ハイスクールD×D オン・ステージ!   作:魔女っ子アルト姫

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アーシアが呉島家に泊り始めてから約5日、最初こそ遠慮し仰々しかったか流石に慣れてきたのか貴虎や光実ともフレンドリーに挨拶や話を出来るようになって来ていた。二人は最初貴光が彼女を連れてきたと大騒ぎをしつつそれを祝福しようとしたが貴光の言葉で残念そうにしつつアーシアの滞在を認めるという珍事があったりもしたが概ね平和な時間は流れ続けていた。

 

「屋敷には慣れてきたようで安心しているよ俺は」

「はい。貴虎さんも光実さんも良くしてくださってますし、勿論貴光さんも。日本に着たばかりなのに皆さんのような方々にお会い出来たのは本当に良かったです!」

 

とある昼下がり、調停者としての一仕事を終えた貴光は街を案内する為にアーシアと共に散歩に出ていた。アーシアも最初あった時のような修道服ではなく呉島家で用意した服を纏っている、優しく明るい彼女に似合うような白い洋服は雰囲気ともマッチしてとても愛らしく可愛らしく映る。誰もいない公園のベンチに腰掛けた二人は仲良く雑談に花を咲かせている。

 

「そういえばさっきアーシアは子供の怪我を治したがあれって…」

「治癒の力です。神様から頂いた素敵なものなんです」

 

何処か自慢げに語りながらも笑顔を浮かべているアーシア、その表情の裏には打算的な考えも何も無い。ただ怪我をした相手を目の前にしたら癒してあげたいという純粋無垢な優しい物、此処まで優しく清らかな人間は今の世の中探してみても滅多にいないだろう。聖女、そのように言うに相応しい少女言えるだろう。

 

「あの貴光さん、一つお話しをしてもよろしいですか?」

「何だ、俺で良ければ聞くが」

「出来る事なら私は、もっとあのお屋敷にいる事は出来ませんでしょうか……?」

 

思わぬ言葉に面食らってしまう、アーシアにとって呉島家で過す日々は酷く暖かく楽しげな時間だった。時折顔を見せる来客、神である事を隠しているナチュレやパルテナ、そして人間に化けているハデスや翼を隠したピットとの触れ合い。出来る事ならばこれからもずっとそうしていたいという思いが強くなってきてしまった。初めての友人とも言える存在の貴光、そんな彼とも一緒にいたいと思っている。そんな必死の告白に貴光は笑って答える。

 

「ああ好きなだけ居たら良い。なんだったら教会が建て直されても家から行けば良いんだよ、兄貴から俺が言っておいてやるから」

「あ、有難うございます!ああでも、やっぱり嬉しいです……!!」

 

顔を赤らめながら喜ぶその姿は何処か子供っぽい、しかしそれに思わず頬が緩んでしまう。そんな彼女を見つめていたが急に周囲の様子が急変して行くのを感じ取った。反射的にベルトを巻くと頭上から一人の女性が降りてきたが明らかに人間では無いオーラを発しているのを感じ取りアーシアを庇うように前に出る。

 

「探したわよアーシア……何処に行っていたのかしら?」

「レイナーレ、さま……!?」

「何時まで経っても教会に来ないと思ったら高々人間と宜しくやってるなって偉くなった物ね」

 

貴光に庇われているアーシアに向けられている怪訝と怒りの視線、それに身を震わせるアーシア。

 

「人間、その子を渡しなさい。それなら命だけは助けてあげてもいいわよ」

「そんな気は最初からねえんだろ、なあ堕天使様よ」

「あら分かるのね……気が変わったわ、殺してあげるわ」

 

手を掲げながら威圧的なオーラを向けてくるがこの程度で威嚇とは笑わせると言いたげに鼻で笑う。ハデスやメデューサのオーラに比べれば可愛い威嚇。

 

