竿魂   作:カイバーマン。

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第八十七層 眼鏡をプロデュース

ひょんな事からまさかの流れで幼馴染の新八とデートする羽目になってしまったキリ子こと桐ケ谷和人

 

そしてそんな彼等を背後からコソコソと隠れて観察しているのは4人の男女

 

「おい、ターゲットの様子はどうだ」

 

「まだ動きは無いみたいだね、バレてもいないし上手くやってるみたい、キリト」

 

「これは完全にイケるわね、今日中にキスまでイケるんじゃない?」

 

「止めて下さい、そんな事になったら私トラウマになりますから確実に……」

 

昼下がりのかぶき町を二人で歩く新八とキリ子の後ろを付けて尾行しているのは喋った順に銀時、ユウキ、明日奈

 

そして直葉だ。

 

「まさかこんな光景を見る事になるなんて……どうしよ、これからはもう自分の事を一人っ子だと周りに言おうかな」

 

「もしくは姉が一人いるで良いんじゃないかしら」

 

「勘弁して下さい……」

 

兄が女装して同性相手とデートしたなんて、両親には絶対に言えないと直葉が頭を抱えながら呟いていると、明日奈はふと改めて彼女の事に気付いた。

 

「というかアナタがもしかして、あの厨二病の妹さん?」

 

「え? あ、はい、あの厨二病の妹の桐ケ谷直葉です、恥ずかしながら」

 

「薄々予想はしてたけど普通に厨二病で通じちゃうのね」

 

もはや和人=厨二病というのは家族内でも常識なのかと明日奈が再確認していると、直葉はそんな彼女を上から下へとジッと眺め出す。

 

「あなたがお兄ちゃんが言ってた結城明日奈さんですよね? 写真で見るよりやっぱ間近で見た方がホント綺麗ですね」

 

「ありがと、けど直葉ちゃんだって可愛いわよ、え? 写真?」

 

「はい、お兄ちゃんが持っていた写真で明日奈さんを見せて貰ったんですけど、あれどうしたんですか?」

 

「え、あの男が私の写真を……?」

 

兄・和人から写真を見せてもらったと直葉が話した直後、明日奈の表情に曇りが見え始めた。

 

いつも和人に見せているあの不機嫌だと全面的にアピールしているあの顔である。

 

「なんで私の写真を持ち歩いているのよあの人……気持ち悪いわね、今度真撰組に通報しようかしら」

 

「ああ私用で持ってた訳じゃないですから安心して下さい、私に見せる為に用意しただけっぽいですから……」

 

「ホントに? でもアレも年頃の男の子だし、一時的なテンションに身を任せて私に対して欲情を抱く事もあり得そうだから、写真だけは回収しておきましょ」

 

「はぁ……」

 

奴がいつ自分に良からぬ感情を抱くかわからないと警戒する明日奈に、直葉は改めて彼女と兄の仲の悪さを見た気がした。

 

「お兄ちゃんも言ってましたけど本当に仲悪いんですねお兄ちゃんと明日奈さん……」

 

「ぶっちゃけ互いに「死ねばいい」って思ってる関係だからね」

 

「一体どこまで憎しみ合えばそんな関係になれるんですか……」

 

真顔で物騒な事を平然と呟く明日奈に、直葉は正直に「この人もどこかおかしい……」と思うようになっていると

 

彼女達の先を歩いていた銀時が二人の方へ振り向く。

 

「おい、さっきからうるせぇぞお前等、尾行がバレちまうだろ」

 

「銀時、二人はあの店に入ったよ、ボク等も入ろう」

 

「よし、出来るだけ会話が聞こえるように接近を試みるぞ」

 

「いやそもそもどうしてあなた達がお兄ちゃんと新八さんの後を普通について行ってるんですか? それもかなりノリノリで」

 

和人と新八が最寄りの喫茶店に入ったのを確認してすぐに後を追おうとする銀時とユウキだが

 

そこへやっと直葉がジト目で口を挟む。

 

「新八さんにはすぐに消えるとか言ってたクセに」

 

