竿魂   作:カイバーマン。

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話は再び新八の純愛物語編です、どうぞ


第八十五層 恋はいつでもハリケーン

 

桐ケ谷和人は急遽かぶき町にあるファミレスに、妹の桐ケ谷直葉を呼び出していた。

 

理由は勿論、恋に悩みし哀しき童貞、志村新八の事である。

 

「お兄ちゃんの方から呼び出されるなんて初めてかもね……それで、私に用があるってなに?」

 

「ああ、まあ新八の事でとりあえずお前にも伝えておこうと思ってよ、なんかすげぇ気にしてたみたいだし」

 

「あーやっぱこれ飲んでると生きてるって実感が湧いて来る~~」

 

「私としては彼女の体の構造も気になりだしてるんだけど……アレ何杯目?」

 

隣の席でユウキがポリタンクに直接口を付けて美味しそうにガソリンを飲んでいる事にツッコミたいと思いつつも

 

迎いに座る和人の”格好”を見て、そんな些細な事はどうでもいいなと直葉は話を聞く態勢に

 

「それにしてもまさか覚えてたなんて意外、だってあのお兄ちゃんがだよ? 本当に新八さんが好きになった人を探し回ってたの? ロクに外出も出来なかったお兄ちゃんが?」

 

「おいおいそんな昔の話を蒸し返さないでくれよ、直葉、もうお前が知るのは過去の俺だ、今の俺はこうしてちゃんと真っ当な社会人として汗水流して働いているのさ」

 

「……そうだね、確かに以前のお兄ちゃんとは全く見違えるほど変わってるかも、だって今のお兄ちゃん……」

 

 

 

 

 

「お兄ちゃんじゃなくて”お姉ちゃん”になってるんだもん」

 

「出来ればそこはツッコまいで欲しかったな」

 

直葉は改めて和人の今の格好を上からじっくりと眺めた。

 

やけに似合っている黒髪ロングのカツラを付け、女性の着物を堂々と着ているその姿、尚且つそれに対してなんの抵抗もなく人前に曝け出している和人に驚きを隠せない。

 

「……どういう事なのお兄ちゃん、いやお姉ちゃん……ちょっと私、頭の整理が追い付かないんだけど」

 

「いやお兄ちゃんでいいから、いやちょっとオカマバーでおっかない店主に拉致されてな、店員として無理矢理働かせられてんだよ、どこぞの誰かがロクに稼ぎが無いせいで」

 

「それで女の格好に……じゃあもしかして今も仕事中だったり?」

 

「ああ、今お昼休憩中だ、お前との話が終わったらすぐ店に戻って舞台の上でキリ子として踊らないと」

 

「お、踊るんだ……なんでだろう、お兄ちゃんが働いてるのは嬉しいんだけど、色々と複雑……」

 

腕を組みながらハッキリと自分の今後のスケジュールを話す和人に直葉は頬を引きつらせ苦笑する。

 

まさかしばらく見ない内に人前で女装したまま踊るなんて真似が出来る程にまでなっているとは……

 

しかも元々中性的な顔立ちなので、ぶっちゃけ女の直葉から見ても普通に小綺麗だと思えてしまうのが少し悔しい。

 

「これでも俺は店では常にトップの座に君臨しているからな、ようやくお前も兄の事を誇りに思えるな、妹よ」

 

「アハハ……安心して、絶対誰にも言わずに墓まで持っていくから……」

 

オカマバーでトップになった事をドヤ顔で語る和人に思わず直葉が目を逸らしてしまっていると、彼女の隣に座るユウキがポリタンクから口を離して彼の方へ顔を向ける。

 

「でもさー、最近キリ子が人気者になっちゃったもんで、ウチのパー子がすっごい機嫌悪いんだよね、俺の客奪わった卑怯者ーって」

 

「はぁ? あの人そんな事言ってたのか? ったく自分が客取れないからってトップの俺に嫉妬なんて言いがかりつけるなんて器の小さい奴だな、そんなんだからいつまで経っても俺の人気の足元にも及ばないんだよ」

 

「なにをー! パー子だって頑張ってるんだよ! 最近個人指名も増えて来たしパー子はパー子なりに需要あるのが証明されてるんだよ! いずれキリ子のその鼻をへし折ってやる!」

 

「はん、指名つってもほとんど知り合いばかりじゃないか、エギルとかお登勢さんとか、俺の首を狙うってなら将軍に指名されるぐらいにまでならないと勝負にもならないな」

 

「ごめんちょっとなに言ってるのかわからない……」

 