「貴光、さん……わ、私……私は……!!」

「アーシア、何も言わなくて良い。少なくとも俺は君の味方だ、此方に向かってくる敵ならば対処するだけ」

「レイナーレ様……私は……私は、知りました……教会が、人を殺してるのを……!!」

 

振り絞られた言葉にレイナーレという堕天使は一瞬表情を強張らせ、貴光は表情を固くした。アーシアは呉島家に滞在している時夜中の散歩に出かけた事があった、貴光から送られたお守りを持ちながら歩いていると神父服を着た男が一軒の家に入っていくのを目撃しそこで神父が人間を殺しているのを見てしまった。だがそれは何かの間違いだと否定し続けたがそれは現実であると翌日の朝分かってしまった。貴虎が読んでいる新聞だった。

 

『むっ……この近所で事件があったらしい……』

『事件?』

『ああ。近所の家近くで血痕が見つかったらしい、物騒だな……』

 

後でその新聞を見てみた所自分が神父が入っていた家の近くだと判明し間違いないと確信出来てしまった。故に教会には戻りたくない、人を殺すような所には戻りたくないと思ってしまった。それが呉島家に残りたいという思いを加速させたのだろう。

 

「そう知ってしまったの、でも無駄。貴方の神器は私の計画には必要不可欠な存在、だから来なさい。さあこっちに来るのよ!」

「行かせるかよっ……!!」

 

口調を強くして命令するレイナーレに対して声を大きくして貴光は言い返した、そして同時に闘志と怒りが沸き上がってきた。悪魔だけではなく堕天下とはいえ元天使までもが人間を殺しているのかと怒りを覚える、これは悪魔を対象にして締結された同盟に新たな目的が追加される恐れが出てきた。そして同時にこいつは此処で確実に消すと決意する。

 

「おいてめぇ、俺は決めたぞ。堕天使お前を消す!アーシアには指一本触れさせねえぞ!!」

「人間が大きく出るじゃない、人間風情が私と戦おうって言うのかしらぁ!?」

 

人間程度の力で自分に勝てる訳無いと酔っているレイナーレ、確かに普通の人間ならば勝てないだろう。だが自分は普通の人間ではない、神々の同盟の調停者であり戦士だ。堕天使程度倒せなくて何が自然王に仕える者かと意志を強く持った時頭上から何かが落ちてくる、慌てながらそれを受け止めるとそれは真っ赤なロックシードであった。

 

「こいつは……見た事も無いロックシード……!?」

『その通りよぉ~ん、いやぁ~出来たよでけた♪』

 

同時に頭の中にハデスの陽気な声が響いてくる。

 

「(ハデス様!?そ、それじゃあこれってあの時言ってた!)」

『このハデスさんが育て上げたロックシード、早速良いタイミングで贈らせてもらったよ。ほらやっちゃいなよ!』

「感謝するぜ!!んじゃ早速使わせてもらうぜ!!」

ミント!!

 

ロックシードの錠前を外しつつベルトへとセットする、セットするだけでも凄まじい力を感じる。冥府の力が身体の中に流れ込んでくるかのような感覚だが体を蝕む訳でもなく唯力を与えるだけのような感覚。

 

『ロック・オン!』

「変身!!」

『ソイヤ!!ミントアームズ!! 冥府神ハデス 現世降臨す!!

 

身体を包み込んでいく巨大なミントのような鎧、青い鎧武を上から侵食するかのように鎧を形成して行く。赤いミントは鮮血のような真紅に染まっており、風に靡く赤黒いマントとその手には巨大な鎌が握られており冥府から魂を狩りに来た死神のようにも思える。

 

「な、何よそれ!?神器!?で、でも何なのよその気配は!?」

「成程…冥府だからミントか。確かミントは冥界に咲く草だからな、納得だけど……鎌ってイメージに合わねぇな、あの神に」

「た、貴光さんが変身しちゃいました!?」

 