「目の前からはちゃんと消えてんだろ、つうか後をつけてるのは俺達だけじゃなくお前もだろ妹」

 

「私は良いんです家族ですから、我が家の長男が禁断の愛に目覚めないか心配して見に来てるんです」

 

「なるほど、ただ暇だから覗きに来た俺達と違って真っ当な理由だな、悪かったよ」

 

「やっぱそんな理由だったんですね……お願いですから帰って下さいよ……」

 

確かに自分の兄があのまま女装続けてたらその内本当のオカマになってしまうかもしれない

 

それを心配するのは妹として当然であろうと銀時は納得するのだが、ユウキの方はそれを聞いて

 

「いや、禁断の愛であろうとそれが本物の愛なのであればボクは良いと思うよ、人を好きになるのに性別なんて関係無いよ」

 

「お前はお前で誰目線で語ってんだよ」

 

「だからキリトが新たな性癖に目覚めてあの眼鏡君の事を本当に好きになっちゃっても、ボク等は笑って認めてあげるべきだね」

 

「笑ってやるよ、死ぬ程な」

 

同性愛に対して差別や偏見を持たないピュアなユウキの意見に銀時は頷きながら、和人と新八のいるの店の中へと入るのであった。

 

「しっかしどうしてまたウチのキリ子なのかねぇ、確かに元々女みてぇなツラしてたから女装すれば普通に女に見えなくもねぇけど」

 

「見た目はともかく声で気付かないのかな、あの眼鏡君」

 

「声に関してはアイツが男だと見抜かれない様に上手い具合に調整して頑張ってるからな、もっとも頑張っているのは和人君じゃなくて”松岡君”だが」

 

「松岡君って誰?」

 

「俺の中の杉田君も頑張ればイケるんだけどなぁ」

 

「杉田君って誰?」

 

二人の席からは見えない死角に座りながらコッソリと眺めながら呟く銀時とユウキ。

 

そして彼等と一緒の席に座った明日奈と直葉もその点については疑問に思っている様子で

 

「ホント不思議よね、私があの弟さんなら真っ先に身近にいる直葉ちゃんの方に魅力を感じると思うんだけど」

 

「いや私と新八さんはもうホントの兄妹みたいなモンなのでそういうのは……私なんかよりも明日奈さんみたいな美人の方がずっと可能性ありますよ」

 

「私はあの弟さんあんまタイプじゃないのよね……でもなんか知らないけど腹立たしいわ」

 

「私もです……なんでここでお兄ちゃんを選ぶんでしょうかねあの人……」

 

明日奈と直葉はどうしても腑に落ちない事があった、

 

それは何故にあの新八が真っ先にキリ子の事を好きになってしまったのか……

 

女としては少々納得できないと思う明日奈と直葉だが、そこへ銀時がボソッと

 

「そりゃ決まってんだろ、あの眼鏡はお前等よりもウチのキリ子の方に魅力感じたからだよ、つまりキリ子に負けたんだお前等は」

 

「キ、キリ子に負けたですって……私が?」

 

「お兄ちゃんに負けたの私……え? あのお兄ちゃんに?」

 

銀時が言った事はつまり、女子である自分達のよりも、女装しているだけの和人の方が魅力的だと認識されたという事だ。

 

ぶっちゃけ新八にそんな認識されようがされまいがどうでも良いのだが(明日奈からすれば)

 

女としては酷く屈辱的だと明日奈と直葉は謎の敗北感を覚えてガクッと首を垂れる。

 

「改めて振り返るとなんか自分が惨めになるわ……無性に腹立ってくるし」

 

「私、ちょっと新八さん殴りに行って来ます」

 

「待て敗北者、ここでお前がアイツ等の前に出てきたら俺達もバレるだろ」

 

「その呼び方止めて下さい、代わりにあなたを殴りますよ」

 

見る目が無い新八に制裁を与えんと席から立ち上がろうとする直葉を銀時が窘めている一方で

 

そんな事も露知れず、彼等と少し離れた席にいる新八は興奮冷め上がらない状態であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁまさか本当に来てくれるなんて……こんな冴えない僕とで、デートして頂きありがとうございます!」