パー子こと銀時がいずれ彼を蹴落としてトップに立つ事を夢見るユウキと、望む所だと王者の貫禄を見せつけるキリ子こと和人。

 

そんなオカマ同士のトップ争いなど心底どうでもいい直葉は、勝手にしてくれと頭に手を置く。

 

「そんなのいいから早く新八さんの話してよキリ子さん」

 

「ああそういやそうだった、それでな……」

 

うっかりユウキとの言い争いに夢中になって新八の事を忘れていた和人だったが、すぐに胸元の襟からスッと一枚の写真を取り出した。

 

「新八が惚れている相手、遂に見つけたんだよ」

 

「え、もう!? ホントに!?」

 

「ああ、あの人と一緒に結構この辺探し回って、遂に相手の写真を入手した」

 

「見せて!」

 

「お、おう」

 

得意げにヒラヒラと写真を見せびらかすと、勢いよくテーブルを叩いて身を乗り出す直葉に、和人は少しビビりつつもすぐに彼女に写真を手渡した。

 

彼女は奪い取る様にその写真を手に取ると、そこに写っていたのは栗色ロングの超が付く程美人な人物が、こちらに向かって不機嫌そうな顔しながら撮られていた。それも今いるお店の中である。

 

「え……! なにこの世の男性の理想が具現化したような綺麗な人……! ホントに実在する人!?」

 

「そこまで言うか? まあ確かにツラは悪くないと思うけど」

 

「君はホントに見る目がないねー、女のボクからしても明日奈は本当に惚れ惚れするぐらい綺麗だと思えるのに」

 

「見た目良くても性格がアレじゃダメだろ」

 

「明日奈……?」

 

予想していたよりも遥かに綺麗な人物だと知って気が動転する直葉だが、テーブルに頬杖を突きながら和人と会話するユウキの口から出てきた名前にピクリと反応した。

 

「それが彼女の名前なの?」

 

「ああ、確かフルネームだと結城明日奈だっけな、将軍家代々仕える名門の一族のお嬢様、なにかと自分の事を優秀だの勝ち組だのアピールしたがる嫌な女だよ」

 

「そこまで把握してるって……ちょっとお兄ちゃん凄くない!? ホントの探偵みたい!」

 

「いや実は俺、元からそいつとは知り合いだからさ」

 

「!?」

 

憎らしげな表情を浮かべながら和人はあっさりとぶっちゃける、明日奈の事はずっと前から良く知っていると

 

「最初はゲームの中で偶然ばったり会ったのがキッカケで、その内リアルでも顔合わせる事があってな、それっきり何かとそいつとは腐れ縁が続いてるんだよ」

 

「へ、へ~そうだったんだ……お兄ちゃんがこんな美人な人と……」

 

まさか彼がゲームの世界でこんな綺麗な人と接点があったとは……できれば彼女の明るい未来の為に、厄病神である自分の兄と関わらせるのを止めさせたいが……

 

「ってアレ? てことは新八さんが好きになった人はお兄ちゃんの知り合いだったって事?」

 

「ああ、全く驚いたぜ、あの人と一緒に聞き込みを続けていたら最終的にまさかあの女が出てくるなんて……新八の奴頭おかしいんじゃないか? こんな世間知らずのお嬢様に惚れるなんて」

 

「いやこれは彼女いる歴0年の新八さんには刺激強過ぎでしょ……むしろお兄ちゃんがおかしいんだよ」

 

目が腐ってるんじゃなかろうかと実の兄を心配する直葉、こんな美人な人と接する機会があれば同年代の男の子なら是非土下座してでもお付き合いしたいと願うと思うのだが……

 

「ところで単刀直入に聞くけど、新八さんがこの人とあわよくば交際にまで持っていける確率は?」

 

「んー0だな、完全に0、まずあり得ない」

 

「やっぱり……」

 

「将軍家に連ねる名家のお嬢様と、潰れかけの貧乏道場の跡取り息子だぞ、まず初期ステータスから雲泥の差だ」

 

案の定、和人もこればっかりは無理だと考えている様子で、それを聞いて直葉もホッと一安心する。

 

彼の言う通り、新八と彼女では全く釣り合わない、新八には悪いが……

 

「あのお嬢様の事だ、新八なんて道端に転がってる眼鏡としか思わないだろう、ま、今回は相手が悪かったと素直に諦めさせるしかないな、新八には」

 

「そうだよね、確かにこんな綺麗な人、新八さんには分不相応だよ、あの人は高望みせずもっと視線を下に下げた方が良いと思う」

 

「元々アイドルの追っかけしてる奴だからな、現実が見えてないんだろきっと、掛けてる眼鏡は伊達かっての」

 

