ハイスクールD×D オン・ステージ!   作:魔女っ子アルト姫

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恐れていた日が遂に訪れてしまった。どれだけこの日が来ない事を望んでいた事か……。光実は来る日も来る日も無駄な努力と分かっているのに神に祈りを捧げ続けていた、絶対に来ないでくれと。貴光は逃げようと調停役の仕事を入れようと冥府や天界に逃げ込もうとしたが即決で追い返され強制的にスケジュールを開けさせられ絶望した。当日、二人は今にも死にそうな表情で起床し共に食事を取ると覚束無い足取りで学校へと向かった。そう今日は……駒王学園の授業参観日である。

 

午後の授業参観の時間帯となった頃教室の後方には生徒の親御さん達がちらほら姿を見せ始めていた。教室内の生徒には来たのかと呆れたり頭を抱える生徒やカメラを構えている親に頭を抱える物、親に手を振っている生徒などといるが貴光と光実は背後を見て\(^o^)/となりつつもうやけくそ気味に手を振っていた。貴光の教室には人間に姿を変えながら笑っているハデスと微笑ましそうにこちらを見つめている貴虎、光実の教室には落ち着いた大人の女性的な服装に見に包んだパルテナと笑いを浮かべているナチュレが居た。

 

「そちらのお父様も授業参観ですか?何方のお父様?」

「呉島 貴虎と言います、呉島 貴光の家族です。そして私は貴光の兄です」

「ええっ!?お、お兄さんですの!?」

「アッハッハ、やっぱり間違えられちゃったね貴虎君。君風格と威厳ありすぎだもんね~」

「もう慣れましたがね」

 

一応26歳な貴虎だが過ごした来た環境と仕事の影響か風格と威厳を身に付けてしまい見た目的にはやり手のベテラン、30代後半か40代に見られる事が多く貴光や光実と一緒に居ても兄ではなく父親と間違われることが圧倒的に多い。本人としてはそれだけ威厳が身についていると解釈し気にしない事にしているらしい。

 

「(マジで居やがる……アッハッハッもうどう~にもな~れ☆)」

「……矢張り来ない方が良かったか?すまん貴光……私もナチュレ様には逆らえんのだ」

「まっこのハデスさんは面白そうだったから来たんだけどね♪」

 

「(ナチュレ様とパルテナ様、ですと……?アッハッハッハこの世に神なんていないよね~♪違うね、神様だもんね☆)」

「あら光実君ったら壊れかけてますね」

「やれやれどんだけ来て欲しくなかったんじゃ…」

「では貴光君と一緒に……(〈精神安定の奇跡〉!)」

 

「「(ちくしょぉぉおおお!!!!!精神が直ったよくそぉぉぉお!!!!)」」

 

今日ほど貴光と光実がシンクロした日も無かっただろう。因みにやけくそになった事なのか、二人は通常の約3倍の力を発揮し授業参観で活躍してしまった。周囲からは家族に良い所を見せようとしていると認識されているが実際はもうどうなっても良いやという開き直りである。

 

「「……死にそう」」

「すまん二人とも…私もナチュレ様に逆らう訳には行かないんだ……」

「「よしナチュレ様、後でアームズのテスト付き合ってください。満足するまで」」

「うぉい!?お主ら妾の事を何だと思っておる!?主じゃぞ!?あ・る・じ!!!何平然とサンドバックにしようとしておるんじゃ!?」

 

授業後、そのまま放課後となり部活がある生徒以外は帰宅する事になった為二人は全員合流して帰る事になったが昇降口近くで魂が抜けかけていた。今日はダンス部は休みな事もあって確りと光実の姿もあるが普段は確り物で冷静なはずの彼さえも授業参観で参っていた。そんな心の疲れさえもパルテナの奇跡に回復させられてしまいもうこの憤りを何にぶつけたらいいのか分からなくなっていた。

 

