竿魂   作:カイバーマン。

83 / 92
アスナが幽霊嫌いなのは別にこっちが設定いじった訳でなく原作通りです。

本編でも彼女はホラーダンジョンの65層と66層だけはどうしても攻略参加出来なかったと書かれていたり、何かとそういう類の話になると嫌な顔を浮かべるシーンがあります。

と言っても流石にどこぞの誰かさんと違っていきなり頭からツボの中に突っ込むような真似はしませんけど



第八十三層 記憶は消えない、記憶は嘘をつかない

遂に六十五層に到達する事となった銀時であったが、彼にとって最大の難関が遂に現れたのだ。

 

そこは一層丸ごとホラー要素満載の、怖がりの銀時にとっては正に一秒たりともいたくない恐怖のエリア

 

そしてそれは同じくホラー嫌いのアスナもまた同じ気持ちで、彼女がどうして六十五層を攻略できないかという理由でもあったのだ。

 

「へ~~~あの「鬼の閃光」だの「女神の皮をかぶった死神」だの「クソ真面目面白味ゼロ副長」だの言われているお前がね~~~」

 

「は? なに私に向かってヘラヘラ笑ってんのよ、殺すわよ」

 

偶然酒場で彼女と鉢合わせしたキリトはえらい上機嫌で彼女と椅子に座って向かい合っていた。

 

片方は楽しげに笑い、もう片方は顔をしかめて睨んでいるというなんとも不穏な状況である。

 

そしてそんな近寄りがたい雰囲気にも関わらず、キリトの同行者であるユウキは何食わぬ顔でアスナの方へ歩み寄ると

 

「アスナって幽霊とか苦手なの?」

 

「に、に、苦手じゃないから! そもそも苦手ってなにが!? そんな非科学的な存在に苦手とか怖いとか思う人いるの!? そっちの方が驚きなんですけど!?」

 

「あれ? あそこの窓から何か人影が見えた様な……」

 

「!?」

 

会話の途中でおもむろに酒場の窓を指さしたユウキが呟いた瞬間、アスナの動きは正に一瞬であった。

 

窓から彼女の方へ視線を戻すと既にそこにいなく

 

何処へ行ったのかとテーブルの下を覗いてみると、そこで体育座りしている彼女と目が合うユウキ。

 

「……アスナ、何してるのそんな所で」

 

「いや……テーブルの下で体育座りすると新陳代謝が良くなって健康になるって雑誌で読んだから……」

 

「……」

 

歯切れの悪い感じでやや小さめな声で言い訳をする彼女としばし見つめ合った後

 

背後からゴトっと音がしたのでユウキはおもむろに後ろに振り返ってみる

 

するとそこでは銀時が両足をジタバタさせながら置物の大きな壺に頭から突っ込んでいる姿が

 

「……なにしてんの銀時」

 

「いや……人間はツボの中に入ると神様に異世界という場所に連れて行かれ、そこではどんな能力も使い放題な上に女にモテまくるらしいから、ちょっと異世界転移しようかと思って……」

 

「……」

 

壺からスポット顔を出して長々としょうもない言い訳をベラベラと早口で喋り出す銀時としばらく目を合わせると、ユウキは呆れ感じで「はぁ~」とため息をこぼしながら改めて二人を確認して

 

「まさかこの二人が全くの同レベルの幽霊嫌いだったとはね~」

 

「何言ってんのユウキ! 私とこんな人を同列にしないで! 怖がってるのはこの人だけでしょ!」

 

「あぁ? ビビッてんのはテメェだろうが小娘、俺全然ビビッてねぇし、むしろビビるってなに? ここってなんかそういう要素ある訳? ゴメン全然わかんないわ俺」

 

「凄い、口を揃えて否定するのも息ピッタリだよこの二人」

 

基本キリト絡みでないとまともに会話する事さえない銀時とアスナが、ここに来て共通の弱点が発見。

 

二人は真っ向から否定はしているが、それもまた隠しきれずにバレバレな所もまたそっくりだ。

 

 

銀時はともかくアスナまで……ユウキは意外だったと目を見開いていると、隣にいた神楽も「ふ~ん」と呟き

 

「あの天パもアスナに負けず極度のビビリだったって訳ね、アイツも大した事ないわね」

 

「ボクはアスナの方が怖がりだったのが意外だよ、あの子ってそういうの平気だと思ってた」

 

