ハイスクールD×D オン・ステージ!   作:魔女っ子アルト姫

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「さあキリキリ白状しろ、今なら弁護士を俺で依頼してやる」

「おい俺起訴される前提かよ!?」

「それ以外何がある」

 

昼休みとなった時、しっかりと話を聞く為に貴光は一誠と共に昼食を取ることにした。周囲の女子からは何で一誠が貴光と食事をするのかと凄まじいヘイトを集めていたがそれが一誠の事項自得なので完全に無視する事にしよう。

 

「いやさ告白されたんだよ付き合ってくださいって!!」

「成程、好感度を上げ続けて相手からイベントを起こすのを待ったのか」

「おいまてお前まで二次元乙っていうのかよ貴光ぅ!?」

「二次元乙」

「言うなよ!!」

 

一誠を片手間にからかいながらも黙々と食事を続ける、今日も今日とて弁当の味は素晴らしいに尽きる。そんな弁当を静かに味わうのに相応しい時間な筈なのにそれを曲げて話を聞いてやるのだから感謝される事はあっても文句を言われる筋合いなどない。だが携帯に取られた写真まで見せ付けられれば全てが嘘だと決め付ける事も難しくなってくる。

 

「……はぁ、まあ2割程度は信じてやるか」

「2,2割かよ……まあ良いや!松田や元浜と違って少しは分かってくれるんだからな!」

 

全く信じておらず話半分以下ぐらいには分かっておくという事なのに一誠は酷く嬉しそうだった、他の友人からは全く信じられず裏切り者と言われ殴られる対応に比べれば冷やかだが確かに信じてくれたという事実は何処までも暖かく嬉しくなるものだった。

 

「仮にも彼女が出来たと言うのだったらこれからはセクハラ行動は止めるのだな、一瞬で愛想を尽かされ捨てられるぞ」

「す、捨てられる……い、嫌だ絶対に嫌だ!!お、俺は止める、絶対に止めるぞ!」

 

余程その彼女とやらに入れ込んでいるらしい、気持ち的には冗談半分で捨てられると言ったのに顔を青くしながら震わせている。変態で覗きなども平気でするくせに妙な所で純情なところがある。これで多少自粛するようになり大人しくなって貰えれば万々歳、このまま友人が性犯罪者となれば自分が働く時に不利になるような材料になり得ない。

 

「見た目だけは良いんだ、少しは自粛すればモテただろうに……」

「俺からしたら性欲を開放しない事の方が可笑しいんだ、お前だってあるだろ!?」

「あるにはあるが周囲の状況を考えろ」

「モテる男には俺達みたいな奴の事なんか分からないか、まっ俺には夕麻ちゃんがいるけど~♪」

 

上機嫌に笑っている姿を見ると如何にも腹が立って来る、なんでこんな奴と友人をやっているのか疑問符すら出てくる。性格には赤の他人以上友人未満なのだろうが……。そのような事を考えていると携帯が鳴る、光実からだ。

 

「なんだ光実」

『兄さんこれからダンス部に来ない?新作の感想を聞かせて欲しいんだ』

「分かった、直ぐに行く」

 

通話を切りながら残った弁当を平らげると手早く片付けると妄想にふけっている一誠に蹴りを入れるとさっさと弟が所属しているダンス部へと足を向けて走り出した。

 

「貴光今日はありがとな、良い意見を沢山貰えたぜ!」

「気にするな紘汰、光実が世話になっている礼だ」

 

放課後、授業も既に終了し日も暮れ始めている頃貴光の姿はダンス部の部室内にあった。貴光は何の部活にも所属していない訳ではない、籍自体は一応ダンス部に置いているが事実上の幽霊部員、庶務のような事をしている。運動神経も高いが如何にも踊る事が苦手だがダンス自体は嫌いではない。他の部勧誘から逃れる為に部長である3年の葛葉 紘汰の行為に甘える形で入部した経緯がある。他のメンバーはまだまだ踊り足りないと踊っているが二人はそれを眺めながらジュースを飲んでいる。

