竿魂   作:カイバーマン。

86 / 92

春風駘蕩様からの応援イラストを頂きました。


【挿絵表示】


ログ・ホライズン」の主題歌、『Database/MAN WITH A MISSION』をイメージした竿魂の集合絵だそうです。銀さんはともかくsaoキャラの和服は新鮮だし違和感も無いし凄い! ggoのキャラもゲスト出演してます!

本作の為に描いて下さり本当にありがとうございました!


第八十六層 言葉とは耳ではなく心で感じ取るモノ

前回のあらすじ

 

新八が好きになってしまった人は結城明日奈ではなくキリ子(女装した桐ケ谷和人)でした。

 

「まあそういう事もあるわな、あるある、たまたま好きになった相手がオカマだったなんて」

 

「あってたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

時刻は夜、かぶき町にあるファミレス。

 

マドモーゼル西郷が営むオカマバーでひと仕事を終え、いつもの私服のジャージ姿で戻って来た和人は

 

銀時からの報告を聞いて力強くテーブルを叩いて絶叫を上げる。

 

「嘘だと言ってくれ! 頼むから嘘だと言って!」

 

「全て紛れもない事実だ、良かったな和人君、80話以上やってようやくフラグが立って」

 

「立たなくていいそんなの! 俺はただ平穏かつ自堕落に生きられればそれで良かったんだよ!」

 

今まで誰とも色恋が成り立たなかった和人にようやく春が訪れた事を、銀時はパフェを食しながら適当に祝福。

 

しかし彼の向かいに座る和人本人はテーブルに釣っ伏してこの現実を受け止め切れないでいた。

 

「なに考えてんだアイツ! バカじゃねぇのホント! どうして俺が女装しているって事に気付けねぇんだよ! いや気付かれたらそれはそれで困るけど!」

 

「はーこれまたボクが見てない所で衝撃の新事実が発覚したみたいだね、ボクもその場に居合わせたかったなー」

 

「お前は他人事だからいいよなユウキ! くそ! キリ子じゃなくてパー子に惚れれば良かったのにあの眼鏡!」

 

「それは無理でしょ、ウチのパー子はクセ強いし」

 

よりにもよってどうして自分なんだと嘆く和人だが、関係ないユウキはすっかり楽しんでいる様子。

 

その上、銀時が女装した姿であるパー子の事を彼女なりに評価しながら得意げに

 

「ていうか色恋知らない眼鏡君じゃ彼女の大人の魅力はわからないよ」

 

「そうだよ、パー子ってのはどんな男にでも媚びへつらう尻軽キリ子なんかとは違う魅力持ってんだよ、わかる奴はわかってくれんだよ」

 

「ボクはちゃんとわかってるから、頑張って売り上げ成績伸ばそうね」

 

「伸ばすだけじゃ足りねぇよ、パー子が目指すのは常に頂点だけだ、目指すならやっぱてっぺん……つまり」

 

「オカマ女王に!」

 

「俺はなる!」

 

「勝手に二人して仲良く盛り上がるな! 王者の頂きなんざ返上するから俺の事を気にしてくれ!」

 

打ち合わせでもしたのかと思うぐらい息ピッタリな掛け合いを見せつけて来る銀時とユウキ

 

すっかりふざけまくってる二人とは対照的に、深刻な事態を抱えている和人は一人頭を抱え込む。

 

「今更本当の事なんてアイツに言えねぇよ……俺、ガキの頃からアイツの事ずっとバカにしてたんだぜ? そんな俺が今じゃ女装して舞台の上で踊り狂ってるなんてアイツに知れたら……」

 

「いいじゃない、洗いざらい全部告白して来なさいよ、底辺に生きるあなたがこれ以上落ちる事もないんだし」

 

「……」

 

新八の事はずっと昔からナメた態度を取ってバカにしていた……しかし今の自分の事を彼が知ったらその上下関係がひっくり返る恐れが……

 

するとそんな心配をしていた和人に対し、彼の隣に座っていた一人の少女

 

結城明日奈が口を押さえながら必死に笑いをこらえてる様子で

 

「あ、大丈夫だから安心して、私は例えあなたが殿方、それも幼馴染の男の子とフラグを立てようが気にしないから、フフッ!」

 