「アスナのビビリナメんじゃないわよ、稲川先生の怪談話で泡吹いて気絶した事あるぐらいなんだから」

 

「いやそれなら銀時だって明らかに偽物だとバレバレの心霊写真を姉ちゃんが冗談で渡したら、地平線の彼方まで逃げて行って一週間ぐらい戻ってこなかったんだから」

 

「そんなの全然大した事無いわよ、アスナなんてテレビで井戸から幽霊が出て来るって映画観てから、江戸中にある井戸を全て破壊してくれって泣きながらウチのパピーに頼んだ事あるのよ、そしてそれを実行し掛けたのよ、あのハゲ親父」

 

「なにを~ウチの銀時なんか……」

 

「おいその辺にしてやれよ、なんでどっちが怖がりなのかで言い合いになるんだよお前等……」

 

二人して銀時とアスナの恥ずかしくしょうもない話を暴露合戦し始めるユウキと神楽を

 

いつまで経っても話が尽きないなと思い、キリトがテーブルに頬杖を突きながら止めに入った。

 

「俺としてはこの人がビビリなのは最初から知ってるしどうでもいいんだよ、面白いのは今まで散々威張り腐って他人を見下していた高慢ちきなエリート女が」

 

ここに来て彼女の最大の弱みを手に入れた事を嬉しそうにしながら、キリトはアスナの方へ目配せ

 

「実はこんなあられもない姿を人前に晒す程のみっともない小娘だというのが発覚した事さ」

 

「ホントに性格クズ過ぎるわねコイツ……一体どんな環境で生きればこんな卑屈な精神に成り下がるのかしら」

 

ジロリと睨みつけながらキリトに強い嫌悪感を放つアスナ、すると案の定、二人の間でバチバチと火花が鳴り出す。

 

「言っておくけど私はホントそういうの別に苦手でもなんでもないから、アナタが勝手に思い込んでるだけよ、お可哀想に、日頃妄想ばっかして自分の殻に閉じこもってるせいで現実というモノが認識出来なくなってしまったのね」

 

「そうやって早口で頑なに認めようとしないのもどうかと思うがね俺は、その年で幽霊如きにビビるとか情けないと思わないのか」

 

「そんな安い挑発で私が乗ると思ってんの? 言っておくけどこっちは本気になればあなた程度の小市民なんか簡単に社会的にも物理的にも消す事だって出来るのよ、幕府直属の名家ナメんじゃないわよ」

 

「おいおい遂に一族の権力を使おうとしちゃってるよコイツ、ようやく本性現したな悪徳令嬢、江戸を護るだの仮想世界の治安を護るだの綺麗事言っておきながら、結局は自分が一番可愛いって事ですねお嬢様」

 

「社会のゴミを抹消させる事も大事なクリーン活動よ、江戸もこの世界も綺麗になる為にまず一番デカいゴミをとっ払った方が後々楽で助かるでしょ、だからとっとと消えなさい、この世から」

 

弱みを付けこまれたことがそんなに嫌だったのか、以前に比べて更に口が悪くなってピリピリしているアスナに対し、負けじと応戦して同レベルの返しをして見せるキリト。

 

そんな二人のいつもの口論を顔をしかめて眺めているのは、何かとこの二人と面識のあるリズベット。

 

「毎度の如く飽きないわねコイツ等……顔を合わせれば喧嘩ばかり、いい加減にして欲しいんだけどそろそろ」

 

「全くだ、ガキ同士の痴話喧嘩なんざ見ててもなんの面白くもねぇ」

 

毎度付き合わされるこっちの身にもなって欲しいモノだとため息をこぼす彼女に、いつの間にか彼女の傍に立って傍観者になっていた銀時が賛同する様に頷く。

 

「喧嘩ってのはもっと派手にやるモンなんだよ、ネチネチ互いの悪口を言い合ってる喧嘩なんざ酒の肴にもなりゃしねぇわ、さっさとやり合えガキ共、腰に差してる得物はナマクラか?」

 

「いやなんか自然に会話に入って来てる所悪いんだけどさ、もう大丈夫なの銀さん、怖いんじゃないの?」

 

「は? 何それ? 俺がいつ怖いつったよ? なにお前喧嘩売ってんの? 派手な喧嘩をこの銀さんとやりたい訳?」

 

「こっちはこっちで凄くめんどくさいわね……ロクな奴いないわホント」

 

銀時も銀時で「怖い」というワードを使っただけでこの過剰反応。

 

