ハイスクールD×D オン・ステージ!   作:魔女っ子アルト姫

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信じ愛している人の闇を見た時、人は壊れてしまう。それをある男は15歳の時に体験した。急逝した父、それが残した借金。それを払う為に残された母と兄と共に働いてきた、少しでも母を助けたいとバイトを始めた。日を跨ぎ夜遅くに帰って来ることも多かった。それでも家族の為と頑張っていた。母に給料の6割を渡し残りの金で自分の事をやりくりする日々、節制と我慢の日々。それでも家族の為と努力していた……。だが

 

「えっ……?」

 

その日、給料日だった。それは本人としても楽しみだった。月の稼ぎの内母に渡すのは大部分、それを渡す時母は感謝してくれる、心の底から安堵しながら此方に向けた感謝をくれる。それが嬉しかった、自分が家計を助けているという実感もそれを加速させ喜びと働いてきた甲斐があったと疲れを癒していく。その反面友人とも満足に遊べなかったりしたが後悔はなかったのに……その日入った給料は少なかった。店舗で事故などが発生しそこまでバイトが出来なかったからだ。それでもしっかり働いた分、自分の取り分が無くなろうとも全部渡そうと渡したのに帰って来たのは母の怒声とビンタだった。

 

 

―――なんでこんなに少ない、普段ならもっとあった。

 

―――自分で使い込んだんだろうこの馬鹿息子。

 

―――なんで母を助けようとしてくれない!?

 

 

理由を説明しても聞き入れてくれずに激高する母に少年は困惑した。殴り蹴るの暴行に加えて役に立たないという罵詈雑言は心を抉っていく、母は稼ぐ為に土曜日まで働いている。時には日曜日にも、だからストレスが溜まっているのだろうと一瞬思ったがそれでもこれは酷すぎると感じた。なんで、自分の今までの働きは助けじゃないのかと。終いには親子の縁を切るとまで言われた。

自分はそれに同意した、もう如何でも良くなってしまった……。何の為にバイトしていたのかさえも……。その後頭を冷やせと部屋に放り込まれ外から掛けられた鍵、出る事さえも出来ない自分は絶望に打ちひしがれ同時にこんなところに居たくないと思った。荷物を纏めてながら母への感謝を一度する―――

 

 

「―――。―――ん、兄さん。貴光兄さん!」

「……ハッ……!?」

 

何度も何度も自分を呼び掛ける声に思わず目を覚ました、自分を呼んでくれる声がした。本当に自分の事を思っている事が声からも分かるほどの優しい声に問い掛けられて意識が覚醒する。何か、酷く悪い夢を見ていたのか身体にべっとりと纏わり付いている不快感がある。今すぐにでもそれを払拭したいところだ。

 

「やっと起きた、魘されてたから心配してたんだよ?」

「悪い……妙な夢を見てたみたいだ……悪い夢、をな」

「まだ魘されるん……ですか?」

 

心配そうに兄の顔を見つめる弟、光実。貴光はよく魘される、悪夢をみている彼は酷く苦しげにもがき許しを求めているかのようで見ていられなくなる。よく起こしに来るのもそんな兄を見ていられず悪夢に魘されていたらその悪夢から起こしてあげたいという考えがあった。

 

「大丈夫だ光実、俺にはお前や兄貴がいるから。俺は辛くない」

「兄さん……ハイ!そうですよね、辛くなったら何時でも言って下さい!一緒に寝る位出来ますよ!」

「おいおいガキ扱いかよ」

「冗談ですよ」

 

明るい笑顔に釣られるように笑みがこぼれる。悪夢で多少気分が悪くなるだろうがそれすら拭い去り幸せにしてくれる家族が自分にはいる、それだけで幸せな気持ちになれる。全く持って家族とは素晴らしい。

 

「んじゃまっ朝飯食うか……兄貴も待ってるだろ」

「でしょうね」

 

ベットから降り光実と共に部屋を出て行く、窓から漏れている日の光が家内を明るく照らしている。照明の光など無粋と言っているかのようだ。廊下を進んでいくと広い部屋の中に置かれたテーブルの傍でコーヒーを飲みながら新聞に目を通している男が目に入る。普段通りの光景に思わず笑みがこみ上げてくる、安心する朝の一風景だ。扉を開ける音で気付いたのか此方を見ると笑い掛けてくる。

 

「おはよう貴光、光実。今日も気持ちの良い朝だ」

「だな。兄貴も兄貴でテンプレだなその組み合わせ……」

「何を言う、朝食の前に行うこれを私は気に入っている。テンプレだろうが良いものは良い、それだけだ」

「否定はしねえけどよ」

「兄さん早く席に付きましょう」

 