「この陰険お嬢様ぁ! さっきからどうして俺達と一緒にいんだよ! さっさと帰れ!!」

 

「は? 帰る訳ないでしょ、こうしてあなたが目の前でもがき苦しんでいる姿を拝める絶好の機会なのに」

 

長きに渡る因縁の中で、滅多に無い完全に優位に立てるこのポジション

 

ここから降りる事などどうして出来ようかと、明日奈は和人からマウントを取った形で嘲笑を浮かべる。

 

「それであなたどうするの? まさか本当に付き合っちゃうとかする訳? それなら私全力で応援するけど、ククク……」

 

「コイツ……人の気も知らないで完全にバカにしてやがる……なんて性格の悪い女なんだ、是非とも原作のお前に見せてやりたいよホント」

 

「明日奈が楽しそうで何よりだよ、普段はキリトと喋ってるとずっとしかめっ面だったからね」

 

「お前もお前でさっきからずっと楽しんでるだろユウキ……ったく俺の周りの女はこんなのばっかか?」

 

彼女が楽しんでいるのを見て喜んでいるユウキをジト目で睨みながら、和人は今の現状に嘆きながら銀時の方へチラリと目配せ

 

「まさかアンタまで人の不幸を見て楽しんでるんじゃないだろうな……」

 

「おい、俺をこんな奴等と一緒にすんな、テメェがあの眼鏡に惚れられようがどうでもいいんだよそんな事」

 

知ったこっちゃないとけだるそうにそう言うと、銀時はポリポリと頬を掻きながら

 

「だがどんな依頼であろうとキッチリこなすのが俺達万事屋だ、という事で和人君、数日後にキリ子としてあの眼鏡君と会ってデートしなさい、もう向こうには既に言ってるから、会わせてやるって」

 

「この人が一番タチが悪いの忘れてたぁ!!」

 

この男に関しては楽しむ以前にただビジネスをやり遂げる事しか考えていない。

 

もはや銀時は自分の仕事を終えて新八から是が是非にでも報酬を手に入れる事しか考えておらず、体よく和人を利用する気満々だ。

 

「ウチに寄生する居候の体を生け贄に捧げれば金が貰えるなんて、これ以上にうまい話があるか? 良かったな寄生虫、我が家の家計の助けになる仕事が出来て」

 

「まさか俺をキリ子としてアイツとデートしろって言ってんのか!? 100パーバレるだろ絶対!」

 

「平気平気、どうせあの眼鏡、緊張しすぎてお前の事なんか目を合わせる事すら出来ねぇから、ハッキリと視認されなければバレはしねぇって、キリ子でイケるって」

 

「イケねぇよ! いくら新八でも流石にナンバーワンのキリ子でも無理あるって!!」

 

既に新八と会わせる手筈は整えているらしく、このままだと和人はキリ子として彼に接触しなければならない。

 

しかしいくら相手が恋に盲目の状態だとしても、一応幼馴染である自分の事を間近で見れば流石に気付く筈

 

だがそんな危惧をする者は、この場にいる自分一人な訳で……

 

「やるだけやってみようよキリ子、ボクも応援してあげるから、1回デートするだけでいいんだし」

 

「デートの日付決まったら私にも教えてね、一生の思い出にする為にビデオカメラで一部始終を撮ってあげるから……」

 

「お前等全員地獄に堕ちろ!!!」

 

すっかり他人事で楽しんでいるユウキと明日奈を見て、もはや自分に味方などいないと悟った和人は、店内にもお構いなしに思いきりキレて見せるのであった。

 

「こちとらモノホンのデートすらした事無いのに! 初めての相手が新八って! 」

 

「おい、そんなカリカリしてる姿は本番で見せんなよ、バレたら報酬もパーなんだからな」

 

「デートなんて気楽になってやればいいんだよ、女の子側なら尚更ね、ボクも銀時と遊んでる時はそんな感じだよ」

 

「ブフッ! ゴメン私やっぱ耐えられない……!」

 

「だからさっさと帰れよアンタは!」

 

銀時、ユウキ、明日奈に助言と嘲笑をありがたく受け取りながら、彼は強引に話を進められ仕方なくデートをする羽目となってしまう。

 

果たしてこれからどうなってしまうのか……

 

 

 

 

 

そしてあっという間に数日後。

 

