随分と待たせてしまい申し訳ありません、引き続きこれからもよろしくお願いします
第八十一層 恋愛はチャンスではない、己の意志
引きこもり生活から一転してかぶき町に住み始めて結構経った頃
急に話があると言われて妹の直葉に呼ばれた桐ケ谷和人は、面倒臭いと思いながらも久々に実家へと戻って来ていた。
「は? 新八の様子がおかしい」
「そうなの、数日前から急に変になっちゃって……」
久しぶりに返って来たというのに和人はすぐに1階のリビングのソファに座らせられると、向かいに座る直葉から突然おかしな話を聞かされることに
「なんか一人でブツブツと独り言呟き始めたり、自室に籠って出てこなくなったり、かと思ったら一心不乱に叫びながら壁に頭打ち付けたり……まるでお兄ちゃんみたいになっちゃって」
「おい妹よ、お前は自分の兄貴をなんだと思ってんだ? 流石に俺でも壁に頭打ち付ける事はチャレンジしてないぞ」
「レアモンスターが逃がしたとかなんとか奇声上げながら、自分の部屋で壁にゴンゴン頭打ちまくってたの忘れた?」
ソファの上で足を組んで平然としている兄に妹は真顔で彼の愚行をポツリと呟きつつ、ふとここから見える台所へチラリと視線を向けた。
「それと聞きたいんだけど、どうして”あの人”は平然と人の家に上がり込んで勝手に台所でなんか作ってるの? 私あの人呼んだつもりはないんだけど?」
「いやなんか、家にいても暇だからって勝手について来ちゃってさ……」
ここにいるのは和人と直葉だけではない、彼の後についてきて無理矢理家に上がり込んだ坂田銀時が、勝手に台所を使って料理を作っている真っ最中だ。
呼んでもない客人に直葉は不機嫌そうに睨みつけるも、銀時はお構いなしに冷蔵庫をパカッと開けて
「チッ、なんだよここイチゴ無ぇのかよ、しけてやがんな」
「しかも勝手に人の家の冷蔵庫物色してるし……」
「しゃあねぇ、味気ねぇけどイチゴ無しのショートケーキにすっか」
「ちょっとお兄ちゃんいい加減止めて来てよ、あの人我が家で勝手にケーキ作ろうとしてるよ、殴ってでもいいから追い出して」
「ハハハ、下手な冗談はよせ、そんな真似したら俺があの人に料理される」
生クリームやらスポンジやらを用いて勝手にお手軽ケーキクッキングをおっ始めようとする銀時に直葉が抗議するが、和人は即座に無理だと手を横に振って断った。
「勝手にやらせておけよ、あの人定期的に糖分摂取しないとイライラする性質だからさ、なんか甘いモンを適当に食わせて置けば大人しくなるんだからそっちの方が都合がいいだろ」
「お兄ちゃん随分とあの人の扱いに手慣れて来たね……まあそれならそれで良いけど、確かにあの人が絡むと凄く面倒臭くなりそうだし」
兄妹同士の話にあの男が現れるとどんどん話がこんがらがってしまうのは目に見えていたので、ああして大人しくケーキ作らせておいた方がマシか……
銀時の事をかなり理解している和人に感心しつつ、直葉は渋々といった感じで頷くのであった。
「それじゃあ本題に戻るんだけど、新八さんの様子がおかしくなった事でお兄ちゃんわかる事ある? 同じ思春期の男の子なんだから私より新八さんの事わかるでしょ」
「いやわかるつっても……まあアイツ昔から真面目な所あったし色々と我慢する性格だったよな、もしかしたら何かがキッカケで今まで蓄積されていたモンが爆発して、やり場のない感情に身を任せて突拍子もない行動として現れてるんじゃないか?」
「おい妹、あのクリームシャカシャカかき混ぜる奴どこにあんだコラ」
「上の戸棚の奥です……何かがキッカケってどういう事?」
「流石にそればかりは俺もわからないって、俺アイツの事ロクに知らないし、ていうかそこは本人に聞けばすぐわかる事だろ」
台所でゴソゴソしながら急に話しかけて来る銀時に嫌そうに答えつつ、直葉は和人の分析に耳を傾けながら首を傾げる。