どいつもこいつもめんどくさい奴等のオンパレードでリズベットは一人疲れ切っている中、それをよそに銀時はスタスタと酒場の中を歩き回る。

 

「こりゃ今日はダメだな、ウチのキリト君は完全にあのお嬢様とのお話に夢中みたいだし、やっぱ俺ログアウトして抜けるわ、いや別にここが怖い訳じゃねぇんだけどよ、そろそろウチにババァが家賃回収に……」

 

そう言いながら銀時はメインメニューを開き、適当な口実をつけてログアウトを押そうとする

 

だがその瞬間

 

「!?」

 

銀時の近くにあった大きな壺が

 

突然誰も振れていないのにガタン!と大きく揺れたのだ。

 

まるで一人でにその壺が意思を持って動いたかのように……

 

そしてその音はアスナの耳にも届いたのか、キリトとの口論を中断させてすぐ様そちらの方へと振り向く。

 

「……ね、ねぇ今そこの壺動かなかった……?」

 

「どんだけ神経過敏になってんだよアンタ、怖がり過ぎて遂に幻覚まで見えて来たか」

 

「あなた気付かなかったの!? 今さっき明らかにあの変な壺が思いきり揺れて……!」

 

全く気付いていない様子のキリトにアスナが慌てて説明しようとしたその時

 

 

 

 

バキバキッ!とその壺からヒビが突然現れ

 

そしてヒビを突き破ってと壺から手足が生えて銀時の前で立ち上がったと思いきや

 

壺の蓋がパカッと開いて中からニュッと

 

 

 

 

「奇遇ですね、お前もここに来ていたのですか」

 

「「ギャァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」」

 

壺から手足を生やした状態で蓋を帽子みたいに被っているアリスが、平然と彼の前に現れたのだ。

 

いつもなら軽く驚くだけ済む事であったが、すっかり怖がっているこのタイミングでは別である。

 

彼女が現れた事で、銀時だけでなくアスナも悲鳴を上げ、一目散に酒場の出口へと駆け出して

 

「で、出たぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! 妖怪壺女だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! 誰か地獄先生呼んで来てぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

アリスに対しておかしな名称を付けながら、脇目も振らずに二人は薄暗い街中へと逃げて行ってしまうのであった。

 

この一連の出来事に対して銀時とアスナ以外のメンバーは、呆然と行ってしまった彼等の背中を見つめて

 

「銀時が逃げた……アリスに驚かされた程度で」

 

「アスナ姐……あんなので泣いて逃げるとかどんだけビビリアルかホント」

 

ユウキと神楽がポツリと呟いていると、事態を起こした元凶であるアリスはまだ壺を着飾ったまま真顔で腕を組み

 

「わざわざ私から挨拶してやったのにいきなり逃げるとは、なんとも無礼な男です」

 

「ちょっと壺女、それいい加減脱ぎなさいよ、アンタ美人だから余計にシュールな格好に見えるのよ」

 

壺から手足が生えてるというなんとも奇妙な格好だというのも気にせずに銀時の文句を付けるアリスに

 

椅子に座りながらリズベットが冷静に指摘して上げる事に

 

「それよりいいの、この街ってあちこちにホラーギミック満載の怖がり屋には最悪のスポットよ、早く誰か追いかけて連れ戻してあげないとあの二人最悪ショックで死ぬわよ」

 

「心配無用です、私が探しに出向くので」

 

「いやそりゃ驚かされた張本人が迎えに行くのは道理だけど、その恰好で探すのは止めておきなさい」

 

妖怪壺女が銀時の事を探しに行こうと早速酒場から出ようとするが、とりあえずその恰好をどうにかしてから行けとツッコんだ後、リズベットは平然と座ったままでいるキリトの方に振り返り

 

「ほら厨二剣士、アンタもアスナの事探しに行きなさい」

 

「いやいやどうしてこの流れで俺がアイツを探しに行く事になるんだよ、行くならアイツの数少ない親友であるチャイナ娘かお前だろ」

 

「そりゃ私が迎えに行ってあげたいけど、いい加減アンタ等の仲悪いアピールにはウンザリしてんのよこっちは」

 

物凄く嫌そうな表情で誰があんな女探しに行くかと文句を垂れるキリトに歩み寄ると、リズベットは彼の背中をかなり強めに叩いて

 

