく、男っぽくなったのによ」

はい、今の言葉がトラウマですね、はい。ひどくね!え?何?元々そんなに俺、男っぽくねーの!?言葉の暴力……いや、言葉の《インファイト》だ。

 

「先輩!私もとっても似合ってると思いますよ!」

それはホストの姿がって事かな。そう聴こえたよ。そう聴こえたね。悪意しか感じられない。《悪の波動》だな。わざとではないんだろうけど、傷つくものがあったぞ。

 

ラスト1人だ。

俺のライフはもうすぐゼロだ!もう失う物は何もない!かかって来い!

 

「…………似合ってる。……かっこいい………多分」

…………《不意打ち》だ。……メンタルHPが1残った。

最後の1人は少し恥ずかしげに言った。顔も少し赤らめて。そんなに恥ずかしいことだろうか。でも、あまり、男子と関わりを持ったことが無いらしいし。

しかし、その態度はこちらも照れさせた。普段、女子と話してたりして照れることは無いのだが、この子にそういう事を言われた事がなかったからだろうか。

 

「お、おう。…………お世辞でもありがとな、()

そう、お帰りになられたお嬢様方は《Aftergrow》の5人だった。

上から順にひまり、モカ、巴、つぐみ、そして蘭だ。

 

「お世辞じゃない……本当にかっこいい……と思う」

なんかこんな蘭初めてだから、調子狂うな。

 

「まあ、取り敢えず座って、なんか頼めよ」

俺はテーブルに案内して、メニューを渡す。

「あと20分くらいで終わりだから、その後俺でよければ案内するけど……どうする」

 

「わっかりましたー!それまでここにいますねー!皆もそれでいいよね」

ひまりが4人に聴くと揃って頷いた。

 

「了解。暇になったら言ってくれ。話相手するからよ」

 

「ゆーと先輩、それって完全にホストじゃないですか〜〜?」

 

「うぐっ!それだけは言うなよ。せっかく忘れてたのに……」

モカは容赦ねーな。流石は俺と同じ波長を持つ者だな。

 

 

 

20分後。

俺は春と一緒に蘭達を案内しながら、あと30分くらいで来るであろう陸を待とうと思っていた。

しかし春が、

 

「優人は蘭と一緒に回ったら?」

はいぃ?何でそうなったんですかぁ?経緯を教えてほしいですなー。

 

「ハーイ、私もそれにさんせ〜〜」

ちょ、モカ!?

 

「ちょ、ちょい待ち、何でそうなるんだよ。俺と蘭が2人だけで回ったら変な噂たつかもだろ?」

 

「でも蘭はここの生徒じゃないよ」

 

「いや、でも、意外と羽丘の生徒来てるぞ。うちと羽丘は結構仲いいから」

 

「なら、優人は男子1人に対して女子6人で文化祭回りたいの?そっちの方が噂経つと思うなー」

何でそこまでして蘭と俺を2人きりにしたいんだよ!

 

「ぐぬぬ、、、わかったよ!でも、蘭はいいのかよ?」

俺は蘭に尋ねる。最早、頼れるのは蘭だけだったからな。

 

「別に私はどっちでもいいし……」

らーーーーーーーーん!!!何故だ!何故なんだ!思わず劇場版のコナン君みたいになったじゃないか。

 

「うぬぬぬぬ……ハァ、仕方ないな。2人で楽しもうぜ、蘭」

 

そうして、俺達は文化祭を回り始めた。

まず、初めに、外で料理を売っている場所に向かった。

 

「蘭、なんか食いたい物あるか?奢るよ」

 

「いいですよ。なんか、いっつも上がってもらってるし……」

 

「それは主にモカだろ?お前は遠慮しすぎなんだよ。それに俺、無駄に金貯めてるから、こういう時以外に使い道ないんだよ。だから、気にすんな」

 

「そういうことなら…………あれ、食べたいかも」

 

そうして俺達は軽食を挟んで、再び校舎に入った。なぜなら、俺には行きたいクラスがあったからだ。

そのクラスに到着した。そこは百合さん達のクラスだ。何をしているかというと、『お化け屋敷』だった。

 

「ここ、入るの……!」

蘭が若干不安げにしていた。

 

「怖いのか?」

 

「な…………!そんなわけないじゃん!///」

あ、図星だな。顔真っ赤だから、バレバレだわ。

 

「悪かった、悪かったって」

 

「それに……たかが偽物じゃん」

なのに入り口を直視できてないよね?