志村新八はようやく彼女と会えることに胸の高鳴りを覚えながら

 

「こぉぉぉぉぉぉぉぉ……」

 

銀時が指定した待ち合わせ場所の初代将軍・徳川家康像の前で数時間前から凄い気合を入れた様子でスタンバっていた。

 

時刻が昼に差し掛かった頃、小鳥がさえずりだす早朝からずっと微動だにせずそこに突っ立っていた新八

 

するとそんな彼の下へ、目を細めながら怪しむ様にジッと見つめながら

 

彼を良く知る人物、桐ケ谷直葉が心配して彼の所へやって来たのだ。

 

「……ねぇ、もしかして新八さん……ここでずっと待ってるの……?」

 

「こぉぉぉぉぉぉぉぉ……」

 

「確かに念願の初デートで気が昂るのもわかる気はするけど……もう少し余裕を持ったら?」

 

「こぉぉぉぉぉぉぉぉ……」

 

「さっきからなんなのその呼吸の仕方、凄い怖いんだけど……」

 

どこから出してるのかわからない気味の悪い独特な呼吸を繰り返す新八、そんななんとも近寄りがたい雰囲気を持つ彼に、直葉は唖然とした様子で呟く。

 

「ていうか本当なの、本当に新八さんその人とデートするの……?」

 

「何度も言わせないでくれ、直葉ちゃん……銀さんからちゃんと連絡が来たんだ、彼女は僕と会ってもいいって……」

 

前々から直葉はこの事に関して何度も何度も問い詰めて来る、しかし新八の決意は揺るがない。

 

「だから僕はこの時をずっと待っていた! コレを逃がしたらこの先一生彼女なんて作れないんだと己に覚悟して! この平凡でモテない人生にピリオドを打つ為に!!」

 

「どんだけ必死なのよ……だって一目見ただけなんでしょその相手の人、何も知らない人にそこまで本気になっちゃうのはどうかと思うんだけど私……」

 

「関係ねぇ! 男ってのは積み重ねた色恋よりも一瞬の出逢いにときめきを感じるんだよ!」

 

「知らないよそんな事……」

 

確かに新八は平凡でこれといった特徴が無いモブ同然のアイドルオタクだが……

 

別にそこまで自分を追い込まなくても普通に探せば良い女性の一人ぐらい見つかるのではと直葉は素朴に考えつつ、そもそもどうして今回彼がデートする事になったのか疑問を覚える。

 

(お兄ちゃんは絶対にあり得ないとか言ってたのに……)

 

兄、和人は新八があんな高貴な生まれのお嬢様に相手にすらされないだろうと評していた筈。しかしどうしてまた新八と会う事を承諾したのか……

 

(あんな綺麗な人がどうして……ひょっとして新八さん騙されてたりしてないよね?)

 

頭の中で次々と疑問や不安が浮かび上がる直葉が、腕を組んでしかめっ面で一人で考え込んでいると……

 

「よう、随分と待たせたな眼鏡」

 

「あ、銀さん!」

 

そこへフラリとあの男が平然とやってきた、徳川家康像の裏からヒョコッと現れたのは坂田銀時、直葉からすればこれ程までに底の知れない胡散臭い大人は中々いない。

 

新八は彼がやって来た事に反応していると、彼女もまたすぐに警戒心をあらわにした様子でジト目で睨みつける。

 

「すみません、新八さんが一目惚れした彼女とのデートをセッティングしたのはあなただと聞いたんですが……」

 

「あ? なんでお前がいる訳? 俺はこの眼鏡だけを呼びつけた筈なんだけど」

 

「心配だから見に来ただけです! 新八さんがあなたに騙されてないか!」

 

こちらに対し面と向かってストレートに本音をぶつける直葉

 

明らかに敵意を剥きだす彼女に銀時はめんどくさそうに髪を掻き毟りながら

 

「ったく俺は万事屋だぞ、金さえキッチリ貰えば仕事はどんな事であろうとやり遂げるのがウチの流儀だ、大事な依頼人を騙す様な真似なんざしねぇから安心しろ」

 

「てことは本当にここに連れて来たんですか……彼女を」

 

「ああ安心しろ、ちゃんと払うモン払えば女の一人や二人ぐらい紹介してやらぁ、ほれ」

 

