竿魂   作:カイバーマン。

90 / 92
第九十訓 断ち切れぬ因縁、繋がる意志

新八とのデート事件があって数日後

 

桐ケ谷和人は久しぶりにキリトとしてEDOにフルダイブしていた。

 

やはり彼にとって貧弱ボディのせいでナメられまくる現実世界よりも

 

黒夜叉と呼ばれ一部のプレイヤーや天人から恐れられる程の強さでブイブイ言わせられるこっちの世界の方が気分が良い。

 

「っとまあこんな事合ってだな、全くあの時はホント酷い目に遭ったぜ……」

 

「う~ん僕としてはキリトよりも君に騙されていた方の新八君って人の方が可哀想だと思うんだけど……」

 

「なに言ってんだ、アイツ見かけによらず結構タフでバカなんだぞ。あの時も撤収する時に「キリ子さん! 僕は諦めませんよ!」とか最後まで俺の正体わかってない様子で叫んでたからな」

 

「ハハハ……なんか僕もその人に会ってみたくなったよ」

 

ここは第五十層、街から離れた所にある深い森。

 

近くにみずぼらしい村があるだけで、一見大したことのない場所ではあるが、過去にキリトはここで大樹から神器の素材を見事ゲットした所である。

 

そしてその神器クエストの為に彼に協力してくれたのが、現在彼と二人きりではなしているユージオという不思議な少年であった。

 

キリトとは対照的と呼んでいい程、人を陥れる事などという邪な考えを持たず、裏表なく心優しい少年

 

そんな彼だが何故だかわからないが、妙にキリトから気に入られており、こうして良き話し相手となってあげているのである。

 

「それにしても君ってホントおかしいね、女装して幼馴染からお金取ろうとするかな普通」

 

「仕方ないだろ、現実世界じゃウチは常に金欠なんだ……どうしてこう生きる為に人ってのは労働に準ずる必要があるのかね……」

 

「現実じゃなくてこっち側でもでしょ? リズベットから聞いたけど、君、今度はお金の方が工面できなくてまだ神器造って貰えないんだって?」

 

「まあな、あの女、素材集めに人件費割く必要があるからって、あの人の時よりも俺に大金要求して来やがったからな」

 

ユージオは温和な見た目の割には結構ストレートに正論を吐くことがある。

 

確かに彼の言う通り、今のキリトは現実世界だけでなくこちらの世界でもジリ貧であった。

 

理由は明白、神器の製作費用。

 

完成目前とまでされているが、その為に造り手リズベットから請求された金額はあまりにも莫大であり

 

その今までに見た事のない請求額にキリトは仕方なく小金稼ぎに奮闘している毎日なのだ。

 

「だからこうして手っ取り早く金稼ぐ為にここへ来てるんだしな、ここには”あのモンスター”がいるって聞いてるし」

 

「神器を造るのって大変だね、僕は最初から完成したモノを手に入れたから運が良かったんだねきっと」

 

「お、そっちから喧嘩を売って来るなんて珍しいねユージオ君、いいよ買ってやるよ、かかってこいコラ」

 

「ハハハ、僕を倒すより前にやる事があるんでしょ? あ、噂をすれば……」

 

悪意はなく天然で呟くユージオにキリトはジト目で軽く睨みつける。

 

誰よりも神器を欲するキリトとしては、彼が持つ神器・青薔薇の剣は本来自分が所有者になっていた筈だと未だに根に持って持っているからだ。

 

しかしキリトがユージオに喧嘩を吹っ掛けようとしたその時、前方からドタドタと凄いスピードでなにかとてつもく速いモノが接近して来た。

 

それはこの第五十層の森の近くに潜む、数あるユニークモンスターの中でもさらにレアな……

 

 

 

 

「俺」と書かれたTシャツを着飾ったふざけた顔をしている珍妙なゴリラ型モンスター

 

脱兎の如く速さでプレイヤー達から逃げ続ける事を特徴とする、”ソラチンタマ”なのであった。

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!! 待ちやがれクソゴリラァァァァァァァ!!!」

 

そしてその後ろを追うのは、キリトのパートナーである坂田銀時。

 

「おいガキ共! 銀さんが犠牲者二名作ってでも手筈通りここまで誘導してやったんだぞ! さっさとこのゴリラぶち殺せコラァ!!」

 

「犠牲者二名、って事は……」

 

「アリスとユウキがやられたって事か……話は聞いていたが本当にヤバいなこのゴリラ」

 