朝の簡単な兄弟のやり取りをすると二人も席に付く、それを確認すると新聞を畳み傍に置いた兄、貴虎は食事を始める。兄弟の朝の体調確認とスケジュール、世間話をするコミュニケーションの場。三人はそんな食事を気に入っている。

 

「今日は少し遅くなりそうだ、すまんが夕食は二人で頼む」

「仕事か?」

「まあな……ちょっかいが多いせいで私の仕事が増えて堪らん。一気に潰してやりたい所だ」

 

珍しく言葉を強くしながらオムレツを潰すように切り分けて咀嚼していく貴虎に貴光と光実は思わず苦笑した、あれはストレスが溜まっているなっと。貴虎は医療系・福祉系事業を手掛ける巨大企業ユグドラシル・コーポレーション日本支部の研究部門プロジェクトリーダーという立場にあるがその有能さからか実質日本支部の最高責任者という立場に立っている。その為忙しく家族である弟達と余り時間を取れない事を憂いているが二人はその事を受け止め兄に気にしないでくれとフォローをしている。がそれでもストレスは軽減しきれていないようだ。

 

「手伝いいる?今日は俺暇だし」

「僕もダンス部の方は今日は早く終わらせるらしいし」

「そう言って貰えると助かるがこれは私がやるべき事だ。まだ高校生のお前達にやらせる訳には行かない、だが気持ちは貰っておこう。その気持ちを胸にしながら頑張るとしよう」

 

弟達の思いを受けとりながら喉の奥へとコーヒーを流し込んで行く、両親が海外赴任中で忙しい中二人の家族の面倒を見つつ仕事にも精を出せているには弟二人が自分に協力的であるからこそだろう。

 

「そんな事よりそろそろ行かないと遅刻するぞ」

「えっ……やっばもうこんな時間!?ゴチでした!!光実おっさき~!!」

「あっちょずるいよ兄さん!!ご馳走様でした!!」

 

先を行く兄を追いかける為に最後にオレンジジュースを飲み込むと同じく慌てるように駆け出していく光実を見つめた貴虎は笑みを浮かべてコーヒーをカップに注ぐと窓から玄関の方を見つめながら啜った。

 

『ちょっと光実待ってっ!?後生だから待って!?』

『何で僕より先に出てるのに遅れてるのさ!?』

『寝巻きだったんだよ!!』

「……何気ない日常こそが一番の幸せだな」

 

 

「ふぅ……ギリギリ間に合ったか……。始業時間まであと6分、セーフだな」

 

高光は遅刻しないよう光実と共に全力疾走で通っている駒王学園へと到着し教室へと入るとクラスの女子達から黄色い声の挨拶を受けつつも自分の席へと付いた。流石に自宅からこの学園までの道のりを全力疾走は応える、水筒を取り出し飲んでいると一人の男子生徒が迫ってきた。

 

「よう貴光!」

「……なんだお前か」

「おいおい失礼だぞ!」

 

元気十分意気揚々と迫ってくるのはこの学園で有名人である兵藤 一誠、一応友人ではあるが特別親しい訳でもないが向こうからしたら仲良くしたいのかよく接近して来る。

 

「何のようだ、金なら貸さんぞ」

「いらねえよ!俺を何だと思ってんだよ!?」

「性犯罪者だ」

「ひ、ひでぇ……」

 

そこまで言わなくてもという表情をしているが一誠はそこまで言われるような事をしている。教室にて堂々とAVやエロ本のやり取りをする、女子更衣室への覗きを敢行すると言った問題行動を同じく二人の友人である松田、元浜と行っている。教室内でのそれはまだ良いとしよう、だが除きは完全にアウトだ。彼らの毒牙は学校中で姿を見せている。貴光も止めろと言っているが性欲は人間の最大欲求だから当然の行為だと言って止めないのでもう本気で通報しようか悩んでいる。

 

「それでなんだ性犯罪者」

「その呼び名止めてくれよ……まあいいや俺さ、彼女出来たんだ!!」

 

その言葉を口にした瞬間手首を捻り床に叩き付けると腕を極めて完全に一誠を拘束する。

 

「いってぇぇっっ!!?」

「…おい性犯罪者、貴様何をした。弱みを握ったのかそれとも金か、どちらにしても最低の行為だな」

「ま、待ってくれ本当に、告白されたんだって……!!」

「ああ分かった、今すぐに警察を呼んでやる」

「分かってなぁぁああい!!!」

 

 

「主任申し訳ありません……」

「構わん、早速始めよう」

『―――メロン!』


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