兄妹二人で新八に散々な評価を下す和人と直葉。付き合いの長い自分達からすれば、新八というのはツッコミ以外に特別な才能を持っている訳でもない極々平凡な少年に過ぎず、特徴は眼鏡ぐらいで基本目立たないツッコミキャラなのだ。

 

まあ和人からすれば彼がアイドルに熱中してる時とか、直葉から見ればEDOをプレイしている時とかは、多少違う一面を見せる彼を拝む事ができるが……

 

「それで新八さんには彼女の事話したの? やっぱ無理だから諦めろって」

 

「ああ、あっちはあっちであの人に任せてるから」

 

「ちょっと前に銀時が話をしに会いに行ってたからね」

 

この事は当然本人にも知らせているんだろうかと尋ねて来た直葉に、和人とユウキの両方が答えた。

 

どうやら彼の下にはあの胡散臭い大人の代表格、坂田銀時が出向いているらしい。

 

「多分あっさりと話を終わらせてると思うぜ、なにせよりにもよってアイツを連れて行ったからな」

 

「え、誰?」

 

「なに言ってんださっき写真で見ただろ」

 

ユウキと和人の意味深な際にピンと来ないでいる直葉に、和人がスッと彼女がまだ持っている写真を指差す。

 

 

 

 

「全く今回の依頼で一番大変だったぜ……その女全然話聞いてくれねぇからな、お前はあんな風に人の話を聞かない女になっちゃダメだぞ」

 

「ええ!? てことはもしかして……!」

 

 

 

 

 

 

 

和人が直葉と話している頃、銀時は志村邸にてある人物を連れて依頼人の志村新八、それと姉の志村妙と面会していた。

 

「ほれ、ご本人様を直で連れて来てやったぞ、さっさと告れ、そして玉砕しろ」

 

「……」

 

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

「あらビックリ、新ちゃんが好きになった人って明日奈ちゃんだったの?」

 

澄まし顔で銀時が紹介したのはよくわかっていない様子でジト目になっている結城明日奈

 

「あの、どういう事……私イマイチ状況呑み込んでないんだけど……お妙さんの所に行くからついて来いと言われただけなんだけど」

 

「まあ、お前は別に基本何もしなくてもいいから、ただ普通にあの童貞臭い眼鏡に「ごめんなさい」って言うか、もしくはアイツの顎にキツいアッパー食らわすだけでいいから」

 

「なんで私が初対面の人にそんな事……いや待って、この眼鏡の人どっかで会った様な……」

 

街を一人で歩いている所を、彼に半ば強引に連れて行かれた彼女は、今の状況がさっぱりわからない様子。

 

向かいに座る新八は突然の絶叫を上げてるし、その隣に座るお妙はのほほんとした感じで笑みを浮かべていてますます意味が分からない。

 

「あ、思い出した、この人、前に十四郎さんとファミレスにいた時に店内なのに大声で叫んで暴れてた人だわ、でもなんでこの人がお妙さんの家に?」

 

「そういえば明日奈ちゃんにはまだ紹介してなかったわね、この子は私の弟の新ちゃん、この道場の跡取り息子なの」

 

「ええ!? そうだったんですか!?」

 

あの店内で騒いで他の客に迷惑かけていた男がまさかの尊敬すべきお妙の弟だと知ってびっくりする明日奈。

 

確かによく見たら顔のパーツがどこか似ている……

 

「それでね、新ちゃんったら姉である私にも言わずに銀さんと和人君にお願いして、あなたの事を探して貰ってたのよ」

 

「お妙さんの弟さんが? 一体私になんの用なんですか?」

 

「ウフフ、大したことじゃないのよ」

 

未だ意図が読めない様子で小首を傾げる明日奈に、お妙は笑顔のままやんわりと

 

「ウチに嫁入りして是非一緒にこの道場の経営を支えて欲しいって事ぐらいかしら」

 

「思いきりプロポーズじゃないですかそれ!? いやいやいくらなんでも急過ぎます! 大した事あります!」

 

なに笑いながらとんでもない事を弟の代わりに言っているのだと、明日奈はツッコミながら隣に座る銀時に振り返り

 

「ちょっとどういう事なのよコレ……どうして私、お妙さんの弟にいきなりプロポーズされなきゃいけないのよ……」

 

「だから言っただろ、俺はあくまでコイツが好きになった人を見つけて欲しいって依頼を完遂したかっただけだ、後はお前がこの眼鏡と籍を入れるのもよし、「ごめんなさい」で終わらせてもよし、ぶん殴ってでもよし、とりあえずパパッと適当に片付けてくれ、報酬貰ってとっとと帰りてぇから」