「そうなんだけど私やお妙さんがしつこく聞いても「なんでもない」の一点張りなのよあの人……もしかしたら私やお妙さんには話せない事情があるのかも……」
「あのシスコン眼鏡があの凶暴姉に尋ねられても答えないってのは珍しいな、仕方ない、だったら同じ年頃の男である俺が直接聞いてみるか……」
「あれ、意外に親切だねお兄ちゃん」
てっきり面倒だから勝手にしろとか薄情な事を言うもんだと思っていたのだが、あっさりと力になってくれる事を了承する和人に直葉がちょっと驚くと、彼は気まずそうに僅かに彼女から目を逸らし
「アイツに借りの一つでも作ってやろうと思っただけだ、それでアイツ今どこにいるんだ」
「ああ、新八さんなら」
幼馴染のよしみで新八の面倒を見てやるからどこにいるのかと和人が尋ねると、直葉はスッとここから窓越しで見える家の庭を指さして
「さっきから私達の庭にある木に向かって一心不乱に頭を打ち付けてるよ」
「フン! フンッ! フンッ!! ふんぬらばぁぁぁぁぁぁl!!!」
「勝手に人の庭でなにやっちゃってんのアイツ!?」
見るとそこには確かに直葉が日頃お世話になっている和人の幼馴染、志村新八が
鬼気迫る凄まじい表情で額から流血しているにも関わらず、人の家の庭に生えてる木を両手で持って何度も頭突きを行っていたのだ。
これには和人も流石に唖然とした表情で立ち上がって窓から彼の奇行に目をやる。
「頭打ち付けたいなら自分の家でやれよ! なんで俺の実家でハッスルかましてんだあの眼鏡!」
「うん、前は自分の屋敷でやってたみたいなんだけど、お妙さんにいい加減にしろって怒られてから毎日ここに来てはああして打ち付けて、気が済んだら自分の家に帰るってのが習慣になってるの……」
「つうかアレはキチンと文句言わなきゃダメだろ……母さんも家の庭であんな真似されたら流石に怒るって……」
「撮ってネットに動画をupして笑ってたよ、「これで再生数稼いで広告収入貰う」とか言いながら」
「自分の子供の幼馴染をユーチューバーにして荒稼ぎしようとしてんじゃねぇよ!」
勝手に人の庭を借りて暴れる新八も新八だが、それを無許可で取ってネット上に流す母親もどうなのだろうかと、和人は複座な思いに駆られながらも改めて彼の奇行を目の当たりにして頬を引きつらせた。
「だが確かにアレはヤバいな……行動そのモノもヤバいがあの血走った目つきをしながら浮かべる表情が特にヤバい、呪いでもふっかけようとしてんじゃないのかアイツ」
「そんな丑の刻参りじゃあるまいし……とりあえずお兄ちゃん、新八さんに話しかけて来てよ」
「いや改めてこうして見ると正直関わりたくないというか……本当にアイツどうしたんだ?」
うっかり話しかけると奇声を上げながら地の果てまで追いかけてきそうな、そんなどこか恐ろしい雰囲気のある新八に思わずビビッてしまう和人。
一体何が彼にあんな真似をさせているのだろうと、ますますわからなくなった和人はしばらく彼の姿を眺めて考えていると
「フ、やれやれ、君達はどうして新八君があんな行動をしているのかわからないのかい」
立ち上がって窓越しから新八を眺めていた和人の直葉の背後から、不意に飛んで来た声に二人が同時に振り返ると
そこにはテーブルの上にコトンとお茶を二人分置く
私服姿の真撰組局長・近藤勲がこちらに笑みを浮かべ立っていたのだ
「しょうがないな、どうやらここは人生の先輩である俺が手を貸して……ぶふぅぅ!!!」
「なに自然に人の家でお茶出してんのよストーカーゴリラッ!!」
またもや自分の許可なく勝手に家に上がり込んでいた人物が現れた事に、直葉は突っ込んで豪快に彼を蹴り飛ばす。
近藤はそのまま鼻血を出しながら後ろに吹っ飛んで、銀時のいる台所にまで飛ばされた。
「おいゴリラ、ちょっとそこにあるバナナ取ってくれ、イチゴの代わりに使うから、間違ってテメェが食うんじゃねぇぞ」
「あ、はい……どうぞ」