 

「ハハハ……いえいえ」

 

キリ子こと桐ケ谷和人は頬を引きつらせながらただただ曖昧な返事をするしか無かった。

 

ここに来てからずっと新八に同じ事を何度も言われているのだ、デートしてくれてありがとうと延々繰り返して。

 

(どんだけ自分に自信が無いんだコイツ……普通に直葉と話す感覚で良いじゃねぇか)

 

と呆れつつ、目をギラギラと血走らせまくっている彼にドン引きする和人であった。

 

「というかなんか頼んだらどうですかね、ここ喫茶店だし……」

 

「ああそうだった! すんません! 舞い上がり過ぎてすんません!!」

 

「いや別に良いけど……」

 

恐る恐る和人が指摘すると、新八はテンパった様子で力強くゴンとテーブルに頭を打ち付けながらいきなり謝り始める。

 

そして急いでメニューを取り上げると新八は慌てながら

 

「すんませぇぇぇぇぇぇぇぇん!! 店員さん来て下さぁぁぁぁぁぁぁい!!!」

 

(うるせぇ! なんで店員呼ぶだけなのにそんな大声なんだよコイツ!!)

 

口を大きく開けてハイテンションで店の人を呼ぶ新八に和人が耳を押さえていい加減にしろと頭の中でツッコミを入れていると

 

新八の叫び声を聞きつけて、スタスタと一人の店員がこちらへとやって来た。

 

「お待たせしましたお客様、ハハハ、元気でたくましい雄叫びで店内を活気づかせて頂きありがとうございます」

 

(なんだそりゃ……あれ? つかこの店員……)

 

叫んだことに関して咎めるどころか新八を褒め称え出す奇妙な店員に、和人が不審に思って顔を上げてその店員をよく見てみると

 

(真撰組の所のゴリラ局長じゃないのか!? お妙さんのストーカーの!)

 

間違いない、志村邸の屋根裏に潜んでいたあの警察でありながらお妙のストーカーも掛け持ちしている変態ゴリラこと近藤勲だったのだ。

 

しかし新八の方はそんな店員に化けた近藤と顔を合わせても特に驚く様子を見せずに

 

「店員さん、この店で一番いい料理をお願いします、それも彼女に合う最高の料理を」

 

「おやおや、コレはまた随分と似合いのカップルですな、いやはや羨ましい、一目見ただけで相性バッチリだとわかりましたよ」

 

「や、やだな~カップルだなんて、やっぱそんな風に見えちゃいますか、こんど……店員さんからは」

 

(おいおいまさかこの眼鏡! まさか俺! キリ子とのデートを成功をさせる為に……!)

 

目の前で下らない茶番をいきなりおっ始める近藤と新八の掛け合いを見て和人はハッと気づいた。

 

そう、新八は偶然この店に寄ったのではない、事前から計画していたのだ。

 

店員に扮した近藤に協力して貰う為に

 

(頼みますよ近藤さん! これは僕が本物の男になる為の試練なんです! 絶対にキリ子さんのハートをゲットしたい! だから全力でフォローして下さいね!)

 

(任せろ新八君! 義理の兄として俺は全身全霊を持ってサポートに徹するよ! ここは泥船に乗ったつもりで任せなさい、弟よ!!)

 

(近藤さん! 僕はアンタの弟でもねぇし泥船だったら普通に沈むだろうがってここはツッコミたい所だけど! とにかくお願いしますよホント!)

