ハイスクールD×D オン・ステージ!   作:魔女っ子アルト姫

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「はぁっ……なんだろうな、やっぱり記憶が飛んでる気がするな……。兄貴達と校舎を出た直後の記憶が如何にも……んんっ?」

 

何かが違うと訴える体と心、記憶の相違があると感じるが何が如何してそうなったのか全く分からない。唯記憶する価値もない程にただ学校から出ただけなのかと、どうせ気にするほどの事でもないと思うがそれでも気になってしまう。しこりのように気になるそれだが授業参観後、兄に言われて散歩に出て一歩足を踏みしめるたびにそんな違和感は消えていく。故に気にする必要もないのだろうと断定し次第に気にしなくなっていく。

 

「まあいいか、ずっと圧し掛かってた授業参観も終わったことだし伸び伸びしよっと」

 

川沿いの道を歩きつつ身体を伸ばすと小気味良い音を立てながら骨がなる、あまり良い行為ではないらしいが気にせずにやり続けている行為。気分の転換や気分がいい時にはついついやってしまう動作でもある。川面に魚が跳ねるのを視界の端で捉えつつも涼しげな空気に気分を更に良くしながら歩き続ける。歩みを一切止めずにいると不意に周囲の雰囲気が変わっているのが理解できた。変わっているとというよりも何かが来た事で変化していると言った所だろうか。

 

「よぉ兄ちゃん、お前さん面白い力を持ってるらしいじゃねえか」

 

背後から掛けられた声に全神経が集中した、同時に瞬時に戦極ドライバーが出現し腰に自動的に装着される。手の中にあるのは〈ナツメヤシロックシード〉、例えどんな相手だろうとパルテナから与えられた奇跡で対処が出来る。振り向きつつロックシードの上を外そうとするがそこに居たのは何とも言えない男がいた。金髪なおっさんに見えるが妙に羽織っている甚平が似合っている、不適に構えた面構えからは厚意的、興味的とも言える視線が向けられている。

 

「……何だお前」

「おっとそう構えてくれんな、そいつが話しに聞く奴か……」

 

男の視線は戦極ドライバーとロックシードに向けられている、最初から男の目的はそれであったかのようにも思える口ぶりに警戒心が更に掻き立てられる。

 

「本当に神器の感じはしねぇんだな……興味、深いな。そう警戒すんなよ、俺はお前と事を荒立てるつもりで来たんじゃねえよ」

「誰だてめぇ」

「堕天使『神の子を見張るもの(グリゴリ)』、その組織の頭をしている総督のアザゼルってもんだ。宜しくな呉島 貴光」

 

堕天使という言葉だけで警戒心が一つ繰り上がる。堕天使はアーシアを傷つけようとした奴の同族、それを倒した自分に対する恨みを持っていても可笑しくはない上に神の子を見張るもの(グリゴリ)の総督という事によって警戒心はMAXまでに引き上げられた。以前討伐したコカビエル、あれも確か幹部だった筈。その上司が自分の前に現れたという事は敵と識別して当然とも言える。よって貴光が取った行動は―――

 

ナツメヤシ!!ロック・オン!』

「お、おいちょっと待てって……!?」

「変身!」

『ソイヤ! ナツメヤシアームズ!! Miracle of Judgment!!

 

変身する事だった。コカビエルと同じ組織、即ち自分の敵対組織。その総督が目の前に居るという事は明らかな敵対行動、コカビエルの仇討ちかそれともコカビエルを撃った力の源であるドライバーとロックシードに興味があるのか。どちらにせよ戦闘準備に入る事に変わりはない。アザゼルは戦闘体勢に入った貴光を見て戦う意志がないことを示そうとするが貴光はナツメロットを構えたままの体勢を解かない。

 

「待てよ俺は戦うつもりはないぞ」

「信用出来る材料があると思っているのか。俺は今までも堕天使を討ち取った事がありコカビエルが所属していた組織の者でありその上司たる総督、奴以上の手練れが自分の前に現れた。即ち俺に対する攻撃の意志があると判断する、大方俺の力を狙っていると言った所か。誰が貴様などに渡す物か、奇跡を持って堕ちし天使を浄化する!!」

 

そう言われて納得してしまい頭を欠く。確かにコカビエルと同族であり同じ組織に所属していた、そんな存在がいきなり現れたのならば仇討ちや同類と思われて戦闘準備に入られても相手を攻める事は出来ない。コカビエルは戦争狂で戦いを至上の喜びとしていた、それを相手にすれば今まで堕天使を相手にした事があっても同じようなかもしれないと思うだろう。しかもこっち(アザゼル)はいきなり背後を取るように現れたのも相手に警戒心を抱かせる要因になってしまっている。明らかに此方に非がある。

 