 

「俺だってミッチーには助けてもらってるばっかりだよ。ほらミッチーって頭良いじゃん、俺の行動をよく止めて貰ったり助言とか貰ってるんだ」

「ああ、お前は直感で動くタイプだからな」

「じ、事実だから何とも言えないな……」

 

目の前で音楽をバックにしながら鮮やかにステップを踏んでいる弟の表情は本当に楽しそうだった、明るく美しく自分がした事が無いような表情を……。自分には無い物を弟は持ち合わせている、だがそれは当たり前だ。人は同一の個体など存在しない、例え何かが欠如していたとしてもそれを受け入れるしか術は無いのだから。だから自分は何とも思わない、人は違っていて当たり前なのだから。

 

「紘汰、俺はそろそろ行く。適当に散歩でもして帰る」

「んっもう行くのか?」

「ああ。良い加減先輩らしく威厳を身につけたら如何だ」

「へへっじゃあな!」

 

後ろ向きにその声に応えながら部室を出て行くと既に日は暮れ暗くなっていた。メールによると貴虎は帰って来られないらしい、几帳面な兄らしく懇切丁寧な説明文と自分に向けられた謝罪が載っていた。長いが自分に対する思いとすまないという感情が乗っているのが感じられる。恐らく光実へに向けられたメールにも同じような事になっているだろう、取り合えず気にしていない事と頑張りすぎて身体を壊さないようにという事を記載して返信する。

 

「……久しぶりにポテチとコーラでも買って徹夜でゲームとかアニメとか見るか?」

 

貴虎は良くも悪くも自分の事を見てくれている、だが私生活でも夜更かししてると介入してきて身体に悪いから早く寝ろと言ってくる。リアルタイムで見たいという感情が分からないのだろうか、だがそんな兄は今日はいない。好き勝手に起きて置く事にしよう、光実と徹夜でアニメ鑑賞会というのも楽しいかもしれない。そう思った時携帯に連絡が入った。

 

『貴光、夜更かしはするなよ』

「……兄貴って何、エスパーか何かなの?」

 

兄からの釘刺しにがっくり来つつも取り合えずお菓子だけは買って寝る時間まではアニメは見ようと決心しつつコンビニへと向かって行く。矢張り兄は只者では無いという事を改めて認識するしかなかった。

 

「んっ……?」

 

コンビニからの帰り道、何か周囲の空気が変わって行くのを感じ取った。空気が重く息がしづらい粘度の高い粘液のように変わっている事に、気分が悪い気分を害する物。それに苛立ちを感じながらも身体の中に侵入してこようとして来る物を感じそれを気迫を込めると跳ね除ける。

 

「はぁ!?この俺様特製の結界の中で無事である上に毒を無力化した!?どうなってやがる!?」

 

耳障りで気分を悪くする声が聞こえてきた、振り向くとそこには醜悪で無様な人間では無い異形な物が電柱の上に立ち此方を見下ろしていた。明らかに人間ではない、背中に生えた黒い羽のようなものが良い証拠。あれが人間であるなら余程頭の狂ったコスプレイヤーだろう。

 

「貴様かこの気持ちの悪い物を張ったのは」

「ああんっ!!黙っていろ下等種族、てめぇに喋る権利はねえ!今からこの俺に食われるんだからな!!」

 

狂乱するかのように高笑いをしながら涎を撒き散らすそれに表情を険しくしながら買った品物が入った袋を地面に置く。折角買った物を台無しにされては堪らない、懐から何を取り出すとそれを腰に当てた。その途端に腰に固定される。

 

「だったら食ってみろ、この俺をな」

 

腰のホルダーのようなものから手に収まるサイズの錠前のようなものを取り出した、それはオレンジのような装飾が成されている。そして貴光がその錠前を構えると高らかに声が聞こえた。

 

オレンジ!