「まあタカミー君は良い出来だったねぇ。英語の授業なのに粘土使ってイメージの具現化とかビックリしたよ」

「思わず私も心の中でそんな英語があって堪るかと思いましたからね」

「此方も英語でしたけど同じような内容でしたね。光実君の作った物のクォリティは高かったですね」

「うむ中々の物じゃったぞ」

 

それなりにお褒めの言葉を受けつつ無い筈の疲れを大いに感じながら身体を引きずるように歩き出す二人に続くように歩く神々と貴虎、事情を知っている者からしたらとんでもない光景である。校門近くで人だかりが出来ているのが見える一体何が起きているのかとそちらに視線を向けるとなにやらカメラのフラッシュが焚かれまくっていた。

 

「何だあれ」

「う~ん?うわっタカミー君にミッチー君、後ナチュレちゃんも見ない方がいいよ。教育に悪い」

「ハデス様の至極真っ当な言葉に驚きを禁じえませんが私も同意見です」

 

一番身長の高いハデスが目線をやると普段から楽天的且つ気まぐれ屋なハデスが一瞬本気で表情を凍らせ真面目な声色で忠告を送ってきた、同時にパルテナも困惑しつつ頭痛でも覚えたのか額に手をやりつつそれに同調する意見を述べた。思わずそれに困惑しているとナチュレが貴光の肩に上りつつそれを見た時、人だかりの一部が割れその先が見えてしまった。

 

そこに居たのは黒髪ツインテールの美しい女性が魔法少女チックな服装を纏いながらノリノリで笑顔とポーズを作りながらカメラに向かっている場面だった。如何見ても良い大人がである。いや大人がそういうものをきるのは悪いとは言わない、コスプレを趣味にする人も居る。だが……此処は公共の場である学校、そこでそれをやるのは……。そしてその女性が此方へとウィンクを飛ばした時貴光と光実、そしてナチュレは素でドン引きしつつ貴虎は二人の前に立ちはだかり視線を遮るようにしながら必死に二人の視界に入らないようにガードしハデスはナチュレを貴光から下ろし自分の背後に匿いパルテナは必死にナチュレに落ち着くように呼びかける。

 

「二人とも見るな!いいか忘れるんだ、今から1分間の間の記憶消去を行うんだ!いいか忘れるんだ!お前達はあんな大人になるな!!!マナーも守れない上に家族に凄まじい恥を掛けるような大人になるな!!!!」

「「………………今日は、なんて最低の日なんだ……」」

「正気を保つんだ貴光ゥ!!光実ェ!!!」

「ナチュレちゃんも忘れるんだOK?」

「ナチュレ落ち着いてください、あれは頭が可笑しいから出来るんです。常識が欠如している証です家族がこの後どんな目で見られるのかも考えずにここに来て調子に乗っている愚か者なんです。あんな格好で家族が来たことの羞恥心と平然と撮影に応じている事の羞恥心、この後自分がどんな事になるのかも理解出来ない家族に対する憤りさえも分からないほどの愚か者なんですだから落ち着くのです」

「……何じゃあれ……?理解、不能……」

 

その時、その撮影会モドキによって沸き立っていた周囲が絶対零度に等しいレベルで凍りつき静寂が周囲を支配した。既に授業参観に兄と主であるナチュレと同盟相手の神が来ている事で精神的に参っている所に現れた衝撃によって呆然とし正気を失いかけている弟達を必死に正気に戻そうと大声を張り上げながら本気で心配している貴虎と珍しくシリアスな声でナチュレに忘れるように言い聞かせるハデス、事実と冷静になるように促すパルテナに囲まれている混乱しているナチュレ。

 

「うんやっぱり悪魔は滅ぼそうか」

「同感です、さあ早く帰りましょう。貴虎君、光実君を。ハデス様は貴光君を」

「OK。さあしっかりしてねタカミー君」

 

改めて同盟の目的を見定めてしまったハデスとパルテナは同盟を組んだ事に確かに確信を得つつそれぞれが呆然としてしまった物を抱えながら学校を去っていく。残された凍り付いた空気が解凍されるのは凄まじく時間が掛かったのは言うまでもあるまい。


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