迫りくるソラチンタマの背後から銀時の叫びがキリト達に飛んで来た。

 

彼等はすぐに彼の言う犠牲者がこの作戦に協力してくれていたアリスとユウキだと察し

 

相当な腕の立つあの二人を倒してしまう程の危険性を持つこのモンスターを改めて警戒する。

 

そしてこちらに向かって表情変えずにアホ面晒しながら突っ込んでくるソラチンタマ

 

「よし、ちゃっちゃっと捕まえてドロップアイテム奪わしてもらうか」

 

「そうだね、これ以上哀しい犠牲者を生ませないために……」

 

銀時達が上手くソラチンタマをここまで追い込んで、キリトとユージオがここで迎え撃つ。

 

二人は同時に得物を握り締め、迫りくるソラチンタマに同時に斬りかかるのであった。

 

 

 

 

 

 

そしてしばらくして

 

「ゼェゼェ……! や、やっとやっつけたぞ……!」

 

「油断しないでキリト、また死んだふりかもしれないよ……! コイツ生き残る為なら手段選ばないから……!」

 

二人はやっとこさえユニークモンスター、ソラチンタマを倒す事に成功した。

 

うつ伏せでグッタリして動かなくなった彼を剣でツンツンしながら、ユージオは用心深く死んでるのかどうかチェックする。

 

「思ってた以上に強敵だったなソラチンタマ……臭いし逃げるし木に登るし臭いし、いやもうほんと勘弁して欲しい……コイツを問題ないと生み出した運営側に対して殺意まで沸いて来た」

 

「放屁による攻撃がこんなにも強力だったなんて……おえ、僕吐きそう……」

 

どうやら完全に死んだ様子でソラチンタマはもう完全にピクリと動かなくなったみたいだ。

 

倒し切るまでユージオとキリトは何度も酷い目に遭わされた、追い詰めてもすぐに木に登って逃げるわ、囲んでもオナラを放出して怯んだ隙にまた逃げるわ……ぶっちゃけ普通に強いモンスターよりも厄介な強敵であった。

 

「銀さんはよくこんなの倒せましたね……」

 

「あぁ、あん時は俺も大変だったよ、アリスの奴が我慢して一撃食らわしたおかげでなんとか倒せたからな」

 

「やっぱり凄いんですねあのアリスって人……ところで彼女ともう一人の娘は大丈夫なんですか?」

 

「さあな、そろそろ胃の中のモン全部吐き出してこっちに戻ってもいい頃だと思うけどよ」

 

「やっぱ吐いてるんですね……」

 

ソラチンタマのオナラの臭いはとてつもない悪臭であり、ハッキリ言ってオナラというよりもはや毒ガス・殺人兵器に等しい。

 

こんなのを食らえばいかにアリスやユウキと言えど、ひとたまりもないと、ユージオも容易に想像出来た。

 

 

するとさっき銀時が言った通り、胃の中のモノを全てぶちまけたかのようにグッタリしているアリスとユウキが

 

「終わったのでありますか……?」

 

「ふへぇボク死ぬ……間違いなく死ぬ……綺麗な川の向こうで死んだ両親が手ぇ振ってるのが見える……」

 

「私にも見えます、優しそうな男女がこちらに笑いかけて……」

 

「なんでアリスがボクの両親見えるのさ……アレ、ウチの親だからね」

 

ノロノロとした足取りと力が入らないのか下に垂らす両手、まるでゾンビだ。

 

そして二人で掛け合いをしつつこちらに近づいて来ると、自分達を散々酷い目に遭わせたソラチンタマが倒れているのを確認すると

 

「こんのぉ! よくもボクに近距離からとんでもなく臭いオナラ発射したなぁ!! 人の事を散々ナメ腐った態度して許さないんだから!」

 

「コイツのおかげで私はまたしても大恥をかきました、死んでも償い切れません、もう一度生き返って私に殺されなさい」

 

「ちょ、ちょっと二人共! もう倒れたモンスター相手に追い打ちかますのはマナー違反だよ!!」

 

ソラチンタマ許すまじと、二人して倒れた彼を怒りに任せて何度も踏みつけ始めた。

 

よほど屈辱的な目に遭わされたのだろう、ゲームマナーが良いあのユウキでさえ豹変して怒声を浴びせている。

 

これにはユージオも慌てて銀時に振り返り助けを求める。

 