ぶっきらぼうにそう言うと、まだ怪しんでいる様子の直葉に見せてやろうと、銀時はグイッと家康像の裏に隠れていた人物の腕を、無理矢理引っ張って彼女達の前に曝け出した。

 

「ほれ、どうだ新八君、お前が木に何度も頭を打ち付ける程に恋焦がれていた……」

 

 

 

 

 

 

 

「キリ子ちゃんだよ」

 

「ど、どうも……」

 

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

一瞬直葉は我が目を疑った。

 

銀時がさも得意げに紹介しようと引っ張って来たのは

 

数日前に写真で見たあの綺麗な女性、ではなく

 

その写真を持ってきた方の自分の兄、桐ケ谷和人が女装した姿、源氏名「キリ子」であったのだ。

 

「ちょ! い、一体これはどういう事なの!?」

 

新八に向かって頬を引きつらせながら挨拶して見せた彼に、直葉は叫びながらすぐにどういう事だと彼を問い詰めようとしたその時……

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! ホ、ホンモノだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「は!? 新八さんいきなりどうし……!ってぇぇぇ!? ま、まさか!」

 

突然隣で雄叫びを上げながら顔を真っ赤に興奮する新八の反応を見て、直葉は最悪の展開が頭によぎる。

 

まさか彼が恋をしたのはあのお嬢様ではなく……

 

「どどどどどどうもぼ、ぼぼぼぼぼぼ僕志村新八って言いやがります! 童貞です!! な、何卒御贔屓に!」

 

「し、新八さん!? 何言ってんの!? この人どう見ても私のおに……!」

 

口をモゴモゴさせながら間違った日本語を用いて自己紹介する緊張しまくりの新八。

 

そしてすぐに直葉が彼に慌てて説明しようとするも、そこへキリ子こと和人が彼女に視線だけで訴えて

 

(なんでお前がここにいんだよ!)

 

(ちょっと! コレどういう事なのよ! 話が地平線の彼方まで飛んで行って全然見えないんだけど!)

 

(どうやらこのバカは俺の事を幼馴染の桐ケ谷和人としてではなく通りすがりの美少女、キリ子ちゃんと認識しているらしい……そしてコイツが惚れた奴ってのはあのお嬢様ではなく俺だったって事だ)

 

(やっぱ見たくなかったそんな現実! なんで新八さんわかんないのよ! 見た目以前に声で気付くでしょ普通!)

 

(知るか! とにかくここは穏便に済ませ! 俺の事は絶対にバラすな!)

 

目と目を合わせるだけで脳内で伝え合うという兄妹の絆が垣間見えた和人と直葉

 

そして二人が無言で喧嘩しているのをよそに、全てを知る銀時はとぼけた様子で新八の肩にポンと手を置き

 

「約束通り連れて来てやったぜ、言っただろ、俺は万事屋、金さえ払えばなんだってやるって」

 

「あ、ありがとうございます銀さん! アンタ見た目はホントに胡散臭いちゃらんぽらんなのに! まさか僕の為にここまでしてくれるなんて!」

 

「気にすんな、俺はただ、やるべき仕事を果たしたまでの事だ」

 

感謝してもし切れない様子で感激している新八に、銀時がフッとドヤ顔で答える様子に、直葉はカチンと来た様子で無言で睨みつける。

 

(なにふざけた事言ってんのこの人……仕事を果たしたってただお兄ちゃんを女装させただけじゃないの)

 

(うるせぇ、それもまた仕事に変わりねぇだろうが、コイツの夢を叶えたんだから有難く思えコノヤロー) 

 

(いやなんであなたまで兄妹の脳内テレパシーに加わってくるの!?)

 

勝手に人の頭の中に悪態を送信して来た銀時に直葉がすかさずムキになって返信していると、そこへ和人がジト目で

 

(落ち着け直葉、そりゃ俺だって散々イヤだって言ったんだけどこの人が無理矢理……)

 

(今更下らねぇ事言ってんじゃねぇ、ここはなんとしてでも何事もなく終わらせて、この眼鏡から大金せしめてやるんだ、その為にはお前がキリ子として頑張るんだよ)

 

(人の兄に無理矢理女装させて私の家族同然の人を騙そうとするなんて……なんなんですかあなた? もしかして私に対する嫌がらせかなんかですか?)