いきなり吹っ飛んで来て傍に落ちて来た近藤に、銀時は調理に没頭中な為に全く動じずに指示を出すが、またもや呼んでも無い奴が勝手に家に上がり込んで来たという事に、直葉はひどくご立腹の様子である。
「どうしてあなたが私の家に不法侵入してるのよ! あなたお妙さんのストーカーでしょ! 不法侵入する家間違えてるじゃない!」
「いやそもそも不法侵入していい家なんて無いから」
和人の冷静な指摘を尻目に直葉はお妙直伝のストーカー抹殺術を試みようとすると、近藤は慌てて彼女に向かって立ち上がり
「お、落ち着いてくれ直葉ちゃん! 俺はただ将来的には俺の義弟となる事が確定している新八君の為に! 力になってやりたいと思いここにやって来ただけなんだよ!」
「確定してるってなんですか! ふざけた妄想抱いて勝手に人の家に上がり込むただの変態野郎の間違いでしょ! 新八さん以上にヤバいあなたが新八さんをどうこう出来る筈ないじゃないですか!」
「ハッハッハ、いいからここはタイタニックに乗った気持ちで俺に任せなさいって」
「タイタニック沈んだんですけど!」
勝手に上がり込んだばかりか新八の面倒まで見てやると豪語する近藤に、どんだけ面の皮が厚いんだと直葉が心底軽蔑している眼差しを向けていると、彼は腕を組んで不敵な笑みを浮かべ始めた。
「何を隠そう俺にもああいう衝動に駆られる事があったのさ、いや俺だけじゃない、男ってのは大体そうだ、どう足掻いてもこの病にだけは勝てない、そして何をすればいいのかわからなくなっちまって無性に暴れたくなるってモンだよ」
「回りくどい事言ってないでさっさと結論言ってくれませんか?」
「まあ聞きなさい、つまり新八君は今、初めて目の前に現れた大きな壁にぶつかり、どうすればいいのかわからず大きな病を抱いている、そしてその病とは……」
女である直葉にとっては意味が分からず、口をへの字に曲げてさっさと帰ってくれと願っていると、近藤はすっかり自分の言葉に酔いしれた様子でそっと自分の胸に手を当てる。
「恋、だ」
「……は?」
「思春期まっただ中で異性に興味持ちまくりの新八君は今、きっと誰かに恋の病を患ってるのさ」
そのツラでよくもまあそんな恥ずかしくて似合わない台詞を言えたモンだと直葉が口をポカンと開けて固まってしまった。
新八があんな真似をしているのは誰かに恋をしただと……
「全然意味わからないんですけど……え? 男って人に恋をするとあんな奇行に走る傾向があるんですか?」
「そうだよ、男ってのは女が考えてるよりもずっとバカで不器用な生き物なんだよ、かくゆう俺もお妙さんの事をこうして想っていると体が勝手に……」
自分の胸に手を当てたまま近藤はしばしうっとりした表情を浮かべると、次の瞬間バッと駆け出して家の窓を開けたと思いきや、新八が頭突きを繰り返す木に向かって駆け寄って
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!! お妙さぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」
「ってお前もやるんかい!!」
新八と共に同じ木に向かって感情の思うがままに頭を打ち付け始める近藤に、思わず直葉の代わりに和人がツッコんでしまう。
人の家で勝手に何をやっているんだコイツ等は……
「最悪だ、眼鏡だけじゃなくゴリラまでウチの庭で暴れやがった……おい直葉、母さんに頼んでアレも動画に上げろ、見せしめに全国ネットに流してやれ」
「なんだか頭痛くなってきた……ホントに男って人に恋するとあんな真似やり出すの……」
「いや俺は知らん、経験ないから」
頭を抱えて男というモノの認識を改めないといけないのかと大いに悩む直葉を尻目に、色恋など全く興味無いのでどう答えれば良いのかわからない和人はふと台所にいる銀時の方へ振り返る。