「銀さん大変です! 可愛らしい女の子二人が寄ってたかってゴリラの屍を罵倒しながらオーバーキルするバイオレンスな展開に! あなたの力で何とかしてください!」

 

「いや、ここはアイツ等の好きにさせてやるべきだろう。何せこのゴリラは本当の性悪の中の性悪、死してなお辱めを受ける事すら生ぬるい程の重罪人だからな」

 

「そこまで言いますか!? 確かに今まで出会ったモンスターの中で最低最悪の部類に入りますけど!」

 

銀時にとってはここまでしてなおソラチンタマの所業は決して許されないらしい。

 

一体自分達が見てない間に彼女達はどんな目に遭わされたのだろう……

 

ユージオが一人心配していると銀時も倒れたソラチンタマに近づいていき

 

「くおらぁ! 寝てんじゃねぇぞ腐れゴリラ! とっとと起きやがれぇ!!」

 

「ええ! あなたまでやるんですか銀さん!?」

 

突如豹変して乱暴に彼の頭を蹴り上げたのだ、これにはユージオもビックリ仰天

 

「散々焦らしたクセに完結して終わりとかテメェみたいな奴に許されると思ってんのか! いいからさっさと描くんだよ!! 一発当てたぐらいで一生遊んで暮らせると思うなよコラァ!」

 

「ぎ、銀さん!?」

 

「おら四の五の言わずにとっとと新作のネーム提出しろ! 漫画家なら死ぬまで描き続けろ! 痔になろが腰が砕けようがテメェに休みなんかねぇと思え!!」

 

「なんかもう特定の人物に向けたメッセージにしか聞こえないんですけど!? 誰に!? 誰に言ってるんですか銀さん!?」

 

ソラチンタマというより別の誰かに対して檄を飛ばすかのように叫び続ける銀時。

 

ユウキとアリス、そして銀時までもが参入してソラチンタマの屍を蹴り続ける光景を、もはやユージオは唖然とした表情で彼等の気が晴れてくれる事を祈るしか無かった。

 

「酷い、既にやられたモンスターをいたぶり続けるなんて……ねぇキリト、君もなんとか言ってよ」

 

「おいおい俺がこの人達に何言っても聞いてくれる訳ないだろ、いいだろ別に、ここには俺達しかいないんだから満足するまでやらせてあげればいいんだよ」

 

「君、この中で一番強い筈なのにいつも発言力皆無だね……どんだけ人望ないの?」

 

「お前、たまに泣きたくなるぐらい酷い事言うよな、いいの? 俺この場で思いきり泣くよ?」

 

 

自分が何を言っても無駄だと実行する前からわかっている口振りで拒否するキリトに

 

ユージオが遠慮なしに友人として思った事をストレートに吐露していると……

 

「おおいたいた! 探したでお前等!」

 

「ん?」

 

突如背後から聞こえて来た野太い声にキリトは顔をしかめて振り返ると

 

そこに立っていたのはトゲトゲ頭の人相の悪い中年男性のプレイヤー。

 

「なんだ他のプレイヤーが近くにいたのか、ソラチンタマ狩りに集中していて探知に気付かなかったよ」

 

「ったくホンマ探したんやでこっちは……って何してるんやお前ら! 倒れてるゴリラを寄ってたかって!」

 

「やれやれバレちゃあ仕方ない、誰だか知らないが血盟騎士団に通報される前にアンタもこのゴリラと同じ目に遭ってもらうとするか」

 

「なんでや! てか誰だか知らないってどういう事や! お前ついさっき現実世界で会ったばかりやろがボケ!」

 

「え? そうだっけ?」

 

自分達の悪い噂がばら撒かれる前にここで彼を亡き者にしようとスッと得物を鞘から抜こうとするキリト。

 

そんな物騒な彼にユージオが慌てて

 

「待ってキリト、この人キバオウさんだよ、何度も一緒にフロアボス相手に共闘した事あるじゃないか、忘れちゃったの?」

 

「冗談だよ、ちょっと前にリアルで偶然出会ったしな、驚かせて悪かったな黒駒勝男さん」

 

「リアルネームで呼ぶなや! 身バレするやろ!」

 

そう言って得物を鞘に戻すと、シレッとした表情で彼の本名をバラすキリト。

 

彼とは以前、現実世界のかぶき町で遭遇したばかりだ、名は黒駒勝男、かぶき町を仕切る溝鼠組の若頭だ。

 