 

目と目を合わせただけで頭の中で通じ合う新八と近藤。

 

やはりこの二人は、デートする前から事前に計画を練っていたようだ。

 

その事に気付いた和人は唖然とした表情で固まり……

 

「頼むならもっとましな奴に頼めバカ……」

 

彼等には聞こえないよう小さな声でボソリと呟くのであった。

 

 

 

 

 

 

そしてそんな光景を、当然離れて監視していた銀時達も見ており

 

「……オイ、なんであのゴリラがいやがんだ、さてはあの眼鏡、この日の為に仕込み入れやがったか?」

 

「デートに邪魔が入らないようきっちり根回ししてたみたいだね、なるほど、ボクも参考にしようっと」

 

「いやなんの参考にすんだよ」

 

新八と会話している店員をすぐに近藤だと見破った銀時はユウキと会話しながら眺めているのをよそに

 

彼がいる事を初めて知った明日奈は両手で頭を抱えながらテーブル膝をつき

 

「一体何やってんのあの人……真撰組の仕事をサボってこんな所でホント何やってんの……」

 

「新八さん、よりにもよって姉のストーカーに協力を求めるなんて……コレはもう本気で殴ってやらないと」

 

近藤が警察としての職務を全うせずに、他人の色恋に首を突っこんでいる事にショックを受ける彼女だが

 

直葉の方は静かに拳を鳴らしてそろそろマジで殴り込みに行きそうな気配を醸し出している。

 

するとそこへ

 

「おいテメェ等、さっきからなに注文せずに他の客をずっと覗き見してやがんでぃ、さっさと注文しやがれ」

 

「すみません、けどあそこの店員さんがどうしても気になって……え?」

 

突然男の店員が乱暴な口調で注文を要求してきたのだ。

 

明日奈がすぐに顔を上げてみるとそこに立っていたのは

 

「早くしねぇとその鼻にマヨネーズ突っこんで目玉飛び出るまで注入するぞコラ」

 

「……」

 

甘いフェイスをした澄まし顔のドS店員だったのだ。

 

どう見ても明日奈がよく知っている人物、真撰組一番隊隊長・沖田総悟である。

 

「ど、どうしてあなたまで……! ぐむ!」

 

「静かにしろい、テメェ等が騒ぐと近藤さんによるデートプロデュースがおじゃんになるだろうが」

 

突然現れた彼に思わず叫ぼうとした明日奈だが、彼女の口に手を押し当ててすかさず止める沖田。

 

「なんでテメェがこんな所にいるのかは知らねぇが、死にたくなかったらしばらく大人しくしてるんだな」

 

「ぐむむ……!」

 

「な、なんなんですかあなた……!」

 

明日奈の口を押さえながら警告する彼に直葉も困惑していると、銀時とユウキも何事かと振り返る。

 

「ああ? テメェは真撰組の……おいおいまさかあのゴリラ、ストーカー相手の弟の為にテメーの組織の連中駆り出したのか?」

 

「その通りでさぁ、旦那、女子供はべらしてハーレム築いてる所悪ぃんですが、お静かに頼んます」

 

「おい、どう見れば俺がハーレム築いてる様に見えんだコラ」

 

「そうだよ、てかボクは子供じゃないからね」

 

文句を垂れる銀時とユウキにも釘を刺すと、沖田はまだ明日奈の口を押さえたまま平然とした様子で

 

「実はですねぇ、この店にいる客やスタッフ、旦那達とあの眼鏡カップル以外は全員俺等の所の連中でしてね」

 

「は!?」

 

いきなりの言葉に銀時は驚きつつふと周りを見渡してみると、確かによく見てみると、他に座っているお客は皆強面の野郎共で埋め尽くされている、店員も同じく屈強そうな連中ばかりだ。

 

「たまたま空いていた席を旦那方が入って来たから仕方なく座らせてやったんです、まあアンタ等も事情があってあの眼鏡の後を追いかけて来たんだろうし、今回は大目に見ますんで」

 

「店一件丸ごと真撰組総動員で貸し切りにするって何考えてんだよテメェ等、それに本物の店員まで追い出しやがって……」

 

「そいつは近藤さんに言って下せぇ、俺等も嫌々やってんですよぶっちゃけ」

 

権力フル活用してどんだけ下らない真似をしているんだと呆れた様子の銀時に、沖田も心底めんどくさそうにため息をついて返事する。

 

「近藤さんが意中のキャバ嬢とお近づきになる為に、そのキャバ嬢の弟の色恋を協力するっていうんで、俺等に手を貸せって強引に話進めやがったんですよあの人」

 