「なあ、アンタも人のこと好きになったら勝手によその家の庭で木に頭を打ち付けるのか?」
「はぁ? 急になに言ってんだテメェ? そんなアホな事する訳ねぇだろ」
ケーキ作りをしてる時に変な質問をしてきた和人に、死んだ目を向けながら銀時はハッキリと答える。
「俺は結野アナが大好きだし本気で結婚したいとは思っているけどよ、想いってモンは木じゃなくて直接本人にぶつけなきゃ意味ねぇだろ、時間の無駄だ」
「まあそれが普通だな、けどアンタの場合それやると間違いなく死亡フラグだが」
「まあ確かにアレだよ? 何時か目の前に結野アナが現れてくれるのかと期待に胸を膨らましてはいるが、それはただ考えているだけでバカみてぇに突拍子もない行動に移る訳……」
真顔であっさりと結婚する女性は結野アナ以外に存在しないと宣言する銀時
だが話の途中で意中の相手を想像してしまった銀時は、突然肩を揺らし始め、次の瞬間、何か抑えきれぬ衝動に駆られたかのように全身を震わせ始めると……
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! 結野アナァァァァァァァァァ!!!!」
「結局お前もやるんかいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」
ケーキ作りを中断して、つい結野アナを意識してしまった銀時は、途端に抑えられなくなった強い恋心に屈して、窓を思いきり蹴破って庭に着地すると、本能のままに新八と近藤と共に頭突きを開始し始めるのであった。
「あの、皆さんすみませんでした……」
それから数分後、桐ケ谷家のリビングには桐ケ谷兄妹が座るソファの向かいに頭からダラダラと血を流しながら謝る志村新八の姿があった。
「ここん所ずっとおかしいのは僕自身わかってるんです……でも毎回何かに頭打ち付けないと気が変になってしまいそうで……」
「いやそれよりまず頭から流れる血を拭いてくんない? お前のせいで床が血まみれなんだけど?」
頭からダラダラと血を流しながら謝られても気味が悪いだけだと和人がジト目でツッコミを入れていると
新八の両隣に座り、彼と同じく頭から血を流しまくっている銀時と近藤が優しく声を掛けた。
「気にすんじゃねぇよ、人は恋する時誰しも原始に返るのさ」
「そうだぞ新八君、誰にだって、晴か太古の時代から男ってのはムラムラする生き物なのさ、つまりムラムラする事が男の証みたいなんだよ」
「お前等はとっとと原始に帰れアウストラロピテクス、二度とこの時代で恋愛を語るな」
三人揃ってなに余所の家で頭から血をが流してるんだと思いつつ、もはやここが殺人事件の現場と思われてもおかしくないなと、彼等の真下に広がる血の水たまりを眺めながら和人はぼんやりした表情で改めて新八の方へ視線を戻した。
「ていうかさ、この二人はさっきからお前が誰かに恋をしていると思っているみたいだけど、ぶっちゃけそれ本当なのか?」
「ここここここここ恋なんてしてねぇし!! 侍がそんなモンにうつつ抜かす訳ねぇし!!」
「あ、これ間違いなくクロだわ」
和人がちょいと指摘して見ると、すぐ様新八は激しく動揺を見せて顔を真っ赤にして必死に否定するというわかりやすいリアクション
どうやら近藤の予想は間違いなく当たっていたらしい。
すると彼の両隣に座る銀時と近藤がまたしても口を開いて
「今更そんな事言ってももう遅いって、俺等も好きな人ゲロったんだからお前もさっさと白状しろよ」
「そうだよ新八君ズルいぞ! もうわかってんだからさっさと言ーえーよー!」
「アンタ等中学生?」
完全に悪ノリして新八に正直に言えとせがむ銀時と近藤に和人がポツリと呟いていると、しばらくして項垂れて黙り込んでいた新八がゆっくりと顔を上げ
「え、えーとわかりました白状します、実はですね……ここ数日前に偶然ファミレスで物凄く可愛くて綺麗な女の子に出会ったんですけど……その日からずっとその子の顔が脳裏に焼き付いて離れないんです……」