「あん時はホント酷い目に遭ったでホンマ……まさかあの眼鏡にあんな化け物の姉がおったなんて……」

 

「え? キバオウさんってもしかしてさっきキリトの話に出て来た極道の人なの?」

 

「ああ、アバター改造して自分の素性をバレない様にしてるんだとさ」

 

キリトから聞いて初めてキバオウ=黒駒勝男だと知るユージオ。どうも彼は知らぬ間にキバオウのリアルと接点があったらしい。

 

「ちなみにこれいつでも運営にチクっていいぞ」

 

「いやそれってマズいんじゃ……間違いなく永久アカウント停止処分だよね?」

 

「うおい! そんな真似しおったらマジで海に沈めたるからな!!」

 

そっとユージオに耳打ちして酷い事を言うキリトに、地獄耳のキバオウはすぐに気付いて怒号を上げた。

 

「てかそんなのどうでもええねん! わしはな、あの時出来なかった話をする為にわざわざここまで来たんや!」

 

「ああそういやなんか話があるとか言ってたな、新八とその姉のせいで聞きそびれちゃったけど……結局なにが言いたかったんだ?」

 

そういえばそんな話をする予定があった気がする、彼の話を聞いてようやくキリトが思い出していると、キバオウは軽く深呼吸すると改まった様子で

 

「実はな、こっちの世界でまた”例の現象”が起こり始めたんや、それもあちこち頻繁にな」

 

「ごめん例の現象って言われてもよくわかんないんだけど、そんな当たり前に言われても困るし」

 

「アホボケカス! わし等の話の中で出て来る例の現象と言ったらアレしかないやろが!」

 

例の現象と言われてもどんな現象なのかさっぱりピンと来ていない様子のキリトに、キバオウは機嫌悪そうに叫んで

 

「仮想世界なのに衝撃がリアルに伝達して痛みが生じるっちゅう現象の事や! ディアベルはんの話を忘れたんかコラ!!」

 

「え、その話ってまだ終わってなかったのか? ごめん、もうそれいつまで経っても展開始まらないから、てっきり有耶無耶にして無かった事になってるのかと」

 

「なってへんわい! なに勝手に終わらせとんのや!」

 

随分昔にそんな話があったなとキリトは久しぶりに思い出した。

 

銀時がこの世界に来て間もなくの頃だったか、プレイヤーがダメージを受けた時に実際に痛みが生じたという話がEDOの中で一時期流れていたのだ。

 

最近はそんな話聞いていないので、もう終わったのだろうと思っていたのだが……

 

「実はどうも情報操作が入ってるみたいでの、この現象の話をどこぞの誰かがプレイヤー達の間に広まらないよう隠蔽してるみたいなんや、お前等が今までこの話を聞かんかったのもきっとそのせいやな」

 

「情報隠蔽ねぇ……それは一体どこから仕入れたネタなんだ?」

 

「名前は明かさんが金にがめつい情報屋や、ネズミみたいな髭をしたちっこいガキンちょ」

 

「なるほどアルゴか、アイツの情報なら信頼できるな……」

 

どうも今まで自分達にその件の話を耳にしなかったのは、何者かが介入して上手くもみ消し工作を計っていたらしい。

 

情報の持ち主が信頼できる情報屋だとわかって、キリトはようやく真面目に話を聞く態度になった。

 

「てことは今もなおその現象は終わってないのか、ディアベルの言う通りだったな、いずれEDOの存亡に関わるって」

 

「そや、しかも最近じゃ日に日にこの現象があちらこちらで発生しとる、もはやもみ消してる奴が隠しきれない程にの」

 

「なるほど、こりゃ厄介な事になったな……」

 

事実をもみ消してる人物も気にはなるが、やはりその現象の原因を突き止めるのが先であろう。

 

そんな顎に手を当てどうするべきか考え込むキリトをよそに、ユージオは一人どこか思いつめた表情で

 

「……」

 

「ん? ああ、そういえばお前にはまだ詳しく話した事無かったな、いきなり今話聞いても混乱するよな」

 

「……いや、その話は別のどこかで聞いた事あるから僕も知ってるよ……」

 

「え、そうなのか?」

 

「うん……」

 

間を開けて呟くユージオはキリトから目を逸らしたまま軽く頷いて見せた。

 

彼が一体何を考えているかはキリトも読めないが、まともなプレイヤーである彼の事だから、この現象に恐怖を抱いているのだろうと推測する。

 