「てことは十四郎さんもここに……むぐ!」

 

「テメェは黙ってろ、一生」

 

尋ねようとする明日奈の口を再び押さえ込む沖田。

 

その一方で新八と和人が座っている席に向かって、両手に料理を乗せたお皿を持った一人の店員が歩み寄っていた。

 

「お待たせしましたー、当店自慢のスペシャルメニューでーす」

 

「おお、どうやら当店一番の凄腕シェフが腕によりをかけてあなた方に料理を持ってきたみたいですな」

 

「本当ですか!? いやー楽しみですねキリ子さん!」

 

(いやいやいや! この店内で堂々とタバコ吸ってるふてぶてしい男もどっかで見た事あるぞ俺!)

 

料理を持ってきた男に近藤が説明して新八が嬉しそうに声を上げる中で、和人はすぐにこの男が誰かに気付いた。

 

先程明日奈がもしかしたらいるかもしれないと予感していた人物、真撰組副長・土方十四郎その人であったのだ。

 

似合わないコック帽を頭に被りながらやる気無さそうに棒読み口調で現れた土方に、和人が口をあんぐりと開けて固まっていると

 

土方は口に煙草を咥えたまま彼と新八の前にドン!と自慢の一品を置いた。

 

それは普通のカツ丼にマヨネーズをこれでもかと巻いてトッピングした、もはや黄色いアレにしか見えない……

 

「カツ丼土方スペシャルだ、とっとと食ってさっさと帰れ」

 

(いや食えるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!)

 

目の前に出された異様な料理を前にして和人は心の中で全力で叫んだ。

 

こんなゲテもの今まで見た事が無い……いや、前に仮想世界で明日奈が似たようなのを平然と食べていた様な気が……

 

(なんなんだよコレ、カツ丼に対する冒涜以外の何物でもねぇよ! イヌの餌だよこんなの!)

 

「おいトシ……いくらなんでもコレはマズイだろ……マヨネーズは流石に」

 

「ああ? 何言ってんだ、マヨネーズは生きとし生ける者全てが大好きなオールマイティーな存在だろ」

 

「トシ、そう思ってるのは地球上でお前だけだから、みんながみんなマヨネーズ大好きな訳じゃないから」

 

「ビビットの一色あかね氏はいつも美味しそうに食べていたでござる」

 

「え、あかね氏って誰? てかござるって、急にどうしたのトシ?」

 

流石に近藤もこれには困惑気味に難色を示すが、土方は首を傾げて素でこれが絶品料理だと思っている様子。

 

そしてこんなモンを出されて和人がどうするべきかと悩んだ末に

 

同じように土方スペシャルを眺めながら固まっている新八をチラリと見て

 

「新八、さん」

 

「え? あ、はい!」

 

「せっかくシェフが作ったんですから食べたらどうですか、あ、私お腹空いて無いんでよろしければこっちもどうぞ」

 

「えぇぇぇぇぇ!?」

 

まさかのキラーパス、彼が自分に惚れているのを利用して、このゲテモノ料理を処理してもらおうと考えたのだ。

 

更に和人はしたたかに更なる一手を放って追い込んでいく。

 

「もしこれ完食出来たら、新八さんってすっごい男気あるんだなって尊敬しちゃうと思いますねー」

 

「キ、キリ子さん!? よ、よーし……!」

 

死んだ目で適当な事を言う和人に新八は戸惑いつつもすぐに腹をくくった様子で

 

右手に箸を握って目の前の強大な怪物に向かって口を開けて

 

「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

「わー新八さんカッコイイー」

 

「ぐはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

「速効吐いた!!」

 

一気に平らげようと試みて土方スペシャルを勢いで食べ始める新八、しかしものの数秒で口に入れたモノを丸ごと丼に戻してダウン。

 

 

ピクピクと痙攣しながら段々と青白くなって呼吸困難に見舞われている彼を頬を引きつらせんて見つめながら

 

(コレ、コイツ最終的に死ぬんじゃね?)

 

和人はますますこのデートの結末が不安になるのであった。

 

 

 

 

 

 


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