「おぉー! 偶然バッタリ出会った女の子に一目惚れか! 青春じゃないか新八君!」
「べ、別に惚れた訳とかじゃないですよ! ただちょっと気になるってだけですから!」
「いやいやいや! ちょっと気になるって時点でそれもうかかってるから! 恋の病にかかってるから!」
隣でへらへらしながら茶化してくる近藤に、新八はムキになってこの期に及んでまだ好きになった訳ではないと言いつつも、途端にその表情に影が現れていき
「確かに僕は彼女にもう一度だけでも良いから会ってみたいとは思ってますよ、けど顔は覚えてるんですけど名前も知らないから、探そうにも探せなくて……というかそもそも彼女を探すという行動自体が奥手の僕には無理というか畏れ多いというか……」
「ったく情けねぇな最近のガキは、おい草食眼鏡系男子、今オメェの隣にいる男を忘れたのか?」
「え?」
自分なんかにそんなチャンスは巡って来る訳がないと、不安な様子で項垂れ、半ば諦めかけている新八に
軽く舌打ちしながら銀時がぶっきらぼうに口を開いた
「俺は万事屋銀さんだぞ、金さえ払えばなんだってやる、つまりお前が俺に依頼すればその娘を見つけてやる事も出来るし、お前に会わせてやることだって楽勝だっての」
「銀さん……!」
「もう木に頭打ち付けるのは止めるんだな、これからは頭じゃなく」
頼まれればどんな仕事でさやってのける、それが万事屋である銀時の生業だ。
もう二度と彼女に出会えないだろうと途方に暮れていた新八にとって、まるで銀時が自分を導いてくれる先導者にさえ見えてくると、彼はドヤ顔でビシッと自分に指を突きつけて
「”腰”を打ち付けて予習に励め」
「くっそ最低だなオイ!」
「男で大事なのは顔でも性格でも収入でもねぇ、いかに相手を満足させられるかという”テクニック”だ、まずはかぶき町にある店を片っ端に通い詰めて、お前は島耕作の境地に辿り着け」
「いや目指さねぇから島耕作!」
なんだかんだで頼りになる人だと思った次の瞬間にはコレである……
最低なアドバイスをする銀時に、さっきまで元気がなかった新八はようやくいつもの調子を取り戻してツッコミの感覚を取り戻していると、彼等の話を聞いていた和人は「はぁ~」とため息をこぼすのであった。
「なんだよ、結局ただの新八の色恋沙汰かよ、しょうもない……俺はこんな話に付き合う程暇じゃないっての……」
他人の恋愛事などぶっちゃけ銀時ぐらいしか興味が湧かない和人にとって、新八が誰とお近づきになろうがどうでも良かった、こんな話をわざわざ実家に戻って聞くぐらいなら、家に籠ってゲーム三昧してた方がずっとマシだ。
「大体直葉、お前が大事な話があるからって言うからわざわざ来てやったんだぞ、なのにこんな面白くもなんともない眼鏡の色恋話に付き合わせるとか……ん?」
「……」
ここは強引に自分を呼びつけた直葉に文句の一つや二つ言ってやろうと彼女の方へ振り返る和人であったが
さっきから不思議と一人、話に加わらずに黙り込んでいた彼女は、不意に窓の方へと歩み寄ってガララッと開く。
「どうした? ていうかお前、なんでさっきからずっと無言……」
「ごめんお兄ちゃん」
なぜ彼女が窓を開けているのか疑問に思った和人が話しかけてみると、彼女は別に変わった様子もなく、いつもの調子で声を出しながらこちらに笑顔を浮かべ振り返って来た。
「今ちょっと無性に木に頭打ち付けたくなったから邪魔しないでね」
「なんで!?」
それから数分後
ずっと昔から桐ケ谷家の庭に生えていた1本の立派な木が
なぜかへし折れた。
次回はまた別の話です
PS
原作の方もそろそろ完結みたいですし
近い内に銀魂クロスssの新連載を投稿しようと思っております。
今、短期連載で書いてる仮面ノリダークロスssが終わった頃になるかなと思うので、気長にお待ちください