「しょうがない、ディアベルと約束したしなんとかこっちで色々と探してみるか、この世界まで現実みたいに物騒になるのはゴメンだし」

 

「そうだね……僕もそう思うよ」

 

「やれやれようやくやる気になってくれたんか……それならもう一つ情報渡しておくわ」

 

ディアベルとの約束もそうだが、ユージオが持つ不安も晴らしてやろうとキリトはこの話に乗っかる事を決める。

 

するとキバオウはそんな彼にまた新しい情報を提供した。

 

「情報通のお前なら知っとるやろ、突如現れすぐに消える黒い髪の女の子の幽霊の話」

 

「ああ、前に一度だけ見た事あるぞ、逃げられたけど」

 

「ホンマか? なら話は早いわ、どうやらその幽霊、今回の現象となにかしら関わってるみたいやねん」

 

「なんだって?」

 

随分前の話だが、キリトはその黒髪の女の子らしき姿を目撃した覚えがある。

 

あの時は必死に探しても見つからなかったが、キバオウの話ではどうやらその彼女も今回の件に関わっているのだと……

 

「まずはそいつを見つけるのが優先した方がええかもな、なにか原因を突き止める鍵になるかもしれんし」

 

「わかった覚えとくよ。俺もあの子には少々引っかかる所があるんでね」

 

思ってた以上に有益な情報だとキリトは頷くと、この事を急いで他の者にも報告しよう背後にいる銀時達の方へ振り返る。

 

「おいみんな聞いてくれ、実はさっきキバオウから興味深い話が……って」

 

しかし彼が振り返ったその時、とんでもない光景を目の当たりにした。

 

そう、さっきまでノリノリで倒れたゴリラをボコボコにしていた彼等が

 

 

 

 

三人まとめてピクリともせずに地面に倒れていたのだ。

 

「な! おいどうしたアンタ等!」

 

「く……なんて事だ……!」

 

「!?」

 

キリトが慌てて声を掛けると、倒れている三人の内の一人である銀時だけがかろうじて意識がある様子で彼の方へ顔を上げた。

 

そして突然の事態に混乱しているキリトに対し、銀時は残った力を振り絞るかのように一つの方向へ指を差し

 

 

 

 

 

「あのゴリラ、死んだフリしてやがった……」

 

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

そこには先程まで倒れていた筈のソラチンタマは何事も無かったかのように突っ立っていたのだ。

 

ボリボリと片方の手で尻を掻き、もう片方の手で鼻をほじるというなんともお下品な格好で

 

どうやら自分達が目を背けてる間に、彼をボコボコにしていた銀時達は彼の思わぬ反撃にやられてしまったらしい。

 

反撃方法は恐らく彼の放屁による一撃だろう

 

「なんであんだけ叩いたのに生きてんだよチクショウ! あ、逃げた!!」

 

「追いかけようキリト! 早く倒してアレがドロップするレアアイテムを奪わないと!」

 

「なんやアレ! もしかして噂に聞く伝説級のユニークモンスターか!? なんちゅうふざけた見た目しとるんや!」

 

回れ右して再び逃げ出そうとするソラチンタマを慌てて追いかけ始めるキリトとユージオ

 

咄嗟にキバオウも驚きつつも彼等と一緒に追いかけようとするが……

 

 

 

 

そこへ待ってましたかの様にこちらにケツを突き出してソラチンタマが

 

ブボボボボボボボォーッ!!と派手に音を鳴らして思いきりかます。

 

「ギャァァァァァァァァ!!! 目が! 目がァァァァァァァ!!!」

 

「うぐえ! ごめんもう僕無理オロロロロロロロ!!!」

 

「くっさぁ!! し、死ぬ~~~~~!!!」

 

見事にしてやられたキリトは、隣でユージオが吐いて、キバオウが断末魔の叫びをあげてる中、あまりの臭さに薄れゆく意識の中ふと思った。

 

この世界に生じる「痛み」が本来あっていけないモノというなら

 

どうせなら「臭い」も一緒に取り除いてくれないかと……

 

 

次回、第一部・最終章、開幕。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回、最終章・白銀ノ侍編

EDOで起こった不可解な現象を突き止める為

銀さん達が凶悪の根源と対峙し決着を着けます。

※次回の投稿は諸事情で3週間後とさせて頂きます。

その間、代わりに銀魂×劣等生と銀魂×東方の作品の話を投稿しようと思いますので

本作が再開するまでしばらくお待ちください。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。