ハイスクールD×D オン・ステージ!   作:魔女っ子アルト姫

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光実と貴光によって絶望的とも言える情報が与えられてから時間が過ぎていく。日に日に調停役としての仕事が増し平日に学校に足を運ぶ事すら難しくなってきている貴光は久しぶりの休日に街に繰り出し全国チェーンのファーストフード店である皇帝バーガーに入り、そこの名物メニューである皇帝バーガーセットを食い漁っていた。本場アメリカ並のボリュームのハンバーガーは食べ応えがあり先日から何も食べていない貴光からしたらセット一つでは足りないので追加注文を取って追加が来るまで繋ぎとしてポテトを食べている時、目の前の席に一人の男が腰掛けた。

 

「何をやってるかと思えば……学校に来ないで暢気に飯か」

「んっ……おおっ戒斗、お久。これでも色々忙しいんだよ……」

 

席についたのは同じく駒王学園の生徒で紘汰と同じく3年でダンス部に所属しているが紘汰とは別のダンスチーム『バロン』を作っており紘汰と光実が所属する『鎧武』とは何かと競い合っている事が多い。自分にも他人にも厳しいストイックな性格をしているが最後まで面倒を見ようとする優しい一面も持ち合わせている為か学園では非常に人気が高い。余談だが最近ペットとして亀を飼っているらしい。

 

「面倒な役目を押し付けられてよ…もうストレスと疲労が溜まる一方で嫌になっちまうぜ……」

「それなのに差し入れを贈る余裕はあるのだな」

「たはははっ……いやぁ幽霊部員だけど一応部員だから。顔出せないんだからせめてこの位は……ね」

 

呆れつつもコーヒーを口にする戒斗、貴光が忙しく学校に来れない事は承知している。ダンスの腕前自体はそこまでではないが身体能力や性格面を戒斗は評価しており彼としては珍しく友人認定をしている。口自体も悪いが貴光の事を心配しているのだ。

 

「自然王、とやらの仕事がそんなに大変か」

「まあな……っておい待て、お前今なんつった!?」

 

思わず聞き返した、今戒斗はなんと言ったのだろうか。自分の聞き間違えだろうかと思ったが慌てている自分の表情を見て笑っている戒斗の表情を見る限り間違いではないようだが確りと彼の言葉として聞きたい。一体如何言う事なのかと……そう思っていると戒斗は懐からある物を取り出した。それはバナナを象ったロックシードだった。

 

「お、お前……」

「俺も自然軍に入る事になった」

「お、おい何で……!?」

「……数日前、葛葉と舞が悪魔に襲われた」

 

戒斗は静かに語り始めた、何故自然軍に入ったのかを。

 

―――数日前、ダンス部の活動で鎧武とバロンのダンスバトルをした後チームリーダー同士が互いのチームの問題点や反省点を出し合い更に上手くなる為の会合をしようとしていた時の事だった。3人揃って紘汰の家でそれを行おうと向かっていた途中だった、周囲から急に人気が無くなって行った事に不審に思っていると空から何かが舞に向かって襲い掛かってきた。

 

『舞あぶねぇ!!』

『キャア!?』

『なんだっ!?』

 

舞を助けように舞を抱き込んで地面に伏せた紘汰と伏せた戒斗が見たのは黒い翼を持った悪魔だった。それは舞の命を狙っているらしく舞目掛けて襲い掛かってきた、それから舞を守る為に立ち向かったが歯が立たずに舞を守ろうと逃げるので精一杯だった。

 

『しまった!!葛葉、舞!!』

『舞っ!!』

『キャアア!!』

 

囮をしていた戒斗をすり抜けた悪魔が舞いに向かって腕を振るった時、紘汰は身体を張って舞を庇ったがそのまま舞ごと吹き飛ばされて壁に激突した。その衝撃で二人は気絶してしまった、舞に怪我は無かったが紘汰は頭部から出血するという怪我をしてしまった。

 

『おい、おいお前らしっかりしろ!!』

 

名を呼んでも帰ってこない返事と焦る戒斗を見て嘲笑う悪魔に戒斗の中に怒りが沸きあがってきた、何故二人がこんな事にあうのか。許せなかった、だが自分ではこの二人を守りぬく事は出来ない事に対しての怒り。二重の怒りを戒斗を突き抜けた時頭の中に声が響くと同時に手元にベルトとロックシードが落ちてきた。

 

『これはっ……!?』

『―――話は後じゃ!貴光の友人よそれを腰に巻き、ロックシードを使うのじゃ!!そうしなければこの場は切り抜けられぬぞ!!』

『貴光の事を……!?良いだろう誰か知らぬ声、その誘いに乗ってやる!!変身!!』

バナナ!〉

 

決意を胸にしながら立ち上がった戒斗、ベルトを、戦極ドライバーを腰に押し当てると瞬時に固定される。それと同時にドライバーのプレートに何かが刻まれていく、それが意味するのは戒斗の力となるという証。運命さえも超えて行き貫いて歩いていける力の証明。セットしたロックシード、ドライバーから流れてくる力に一瞬驚きつつもこれならばあれを倒せるという不思議な実感を与え安心を感じるがそれを振り解き、安心すら力に変えて行く。

 

〈Cone on!! バナナアームズ Knight Of Spear!!

 

『な、何だそりゃ!?バナナ、バナバナナ!!?』

『バナナではない、俺は……バロンだ!!』

 

バロンとなった戒斗はロックシードが生み出した武装、バナスピアーを持って悪魔と戦った。初めての悪魔との戦いなのに好戦的な性格やダンスで培った運動神経が幸いしてか一歩も引かぬ戦いを展開する事が出来た上にバナナアームズの性能を引き出し続けるという天性の才覚を開花させた。そしてそのまま悪魔を圧倒し最後はバナスピアーで悪魔を貫き倒すことに成功した。

 

「そんな事が……それで紘汰と舞は?」

「自然王が記憶操作をし、精神汚染を起こした通り魔に襲われたという事に置き換わっている。悪魔という存在をまともに受けては日常生活に支障を来す、との事だ。二人は無事だ、安心しろ」

「そっか、良かったっ……」

 

思わず脱力した貴光の元へと追加の皇帝セットが届けられる。切り替える為にオレンジジュースを喉へと流し込むと状況を整理をする。戒斗は紘汰と舞といる時に悪魔に襲われたがその時にナチュレによって戦極ドライバーとロックシードを手に入れ悪魔を倒し、そのまま自然軍へと入った。なんとも凄い経歴だ。

 

「自然王から今夜悪魔狩りをしろと言われている、お前も付き合え」

「おまっそんなキノコ狩りみてぇに軽く言いやがって……まあいいや付き合ってやんよ」

 

その夜、街に蔓延っていたはぐれ悪魔の半数が狩られた。生き残った悪魔は精神疾患でも起こしたのかただただバナナが……オレンジが……と呟き続けていた。


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