 

「お金だけ持ち去って私に全部ほおり投げようとしてんじゃないわよ!」

 

彼に強引にここまで連れてこられた理由がようやくわかった明日奈は、すっかり部外者を装っている銀時を睨みつけながら叫ぶと、何故か天井を見上げて固まっている新八の方へ視線を戻し

 

「まあその……いくらお妙さんの弟さんとはいえロクにまともに会った事がない人と、いきなりお付き合いは流石に無理ですごめんなさい……」

 

少々ぎこちないものの、ここはしっかりと相手に伝えておくべきだろうなと、明日奈は丁重に彼との交際を断りながら頭を軽く下げる。

 

「そもそも私の好きなタイプって、上司と部下のフォローが出来て、タバコとマヨネーズが似合うキレ者って感じが理想なんで、まあ好きというより憧れの方が強いんですけど」

 

「タバコはともかくマヨネーズが似合う男ってなんだよ、慎吾ママ?」

 

「あら、やっぱり新ちゃんじゃダメだったわね、まあ~明日奈ちゃんみたいな可愛い子じゃ、ウチの愚弟じゃ不釣り合いも良い所だし仕方ないわ」

 

「そこまで言ってないですよ私!?」

 

元々色恋沙汰には興味はあるものの生まれてこの方縁が無いし、強いて言うなら憧れの男性が一人いる程度

 

そんな自分が何も考えずにあっさりと交際に踏み込むなどむしろ相手に対して失礼だ。

 

そう考えた明日奈に対し、お妙もよく分かっている様子であっさりと了承する。

 

「人にはそれぞれの身の丈にあった相手がいる筈ですもの、明日奈ちゃんにもきっと素敵な出会いがこの先きっとあるだろうし、新ちゃんもいつかきっと、童貞でもアイドルオタクでも眼鏡でも受け入れてくれる様なマニアックな人が見つかる筈よきっと」

 

「さっきからお妙さん、弟さんにキツ過ぎません……?」

 

中々エグい事を自分の弟に突きつけるお妙にアハハとアスナが苦笑していると、おもむろに銀時がゆっくりと立ち上がって、さっきからずっと天井を見上げているだけの新八にスッと手を差し出し

 

「んじゃ、残念でしたって結果が出た所で……おら、眼鏡、報酬寄越せ、フラれようがこっちはちゃんとやる事やったんだからよ」

 

「……います」

 

「あん?」

 

こっちは仕事はしたしその件についてはキチンと報酬を貰う義務がある。

 

しかし新八は急にボソッと呟いたと思いきや、ゆっくりと視線を天井から正面に戻して

 

「違います、僕が会いたがっていたのは……彼女じゃないんです」

 

「はぁ!? いやだってお前! コイツとファミレスでバッタリ会ったんじゃ……!」

 

「会いました! 確かにその時もときめきましたよ! こんな綺麗な人見た事無いって! 現にさっきも思わず雄叫び上げて失神しかけましたもの! けど!」

 

なんとここに来て人違いだと主張する新八、彼が恋した相手は明日奈ではないという事は……

 

「その後日、同じファミレスで! 僕はそれをも遥かに上回る強い衝撃を受けて恋に落ちた相手がいるんです!」

 

「……報酬払いたくないから口から出任せ言ってるんじゃねぇだろうな?」

 

「いやいや本当ですって! あの時出会った彼女に会ってから! 僕はおかしくなってしまったんです!」

 

適当な事言ってんならタダじゃ置かねぇぞといった感じで凄んでくる銀時に、新八は新たな情報を彼に伝え始めた。

 

「そう、アレはこの人と会った後のほんの数日後の事、僕が同じ店で寺門通親衛隊の月一恒例のミューティングをやっていた時です……」

 

「なに、急に語り出したんだけどこの眼鏡、ウザいんだけど」

 

「あの時は隊の中に別のアイドルの追っかけをしている裏切り者がいまして、それをいつもの様に僕が隊長として粛清している所だったんです」

 

「急に物騒になったんだけど!? 最近のアイドルオタクってそんな物騒な事になってんの!?」

 

自然な流れで裏切り者の粛清をファミレス内で執行した事を話す新八に、銀時が戦慄を覚えていると

 

彼はほんのり頬を紅に染めて

 

「そんな時に彼女はたった一人で店に入って来たんです、長い黒髪を揺らしながらスッとやってきた僕より少し背が低い、凄く綺麗な女の子が……」

 

彼女を思い出しただけで緊張したのか、ゴクリと生唾を飲み込みながら新八は話を続ける。

 