「―――変身!」

 

錠前の錠が外れる、同時に空間にも変化が生じる。貴光の頭上の空間が裂けていく、丸く抉られ開けられた穴。そこからは橙色をした巨大な果実のようなものがゆっくりと降下して行く。同時に勢いよくベルトへと嵌められた錠前。

 

『ロック・オン!』

 

ベルトについている小刀でそれをカットするとそれは二つにわれ大きく音を立てた。同時に身体を真っ青なスーツのようなものがコーティングして行く、身体を守る膜のようでありながらも強い力を発している。そして降下して行く果実は貴光の頭に被さると皮を剥くかのように展開して行き胸、肩などに鎧として広がって行く。同時に生成されたオレンジの果肉を象ったような剣を握り締める。

 

『ソイヤ!! オレンジアームズ 花道オンステージ!

 

「な、何だ貴様!?何者だ!!?」

「さあ私の舞台(ステージ)に乗ったんだ、踊ってもらうぞ!!」

 

 

 

「兄さん!如何したの、なんか遅かったけど」

「悪い悪い。変なのに絡まれてな」

「変なの?不良か何か?」

「似たようなもんだ」

 

15分後、家には何か変わらぬ貴光の姿があった。何事も無くただ日常どおりの彼の姿が。だが先程まで彼がいた場所には何かが乾いたような後と何かの匂いが僅かに残っていた。

 

「今日は貴虎兄さん帰らないみたいだし、夜更かししちゃう?」

「止めておこう。俺もしようと思ったけど思った時に電話が来て早く寝ろって言われた」

「……嘘でしょ?」

「マジ」

 

 

『如何じゃ貴虎、妾が授けたロックシードは?』

「大きな力を発揮しています、先日も弟の貴光が一体撃破したようです」

『ほう。おぬしの弟は有能じゃのう』

 

誰もいないはずの空間にいる貴虎、彼に問い掛ける声がある。何もいない誰もいない筈のそこから声が聞こえてくる、威厳に満ちておりながらも何処か幼くもあり凛々しくもある何かを孕んだ不思議な声。それに尊敬を払っているのか貴虎は静かに頭を下げながらその言葉を嬉しそうに受け取った。

 

「私には勿体無いほどに優れた弟です」

『心も良い、自然を敬う心もある良い男。それをよもや一時の感情の昂りで捨てる愚かな女もいたものよ』

「本当に、そうですね」

 

腹の中にぐつぐつと煮え立ってくる怒りを必死に抑えるように我慢している貴虎に声は冷静になれと掛ける。それと同時に周囲に光が四散し貴虎の周囲を取り巻いた、光の粒子は仄かに香る匂いを纏いながら貴虎の中へと入って行き気分を落ち着けていく。

 

「申し訳ありません、お手数を掛けます」

『気にするでない。本来は妾がやるべき事を押し付けておる、このぐらいの事などやってやるわい』

「……一つ、願いを言っても」

『良いぞ。申してみよ』

「……貴光と光実を見守ってやってください」

 

心からの願い、自分が働いている理由は等しく家族である弟達のためである。親の為でもあるがそれ以上に弟達のためというのが大きい。辛い時悲しい時、何気なく自分の傍にいてくれた。弟達が大切だ、光実が大事だ、貴光が大事だ。弟達には幸せになって、欲しい。そう全身全霊を込めて祈った時、声は高らかに笑った。酷く可笑しそうに。

 

『何を申すかと思えば……お主達兄弟の事はこの事を頼んだ時からずっと見守っておるわ!いざと言う時は妾が守る、安心せい!!』

「……感謝します、―――様」

 

光が途切れると貴虎は立ち上がり爽やかな笑みを浮かべながら歩き始めた、家路へ、弟達が待つ家への道を。




最後に載せ忘れがありましたので修正しました。

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