ハイスクールD×D オン・ステージ!   作:魔女っ子アルト姫

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「コカビエルの反応、完全に消滅……気持ちの良い奴じゃなかったけど、強かったな……」

 

ミントアームズの必殺級の攻撃を受けて爆発四散したコカビエル、その姿は未だに頭に強く残っている。異常なほどに戦争という行為に心酔し固執していた堕天使、その強さゆえに自分が傷つく事さえなかったがここで受けた傷が与えたのは戦争らしくなってきたという喜びか、それとも自分が生きているという実感なのかはもう聞きようはない。奴は死んだ、自分が殺したのだから。

 

「兄さん、やったね」

「おう」

「「イエーイ」」

 

駆け寄ってきた龍玄と拳をぶつけ合いながら勝利した喜びを分かち合う、辺りを見回して見るとグランドは酷く荒れている。こんな事で翌日のグランドは確りと使えるようになるのだろうか、それとも臨時休校にしてその間にグランドの整備でもするのだろうか。そんな思いを抱きながら周囲を眺めていくとゼノヴィアとイリナが放心したような表情をしながら項垂れていた。

 

「仮にも女があんなアホ面するなよ……ああうんないわ」

「流石兄さん、事情とか一切関係なしにディスるとかそこに痺れない憧れない」

「おう黒ミッチーそこに正座しろ」

 

ゼノヴィアとイリナがあそこまで放心しているのはどうやらコカビエルが関係しているらしい、光実が一誠を足止めしながらリアスに尋ねた所コカビエルが二人の戦意喪失を狙ったのか神は既に死んでおり不在であることを暴露したらしい、それによって二人の心がへし折れてしまいあんな事になってしまったとの事。

 

「はぁ~ん……まあ如何でも良いけどさ、ぶっちゃけ他の陣営が如何したとか神がいないとか如何でもいいわ。俺達の主であるナチュレ様は健在だからな、んじゃ帰るか」

「そだね、頼まれてたコカビエルは倒したしね」

 

迷う事無くサクラロックシードを展開しサクラハリケーンを出現させると乗り込んだ。

 

「ちょ、ちょっと待って!!何で貴方は私達を攻撃したの!?如何して協力の申し出を断ったの!?」

 

叫ぶように問う、それに続くように一誠も続いた。アクセルを回そうとしていた鎧武が応えようとしたが龍玄がそれに応えた。一誠とリアスの周囲を射抜くように放たれた龍砲の弾丸を襲わせながら冷たく怒りに満ちた声を上げた。

 

「僕達は悪魔が大嫌いなんだよ……それに自然王が同盟を組んだ理由も悪魔にある。それに兵藤先輩、アンタは兄さんの言葉を無駄にした。それに悪魔にされただけなら良かった、でもふざけた目的と理由で従うなら僕は許さない。次、兄さんの厚意を無駄にしたら……僕がお前を殺してやる……!!!」

「光実……置いてくぜ」

「今行くよ」

 

先を行く兄を追いかけるようにサクラハリケーンのエンジンを動かす弟、最後に一度追いかけようと歩いてくる一誠を威嚇するように空に向けて引き金を引くとそのまま走り去って行った。

 

「……俺は……俺は…」

「イッセー…貴方は」

「部長何も言わないでください……なにもっ……」

 

修復のしようも無い深い深い亀裂、もう友人には戻れないと知る一誠はただただ悲しさと悔しさに暮れながら地面を見つめるしかなかった……。

 

 

「おおっ帰ったか、お疲れさん」

「「ただいま帰りましたナチュレ様」」

「見事じゃったぞ。ほれ夜食を作っといたぞ」

 

帰ってきて出迎えてくれたのはエプロンを着けながら器に夜食のおにぎりと野菜スープを盛り付けているナチュレだった。鼻腔を擽るような美味しそうな匂いが胃袋を刺激し音を鳴らした、それに笑いながらも席に突くと早速と言わんばかりと料理に齧り付いた。絶妙な塩加減が更に食欲を刺激してくる。

 

「うっまっ!流石ナチュレ様!料理王!」

「自然王じゃ、自然王。じゃが自然王はあらゆる食物や料理に精通する事も出来る、ふふふふっ料理王も悪くないのぉ……」

「本当に美味しいですよ。有難うございます態々」

「よいよい。働きをしてきたものには正当な報酬、これ常識じゃ。それじゃあ食べ終わったら寝るのじゃぞ。光実は学校、貴光は明日も調停役としての仕事があるからの」

「「は~い」」

 

そう言いながら扉を開けて屋敷内の自分の部屋に向かっていくナチュレ、すっかり人間の生活に馴染んでいる神というのもなんだか妙な話である。一応神としての家は確りあるのにこの家の部屋に向かう当たり酷く人間くさい、まあそれがナチュレの魅力とも言えるのだが…。

 

「兄さん、明日も調停役って大丈夫なの身体」

「身体は大丈夫だ。ナチュレ様の飯には身体を活性化させて疲れを取る効果もあるからな、それに行く先々の飯も美味いから悪く事ばっかりじゃねえよ?」

「でも疲れたとか凄い言うじゃん」

「たりめえだ、冥府がどんだけキツいと思ってんだ。大体メデューサさんのせいだけどな」

 

貴光のストレスの原因の大体は自分を狙っている冥府のメデューサが原因、素直に自分が虜になる訳もなく露骨なスキンシップなどでこちらの心変わりを狙っているのか最近は特に接触が増えてきている。それが心労となっている。

 

「あ~あ……授業参観も近いっつうのに嫌なもんだ」

「そういえばもう直ぐだったね、でも僕らには関係なくない?」

「いやあるんだよ……何せ兄貴とナチュレ様、そしてハデスさんとパルテナ様まで見に来るからな……」

「はははっ兄さんってば嘘が下手なんだから……えっマジ?」

「マジ」

 

思わず手に取っていたおにぎりを落としてしまう光実、二人の回りに纏わりつく沈黙の空気。

 

「今回、兄貴も気合入れて仕事やってスケジュールを空けてるらしい……マジで来るぞ」

「で、でもナチュレ様とかは冗談だよね?嘘だよね、嘘だって言ってよ兄さん……!?」

「お、俺だってそう思いてえよ!!でもマジで来るんだよ!!そう言ってたんだよ!!!」

「…神よ、なんという事をしてくれるのでしょうか!?僕達に慈悲を!!」

「その慈悲を与えてくれる存在が来るんだけどな」

「言わないでよ!!?」


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