「偶然その子が僕の視界に入った時に感じたんです、その子は僕が今まで会って来た女の子とは何か違うと、まるで普通の女の子とは全くの別の生き方をしている人なんだと、不思議にそう思えてしまったんです」

 

「ああうん、全然意味わかんねぇわ、頭おかしいんじゃないのお前?」

 

「それと同時に気付いたんですよ! ああこれが恋なのだと! 僕はあの時! 寺門通親衛隊の隊長でありながら! 一目見ただけの少女に心を奪われてしまった! 真の裏切り者は他でもない僕自身なんだって!」

 

「やっぱ病院行け、頭の」

 

新八の長ったるい自分語りに小指で耳をほじりながら銀時がめんどくさそうに返すと、彼に向かってしかめっ面を向けながら

 

「んで? 今度はその女を探して欲しいって事か、けどそれだけじゃ全然相手を絞れねぇよ、もっとなんか特徴を言えよ」

 

「えーと髪は長くて色は黒で……体系は細身でスラっとしててですね……」

 

「だからそれじゃわかんねぇって、どこにでもいんだろそんな女、なんかこう……そいつにしかねぇような特徴をだな」

 

「彼女にしかない……あ! ありました!」

 

面倒だが報酬は欲しいしまた探してやる事にするかと銀時は彼から上手くその女性の特徴を聞き出そうとすると

 

新八はふと思い出したかのように表情をハッとさせて

 

「実はその子が店に入ってきた後に、知り合いっぽい人がその子のいる席に一緒に座った所を見たんですよ、いやその知り合いがホント、女性に対して言うのもアレですけどえらいブサイクで、それも物凄く特徴的な」

 

「なるほど、それなら探し方見えて来たな、ターゲットを探る前にその知り合いとやらを見つけて話聞けば良いんだし、んで? そのブサイクはどんな女だった?」

 

「ええ、そりゃもうハッキリと覚えてますよ」

 

一体どんなブサイクなのだろうとちょっと興味が湧いて来た銀時に、新八は思い出し笑いをしながらその人物の特徴を上げる

 

「銀髪でちょっと天パが入ったツインテールで、まるで死んだ魚のような目をしていました、なんかもう人生ナメ切ってるかのようなダメ人間臭が半端なかったですね、性格も悪そうでしたし」

 

「銀髪天パで死んだ目? ハハ、そりゃそんなバカっぽい特徴だったら嫌でも覚えるわ……うん?」

 

「あと、彼女から源氏名っぽい名前で呼ばれていましたね、確かパー子とか?」

 

「……パー子?」

 

新八から聞いた特徴を辿りながらへらへらと笑っていた銀時だがふと何かに気付いた。

 

しかし気付いたのは彼だけではない、隣で話を聞いていた明日奈も顎に手を当て

 

(え? パー子って確か……あのお店でこの人が使ってた……)

 

そのパー子とはもしや……明日奈がチラリと銀時を見上げながら考えていると、彼はもしかしたらと思い切って新八に再度尋ねる。

 

「……新八君、悪いんだけどもっかいその探して欲しい相手の特徴言ってくれない?」

 

「え、いやだから、髪は長くて色は黒で、体系は細身でどこか浮世離れした、僕と同い年ぐらいの女の子ですって」

 

「……」

 

「いやーまた会いたいですよホント、すっごく可愛かったんですから」

 

嬉々としながら語る新八をよそに、銀時と明日奈は徐々にその人物のイメージが完成しつつあった。

 

そしてそれはずっと黙っていたお妙も勘付いた様子で

 

(そういえば銀さん、前に西郷さんの店でパー子って名前で働いてたわよね、それで一緒に働いてたのは……)

 

(長い黒髪をした細身の……弟さんと同年代の子……)

 

(おい、まさかコイツが惚れた相手ってまさか……)

 

お妙、明日奈、銀時の順で各々推理していきながら

 

やがて同時に同じ答えが導き出された。

 

そう、新八がこれ程までに夢中になるほど好きになってしまった相手はまさかの……

 

 

 

 

 

 

 

(あらヤダ、どうしましょう、まさかこの子が好きになった相手て)

 

((キリ子ォォォォォォォォォォォ!!!!))

 

新八が好きになった人は

 

まさかのキリ子こと女装した桐ケ谷和人君でした。

 

とんでもない新事実が発覚した所で

 

次回に続く。

 

 

 

 

 

 

 




銀魂×ネギまのクロスオーバー、「三年A組 銀八先生! NEO!」を連載開始しました。

10年前に私が書いた処女作をフルリメイクした作品です。

機会があれば本作共々読んで下さったら嬉しいです

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