「ここらでいい加減、男らしく助けに行ってポイント稼いで来なさいよ、そしてせめてまともな会話が出来るぐらいには仲直りしなさいよね」

 

「いやだからなんで俺があんな奴と仲直りしなきゃ……」

 

「あーつべこべ言ってないでさっさと行きなさいっつうの!」

 

頑なに嫌がるキリトに遂にリズベットはキレて、彼を無理矢理立たせて思いきり背中を蹴りつけてやる。

 

「それとさっきまでアスナに向かって酷い事言いまくった事も含めて謝ってこい!」

 

「はぁ? 俺だってかなり言われてたんだぞ!? なんで俺がアイツに謝らなきゃならねぇんだよ!」

 

「異性で喧嘩したら真っ先に謝るのはまず男からって相場で決まってんのよ、文句ある?」

 

「く! これだから女ってのはイヤなんだ! 何かあるとすぐ女同士で組んで男を敵とみなすんだ!」

 

彼女の無茶苦茶な持論にキリトは精一杯の反論を行いつつも、これ以上ここにいるといつまで経っても言われ続けそうなので、渋々酒場を後にアスナを探しに出向くことに

 

「ったくどうして俺がこんな事を……」

 

ぼんやりと濃い霧が出てきた中で、ブツブツと文句を垂れながらキリトはポケットに両手を突っこみながらめんどくさそうに霧の中へと入っていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

それからしばらく経った頃

 

妖怪壺女の襲撃を受けて街中へと逃げ出していった銀時の方は

 

ポツンと佇む現代風の白い家の門前で体育座りしながらボーっとしていた。

 

明らかに普通でない色白の子供と一緒に

 

「へー……俊雄君はここの家の子なんだー、お父さんとお母さんはいるの?」

 

「にゃーーー」

 

「へーお母さんはお父さんに殺されちゃったんだー、じゃあ今この家にいるのお父さんだけ?」

 

「にゃーーー」

 

「へーお父さんもその後お母さんに殺されちゃったんだー、あれ? でもお母さんってお父さんに殺されたんじゃなかった?」

 

色白の子供が喉から発しているのは人間の声ではなくまるで猫の鳴き声であった。

 

背後に佇む白い家の二階の窓から、チラチラと何か得体の知れない何かが映っている事にも気づかず

 

既に怖さが限界突破していた銀時は、そんな不思議な少年との会話を楽しむ様に引きつった笑みを浮かべ、傍から見ればまともに会話している様にも見える。

 

するとそこへ

 

「こんな所にいたのですか、お前」

 

銀時を探しに来てくれたアリスが迎えに来てくれたのだ、今度は壺ではなくいつもの金ぴか鎧の格好だ。

 

「随分と探し回りました、というかその色白の得体の知れない少年はどなたですか?」

 

「俊雄君だよ、ついさっき会って仲良くなった俺の友達さ、だよね俊雄君」

 

「にゃーーー」

 

「……」

 

明らかにヤバい類であろう存在と仲良さげに話す銀時、アリスは顎に手を当てしばらく少年をジッと見つめ

 

いつの間にか家の二階の窓からこちらに向かって凄まじい形相で見下ろしている髪の長い女を一瞥すると

 

少年と親し気に会話を続ける銀時の腕を強引に掴み上げる。

 

「……酒場に戻りましょう、友達に別れを告げるのです」

 

「えー、俺今から俊雄君の家に遊びに行く所なんだけど」

 

「遊びに行くのはまた今度です、ほら俊雄君に挨拶なさい」

 

「バイバーイ俊雄君、このお姉ちゃんがダメって言うからよ、また今度遊びに行くわー」

 

やつれた表情で焦点の定まらない目をしている銀時を強く掴んだまま立ち上がらせ

 

無理矢理彼をここから引き離す為にアリスは強引に連れて行く事に

 

銀時は力ない様子で少年に向かってヘラヘラと笑いながら手を振っている中、アリスもチラリと少年と家の方へ振り返る。

 

家の前にポツンと佇む少年と、二階の窓から除く”ナニか”は

 

自分達が視界に外れるまでずっとこちらを見つめ続けていた。

 

 

 

 

 

 

「あ? なんでお前ここにいんの?」

 

「ようやく気付いたのですか、私の事」

 

白い家から離れてしばらくした後、銀時はふと我に返った様子でいつの間にか手を繋いでいたアリスに向かっていつもの死んだ魚のような目をパチクリさせる。

 