「あっ~……確かにそりゃこうなるわな。すまん悪かった、背後を取りいきなりあんな事をすればそうだな。謝罪する、だが俺をコカビエル(気狂い)と一緒にするな。これでも俺はあれと比べるとマシだぞ」

「……謝罪は受け取る、だととしても警戒は続ける。今の発言からお前はコカビエルの性格や危険性を熟知していたのにそれを放置していたとも取れる。そんな奴を完全に信用なんぞ出来ん」

「ご尤も意見だな。それについてはこちらの不備と認めるしかねえな、あいつは俺の行動パターンを何十にも読んだ上で計画に及んだ、だがそれを止められなかったのも俺の力不足だ。すまねぇ」

 

頭を下げつつもアザゼルは貴光が想像以上に頭が回り今までの事や会話から得られる情報を引き出して相手に向ける武器に出来る力を持つ事を確認しつつそれに素直に認める。酷く理性的な精神を持った相手、慎重に言葉と行動を吟味し選択し実行すればこの最悪の場面からの好転も十分に可能と光を見出す。

 

「謝罪と攻撃の意志がない事は認める、だが解除はしない。俺の中での堕天使は敵だ」

「それで構わない、俺としてもそれをこの目で見られるからメリットの方がでかいからな」

 

ナツメロットを地面に突き刺すように置きつつそこに手を置く、何時でもその気になれば攻撃が出来るという意思表明でもある。だがアザゼルとしてはメリットの方が大きい、元々鎧武の力を見たかったアザゼルとしてはそれをこの目で選定する事が出来る事に加えて相手が自分の話を聞く事に身を置いてくれた。これほどのメリット得られている。

 

「にしても天界の力を感じるな……しかもそりゃ〈光の女神〉と謳われるパルテナの力に酷似してやがる。一介の人間が持てる訳もない力だな、流石は自然王の者って訳か。だがあれを倒してのはそれじゃねえな?出来れば見てぇんだが駄目か?」

「見せるメリットと理由と意味が無い」

「そりゃそ~だ、兄ちゃんいい交渉役になれるぜ」

「これ以上の役職はごめんだ」

 

思わず本心からそういってしまった。それを聞いて若いのに苦労しているのかという事とあれだけの力を持っているのだから自然軍の中でも重要な立ち位置にある事を把握する。

 

「俺がお前さんの前っつうか後ろだったけど兎に角来たのは顔を会わせたかったのとコカビエルを止めてくれた事に対しての礼を言いたかったからだ。あのままだったら戦争が起きてた、それは俺も望まねぇ。あんがとな」

「俺はナチュレ様の命令を実行したまでだ」

 

それでもだと頭を下げるアザゼルの行動を見て貴光も折れそれを受け取る。

 

「んでもう一つ、お前さんコカビエルを倒したろ。その事で悪魔も天使共も堕天使(俺達)も随分と興味が引かれてる訳でな。そこで俺達三大勢力が一同に介して行う会議に出て貰えないかって事を聞きに来たんだ」

「三大勢力の会議……?」

「ああ。今回のコカビエルの事は大きな問題になっててな、俺の責任を追及しがてらこれから世界を荒らすかもしれない根っこについて話すつもりだ」

 

真剣な表情で語るアザゼルの言葉を聞きながらそれをナチュレに流す貴光、話自体は悪くない。悪魔も参加するならばそれを監視出来るという名目とナチュレ、パルテナ、ハデスという三大神が同盟を組んだということを公表し牽制をすることも出来る。それに世界を荒らす根というのも正直気になる話だ。

 

「無理にとは言わない、俺からしたら身内の馬鹿を止めてくれた事だけでもう感謝で一杯だ。どうだ、考えてもらえねえか?」

「……」

『(貴光よ受けるのじゃ、三大勢力の会議というのは興味が引かれる。見逃す訳にも行かぬじゃろう)』

「(承知しました)……。自然王ナチュレ様より神託があった、参加しよう」

「おおマジで!?助かるぜ」

 

安心したように息を吐くアザゼル、用事は済んだからもう姿を消すという。だがその前にもう一度感謝の意と先程の非礼に対する謝罪をするとどこかへと消えて行った。世界を変えるであろう会議、天使と悪魔と堕天使の会議へと参加する自然・天空・冥府の同盟の調停役。それが生み出すのは平和か混沌か。それは神ですら計りしれない。




呉島 貴光

呉島三兄弟の次男。駒王学園2年でダンス部に籍を置いているが幽霊部員状態。同盟の調停役に任命されるほど各勢力からの信頼が厚い。特に冥府のメデューサから強い執着心を抱かれており顔を合わせるたびに魂束縛の術式を受けているがナチュレとパルテナの奇跡が中和している。貴虎の影響か厳格でマナーに厳しいがノリは良い方だが平然と外道な行動を取ったりするのでよく光実からそれで弄られる。

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