 

(おい、勝手に万事屋グループラインに割り込んでくるんじゃねぇよ妹、さっさと退出しろ)

 

興奮して悶絶しっぱなしの新八をよそに、三人で頭の中で論争が始まり出していると

 

そこへ……

 

「ふふ、どうやら間に合ったみたいね……」

 

「うわー、なんだか早速すごい事になってるねー」

 

「!?」

 

突然この場に新たにやって来た人物に直葉は驚く、銀時の連れであるユウキと一緒にいるのは、あの写真の女性、結城明日奈であったのだ。

 

それも何故か物凄く楽しげな様子でほくそ笑みながら、彼女はチラリと和人に目配せして

 

(あらあら、随分とおめかしして気合入ってるじゃないのキリ子さん、でもそんなにアピールしていると逆効果よ? 女の子はもっと控えめに出た方が魅力が冴えるのよ、私はよく知らないけど)

 

(なんでアンタがここにいんだよ……! もう用済みなんだからとっとと帰れって……!)

 

(いいじゃない、私はただちょっとその美貌を是非とも参考にしたいと思っただけだから……フ! ホントに何度見ても笑えるわねその姿! ていうか普通に女の子に見えるのがまた面白いんだけど!)

 

(クソ、剣が欲しい……! この女をぶった斬る為の剣が欲しい……!)

 

(普通に脳内会話してる!)

 

ニヤニヤしながらこちらの弱味を握ったかのように見下してくる明日奈に、いつもと逆の立場になっている事に悔しさと怒りを燃やしながら睨みつける和人。

 

そんな仲悪そうに見えてどことなく気が合う二人を見て直葉が驚いている中、銀時とユウキも

 

(銀時、家にあるトイレットペーパーが無くなってたよ、からくりのボクは使わないけど銀時達はマズイんじゃない? スーパー行って買って来たら?)

 

(え、マジで? じゃあコレ終わったらスーパー寄って買って来るか、他に足りないモンあったっけ?)

 

(キリトが朝、歯磨き粉が無いとかぼやいてた気がするけど)

 

(ああ? 歯磨き粉ならまだ全然残ってんだろ、全力で捻ればまだニュルニュル出るわ)

 

(いやもう無理でしょ、ペッチャンコじゃん今使ってる歯磨き粉)

 

「その会話は頭の中じゃなくて普通にしたらどうなんですか……」

 

どうでもいい日常会話をわざわざ頭の中で交信し合うユウキと銀時に直葉がボソッとツッコミを入れていると

 

「な、なんでこんなに人が増えてんすか!?」

 

「あー気にしないで良いから、コイツ等タダの野次馬なんで」

 

女装した和人を前にノックダウン寸前だった新八がようやく我に返って辺りを見渡した。

 

いつの間にか直葉や銀時だけでなく、明日奈やユウキまでいたので何があったのだと驚いているが

 

そこへ銀時がけだるそうに答えてなだめる。

 

「安心しろ、俺等はもう消えっから、後は若い二人だけでかぶき町でよろしくやってくれや」

 

「わ、わかりました……そ、それじゃあ……」

 

手をヒラヒラと振りながら銀時がそう言うと、新八はまだ緊張した様子で改めて和人の方へ振り向くと

 

「い、行きましょうか! キリ子さん!」

 

「ハハハ……よろしく」

 

顔を真っ赤にして目を血走らせる新八にドン引きしながら、頬を引きつらせながら和人は否応なしに彼とのデートを始める事に。

 

後ろでまだクスクス笑いをしている明日奈にイラッとしながら、彼は新八と共に歩きだすのであった。

 

そして

 

(絶対に納得いかないんだから!)

 

(まあまあ落ち着けって妹)

 

(そうそう、確かにボクも昔、姉ちゃんが銀時とデート行くって初めて聞いた時は全力で邪魔してやるという使命に駆られたけど、ここは見守ってあげようよ)

 

(どう見守れって言うんですか! 兄二人のデートを!」

 

直葉の方はまだ納得してない様子で、銀時とユウキに頭の中で諭されながらも和人と新八を睨みつけている。

 

果たしてこのなんともおかしなデートは無事に成功するのであろうか……

 

次回、キリ子と新八、かぶき町デート

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。