どうやら壺女があまりにも衝撃的過ぎてそこから今ままでの記憶を失っているみたいだった。

 

「あれ、俺って確か汚ねぇ酒場にいたんじゃなかったか? なんでこんな所にいんだ俺」

 

「私を前にして逃げ出したんですよお前、だからわざわざ私が迎えに来てやったんです、感謝しなさい」

 

「はぁ? バカ言え、誰がテメェなんかに出くわして逃げ出す様な真似するかよ、俺は今最高に絶好調に達している最強銀さんだぞ、ナメんなコノヤロー」

 

「いつもの調子に戻ってきましたね、やはりお前はそっちの方が良い」

 

段々いつもの口調と態度に戻って来た銀時に、いつも真顔のアリスが若干微笑んだ表情を浮かべる、だがその時

 

 

 

 

 

 

『あなたってホント怖がりさんね、ちょっと私が驚かせただけなのにこんな所まで裸足で逃げてくるなんて」

 

『はぁ? バカ言ってんじゃねぇぞコラ、誰がテメェ如きに驚かされた程度で逃げるかよ、俺は今を駆ける攘夷志士の間でも最強と称される天下の白夜叉だぞ』

 

 

それは一瞬の出来事であった。

 

突然アリスの頭の中に覚えがない場所と、そこにいた銀時と会話している様な光景が映り込んだのだ。

 

「これは……」

 

「おい、どうした立ち止まって」

 

急に頭を抱えて立ち止まるアリスに銀時は手を繋いだままどうしたのかと眉をひそめる。

 

その間もアリスの頭の中ではここではない別の光景が……

 

『俺がこの山の中に来たのはアレだよアレ、オメェの妹がここにツチノコがいるって言ってたら、つい衝動的に探しに来ただけだって』

 

『あーもういいわよそういうの、そろそろあなたのその言い訳にツッコミ入れるの面倒になって来たから、正直に私に驚かされて逃げましたってカミングアウトなさいここで』

 

『だから逃げてねぇって! ツチノコなの! ツチノコが俺をここに誘い込んだの!』

 

『はいはい、それじゃあツチノコさんに別れを告げてさっさとお家に帰りましょ』

 

 

 

 

『木綿季が待つ、私達の家に』

 

「……つッ!」

 

「おいどうしたお前、なんかさっきおかしいぞ」

 

そこでグニャリと大きく歪む光景と同時に、突然、右眼からの凄まじい激痛に襲われるアリス。

 

思わず短く呻き声を上げて項垂れる彼女に、流石に銀時も明らかに様子が変だと気付く。

 

「しっかりしろってオイ、突然気分悪くなったのか、ログアウトした方が良いんじゃねぇか?」

 

「あ……あ……」

 

銀時に声を掛けられながらもアリスは今、信じられないモノを目にしていた。

 

それは先程から痛みが増し続ける右眼のみに映る……

 

『警告……コレ以上ノ記憶領域ノ拡大ヲ禁ズル……”オリジン”ノ記憶ニコレ以上ノ干渉ハ許可サレナイ……』

 

「……っ!!」

 

『再度警告……オリジンノ記憶ヲ、”アンダーワールドノ住人”ハ思イ出シテハイケナイ』

 

真っ赤な画面に機械じみた言葉でこちらに警告を促す文字

 

ハッキリと見えたその文字に、アリスはゾクリと背筋から寒気を覚え始めた。

 

「なんなんですかコレは……オリジン? アンダーワールドの住人? 意味が分かりません、それは私に関係ある事なのですか……?」

 

 

体から大量に冷や汗が流れ始めているのを感じつつ、アリスは今、目の前に映る光景をただ凝視し

 

傍で銀時が何やら叫んでいるのも聞こえずに、項垂れながら表情を苦悶に滲ませ

 

「私は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「誰なんですか……」

 

 

吐き捨てる様に呟いた彼女の言葉に、右眼に現れた謎の文字は答える事無く

 

やがて痛みと同時にフッと消えて行くのであった。

 

 

 




銀魂が遂に終わりましたね。長かったです、いやホント……もう一生終わらねぇだろうなと半ば諦めてたぐらい。

まあでも、銀魂らしい最終回で良かったなと思います。何人か最後まで迷走し続けているキャラいましたが……

原作銀魂が終了してもこちらはまた続きますのでよろしく

新作銀魂も現在執筆中なのでもう少しお待ちください



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。