驚くアーシアに下がっていろと忠告を飛ばしながら前へと出る貴光、それには巨大な鎌(ミントシックル)を保持しつつゆっくりとレイナーレへと接近して行く。

 

「さあ、貴様を冥府へと引きずり込む!」

「冥府ですって……?ふざけるのも大概にしなさい!!」

 

大鎌を構える貴光へと向けて光で生成された槍を投擲する、強い光の力を宿してた光の槍は真っ直ぐと此方へと突き進み鎧武を突き刺そうとするが高速で迫ってくる槍を鎧武は鎌で切り払う。冥府神ハデスが育て上げたミントロックシードによって生み出されたミントアームズ、その武器はハデスの力の一端を宿していると言っても過言ではなく高々堕天使の攻撃程度は容易く砕いてみせる。

 

「私の槍を易々と砕くだと!?」

「流石だぜ、凄いパワーだ!」

 

この大鎌を凄まじい威力を秘めているのも関わらず全く重さを感じる事無く振るう事が出来る、それなのに振るう度に重量感を感じ破壊力を実感させるという不思議な鎌。軽い筈なのに重い事を実感できるという摩訶不思議な武器だがストレスを全く感じずに振えるのはなんという快感なのだろうかと思わず笑ってしまった。

 

「そぉらぁ!!」

 

ミントシックルを大回転させながらそのまま力を込めて振るってみる、するとロックシードに描かれた真っ赤ミントのような衝撃波が生み出されレイナーレを飲み込まんと突撃していく。それを防ごうと光の槍を次々と投げていくがそれすら飲み込んで衝撃波はレイナーレに炸裂した。

 

「な、なんてパワー……!!」

「気に入ったぜこれ……!こりゃ使いやすい……!!」

 

想像以上の得物に気分がどんどん良くなっていく貴光は次々と斬撃と衝撃波を飛ばしていく、先ほどの一撃でその強さを思い知ったレイナーレは回避に徹していくが回避したはずの攻撃は途中で進路を変え背後や真横から自分へと向かってくる。どんだけ回避しても何処まで追いかけて身体へと直撃してくるという異常事態にレイナーレはどんどん疲弊して行く、それを好機と見た貴光はカッティングブレードを倒した。

 

ミントスカッシュ!!

「さあこれで止めと行くぜ……!!」

「ひっ、ひぃぃっ!!!」

 

疲労と恐怖が感情を支配したのかレイナーレは急速に上昇し遠くへと飛び立とうとするが貴光はそれを逃がさない。ロックシードからエネルギーが鎌へと供給されていくのを感じエネルギーで満ちた鎌を渾身の力で振るい途轍もなく巨大な斬撃をレイナーレへ向けて放った。遠ざかっていくレイナーレへと迫っていく斬撃、視認が難しくなっていくが遠くで爆発を確認された。

 

「よし当たった!」

 

完全に倒しきったかは分からないがこのアームズの必殺の一撃を受けたのなら重傷を負っているに間違い無い。それならばアーシアに近寄る事も無くなるだろう、彼女の近くには自分がいるという事を大きく刻み付けられたことだろう。変身を解除しながらアーシアへと振り向いてニッコリと微笑むとアーシアも釣られるように笑った。

 

『ウッヒョオオカッピョいいねぇぇ!!冥府神ハデス・現世降臨す!!(キリッ!)だってさだってさwww。いやぁ照れちゃうなぁ!!』

「(……せめて俺に聞こえないように言ってくださいよハデス様、なんか台無しですよ。でも助かります。これから、お世話になります)」




ミントロックシード

冥府神ハデスが作り上げたロックシード。成長の過程で冥府の環境とハデスの力を浴びた結果その力の一部を変身者が使用出来るようになった特殊なロックシード。死神のような大鎌、ミントシックルは使用者がストレスなく使えるようになっているが破壊力は抜群。
ミントとはギリシャ神話の冥界に咲く草である為採用された。

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