 

「じゃあ入るか」

 

「あっ!ちょ…………待って!」

そんな蘭の言葉も聞かずに俺はズカズカと入り口を入っていった。蘭もゆっくりとついて来る。

 

中は暗くて、いかにも『出そう』な雰囲気がすごい。

すると、「うぁぁぁぁ」とうめき声が聞こえた。

「おー、結構リアルだな?」

俺は素直に感心していた。しかし、、、

 

何か背中に当たった。いや、俺は動いてないから、何かが近づいて、俺にぶつかったのだろう。しかし、腕は両方ともホールドされていた。つまり、抱きつかれていた。

一体何のお化けなんだよ!と俺は思いながら振り向いた。

だが、抱きついていたのはお化けではなく、蘭だった。

 

「ちょ、蘭さん!?どうなさったんですか!?!?」

いや、まあ、怖い以外には解答がないけどね。それよりも背中に柔らかいモノが……。

 

「…………蘭、怖いんだろ?」

 

「はぁ!?べ、別に怖くなんかないし!」

 

「なら、解放してくださいな」

 

「……………………やだ」

やっぱり怖いんだろーが!

あー、もう。しょうがないな。

 

「わかったよ。外に出るまでこの体勢でもいいよ。たがら、さっさと出るぞ〜」

そうして再び前に進み始めた。その後は会話をしなかったな。いや、蘭ができる状態でなかったわ。

 

「いやー、文化祭のお化け屋敷にしたら、凄いいい出来だったなぁ。なあ、蘭?」

 

「別に……あれぐらい平気だし」

 

「えー。じゃあさっきまで俺に抱きついていたのは誰だったんだろ?」

 

「〜〜〜!///」

蘭は言い返せない。むしろ、顔を真っ赤にしている。我に返って俺に抱きついてたことを改めて考えると、恥ずかしくなったのか。あるいは、大きな態度をとった割にはこわがった事を恥じているのか。

そのどちらかはわからないが、俺は心でそっと決意する。

俺は少しからかうと決めた。あんなにこっちは動きにくい体勢でゴールしたんだから、そのくらいの権利はあるよな。

 

「じゃあさ、蘭。平気ならもう一回入ったら?今度は1人で」

 

「………………ひ、1人で入っても楽しくない///」

そうくるか。ここで「じゃあ俺も入るよ」と言ってもさっきの二の舞になるだけだ。

それにしても蘭の顔はまだ赤い。

ここら辺でからかうのはやめとくか。

 

「ハハハ、悪かったな、意地悪言って。少しからかいたかっただけだよ」

 

「…………先輩」

 

「ん?どうかしたか?」

 

「嫌い」

グハッ。

ダメージでけー。蘭さんや、軽い冗談だからやめてくださいよ。そんな、どストレートに嫌い宣言させられたら、死ぬぞ?

 

「フフッ、冗談だから。その…………嫌いじゃないから」

 

パアァァァァァァァァァァァァ。

蘭さん眩しい!凄い光って見える!心が今、スーってなってった。

いやー、ホント焦ったよ!そして、ホント安心した!!

嫌われてなくて良かったーー。

 

「でも」

蘭が口を開く。その言葉の続きはーー。

 

「喉が渇いたから、飲み物奢って?」

なんだよ、そんな事かよ。焦らすなぁ。

 

「いいよ。なら、後輩がカフェやってるから、そこに行かないか?」

 

「わかった」

そうして俺は教室へ向かう。その教室は香澄達のクラスだ。あんまり知り合いのいる所で蘭とうろうろすると後で質問攻めにあうかもしれないが、やはり昨日の一件から、その後、どうなったかが気になる。

 

そして1ーAに到着した。教室内に入ると、

「よーっす。来たぞー」

 

「あ!先輩!」

香澄のシフトのタイミングに来てしまったか。1番メンドくさい。

まあ、一度入ったからには店を出る事も出来ないので、椅子に座り、飲み物を2人分。そしてライブ後に食べる用のパンを注文した。

 

飲み物が出てくる。

「なあ、香澄。沙綾とはあの後どうなった?」

俺が質問すると香澄は少し表情を暗くして。

「沙綾、今日来てないんです。お母さんが倒れたみたいで」

 

「えっ……!」

 

「だから、沙綾は病院に行ってるんです」

 

「…………そっか」

俺はこれ以上、何か言おうとも思わなかったし、それ以前に言葉が見つからなかった。

俺はカフェオレが飲み終わったころには蘭も注文した物を飲み終わっていた。

店を出ると、

 

「沙綾って、先輩のバイト先の……」

先ほどはほとんど喋らなかった蘭が口を開いた。

 

「ああ、そうだよ。さっきの香澄……猫耳っ子と沙綾が昨日喧嘩をしたんだ」

すると、不意に俺のスマホが鳴る。電話をかけて来たのは春だった。今は香澄と沙綾の事を考えているので通信拒否しようかと思ったけど、大事な事かもしれないので、電話にでた。

「もしもし春。どうした?」

 

『いや、そろそろ陸君が来るから合流しよーってだけだよ』

 

「あ!もうそんな時間か!悪い!今、そっちに向かうから!」

 

俺は電話を切って、蘭の方に向き直る。

 

「蘭、そろそろ陸が来るから春達と合流するぞー」

 

 

 

その後、春と合流して、蘭達は5人で回ることになった。俺達はその間自分達のクラスの手伝いをしてた。もちろん、裏方をな!ホストなんてゴメンだ!

すると廊下がやけに騒がしくなって来た。

恐らく陸が来たのだろう。陸が花咲川学園に来ると女子生徒が興奮する。逆に俺が羽丘学園に行くと同様の現象が起きる。

 

俺と春は調理をしている教室から出る。やはりそこには陸の姿があった。

「よお、陸。朝練ぶりだな。お前のせいで凄い騒ぎだぞ」

 

「それはお互い様でしょ。優人」

俺と陸が会話してるのを見て、余計に興奮する女子達。多分、今この廊下に100人はいるな。

「そんなことより陸、春、移動しようぜ」

2人は即決で頷いた。

人の多さを利用して、なんとか逃げ出された。

 

しかし、香澄と沙綾の問題はどうしたものか……。やっぱり、1番丸く収まるのは沙綾が《Poppin'Party》に入ることだろう。沙綾はまたバンドをやりたいはずだ。だから、あと1個きっかけがあれば……。

 

「優人、どうしたの?」

不意に春の声がした。

 

「ん?ああ。なんでもないよ」

 

「そっか、ならいいけど」

どうやら、心配してくれたらしい。

 

「体調悪かったら、言えよ」

陸も心配してくれていた。今、俺ってそんなに深刻そうな顔をしてたんだ。

 

「あ!先輩!」

新たな声。これは男子のものだった。俺は声のする方を向く。

 

「おお!健じゃん。どうかしたか?」

声の主は後輩の健だ。何か用でもあるのだろうか?生憎、俺は別件について考えているから、陸か春に聞いてもらえ。

 

「いえ、見かけたんで声をかけただけです。こんにちは優人先輩、春先輩、と……」

あ、そっか、陸と健は会ったこと無いんだったな。

 

「ああ、会うのは初めてだね。僕はドラムの桃月 陸だ。優人から話は聞いてるよ」

 

「あ!俺は芽吹 健です!」

 

「いやー、優人が迷惑かけてるみたいでゴメンね」

おい、陸。迷惑ってなんだよ。迷惑って。

 

「いえ、迷惑なんて最近はここ2、3日はかけられてないですよ」

ブルータス!お前もか!健、俺一様先輩だからな。

 

「それにしても先輩方のバンドを見るためにテレビなんかも来てましたよ」

 

「え!ホント!?」

春が大きな声で聞き返す。

 

「はい。お陰で案内とかで忙しくて。また、これから色々仕事もありますし」

健の話を聞きながら、俺は未だに香澄と沙綾の件について考えている。

 

「へえ、健は生徒会に入ってるんだ」

陸が聞いた。俺、その情報教えて無かったっけ?

 

いや、そんなことは今はどうでもいいんだ。どうする。何かできることはあるか?今から沙綾を連れて来ようと思ったら時間もギリギリだな。それに絶対に来るとは限らない。むしろ、来ない確率の方が高い。どうする、どうする…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あーーー!もう、わかったよ!)

 

そして俺は決意する。

 

「健」

俺は申し訳ない気持ちなんぞは全て捨てて、陸と春と健の3人の話の腰を折った。

 

「どうかしましたか?」

 

「お前ってチャリ通だったよな?」

 

「はい、それがどうしました?」

 

「自転車貸してくれ」

俺は短く言う。

 

「いいですけど、どうしてですか?」

 

「…………行かなきゃ行けない場所があるんだ。頼む!」

俺は頭を下げる。

 

「ちょ!先輩、貸しますから顔を上げてください!」

 

「ホントか!?」

俺は健のりょうかたをがっしりと掴んだ。

 

「は、はい」

健はそう答えながら鍵を差し出した。

 

「サンキューな!」

俺は今すぐに行かなくてはならない。なので、俺は急いで駐輪場まで行こうとしたその時。

 

「「優人!」」

陸と春の声が重なり、俺を呼んだ。そうだ、このふたりには理由を説明しなければならない。だから、俺は口を開け、単語を言おうとすると、

 

「それが優人の選択なんだね」

春が小さく、それでいてしっかり届く声で言い放った。

2人には香澄達のことは話したが、今の俺と健のやり取りだけで察したのなら、それは凄いことだ。

しかし、今はそんなことよりも、

 

「ああ」

 

「じゃあ、約束だ」

次に口を開いたのは陸だ。

 

「なんだよ?」

 

 

 

「時間内に戻って来ること。でも、君1人で戻ってくるのはなしだよ」

 

 

 

「ああ、わかってる!」

俺は答える。そして、走り始める。

駐輪場に着き、自転車の鍵を開け、こぎ始める。

 

 

 

目指す場所は病院。

 

 

 

 

 

空は相変わらず雲1つない。だけど風もなかった。

 

 

 




最初の冬夜君のくだりで1000字超えたよ。あそこは遊びで書こうと思っただけなのに…………。

あの最初の部分の元ネタ(というか丸々パクった)が何かわかっていただけたら、嬉しーです!解答を感想欄に書いていただけると祈っております!!!

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